少し前に出来てたんですけど、長ったらしくなり過ぎたのと説明臭すぎるのが気になって、1から書き直す予定だったんですが、最近いろいろと時間を取られて書けるか分からず、とりあえず【暫定】として出してみた次第。
これでも良さそうだった場合は仰ってくださいませ。最近こういうのが多くなってて申し訳ない…。
ヴィンス・レッドクレイヴ。
オルファート王国で最高位の貴族である公爵家の現当主であり、自家の娘を王子の許嫁に据えるほどの影響力を誇る、超が3つぐらい付くほどの大大大貴族。
そんな大貴族の当主が長男を同席させて2人の少年少女たちと顔を合わせたのは、娘と王子との婚約解消を賭けた試合とやらいうバカ騒ぎで、王子たちが敗れてから数日経った日のことだった。
「――つまり、この私に君たちへの処遇に関して、バカ騒ぎの尻拭いをしろと言うのかね?」
「はい。自分は王宮になんの伝手もありません。ですのでレッドクレイヴ家の当主である、貴方ならばと。そう愚考した次第です」
絵に描いたような『王家簒奪を狙う有能な大臣』そのまんまな、見た目と性格と価値観と考え方をもってるオッサン大貴族こそが彼だった。
見た目に関してだけは、娘のアンジェリカさんにも長男のギルバートさんにも全く似てない人です。間違いなく2人の子供とも母親似だったんでしょう。幸運なことです。
父親似で王子の許嫁の悪役令嬢だったら、リオンさんは決闘代理人引き受けるの躊躇っちゃったかもしれません。そんな見た目の血筋の人。もしくはオッサン(老け顔)
「私ども兄妹の助命、そして家族に責任が及ばないようにしていただきたいのです」
「ふむ・・・君たちには、娘の決闘代理人を引き受けてくれた借りもある。最低限の面倒は見ると約束しよう」
「ありがとうございます。それと、騎士の称号は返上いたします。これから頂く予定だった男爵位についても、お断りするのが筋かと」
「ほう、若いながら殊勝なことだ」
相手のメンツに泥を塗り、そのうえで罪を免れた以上は、たとえ自分に非のない事柄でもデメリットを被って見せるのが社交の場での礼儀であり筋というもの。
自らに非がなく、貴族位と決闘は別物だからというのが正論だからと言って、いやむしろ正論だからこそ憎しみや恨みを買わずにはいられないのが、人の社会というもの。
まして相手が求めるのが、『自分の命』や『家族の安全』というなら尚のこと。
合法的に裁けぬという時に、正論を受け入れられぬ相手がとる手段など、昔から決まっている十八番。
そういう『小物の正義』を避けるため、自分からも差し出せるものは先んじて差し出した方が結果的には得なものだ。
ヴィンスは、その点をよく理解して評価する人物だった。悪の親玉っぽい親父だから。
「――それと今一つ。私どもの助命をお願いして頂ける際、ささやかな支援になればと思い、私どもの方でも持参した物がございまして」
「ほう、それは? 見たことのない品だが・・・」
「私と兄が、冒険者として遺跡を探索する中で見つけた《ロストアイテム》と思われるものです。
使い方が限定されすぎて普段は役に立たないのですが、こういう際には使えるのではと」
そこまで交渉を担当していた兄に代わって、隣で頭を下げていた妹の方――こちらはレインと言うらしい――が一歩前へ進み出ながら、箱形の妙な代物をさしだしてから蓋を開け、小さな円盤のようなものを中へと入れ直してからスイッチを押す。
すると―――
「こ、これは・・・!?」
そして見せられた品物の効果は、驚くべきものだった。同席していた長男が、思わず絶句してしまったほどのもの。
なんとジルク・フィア・マーモリアが・・・・・・王太子の乳兄弟という関係の宮廷貴族が、あろうことか『女子生徒を脅迫して決闘相手のヨロイに爆弾を仕掛けさせる光景』の一部始終が記録されて、立体映像として空中に投影されていたのである。
「これは、その際に兄のヨロイに仕掛けられていた爆弾の一部です。
幸い試合前に私が運良く気づくことが出来たため誤魔化すことが可能となりましたが・・・・・・通常のヨロイであれば一発だけでも操縦者の命が危うくなる威力があったことを、後で知ったときには生きた心地が・・・・・・オヨヨ」
「・・・・・・確かにな。気づかぬ間に身内の命が危機に晒されていたと知った、君の心中は察するに余りある。
まさに騎士として恥ずべき行為、貴族としてあるまじき振る舞いと言わざるをえん」
