『鬼滅の刃』と『シャドウ・ハーツⅡ』のコラボ作品。
「鬼」と時代的に、【東京魔人學園】や【ライドウ】も考えたのですが……年代が一番近いのはコレだろうと。
ただし、原作ファンの方は見ない方がいいかもしれません。鬼滅ファンの方は、もっと見ない方がいいと思われます。
――雪が、吹雪いていた。足が、重い。
息が、苦しい。肺が、痛い。
積もったばかりの雪に藁靴が埋まり、一歩進むために掘り出すように歩くことしか出来ない。
行けども行けども白色しか見えない景色に、気が狂いそうになってくる。
「ハァッ・・・! ハァ・・・ッ! ハァ・・・っ!!」
息が苦しい、喉が痛い。――でも、休みたいとは少しも思わない。
思うように進めぬ焦りが、体と心を疲れさせる。――でも、足を速めるのを辞める気は少しも沸かない。
速く行かなければ。早く連れて行かなければ。――そう思う気持ちばかりが強くなる。
「ハァッ・・・! ハァ・・・ッ! ハァ・・・っ!!」
そうしないと、きっと――死んでしまう。
歩く速さを遅めれば――きっと助からない。
そう思うから焦りは強まる。焦りが強まるから、そう思う気持ちは強くなる。
悪循環。だけど今はどうでもいい。悪でも善でも何でもいい。何でもいいから助けて欲しい。助けてくれれば何だって構わない。
「裲豆子、死ぬなよ・・・! 死ぬなっ! 死なせない!
兄ちゃんが絶対に助けてやるから! ぜったい助けてやるからな・・・ッ!!」
背中におぶった少女の重みが、少年に前へ進めと命じさせる。
意識を失い、グッタリと少年の背中に全体重を投げ出している、髪の長い端麗な容貌の娘が、少年に前へ前へと、進めと進めと。
・・・・・・流れ続ける赤い血によって命じさせるのだ。
速く行かねば、自分は死ぬ、と。
早く医者に診せねば、助からない、と。
だから少年は歩く。歩き続ける。
背中から忍び寄る、死の恐怖から逃れるために。
死の冷たい接吻から、妹を逃してやるため、只ひたすら吹雪の中を歩み続ける。
「なんで・・・っ! なんで、こんな事に、なったんだ・・・ッ!! いったい、どうして・・・!
なんで、こんな、事に・・・・・・っ!!!」
訳が分からなかった。
何が起きて、何のせいで、誰のせいで、こんな事になってしまったのか。少年には全く何一つとして理解できることもモノもなにもなく、ただただ訳が分からない。
昨日の朝までは平和な、今まで通りの生活が続いていた。
いつも通り、毎年の慣習通り、正月を迎える前に今年最後の稼ぎを得るため町にいき、親しい人達といつも通りの会話を楽しみながら刻を過ごし、夜までには家に帰ってくる、いつも通りの山での生活。
豊かではないし、金もない、父親もいない。けれど不満だって少しもない。
弟3人と妹2人、優しい母と一緒に暮らす、満ち足りた幸せな生活。
生活が楽ではなかったけど、幸せだと感じられる心豊かな生活。
ずっと、こんな日々が続けばいいと、心から願ってやまない穏やかな日常。
無論、そんなに都合良くはいかないのが人生だというのも分かってはいる。
人生には空模様があって、ずっと雪が降り続けることがないように、ずっと晴れ続けることなんてあり得ない。
移ろって、動いていく。変わらないモノは何一つなくて、幸せが壊れるときも来る時は来る。来てしまう。それは人の力ではどうしようもないことなんだ。
―――そんな風に、変に利口ぶって賢しげな理屈で分かったようなことを思っていた自分は、本当は何一つ解っていなかったんだと今なら解る・・・っ。理解できる・・・ッ!!
幸せが壊れる時には、きっといつも血の臭いがするはずだ・・・・・・そんな馬鹿げたことを考えていた昨日までの自分をぶっ飛ばしてやりたくて仕方がない・・・!!
