試作品集   作:ひきがやもとまち

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季節が変わって、新作アニメ視聴に忙しい時期になっちゃいました。
おかげで余計に書く時間減りましたが……なんとか前々から書き進めてたのを完成まで出来たので投稿です。

【乙女ゲー世界はモブに】二次創作、最新話です。初ロボバトル今話で決着。


この乙女ゲー世界は、女子でも引きます 11章

 

「あぁ~あ、落とされちまったか・・・。

 姉貴には迷惑かけることになっちまったなぁ~」

 

 決闘場の上空から錐もみ状に落下してきて地面に叩きつけれ、無様なポーズで機械なのにピクピクしてるジルクの《ヨロイ》を見下ろしながら、俺は特に感慨もなく家族に対して一応の謝罪を発しておいてやっていた。

 

 別に罪悪感だの、「相手にも事情があったから~」とかいう定番のお涙ちょうだい話を気にしてるから言ったって訳じゃない。

 

 ただ、レインの代理出場によってジルクの指示によるアロガンツへの爆破工作は未遂に終わり、そのまま勝っちまった訳だから『特定の魔法にだけ反応して起爆する』って設定の原作にもあったヨロイ用爆弾は今回の決闘騒ぎの中では完全になかったことになるのが確定した訳じゃあるんだが・・・・・・犯人たち自身の中でもなかったことになれるってもんでも無いだろう。

 

 つまり、これで姉貴がジルクの気を引ける可能性は、ほぼ0パーセントになっちまったって事だ。

 まぁ、あの性悪で貧乏田舎男爵の見せかけ令嬢でしかないジェナが、曲がりなりにも原作攻略対象ではあったジルクと出来ちまう可能性なんて、最初から天文学的以下の超低確率でしかなかったとは思っちゃいるが。

 

 ・・・・・・あの合法ロリ令嬢に騙されて決闘代理まで引き受けちまった一人だからなぁ、ジルクって・・・。

 それ考えたら可能性として0とまでは言えないような気もしなくはなかった、姉貴とジルクが今回の一件で仲良くなるフラグ展開。

 どっちも中身最悪っぽい性格してそうなのは変わらん見た目だけ女っぽいのは一緒だしな。姉貴もそういう動機があったからこそ、今回の指令を断り切れなかった事情もあったかもしれない。

 

 だが、仮にその予測が当たってたとしても外れてても、どっちみち同じだ。その可能性はもう無い。完全に消えた。妹の手でルートに入れる条件ごと摘まれちまった。

 諦めて別の攻略対象か別の男を見繕ってもらうしかないので頑張ってください、としか今の俺には言いようもない。マジでない。

 

「さて、それじゃ決着も付いたみたいだし俺たちも行くか。レインが代理で試合出るのはジルクとの試合終わってことになってたみたいだし、ユリウスとの決勝はまた俺に出番戻ってくる訳だしな。今の内に移動しとくとするか、行くぞルクシオン」

《待ってください、マスター。試合がまだ終わっていません》

「あん? そんなもん今さら挽回できる訳ねぇんだから、どーでも―――って、そーいえばまだブザーの音が聞こえてないような・・・?」

 

 ルクシオンからの制止に最初は気のない声で返事をした俺だったが、改めて思い返してみたら先程から試合終了の合図もブザーも聞こえてこないままになっている。

 それはヨロイが完全に試合続行不可能になった訳じゃないってことを示してる部分だし、審判が止めに入らないってことは見た目ほどはジルクの機体ダメージも大きくないってことを示してもいる。

 

 そうなるとレインが、まだジルクとの勝負に勝ってなくて倒せてもいないって事になる訳だけど・・・・・・なんで? 