―――嘘だけども。
コイツ絶対分かっててやったなと内心で思いながら、表面上は言っとくべき言葉だったので言ってやっただけだけども。
とは言え、ここは『王太子関係者のヤラカシによって哀れな被害者になりかけた女の子』という、王家一族の弱味を握れそうな部分だったので、『知らなかったんです』が真実でいい。
真実とは、いつも一つ。公の判定として『これぞ真実だ』と認定されたものだけが、たった一つの真実なのが法の世界の(社会的)正義。
「しかし、解せないな。
君たちならば、騒動をやり過ごすことも、無難に事を収めることも可能だったろう。まして、これだけの証拠を手にしたなら試合中であってさえ自力での解決が可能だったはず。
――本当の狙いがなんだったのか、本心を聞かせてもらいたいところだな」
そこまでは静かに相手を見定める姿勢をとっていた長男ギルバートが、やおらに鋭い視線と表情になって、ハッキリとした聞き方で相手の真意を問いただす。
なにか要求があるなら今言っておくべきところであり、多少の願いなら叶えてやっていい状況でもある。
そんな中、2人の兄弟が答えた理由と要求。それは―――
『『――国のためですっ。
あのまま女に騙される殿下を放っておけませんでした(キラリン☆)』』
・・・・・・思わず2人の背後に後光というか、キラキラ光る金箔でも降らしたような、成金くさい演出が見えたような・・・・・・そんな幻覚が一瞬だけヴィンスには見えた気がして思わず笑い声を上げてしまった。
「すでに当家でも正式に、アンジェと殿下との婚約を解消した。アレに娘は相応しくない。
――ところで、そちらの要望を叶える代わりにといってはなんだが、一つ頼みたいことがあるのだが・・・」
「なんでしょう? 自分たちと家族の安全を保証して頂けるのです。俺たちに出来ることでしたなら、何なりと」
「ありがとう。実は今回のことで、娘はスッカリ参っていてね。気分転換のためにも手頃な田舎で休養させてやりたいと思っているのだが・・・・・・例の決闘で騒ぎが大きくなりすぎてしまったし、公爵家の娘を辺鄙な土地の安宿に泊まらせるのは危険すぎるのだ。
―――そう言えば、君が男爵位を与えられることになったのは、新たに無人の浮島を見つけたことが評価されたのが理由だったねぇ、たしか」
とりあえず、渡りをつけておくには十分すぎる価値は示した相手たち。
時と場合によっては、様々に使い道が出てくる可能性がある。あるいは今より更に跳躍する可能性すら持っているかもしれないのだ。
まぁ、とりあえず今のところはの処置として。
「王太子の本家に使者をおくり、個人的な茶会に招いてコレを見せてやれ。親族の一員から口添えされた方が陛下たちも受け入れやすかろう。我が家が疎まれる恐れもない」
「承知しました、父上。すぐにも手の者を回すよう指示を出します」
「それと、あの小僧たちの事もシッカリと言い含めてな。有効に活用するため、利用価値を付与しておきたい。
せっかく、買った駒だ。
買った直後にパーティ会場から帰宅されては、駒の使い道がないからな。フッフッフ」
悪の親玉っぽいオヤジらしく、悪の親玉っぽい計画の利用方法を思いついて、悪の親玉っぽい笑い声を響かせる、悪の親玉っぽい悪役令嬢アンジェリカの父親ヴィンス・レッドクレイヴ。
そして、退室した部屋から屋敷の出口へ向かって伸びる廊下を歩きながら、
「よし、これで処刑は免れるだろうし、学園からも婚活からも逃げられるはずだ。
尤も心残りとして、やっぱ師匠にお茶を学べなくなることは辛いし、ダニエルとレイモンドとも会えなくなるのは少し寂しくはあるか。
・・・・・・気がつけば、俺もけっこう学園生活を楽しんでたんだな・・・・・・」
上首尾に終わった交渉の成果に満足しながら、一方で今までイヤだイヤだと感じ続けるだけだった生活に、意外なほど失われて惜しいと感じる小さな幸せを感じてもいたのだという事実に今更ながら気づかされ。
バルトファルト兄妹たちは、失って初めて分かる大切なものの価値ドウタラの青春をおこないながら。
生まれ変わった乙女ゲー世界のメインとなるであろう、王立学園のストーリーからフェードアウトする道を新たに歩み始めることになる。
そして・・・・・・
「『その後――リオンたちの姿を見た者は誰もいな・・・』」
「やめろ!? 勝手に人のセリフの後でモノローグっぽいの付け足してフラグ化するんじゃねぇ! BADじゃねぇか!