「死なせ・・・ないからな・・・っ! 裲豆子・・・っ、兄ちゃんが絶対に、助けてやる・・・!!」
壊れる前に、予兆なんてモノはなかった。血の臭いを纏わり付かせた貧乏神が、礼儀正しく扉を叩き、『あなたたちの幸せを壊しにきました』と親切に教えてから壊しにくる不幸なんてある訳がない。
不幸は理不尽で、理不尽は突然にやってくる。
自分たちが何も悪い事なんてしてなくても、貧しくても細やかな幸せを守ってるだけの家族でも。
そんなの一切関係なく、理由もなく、前触れもなく、ただただ突然やってきて、幸せな生活を一方的に壊して一方的に去って行く。
血の臭いが漂ってくるのは、壊され尽くした幸せが二度と戻ってこなくなった後だからでしかない・・・・・・だから理不尽は理不尽なんだ。不条理じゃない理不尽なんてある訳がない。
そのことが自分には解ってなかった。馬鹿だからだ。馬鹿だったからだ。
只なんとなく、平和に大したことを望まず、今得られるモノだけで満足して穏やかに生きているだけならば、そういう不条理で理不尽な不幸は滅多に訪れるモノじゃない―――そんな妄想をなんの根拠もなく信じ込んで疑いもせず生きてきてしまった大馬鹿野郎が自分だったから、だから今!
・・・・・・大切な妹が死にかかってるかもしれなくなってる・・・・・・。
真っ赤に染まった家族の中で、まだ息があって早く医者に診せれば助かるかもしれないのに、町までまだまだ距離がある所にしか来れていない・・・・・・っ。
忠告はあった。
母さんは、雪が止んだばかりだから行かなくていいと言ってくれた。
町外れの三郎爺さんは、陽が暮れると彷徨き出すと教えてくれていた。
それなのに自分は、「慣れているから」と。「鼻が効くから」と。大丈夫だと笑って聞き流して、聞く耳を持とうともしなかった。
聞いておけばよかった。あの時点で引き返していればよかった。
雪で危なくても何でも、母さんたちと姉弟を連れて、大急ぎで三郎爺さんの家に押しかけ、今日一日だけでいい。泊めてもらいさえすれば今朝の出来事は全部、最初からなかったことにできたはずなのに・・・!!
そんなのは結果で、終わった後だから言えることだと幾ら言っても、そうしていれば避けられてたのは事実だ!!
だから、これは―――そんな馬鹿な自分に下された罰なんだろうか?
「なん、だ・・・? 誰、なんだ・・・・・・? アンタ・・・」
「・・・・・・」
雪と風だけで視界が覆い尽くされた白一色の世界の先に・・・・・・『鬼』が、待っていた。
刀を持って、冴え冴えとした刃を振るい、―――裲豆子を斬る。
黒い洋装を身に纏い、青く冷たい眼をもつ、ヒトの形をした『人斬り鬼』が。
「――なぜ庇う? 俺の仕事は、鬼を斬ること。勿論お前の妹の・・・お前の妹“だったモノ”の首も刎ねる」
「待ってくれ! 裲豆子は誰も殺してない! 裲豆子は俺の妹なんだ! 俺の家にはもう一つ、嗅いだことのない誰かの臭いがした! 裲豆子は違うんだ! どうして今そうなったかは分からないけど! でもっ!!」
「簡単な話だ。傷口に鬼の血を浴びたから、鬼になった。人食い鬼は、そうやって増える。今し方己が食われそうになったのと同じように」
「違うっ! 違う違う違うッ!!」
鬼を前にして彼は――炭次郎はひたすら頭を振って、否定の言葉を返すしか選べる道が何もない。他の道を選べる『力』もない。
目の前には、裲豆子を斬ろうとして刃の切っ先を突きつけている、冷徹そうな鬼の顔と。
その鬼に囚われながら狂ったように暴れ狂い、獣のような唸り声を叫び続けている―――先程まで自分を食おうと牙を覗かせていた、変わり果てて変貌しつつある妹の・・・・・・“まだ妹のままの妹”の2人がいる。
「裲豆子は人を食ったりしない! 俺のことは、ちゃんと分かってるはずだ! 俺が誰も傷つけさせない! きっと裲豆子を人間に戻す! 絶対に治します! だから――」
「治らない。鬼になったら、人間に戻ることはない。絶対に」
「探す! 必ず方法を見つけ出すから! だから! 殺さないでくれッ!!
家族を殺したヤツも見つけ出すから! 俺が全部ちゃんとするから! だから! だから辞めてくれ! 辞めてくださ―――っい!!!」
そうして自分は。
鬼になった妹を元に戻す力を持たない自分は。
鬼になった妹の戻し方を知らない自分は。
鬼になった妹だから殺すという鬼を倒して妹を守れる力のない自分は。
せめて――せめて自分ができる精一杯の想いを示して、“許してもらおう”と。
力で敵わない鬼に命を握られている妹を助けられる存在は、鬼だけしかいなかったから。
だから―――お願いをした。
頭を下げて。
這いつくばって。
地面に額をこすりつけて。
奴隷のように。虫螻のように。狗のように。豚のように。家畜のように。
あるいは・・・・・・首を差し出して刃が振り下ろされるのを待つ、斬首に処される罪人のように。
炭治郎は、妹に刃を突き出している鬼に向かって頭を下げて。必死に頼み込んで、許してもらおうとして、それで―――鬼は激怒する。
「~~~~ッッ!!! 生殺与だ―――」
―――フハハハハハ~~~ッッ!!!