 どー考えても、逆転なんか絶対100パーセント無理としか思えん、両者の間に開いた戦力差。最終的にはかなり強くなる攻略対象たちも、新入生の1年坊主でしかない今の段階では俺たち実戦経験ありの転生者兄妹の方がかなり上なのが現時点での状況だ。

 

 ・・・・・・そんだけ差がある相手との戦いで、アイツが攻撃ミスって止め差し損ねるなんてことあるもんかね・・・? あまりにも性格とイメージと本性的に合ってないとしか思えん事態に首をかしげる俺。

 何かあったのか、何か狙ってるだけなのか、それを確認するため互いにリンクさせてある通信機をONにして、相手のコクピットに直接事情を聞こうとスイッチに手を伸ばそうとした俺だったのだが・・・・・・その直後。

 俺は――最低な性格の持ち主だと思っていた今生での妹の最低さを、侮っていた事実を知ることになる。

 

 それは空から聞こえてきた、スピーカーを通しての声だった。

 おそらくレイン用のヨロイ《アローガンツ》のコクピット内に響いてる会話を、外部スピーカーで外に漏れ聞こえるようにした結果だったんだろう。

 

 

『クッ・・・! どうあっても殿下と戦うつもりですか!? 貴族として終わりますよ!

 まっ、まさか殿下を・・・ッ!?』

 

『わ、私も殿下m―――yoを愛しているッ!! もしも殿下にナニk――する気なら、君も家族にも責任を取らせるぞ!?』

 

『で、殿下ぁぁっ! コイツらは危険、です・・・・・・戦っては・・・ダメ・・・です・・・・・・』

 

 

 

 そんな声が(ジルク機からの方だけ)聞こえてきてから、試合終了のブザーが鳴り響く会場内。

 そして訪れる沈黙の中。・・・・・・俺が思ったことは、たった一つだけ。

 

 

 ―――あ、コレ終わったわ。と。

 貴族としてどーかは分からんけど、社会生命的にイロイロと終わったパターン。

 

 しばらく沈黙が続いた後。

 

 

 

『『『キャ~~~~~~~~~~~ッッ♡♡♡♡♡

   薔薇よ! 薔薇よっ! 薔薇なのねッ!!

   美しき愛と友情が王宮を舞台に咲き乱れる薔薇の革命が♡♡♡

   ユリウス殿下とジルク様との間に~~~ッッ♡♡♡♡』』』

 

 

 

 

 会場内を満たしまくって、今までで一番デッカい音量で盛り上がりまくる、女子達からだけの大喝采に包まれちまった・・・・・・。

 一瞬にしてアンジェリカさんとマリエで王子の恋人役奪い合ってた決闘場が、別のバトルが混じってた流れに改竄されちまったじゃねぇか。偏った情報流出でイメージ操作されちまってんじゃねぇかよ。

 

 ホモじゃねぇか。

 さっきのセリフだけ抜粋して編集して聞かされた奴からすれば、完全にジルクが王子に向かって愛を叫んでたホモ台詞になってんじゃねぇかよ。

 

 しかも今からだと何言っても手遅れだしなぁ。アイツ向こうにいた頃は、ニ○動好きだったって言ってたし・・・・・・ジルクの機体にも録音装置とかの無駄な機能でも付いてりゃ別だったかもしれんけど、一度定着した印象ってのはなかなか消えてくれるもんじゃねぇ・・・。

 

 ジルクよ・・・爆弾使って謀殺までされかかった俺だが、今では男としてお前に、ちょっとだけ同情しなくもないような気が無きにしも非ずな気分になってる気がするぜ・・・同じ男として、明日から女子たちの評判的に。

 まぁ、下手にフォローして飛び火するの嫌だから中立で無視する程度の同情だけどね? ジルクかばって今度は『俺がジルクのことを・・・』とか友達に噂されたら恥ずかしすぎて超イヤだし。だから無視。

 

《やはりサブマスターは、マスターの妹だけのことはありますね。私の機能をあのような使い方で利用する方法を、我われ旧文明では想像することなかったですから大したものです。

 本当にサブマスターは、マスターの妹に相応しいクズな兄妹です》

「ウッセ、それに失礼だぞルクシオン。俺はアソコまで酷くねぇし、同じ情報手に入れてもアイツほど追い詰めるマネなんかしねぇし。

 せいぜいユリウスとマリエに密告するとか脅すぐらいだ。本当にやった時でも同情で好感度アップ狙えるかも知れないから、ジルクにとっても得になる利用方法だしな。

 傷つくのはジルクのプライドだけで、他は誰も傷つかないから、俺の方がレインよりもずっと優しくて親切ってもんだ」

《なるほど。やはり本当にマスターたち兄妹は、クズ兄妹です》

 