その説明付け足した俺の言い回しだと、BADルート入りしちまうじゃねぇか! 兄のセリフでなんてことしやがる!?」
「では――、『その意味さえ知らず若者たちは旅ははじまった。そのたびの先に待つ過酷な運命と数々の出会いと別れを想像することさえ出来ないままに・・・』」
「壮大すぎる!? 物語の始まりを告げるセリフに変えるのも辞めい! RPGじゃねぇか! 乙女ゲー世界で兄にRPGを始めさせるんじゃねぇ!
あと俺もお前もモブで村人Aだって言ってんだろうがー!? ゲーム世界に転成した後までゲーム脳維持し続けるの辞めろよ! 本当にマジで本当に!!」
「はっはっは。サーセン、WWW(*'ω'*)」
「あやまる気ねぇェェェェェッ!!! あやまる態度じゃもっとねeeeeeeeeッ!!!!」
――まぁ、妹の方は明らかに『だが物語はまだまだ続くのじゃ』になる前提で行動していたようではあったが。
兄の方も、実は本心だと「そーなるかもしれないなぁ・・・」という可能性を考えて恐れる気持ちはあったんだけれども。
だからこそ口には出さず、敢えて逆のこと言って前向きに考えようと努力してたのに、このやり過ぎ妹はコレだからコレだからコレだから・・・!!!
やっぱり転生妹でも、乙女ゲー世界で設定上の妹でも、妹は妹だからダメなんだと改めて心に誓ったリオン・フォー・バルトファルト16歳の夏が始まる。
そして、秋になった。
「ハァ~・・・・・・なんかスッゲー短時間で季節変わっちまった気がするな・・・・・・やっぱあの緩い乙女ゲー世界だからかなぁ・・・」
空を見上げて溜息をつきながら、俺ことリオン・フォー・バルトファルトは一瞬にして終わっちまったような錯覚さえ覚えるほど短すぎる休暇を終えて、この学園に戻ってくる羽目になった不幸を嘆くしかなかった。
いや実際にはイロイロあったし、中には眼福なシーンとか良いイベントなんかも割とあり、短いとは言えない時間が過ぎてることを覚えてはいる。
・・・ただ嫌そうなことに、また巻き込まれそうな気がしてきた時には、なんとなく良いことは全部なかったことにして、嫌なことだけカウントして短かったことにしたい欲求に駆られるってだけのことで・・・・・・。
あの後、アンジェパパに根回してたおかげで俺もレインも、親父たち家族もお咎めなしで済ませてもらい、オリヴィアさんやアンジェリカさんと一緒に俺が見つけて買った浮島で優雅な短期休暇を楽しみながら過ごすことが出来ていた。
ゾラからの介入だけは、親父との関係もあって対処が厄介そうだと思っていたが、国内最高位の貴族の娘アンジェリカさんのおかげでアッサリ解決してもらって、本来は敵になるはずだった主人公のオリヴィアさんとの仲も美少女同士で深まったようで何よりな限り。
・・・・・・もっとも、良いことばっかって訳では全くないのは言うまでもなく。
たとえば、決闘騒ぎで破綻を受け入れたとは言えユリウスに対して踏ん切りが付かないアンジェリカさん――「アンジェ」と呼んで欲しいと言ってくれたんだったか。
アンジェさんに、我が愚かなる愚昧からの『復讐計画プラン』を何度も提出してきたりとか。
マリエへの憎しみが捨てられずに復讐を考えてしまう自分を「イヤな女だ」と自己嫌悪しているアンジェリカさんに、自分が代理で『思い知らせ役の逆襲係』を買って出ようかと提案したり。
『自分自身が幸せになるのが最高の復讐。相手を不幸にする労力なんて無駄なだけ』という俺からのアンジェさんに対する良い言葉に賛成しながら、『憎い相手が不幸になるのが自分の幸福に直結する復讐』に理解を示して邪魔してきたり。