「~~っ!? いったい、何が・・・」
「ッ!? 何者だっ! そこに隠れ潜むは鬼かっ!?」
突如として、自分たちだけしかいないと思っていた雪深き山奥の森の一角に、野太い男の笑い声が響き渡り、炭次郎たちの鼓膜をたたく。
鬼は即座に、柄に手をやり刀を構え、奇襲を許さぬため頭上へ向けて鋭い視線を投げかける。
周囲に人気はなく、声は頭上から落ちてきたもの。
人の身で容易に登れる高さの成木など存在しなかった森の中、斯様な笑い声を聞かせ得る者が「普通の人間」とは到底思えぬ。
炭治郎もまた、鬼にわずか遅れて顔を上げ、『鬼』とは異なる家族を食った『人食いの鬼』かもしれぬ相手と同じ匂いを探して頭上を見上げ、そして―――ソレの影を見つけ出す
それは、一際巨大な大木の天辺に立ち。
自分たちを見下ろす、大柄な巨漢の影。
盛り上がった隆々とした筋肉に、真っ赤な衣を身にまとい。
先程まで吹雪いていた冬の森に、筋肉を見せつけるよう羽織もまとわず露出させた、赤銅色の肉体美。
黒い脚絆、獣の革製の洋靴、髑髏をあしらった飾り付きの腰巻き。
金の髪色、青色の双眸、異人らしき容貌と洋装をまとった、三尺近い長身の大男。
そして、顔にかぶった―――蝶の仮面。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」」
思わず、鬼と2人一緒に疑問を一言だけの言葉として、同時に声に出してしまう炭次郎と鬼。
それぐらいに―――まったく訳の分からない存在が木の上に立って、自分たちを見下ろしている。
炭治郎の身と家族の身に起きた理不尽も訳の分からない出来事だったが・・・・・・多分これは全く別物の一緒にしてはいけない類いな訳の分からん存在なんだろうなと、こんな時でも冷静な頭で炭次郎でさえ思ってしまうほど・・・・・・訳分からない存在がそこにいた。
その存在が(たぶん)自分たちに向かって言葉を発する。
語りかけてくる。
「この世を闇が、包もうと! 正義を貫く、この拳!!
弱きを助け、強きをくじく! 非道を許さぬ、この血潮!!
愛と正義の使者、グラン・パピヨン!
今日も華麗に、青空リングに参上だっち!!
師匠ーッ! 見ていますかー!? 元気ですか~~~ッ!?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???」」
ただし、相手の発言内容を『語りかけ』と解釈するかどうかは、個人個人の主観と趣味趣向によるかもしれなかったが。
その訳分からない存在は言うだけ言うと、「トゥッ!」と掛け声一閃、木の上から飛び降りて雪の上へと落下するように着地。
ドシン!ズボン!!と、体格に相応しい体重によって一度雪に埋まってから、大きく跳躍し治した上で―――鬼と向き合い、対峙する大男。
鬼と対峙する者も、また鬼。
その手には、赤鬼が持つ棍棒のように真っ赤な色をした―――郵便ポストが握られている。
――え? それって持ち歩く物だったっけ・・・?
って言うか、持ってきていい物だったんだっけ・・・・・・? 再び炭治郎の脳裏に、こんな時にも関わらず、そんな疑問が頭をもたげる。
あまりにもあまりな事態の連続に頭が回らず、なにか日常的なことでも考えない限り――正気が保てなくなっていた故かもしれない。
まぁ、それは炭次郎の事情として、蝶の仮面をかぶった鬼は、小柄な鬼を睨み付ける。
「少年! 何があったかは知らないだっちが、幼気な少女を人質にして盾とする、卑怯卑劣な戦い方はいくら子供であっても許すわけにはいかないだっち!」
「・・・・・・・・・よく分からんのは同意する。だが此奴を“幼気な幼女”と称するのは過ちだ。
この娘は鬼だ。鬼になった。鬼は人を食って数を増す。故に殺す。
鬼になった者共は、弱者たる人の意思を尊重してくれることはない。故に当然、俺もこの娘を尊重しない」
「なら、鬼の幼気な少女を人質にして盾にする卑怯な戦い方は、許せないだっち!!」
「・・・・・・・・・」
駄目だ、こいつ。異人だからなのか否か、話が全く通じる気がしない。しようとすら思えない。
「・・・もうよい。どのみちお前も恐らくは、鬼。ただ役目として斬るのみ。一度でも鬼となった人間が、元に戻れる道などないのだから――」
「そんなことはないだっち! 人は歩みを止め、闘いを忘れたときに老いていく・・・・・・。
安易に悪の理論に逃げたくなる心の弱さは誰でも持っているもの・・・・・・だが! それを恐れず挑んで乗り越えてこそ真の成長がある! そんな時こそ格闘ロマンの道を突き進め!
