試作品集   作:ひきがやもとまち

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BSで土曜の7時からやってるガンダムOOの再放送で最終回見てたら書きたくなったので書いてみた話です。
本当はもっと短い話だったのに、いつもの癖で長文化してしまいました・・・反省。

マイスターたちがセレニアっぽい女の人にこき下ろされまくる話。
本人的には悪意はありません。一応は。

*追記
以前に提案した『平成ガンダム世界に宇宙世紀ガンダムキャラが』は制作中です。今少しお待ちください。ネタ探すため見直さなくちゃいけないので意外と大変です(;^ω^)


言霊ガンダムOO

 

『国際連合が地球連邦に改名して一年。我々は連邦参加国、全三百二十八カ国の賛同を得て、各国の軍隊を解体。一元化し、地球連邦平和維持軍として発足することをここに宣言します。

 すべての国の軍がなくなり、我が平和維持軍が世界唯一の軍隊となったとき、世界は真の統一を果たすことになるでしょう。その道標となるべく、我々は邁進していく所存です』

 

 大統領の宣言を皮切りにして議場全体が拍手喝采で包まれる。

 そんな中で一人だけ周囲の人々とは違う視点で彼らを見つめる目があった。

 連邦参加国すべての国から賛同を得て発足した平和維持軍の設立に『賛同しなかった』人物であり、有力議員の娘でもある二世議員。

 そして、ソレスタル・ビーイングを陰から見つめる支援者の一人にして監視者の役割を父から引き継いだばかりの若い女性。

 

 

「ーー斯くて、強大な力を持つ魔王を倒すため世界は一致団結し、平和が訪れた世界には最強の騎士団だけが残されたという訳ですか。麗しい友情物語です。できればこのままハッピーエンドに行かせてくれると有り難いんですけどねー」

 

 頬杖をついて呟かれる言葉には真実味が欠けていた。当たり前のことだろう。現実は物語とは違って、都合のいいところで切ってエンディングまで飛ばすことなど許してくれない。人類が生き残り続けている限り、人の歴史は人の歩むスピードでしか記されることは出来ないものなのだから。

 

 

 世界の外側にいた魔王を倒す目的で一つになった三大勢力の軍隊が、魔王を倒して後の世界で、その矛先はいったいどこに向けられるのか?

 

 ーー内側に決まっているではないか。当然だ。

 外に向けるべき敵は、自分たちが倒してしまった後なのだから。

 

「三つの勢力が利権目当てで争い合っていた時代には、様々な制約から三大勢力による戦争は限定的にせざるを得ませんでしたし、三つ巴の情勢は抑止力で守られた平和な時代という見方も出来なくは無かったんですけどね・・・」

 

 勢力が三つある時には、それぞれに頭が一つずつ存在し、互いが互いを食おうと狙っていたため、一つが選択を選び間違えても残り二つが互いに足を引っ張り合いながら噛みついてくる痛さにより間違えた事実に気づくことが出来ていた。

 それが今、ひとつになる。

 勢力も頭もひとつになって、判断する頭も、間違えてしまう頭も一つだけになる。

 

 これで世界は間違えられなくなってしまった。世界に一つだけしかない軍隊が間違えたとしても、食らいつく痛みで間違いを気づかせてくれる敵の脅威も今はない。

 

 一つの失敗ですべてが終わる。世界のすべてを一部の人たちに委ねてしまえる。

 一つに統合されるとは、そう言う意味を持つ言葉だ。そう言う側面を持つ社会制度だ。

 果たして今の世界は、そのことに気づいているのかな? 彼女は疑念を抱いたが、それより何より警戒すべき点は他にある。

 

 

「おそらく『彼ら』は今の世界を良しとは思わない。必ず再起して行動にでるはずです。彼らは元々そう言う集団ですからね・・・」

 

 彼女が思い出すのは一年と半年ほど前のこと。父の後を継いだばかりの新人監視者だったときに一度だけソレスタル・ビーイングメンバーの処遇を決定する会議に出席したことがある。