そんなこんなで色々と面倒なイベントがあった・・・・・・って言うか大体全部レインが悪いんじゃねぇか。アイツが余計なこと付け足してメンド―な事態に発展させてるだけなのばっかだったじゃん。やっぱ妹はダメだよ妹は。
まっ、そんな感じで休暇中に溜まったストレスを発散できる『ブツ』が手に入りそうなイベントの日が来たんだし、折角だし有効活用できる方向にもっていくよう努力してみるか。
と言うわけで。
「あー、レイモンド。机もうちょっと左だ、左。
ダニエル! そのティーセットは大事に運んでくれ、高いんだからっ」
「いや、そんな代物を学園祭に出すなよ! 運ばされてる身にもなれ! もし割っちまったら俺はいくら払う羽目になるんだよ本当に!?」
空き教室のひとつを飲食店風に模様替えする作業を男友達2人に手伝ってもらいながら、俺はこと細かに指示を出しつつ全体の内装を見て回る。
今ダニエルが言ったとおり、この乙女ゲー世界の学園にも学園祭の季節がやってきていた。
前回の決闘騒ぎでは、王子たちに勝つ方に賭けまくった生徒たちからガッポリ稼がせてもらった内の一部を使って、俺はダニエルやレイモンド、アンジェやオリヴィアさん――リヴィアたちと一緒に、本格的な喫茶店を出店することにして、その準備に追われている。
ちなみに備品の運び込みや調度品のセッティングなんかはレイモンドたちが、接客は綺麗どころのリヴィアたちが担当する役割分担にして、今は女子陣は着替えに行ってもらっている。
まぁ、俺自身は? 指示出すだけで、あとは本番で店長として接客する役なんだけど。店で出す茶葉とか食器は俺のポケットマネーから出した、それなりの物を使ってやってんだし当然の権利ってヤツぅ~?
「あ、あのー・・・・・・コレ、変じゃないですか・・・?
こういうの、着慣れてなくて・・・」
「ふむ――この制服は少し、胸を強調しすぎだな。
本格的な給仕用の服とは言いがたい」
そんな声とともに室内にやってくる―――2人の天使たち。
照れて初々しい仕草と表情のリヴィアに、「ドカン♪」と突き出してる局部に男どもの視線を集めまくる大きさのアンジェ。・・・・・・天使だった。もしくは女神だった。
思わず学園の女子たちという生き物は、穢れなく美しい存在だったのだと誤解して信仰してしまいそうな程に・・・・・・尊すぎる光景がここにある。
「あ、アンジェは着慣れていますね。お嬢様なのに」
「行儀見習いとして2年ほど王宮で過ごしたからな。
――リヴィアも似合っているよ。初々しい感じが、実にいい・・・」
「私も・・・実は気に入ってるんです・・・ウフフ♪」
「ふふ・・・♪ リヴィアは綺麗な髪をしているな」
「私はアンジェみたいに、スタイルが良くなりたいです・・・♡」
なんか尊すぎて別ジャンルって言うか、全年齢向けのはずがR指定入りそうな展開になってきた気もしなくはなかったけど――いや、確か乙女ゲーだと指定ないとかの話を妹が言ってたような無かったような・・・・・・なら問題なしってことだな。ドンドン行ってくださいリヴィアも!アンジェも!
こんなにも尊い光景を前にしても手が出せない。この乙女ゲーの設定上でモブの俺との恋愛は成立しない二人の尊すぎる美少女たち。
どうせ俺自身が結ばれることが出来ないのなら、ユリウスたちと結ばれるくらいならアンジェとの百合ルートの方が、リヴィアのためにも俺の男の子な精神の為にもなっていい事だから・・・っ!