 そんな感じで人間嫌いなルクシオンとの心温まる試合前のやり取りによって、俺の心は完全に精神的安定を取り戻し、体の方も疲れが取れきって準備万端。

 俺たち人類への偏見と決めつけに満ちたルクシオンからの、人の心ってモンを理解してない所詮は機械な分析も聞き流してやりながら、最後に残った試合と王子をブッ飛ばして勝って、婚活生活と学園生活の両方を終わらせに行く覚悟決めるか~。

 

 そう思って、肩振りながら気分転換に来てた観客席から選手控え室へと戻っていく途中で―――ふと声が聞こえた気がして、そっちの方を見てみると。

 

 

「え、えぇぇッ!? そんな、ジルク様がユリウス殿下になんて・・・ッ! 私にあそこまでやらせてたのって、そんな理由があったからだったからなんだ・・・ッ!!

 ―――で、でも、それはそれで無くはないんじゃないかしら、ね・・・? ゲヘヘ♡♡(じゅるり)」

 

 

「《・・・・・・・・・・・・・・・》」

 

 

 ――なんとなくの幻聴と幻覚での話だったが、親族の姉がジルクと一緒に人の道はずれて、社会生命も終わっちまいそうな顔浮かべながら下卑た声出してたような気がしたけど・・・・・・錯覚だろうな。幻聴だ。

 俺の姉が、あんなに変態であるわけがない。

 

 赤の他人の空似だから、聞き流してやるのが他人同士としての礼儀ってものだったし、敢えて何も言わずに早足で遠ざかっていって、来た時の道から少し遠ざかる道選んじゃったけど今はそれも仕方がないと割り切って進んでったところで――――また声が聞こえてきたような気がしなくもなく、

 

 

『じ、ジルク・・・噓だろう? お前は今まで俺を、そんな目で見ていたというのか・・・?』

『な、なに!? なんなのよコレって! え、え? ジルク、様、にあんな設定あったっけ!?

 ―――で、でも、そーいう展開になるのも悪くはないんじゃない、かしら・・・?(ジュルリ♡)』

 

『・・・・・・? ま、マリエ? どうしたんだ? さっきから急に顔色が赤くなっているようだが、ひょっとして熱でも――』

『い、いえ殿下! 大丈夫です☆ 次の試合で、ユリウス様の勝利を願っていまっす♪(アッチの勝敗では微妙になっちゃったけど・・・・・・あぁ!私はどうすれば!?♪♪)』

 

 

 別方向でも、何かしらの変態会話が聞こえてきた気がしたけど・・・・・・気のせいだろう。幻聴だ。次の俺の対戦相手が別れたくない相手の女が変態なわけがない。

 だって、それだと負けた方がユリウス不幸になるから、負けたくなっちまうし。自分たちをオカズに妄想されるホモ好きの女に片思いしてるイケメンなんて、笑える要素しかなくてザマーな感じ満載だけど、俺は今回アイツに勝ちたいし、アンジェリカさんを泣かせる結果になるのも微妙な気分だし、どーせならオリヴィアさんとくっついて“彼女を”幸せにしてやって欲しいし。

 

 まぁ、とりあえず。

 ―――バカ姉貴に悪いことしちまった罪悪感だけは、気にしなくて良くなったっぽいことだけは良い結果だったと前向きに捉えとこうと俺は思う。

 

 

《やはりマスターたち新人類はクズですね。新人類みなクズ種族な者たちです》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ・・・終わった終わった。良いことをして、愛ある戦いの結末を迎えられた後というのは気持ちのいいものだね」

 

 スッキリして心地で試合を終え、兄君くんと後退する順番通りに控え室へと戻っていきながら肩を回して息を吐く吾輩。

 いやはや、これでようやく溜飲が下がったと言えるだろう。それぐらい私にとって現役プレイヤー時代のジルクという存在はウゼー男に成り下がっていたので、ただ倒すだけでは飽き足らない乙女心が、更なる追撃を求めずにはいられなかったのだ。

 

 乙女心を弄び、初回限定版と店舗別グッズ目当てで購入したゲームの代金2本分への償いは、ボロ雑巾のように弄び返してゴミのように捨て去り、そして踏む。

 

 それぐらいやる権利を主張するのが、乙女ゲーマーの常識というもの。ジルクは当然の報いを受けただけであって、なんら吾輩が気に病む必要はないと断言できるだろう。

 

 まぁ、もっとも。

 

「じ、ジルク・・・あいつ、そんな感情を殿下に対して抱いていたのか・・・? い、今まで気付かなかったが・・・・・・2人で過ごす時間が他の者より多かったし、考えてみれば、そういう場面が幾度もあったような気が・・・・・・(ポッ♡)」

「あ、アンジェリカさん、駄目ですよ! そ、そんな風に人の想いを言ったりするのは良くないと思います!