 

 戦死したらしいアレハンドロ・コーナーが語っていた彼らのプロフィールから見ても、歪な精神とその由来がよく分かる。

 

 

 自身がヴェーダの操り人形になり切れてない苛立ちを他者にぶつける、子供じみた半端者のイノベイター。

 

 自分の責任では一人も殺せず「世界のために」と不特定多数の他人たちのためなら赤の他人を殺しまくれる、未完成な人革連の殺戮マシーンもどき。

 

 そして、宗教テロ組織の一員でありながら自分を見捨てた神は信じず、新たに自分を救ってくれた神へと鞍替えして戦い続ける狂信的な少年兵。

 

 

 ーーもともと彼らは戦災孤児を寄せ集めた烏合の衆に過ぎず、『戦争根絶』という利害が一致していたからこそ協力しあえていた排他性の強い集まりでしかなかったのを、緩衝材として輪の中心になってくれていたロックオン・ストラトス一人の人格に信頼を寄せていくことで一個の集団として機能するようになっていった若者たちの少数集団。

 

 戦艦一隻の中で完結している彼らのコミュニティは仲間意識というより同族意識が芽生えやすい。仲間を殺した世界を許しておくべき理由は彼らにはない。必ずや家族の仇討ちをするため牙をむいてくるだろう。それはいい。だがしかし。

 

 

「問題なのは彼らのすべてが問題の解決手段として、戦争に依存しきっているという事。戦争によって多くのものを失わされた彼らにとって戦争は否定する対象であると同時に、自分たちが持つ世界観の総て。戦争の中で生まれて地獄に落とされ、地獄の中で必死に生き抜いてきた彼らは、自分でも気づかぬうちに戦場でしか生きられなくなってきている。

 仮に彼らが世界に勝利して戦争を終わらせたとしても、彼らの中で戦争は終わらない。終わらせられない。戦争を終わらせたいと願った自分自身の中の戦争を憎む心は、自分以外の誰が行う戦争を止めたところで終わらせられるはずがない」

 

 

 誰に頼まれたわけでもない、自分自身の自己満足のために始められた戦争根絶のための戦争。自分の中の欲求を満たせるものは自分自身しかいない。それを目に見える形で示すよう他人に求めて戦い続ける彼らの戦いに終わりはない。

 

 もしかしたら、と彼女は思う。

 

 あの少年兵の身体から硝煙の臭いが消える日が来ることは未来永劫訪れないのかもしれない・・・と。

 

 

「戦争から生まれた戦争しか知らないマルス申し子たち・・・・・・たまには彼らにも休息の時間ぐらい与えてあげたいものですね・・・」

 

 そう言って、機械を操作しファイルを削除する。

 ソレスタル・ビーイング残党が潜んでいる工廠を発見した旨を伝える父親からのメッセージを闇へと葬り去りながら、彼女は思い出す。父親からイオリアの計画を聞かされた時に思った感想を。

 

 

 ーーー自分に都合のいい子供を利用して犠牲の羊に捧げさせる、とんでもない暴挙だ、と。




似たような作品として、アレハンドロが参加していた監視者たちのマイスターたち評価委員会みたいな吹き抜けホールでの会合にセレニアが参加していたらと言うのも考えてはみました。書いてませんけどね? そちらはそちらで結構ヒドイこと言ってます。

「世界に対してなんらの責任を負えない少数部隊が『自分たちを不幸にした戦争は悪だから辞めろ』と叫んで問答無用で奇襲を仕掛けて蹂躙する。
 俺たちの命令通りに戦争止めない奴は悪だから殺すって、どこの独裁者ですかそれ。ソレスタル・ビーイングによる恐怖政治でも行いたいので? 戦争による現状維持は否定するのに、破壊による変革と再生は無理やりにでも推し進めたがるイオリアさんは超タカ派の巨頭かなにかだったんでしょうかねー」

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