「こ、これが本当に学園の女子・・・なのか!? 優等生と公爵令嬢は一般生徒とは違うということか!」
「ゆ、夢を見ているようだ・・・! もしも夢なら永遠に覚めることなき眠りを僕は欲する!」
ダニエルとレイモンドにも、異存はないらしく恍惚とした表情で頬を染めながら2人を眺めて唖然としちまったまま動けない。
だが気持ちは分かる、痛いほどに。痛すぎるほどに。
俺たちはしばし、砂漠のように乾ききって潤いのない学園内に生まれた小さなオアシスのごとき2人の存在を見続けて、心を癒やされ続けて、そして・・・・・・
バタン!!
「リオン! そしてレイン! ちょっと話を聞きなさい!
あと私を慰めなさい! お茶も出しなさいよ! もちろん身内だからタダで!!」
・・・姉貴のジェナが夢とオアシスを壊すため、この学園の女子らしい女子として扉を蹴破りそうな勢いで突入してきやがって、憩いの時間は終わりを告げさせられることになる・・・。
短い夢だったなぁ・・・ダニエルとレイモンドも苦い現実に帰還してきた表情に変わって、
「あ~・・・これが、この学園の普通の女子なんだよな・・・・・・現実の」
「・・・・・・目が覚めた。夢はやっぱり夢でしかあり得ないんだね・・・・・・」
と、現実とフィクションの違いを思い知ったときのオタクみたいなことを絶望しながら呟くのが聞こえてくる。
前世でも、学園ラブコメとか好きなクラスの奴が似たようなこと言ってた記憶があるが、乙女ゲー世界が現実になった世界でもそれは変わらないと言うことなのか・・・。
とはいえ、仮にフィクションの学園物展開でも、学園ラブ“コメ”だったときには相応の展開が用意されてる場合もあるっちゃあるらしく。
「なんの用だよ、姉貴。邪魔だから帰って欲しいんだけど」
「だ、ダメですよリオンさん! お姉さんにそんなこと言ったらっ」
「そうよそうよ! もっと私に気をつかって相談に乗りなさ―――ヘブッシ!?」
バタチンッ。
「いや、遅れて申し訳ない。吾輩だけ衣装を自前で用意したので着替えに手間取ってしまい―――って、ん? 姉君くん、そんな床に寝転がって何をしている?
正直言って邪魔だし、誤って踏まれても責任はとれないぞ?」
「む・・・ぎゅう~~~~・・・・・・(; ̄O ̄)
犯、人は・・・・・・いも、う―――ガクリ」
遅れて登場してきたレインの開け放った扉に背後からぶち当てられて、床の上に吹っ飛ばされて、そして踏まれる結果になっちまいましたとさ。
姉貴・・・恨むなら、妹なんていう最悪な存在を持って生まれた、姉という自分の不幸を恨んで成仏して欲しい・・・・・・それはまぁ良いとして、グッドタイミングだったぞレイン♪ やっぱ持つべきものは少しぐらいマシな妹だよなハッハッハ!!
そして、華々しい戦禍とともに登場してきた我が喫茶店3人目の女性従業員になる、一応は見た目だけなら悪くはない性別学上は女にあたる我が少しはマシな愚昧レインの姿格好はと言えば、
「ふむ・・・まぁ、よくは分からんが死んではいないようだし、ただの屍になってなければ問題もあるまい。
自然回復まで放っておくとして、吾輩の格好にヘンなところはないだろうか? 兄君くん。こういうイベントで着るのに慣れてないので些か恥ずかしいのだが・・・・・・」
そう言って――「クネッ♪」と片膝を曲げて上半身だけ前に傾けさせ、アンジェリカさんより小さいけれどオリヴィアさんより大きいサイズを「プルン♪」とたわませ、両手で短めのスカートの裾を「ツツ~っ」と撫で挿すってみせる仕草は、初心者とは思えないほど堂に入っていて、いつでも店に出しても恥ずかしくないほどで―――って、ちょっと待てやオイ。
「キャバ嬢じゃねぇか!? 喫茶店じゃなくてイケナイ店の従業員だろうが、その格好は! お前はいったい、ドコの店でどんな仕事やった経験を生かすつもりなんだこのヤロウ!