 そ、その・・・・・・ジルク様だって、あんなに真剣に想ってらっしゃった訳ですから・・・(ポッ♡)」

 

 

 ――まぁ、色々と飛び火してしまってる気もするが、計算外だ。

 計算違いと言うことは、予想より面白くなったということだから良いとしよう。別に吾輩や兄君くんが被害受ける訳でもないことだし、観客気分で見てるだけの他人事なら、面白ければ由。それがゲーマー。ゲーム内のキャラに対する感情って大体そんなもの。

 時々スゴく感情移入しまくって、こんなに憎しみって怖い感情なんだと知る時あるけれども。

 

 ま、それはそれとして次は兄君くんの試合である。

 結果は始まる前から決しているも同然だが、重要なのは内訳の面白さ。はてさて、どーなることやらと見ていると。

 

 

『王子~~っ! 頑張ってくださーい!!』

『頑張れ殿下ーっ! 勝ってくれーッ!』

 

『そんな無礼な奴に負けないで~ッ!! お願いよーッ!』

『そんな田舎者を倒してくれーッ!!』

 

『殿下ー! そんな奴に負けるなっ!』

『くたばれクソ野郎ーっ!! 死んじまえーッ!!!』』』

 

『『『ぶーっ! ぶーっ! 負~け~ろッ!! 負~け~ろッ!!!』』』

 

 

 まずは試合前の定番、観客席からのヤジが飛び交うところから始まっていた。

 ヘッドセットを通じて聞こえてくる兄君くんとルクシオン君の会話でも、

 

『はっ、哀れだなぁ。この惨状でま~だ王子に期待するとは。将来的にはかなり強くなるとは言え、現状は俺の方が上なことぐらい分かっても良さそうな状況だと思うがね。

 どいつもこいつも、よっぽど賭けに負けたくないみたいだなぁ』

《確かに他のヨロイよりは優秀そうですが、本当にそれだけの相手です。

 芸術的な価値だけは認めますが――どちらかと言えばアレが勝つと信じるより、マスターが負けることで溜飲が下がるのでしょう。

 それ程マスターの言動は彼らにとっての新人類語“ウゼ~”のでは?》

『そういう言葉を使うんじゃありません!!』

 

 というノリで、対戦相手への評価よりも先に観客たちへの評価から始まっていた訳でもあるが・・・・・・紅一点の女だからかな。吾輩の意見は双方とは少し異なる感想を、観客たちに抱かざるを得ない郷愁をそそられるものが感じられていた・・・・・・。

 

「と言うより、自分の押しキャラをアンチされた時のネット批判返しみたいなものなんじゃないかね?

 好きなキャラが異なる女子ユーザー同士の派閥抗争は、ときに流血沙汰になることもなくはない程だからな。ハンカチ噛み締めながらの血涙的な展開として」

『そういう事も言うんじゃありません! 怖いからな!? その話聞かされた上で、このブーイング聞いてるとヨロイ降りた後がスッゴい怖さ掻き立てられるんだからな!?

 女同士のジェラシー勝負に俺を巻き込むんじゃねぇ! 俺はモブだ! 押しキャラ合戦に加わる資格はねぇよ!?』

「男子たちの方は、金銭目的の他に、色恋も絡んだ利害損得が絡み合った結果ではないかな? 