学園祭でお前みたい18禁女なんか働かせてたら、即刻営業停止処分受けさせられるに決まってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!」
「落ち着きたまえ兄君くん。これはキャバ嬢の仕草ではないし、吾輩自身もそーいう店での労働経験はない。これはあくまでイベント用のもの、だからこそ確認をと頼んでみたのだ。
そう。あの懐かしくも尊い、祭りの会場で売り子として働いた思い出の日々・・・・・・」
「3日目だろ! もしくは2日目だろ! 1日目じゃねぇだろ絶対に、お前が売り子やってサークル入場してたのって絶対に! 学園祭でコスプレしてくんな! マナー弁えろマナーを!」
「最近では学園祭でコスプレは割とメジャーな気もするのだが・・・・・・」
「フィクションならな! 現実じゃまだまだマイナーなんだよ! だからリセットっ、やり直しっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちッ」
小さく舌打ちして戻っていく、存在自体が問題児な愚かすぎる愚昧レイン。
まったく、これだから妹ってヤツは本当に・・・・・・リヴィアなんて真っ赤な顔して恥ずかしがってるし、アンジェでさえ頬を赤らめて俯いたまま黙り込んでるし。
ダニエルとレイモンドに至っては。
「そうか・・・これが学園の女子なのか・・・・・・中身はどうでも見た目は良い・・・・・・」
「・・・夢を売る仕事の女性がいるという現実を、夢から覚めて僕は知った・・・・・・」
とか呟いて昇天しちまっている。
あとレイモンド、その仕事してる女の人とはお世話にならん方が良いと思うぞ。学生のうちに買ったのバレたら多分退学させられるだけだから絶対に(断言)
――そんなことを考えてた時期が、俺にもありました。
だが、そんな青臭いチェリーな一般倫理なんか現実には通用しないって事実を、俺たちはすぐに思い知らされることになるんだ・・・・・・。
そう、それは隣の教室にあたる茶会室で起きていた一つの事件――
『『『みんな来てくれ、歓迎するよっ(ニコッ)
喫茶店《プリンセス》を、どうかよろしくッ☆(キラーン♪)』』』
バカ王子どもが再びなんかしてきやがったーっ!?
しかも俺の愚昧みたいな発想の男バージョンってだけの変化だけしかないアイデアでッ!!
バカなのか!? いや、バカなんだろうけどバカなのか! 実は俺の妹と同レベルの知能指数しかないバカ王子すぎるんじゃねぇのコイツらって!?
俺たちの喫茶店やってる横で同じ喫茶店を並べる当てつけドーコー言うより前に、やってることが性別以外にうちの妹と全く同じで変わってねぇぇぇぇぇぇッ!!!
「フッ――バルトファルト、お前も喫茶店を出すらしいな。良かったら俺たちの店にも来てくれ。敵だった者同士とはいえ決闘場でのこと。今は歓迎してやろう。
値段も茶と菓子のセットで、たったの100リアだ。庶民でも手頃な値段でお買い得だぞ?(ファッサァ~☆)」
「ひゃ、100リア~~~~~~~~ッ!?
お、おおお茶とお菓子のセットだけで100~~~ッ!!??」
「うん? 安すぎたか? これぐらいがいいとマリエが言うからな」
「それが普通の金銭感覚だよ、リヴィア。廃嫡されたってのに、まるで懲りてねぇなコイツらは・・・・・・」
呆れるほど決闘でのボロ負けから何一つ学んだようには見えない、攻略対象バカ王子たちのバカッぷり溢れる行動だった。
余談だが、あの決闘の後でユリウスたちは全員が次期当主の地位を剥奪されて、自分で食い扶持を稼がなくちゃならん立場に落ちぶれているはずだった。少なくとも公的な処分としてはそうなっている。
とは言え、王子のユリウスにしろ王太子のジルクにしろ、血筋的になにかあった時には実家にも自動的に迷惑かかる立場なのは廃嫡されてからも変わりようがない部分なんで、形式の域を出てないってのが現実の状況らしい。
それでも、何もなかった頃よりかは落ちてんだけどな。今はマリエと同じような宿舎に移り住んで冒険者として生活費を稼ぎながら、俺たちへのリベンジを挑むため修行中だって話をルクシオンから聞かされている。
「当然よ! ユリウスをはじめ、みんな“元”名門の跡取り。そんな彼らがサービスするんだから、この程度の値段は当然のことでしょう♪」
「マリエか・・・お前ホントろくな事しないな・・・・・・」
「確かに。なにしろ店名が『プリンス』ではなく『プリン“セ”ス』だからな。
彼女自身を指している単語なのは店員の男女比率で分かるが・・・・・・子爵令嬢がプリンセスを称するのは野心の表れで不敬罪になりかねんのではないかと。王宮に睨まれても知らんぞ?」
「ぐっ!? だ、大丈夫だもん! 心はいつでもお姫様って意味だから王様もきっと許してくれるわ! 心のプリンセスって意味なんだから、きっと大丈夫なの! フンッ!」
オタクみたいな言い訳する合法ロリ悪役っぽい令嬢のマリエ(注:ド派手なドレス姿)
――尚、しょうもない上に要らん余談ではあるものの。
ジルクも一応、コイツらと同じで元の身分を剥奪されてから一緒の場所で暮らすようになった1人でもある訳なんだが。
「そー言えば、ジルクの奴だけいないんだな。得意のエアバイクにでも出てるのか?」
「ほう? よく知っているな。その通りだ、ジルクはエアバイクの試合で優勝賞金を稼ぐ方に回ってもらっている。他の男子生徒たちには悪いが、彼らに勝ち目などないだろう。
ダントツで一位をとり続け、他の者は彼の後塵を拝することしか出来はしない・・・・・・」
「そしてケツからぶち抜かれるんだろ? ――アイツに狙われてるお前みたいに(ボソリ)」
「違う!? アレは陰謀だ! お前たちが俺たちの絆を裂くために騙った卑劣なデマで、嘘八百にすぎない流言飛語だ!
そ、そのはずだ・・・・・・い、いや間違いないっ。絶対にそうなのだ! この卑怯者どもめ!!」
――ま~だ決闘騒ぎの中でレインが晒した、ニコ動的なユリウスへの愛の告白疑惑がつきまとってて完全解消には至っていないらしい状況が続いてるっぽい王子たち陣営の微妙な関係性。
まぁ、親友だと思って信頼して背後を任せてる相手に、後ろから貫かれる危険あるかもしれんと思っちまったら仕方のないことでもあるけどな。ケツの穴を。
「コホン。・・・・・・ま、まぁそのような些事は置いておくとしてだ。
――今度こそお前に俺たちは勝つ。先の決闘のように、負けそうになったからと口先の詭弁で正当化する卑怯な手段で逃げるな! バルトファルトッ!!」
「なんの勝負からだよ!? 学園祭だぞ! 人気投票も売り上げランキングもたしか計上するイベントじゃねぇぞコレって!?」
「昔に流行った、学園祭が舞台の優勝賞品豪華すぎな恋愛ギャルゲー世界にでも転移したみたいなノリになってきたな・・・・・・」
今度はなんか、バトル漫画の主人公か悪役みたいなこと言い出し始めやがったし! レインの言うとおりな状況過ぎてツッコめなくて兄として逆に困るし! コイツの言うことが正しい時って良いことない状況なの確定するだけだと思うんだが!?
って言うか割と本気でコイツら、なにを判定基準に店舗同士の勝ち負けを決めるつもりなんだ・・・?
他の店舗の代表たちと戦って戦って倒しまくって店を潰しまくり、最後に残った一店舗だけが優勝してキング・オブ・学園祭とかの栄誉を授かるとかのバトル物っぽい設定とかあったっけ? この乙女ゲーの学園祭って。ヤクザの地上げ合戦みたいにしかなってねぇ気がするんだが、その場合には・・・。
売り上げナンバー1を競う場合には、必要経費でコイツら自身がプラマイ0になりかねねぇスタート切っちまってる気もするしな。強いて言えば、売り子の人気投票ぐらいか。コレなら勝てそうだけど、最初からダントツで優勝間違いなさそうだから戦う意味自体がないような気も・・・・・・チッ。
「フッ・・・それはともかく、学園祭当日が楽しみねっ。アンタたちの喫茶店はヒマになりそうだし、私たちの休憩所に使ってあげる!