 【女子たちが言ってるから自分も賛成】とかの理由によって。

 これだけ多くの女子生徒たちから、好感度ダダ下がりまくり確実な選択肢を選ぶのは、コンプ目指す時ぐらいだからな。

 後はまぁ、なんとなくノリと祭りな理由で。みんなで一緒に騒いでたら、なんかノッてきた的に」

『・・・ありそうでイヤだなオイ。嫌すぎるぐらいに有りそう過ぎる・・・。心当たりまであるから反論できねぇのも含めて本気でイヤだ、そのブーイング理由の真相・・・・・・』

 

 出しゃばりと承知で割って入ったアドバイスによって、兄君くんのテンションを大いに下げるという効果を発揮してしまい、役割を果たせたことに安堵して気分良く試合を観戦する準備が整った吾輩の心理。

 これで兄君くんも、観客席からのブーイングを正確に聞こうという気はなくなって、周囲の雑音に振り回されることなく試合に集中できることだろう。

 勝ったも同然の相手とはいえ油断は禁物。吾輩は兄想いな妹としての役割を果たせたことに、密かな自己満足感を抱きながら対戦相手のユリウスが乗る純白のヨロイが構えるのを大人しく待つ。

 

 そして、待ちに待った現時点では攻略対象中最強のユリウスからの、第一声がコチラ↓

 

 

『まさか、俺まで順番が回ってくるとは思わなかった。

 お前の奮闘には敬意を表しよう』

 

 

 との事だったのだが・・・・・・コレさっきの試合で、同じようなセリフ言ってなかったかね?

 これはアレか? 納期ギリギリでプログラマーが逃げたからの間に合わせで、同じセリフを口調だけ変えて焼き回した系の展開なのだろうか?

 それとも乙女ゲームでも一時期あった、髪の色とか変すぎる口癖とか、特徴的な部分だけ変えて後は同じのを大量生産するバブル的発想のライター仕事とかの可能性も0ではなし。

 

 セリフも含めてコンプする主義の吾輩としては非常に気になる部分だったのだが・・・・・・兄君くんは、そこはどーでもよかったらしい。スルーされてしまった。やっぱり女と男の違いかなぁ~。

 

「――殿下、一つ質問していいですか?」

『良いだろう。ただし、答えられることならば』

「特待生のオリヴィアさんを、どう思いますか?」

『オリヴィア・・・?』

 

 この世界が乙女ゲー世界であり、自分の行動が本来のシナリオから完全に逸脱させてしまいかねないイベント展開をもたらしてしまったという、メタ知識を知っている者だからこその質問を問われ、逆にユリウスの方は純粋に首をかしげるような声音を発して、特に悪意もなければ善意もない口調で兄君くんからの質問にも普通に答え。

 

『ふむ・・・それほど面識がないので、何とも評しがたいな。勉強を頑張っているとは聞いている、と言ったところか』

「―――そーですか」

 

 どこか機械的な、あるいはナニカを諦めたような兄君くんの反応。

 それによって覚悟が定まったのか、イロイロ吹っ切れたのか―――とにかく兄君くんから先に攻撃を仕掛けるため動き出す。

 今までの4人は全て受け身で、相手に攻撃させてやってから圧勝オンリーだったのとは明らかに異なる積極的な戦い方。兄君くんは兄君くんで、先程までの4人との試合とは気迫が違う想いで挑むことにしたらしい。

 

 

 そして―――ガキィン!!!

 両者の機体と機体、剣とスコップがぶつかり合って火花を散らす!!!

 

 

『俺は――負けられない!!

 マリエの為にも、負けられないんだぁぁぁぁぁッッ!!!』

 

 

 ユリウスの叫びに呼応するように、専用機の背中から翼のような青い炎が燃え上がる!

 その姿は幻想的で見応えがあり、グラフィック数どれくらい使ってるか少し気になるほどの出来映えっぷり! ロボオタ趣味はない吾輩だが、これは確かにモエるものを感じさせられる!

 『萌え』ではない・・・・・・『燃え』を感じさせる熱き男同士のロボバトルが今、吾輩の目の前で!

 

 あのルクシオン君でさえ、

 

 

《芸術的な価値だけは認めます》

 

 

 と現実を受け入れて許容させるほどの美しさを持ったユリウスの機体と、兄君くんのヨロイとの戦い・・・・・・それが至る結末! それは!!!

 

 

 

 

『しょ、勝者・・・・・・っ、バルトファルト―――ッッ!!!』

 

 

 えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!??