あ、代金は払ってあげるから、ちゃんとしたお茶を出してね?オーホッホッホッ♪♪」
そして何か知らんが、そーいうノリと勢いでそーいう方向性での学園祭イベントが進んでいく流れになったらしい。
なんとなくだが今回も、巻き込まれた感が現時点で半端なくなってきた気がする俺たちだったけど・・・・・・ま、まぁいいだろ別に。
もともと喫茶店は副業として、儲かればいいなと思ってる程度の成功率を見越してる出し物だし、確実に勝って儲かれそうな当ては既に確保してある。たとえ負けても問題はない。
俺たちの学園祭は、俺たちなりにコレから始まる・・・・・・っ!!!
「『こうして学園祭は幕を開ける。
この時は誰もが皆、あんな事が起きるなんて想像すらしていなかった・・・・・・』」
「だ・か・ら!! 余計なセリフを付け加えてフラグ化するなっつーに!?
あと乙女ゲー世界だぞここは! 推理AVGでもなければ学校全体がなんかの空間に巻き込まれる現代ファンタジーRPGでもねぇ! 世界観の違いをいい加減に弁えろ愚昧ぃっ!」
「お、落ち着いてくださいリオンさん!
・・・・・・ところで、“エーブイじー”ってなんの言葉ですか? なんかちょっとイヤらしい印象がある言葉だったんですけど・・・(ポッ♡)」
「前々から感じていたことだが・・・お前たち2人は時どき妙な単語を口走ることがあるな。
なんなんだ? そのあ、“あーる・P・ジィ”というのは・・・なにやらイカガワシイ響きがするのは気のせいなのか・・・?(ポポッ♡♡)」
しかも何か発音とニュアンスのせいで別ジャンルになってる気がするし!
とにかく! 俺の愚かなる愚昧レイン!!
・・・・・・最後の手柄で今回の罪は無かったことにしてやるから、兄の寛大さを大いに感謝するがいい~♪
訳分かんないけど恥ずかしい単語を呟いて、俯きながらモジモジしてるリヴィアとアンジェ――グッジョブッ!!(ビシィ!!)
・・・・・・だが、彼らは本当の意味で気づいていない。
自分たちが面白おかしい生活を送っている平和な学園に、嵐が近づいていることを。
3つの方向からくる嵐の存在を―――。
「フフ・・・ここが学園祭が行われているという学校ね。
我が愚かなる息子ユリウスを倒したリオンくん、あなたには――お説教が必要ですッ」
「ふふふ・・・っ! ここが殿下に捨てられた愚かなるレッドグライブ公爵家の娘アンジェリカを庇ったっていう、田舎男爵がやる店ね。
王家の不興を買って落ち目になった今こそ、アンタたちを追い落とす好機! ウェイン家の娘も使って必ずアンタたちを破滅させてやるわ!
ククク、困らせてやるわよアンジェリカ。何度だって紅茶を入れ直させてやるわ! 床に落ちたカップを奴隷のように拾わせてやるわ! 踏み倒してやるわ!
この愚民と馴れ合う愚かな公爵の娘めッ! 今まで我がオフリー伯爵家が受けてきた恨みを思い知りなさい!」
「ウフフ・・・ここが愚かな平民出身の優等生がいるっていう、バルトファルト男爵の出す店。
レッドクレイヴ公爵令嬢に加担する愚かな力、我がウェイン家のため利用させてもら――ハァァァ~・・・・・・でも本当に大丈夫なのかしら・・・? レッドグレイヴ家のお気に入りに手を出しちゃって・・・。
オフリー伯爵家の支援を受けられるんだから大丈夫と思うんだけど、いえきっと大丈夫、大丈夫だから・・・・・・でも、ううぅ、・・・胃が痛い・・・。
す、ステファニー様・・・格下の平民や男だけなら強く出れますけど、公爵家は・・・・・・身分差で胃が、痛いです・・・・・・(キリキリ)」
なんかジャンル不明になってきたが、明日から学園祭が―――はじまるッ!!
つづく