 

 

 

 

 ・・・・・・本っ当に、芸術的な価値だけしかないまま終わってしまった戦いであった・・・。

 途中で、

 

 

『誰も本当の俺自身を見ない』とか。

『俺は王族になど生まれたくはなかった』とか。

『お前は強力なヨロイを手に入れて傲慢になってるだけだ』とか。

『俺かお前が死ぬまで戦いを辞めない!』とか。

『お前の気持ちは愛ではない。押しつけだ!』とか。

『俺は理解した・・・・・・これこそが愛だと!!』とか。

 

 

 そんな感じに、お涙ちょうだいセリフを連発するシーンはあったので、本当に美しくはあったのだが・・・・・・それ以外は割と本気で見るべきところが特になにもない、平凡極まる試合内容と負け方な相手だったからなぁ・・・。

 

 最後まで一方的なワンサイドゲームに終始して、性能的にも能力的にも目立ったところは何もなく。

 

 

 ブラッドみたいに、専用武器がある訳でもなく、ファンネルもどきもなし。

 グレッグみたいに、癖ありすぎな旧式機で挑んでくるオッサンエースじみた展開もなく。

 クリスみたいに、自分が「これこそは」で貫いてる武器に特化した戦いするでもなく。

 ジルクみたいに、勝ちには拘るけど、勝つために手段選ばぬもなし。

 

 

 あくまで、バトル相手としてみた場合はの話だが、汎用機をステータス上がっただけのオーソドックスな機体で、オーソドックスな戦い方だけして、見せ場もなく、魅せる技もなく、ただ普通に戦って普通に負けた。・・・・・・それだけの試合だったからなぁ、本当に・・・。

 

 正直、評価に困りすぎる試合内容だなコレは・・・・・・評価できる特徴と呼べるポイントが、他の4人と比べて何にも無かった・・・・・・なんと言って良いのか分からない・・・・・・。

 

 まぁ、しいて言えばの話として。

 

 

『さっきから偉そうに! 愉しいか!? 上から目線で説教するのは、どんな気分だー!!』

「――【オイオイ、取り巻きにも見捨てられたのかぁ? ここまで人徳がないと同情したくなるぜぇ~】」

『うぐっ!? ぐ、グレッグとて人間である以上、感情というものがあ――』

「――【私たちに勝つつもりか? お前では勝負にならない~】」

「ふっ、ぐっ!? く、クリスは努力を怠らない、高性能な機体頼りな奴らとは違って・・・」

「――【実績のある方たちだと聞いていましたが、相手の実力も測れないようでは~】【お前さっき、女子に声かけてあしらわれたろ。目立ちたいだけなら引っ込んでろザコが~】」

『う、うぐ・・・っ。いや・・・その・・・・・・』

 

「まぁ、5対2で決闘に応じて負けそうになった途端、『機体が相手より弱いから負けただけで、自分たちは弱くないし悪くもない』とかの屁理屈で、間接的に自分のヨロイをディスって負けた責任なすりつけて自己正当化しはじめる、潔さが全くなかった愛の戦いの見苦しさだけは面白かったと認めますがねWWWW」

 

『ぐ、ぐ・・・お、おのれぇッ!! ば、バルトファルトぉぉぉぉぉぉッッ!!!』

 

『・・・・・・お~い。いま戦ってる相手はコッチだって。――ルクシオン』

《解析完了。インパクト》

 

『はっ!? しま――うぐおわァァァァァァッッ!?!?!?』

 

 

 ズボォォォォォッン!!!!

 

 

 という終わり前の最後だけは、ちょっとだけ楽しめたのだけは面白かったと言えなくもない。

 

 

『お前・・・ホントに最低な妹だなぁ~。アレはないわー、俺でも退いたわー。ヒールに徹して間違いを正そうとしただけの俺、誠実だわー。

 クズな妹をもつと、ホンットお兄ちゃんって苦労するわ~。前世と同じだわ~』

 

 

 そして最後の最後で裏切られる、吾輩の兄妹愛の戦い方。

 まぁ面白かったから良しとしよう。・・・・・・どーせ兄君くんが思っている通りに終われるとは思いがたい状況でもあることだし・・・・・・フフふふふ腐腐腐♪♪

 

 

 

つづく




*最終的には、口で言い負かされた恨みで、女の子にロボットで襲い掛かろうとするまで行ってしまった王子様。

予定以上にヒドイ扱いとなったと反省しておりますが……悪意はありません。邪気だけです(二重で謝罪)
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