んんっ、ハァー!! グラ~ン・パピヨーン!!!」
「・・・・・・もうよいと言った。あと、普通に喋れぬのか? 己は・・・」
話が通じないのか、通じる気がないのか、異人だから日本語を上手く解することが出来ぬのか。――それは分からないし、正直どうでもいいような気になってきたが、とりあえず相手をするのが面倒くさくなってきたことだけは彼の中で確かな事実だった。
――一斬で決する。
そう思い決め、相手の反応などに気を紛らわせることなく、ただ神速を持って近づき、一瞬にして首を刎ねる斬撃を放つ。
そのつもりで、その前提で、そうするのだと自分の中で答えを出した上で動き出した鬼からの一太刀。
ただ・・・・・・それを放つ間際。相手の大男はナニカを語っていた、そう感じた記憶だけは強く、強く記憶に焼き付いて残った。それだけのこと。
「オレっちが人の心を忘れ、人の道に戻る術を失い、ただ暴れるだけの獣と化してしまった時。
師匠はオレっちに、人の貴さを、優しさを、人の心の大切さを思い出させてくれただっち! だからこそオレっちは人に戻る道を思い出すことが出来た!!
その喜びを! その嬉しさを! 世界中の人々に伝道することこそ、師匠からオレっちが受け継いだグラン流の教えだっち――――ッッ!!!」
「・・・っ!?」
その言葉に、鬼の心はわずかな戸惑いを覚えた。
その言葉で、鬼の刃は一瞬の遅れも生じさせることなく放たれていた。
鍛錬に次ぐ鍛錬が、それを可能にした斬撃。心の迷いに関わらず、斬ると決めて放った一斬が止まることはなく、斬らぬと決めた一斬が人斬りの刃に変わることもない。
それが鍛錬の先で会得した、剣の高見の一端。
だが極みには届かぬ己の剣は、今このとき主の想いを裏切る形で―――全力の一撃を放っていた。放ってしまった後になっていた。
だからこそ―――
シャキィィィィィッン!!!―――ガシィッ!!
「なっ! なにッ!? 刃が引けぬだと! ま、まさかこの膂力は・・・・・・! しま――」
「うおぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」
殺すつもりで放った一撃を放ち、掴まれるとは思っていなかった侮った攻撃を掴み取られ、逆に利き手を引き寄せられて掴まれてしまい、想定以上の腕力に距離をとることが出来なくなってしまった鬼。――その瞬間に勝負は決していた。
掴まれたら、いけないのだ。掴まれたら負けになる。
そういう技を、この異人の鬼は会得している。
人間業とは思えぬ力によって引っ張られ。
人間業では出来ぬと思えるほどの回転力でグルグル回らされ。
遠心力も加わって、駒のようにグルグル回り、回らせられる役を押しつけられる羽目になってしまった鬼は。そして
「うおおおりゃぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「うおおおぉぉぉっ!? うおわうおわうぬおわぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!??」
「ウォォォォォォォォッ!!! どっせ―――――――――ッい!!!」
そして―――グルングルンと回転させられまくった遠心力をたっぷりつけてから投げ飛ばされて。
「うっわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!???」
ヒュ~~~~~~~~~~ッン!!
・・・・・・と、遠くのお空に吹っ飛ばされていって見えなくなってしまった、少年の鬼。
今、青空の一部で「キラーン☆」と光るナニカが見えた気がした。錯覚かもしれないけれども。
そして、少年が吹っ飛ばされていった空の上の方から・・・・・・ポトリ、と。
ナニカが落ちてきて、戒めを解かれて置いて行かれた、鬼となった少女の口元に。
「う、ううぅぅ・・・・・・ウワァァァァァァァ!!! あンぐゥッ!?」
「ね、裲豆子っ!?」
「おおっ。空から落ちてきたナニカが上手い具合に口になんか入っただっちな」
ナニカはよく分からないが、竹製っぽい筒みたいなナニカが暴走しかかっていた裲豆子の口に突っ込まれた瞬間、憑き物が落ちたみたいに彼女が落ち着きを取り戻していく。
まだ完全に治ったわけじゃないだろうけど・・・・・・とにかく、今このときの裲豆子の平和だけは守ることが出来たのだ。
この・・・・・・えっと、たしか・・・・・・ぐ、具乱さんとかいう、大柄な異人の手によって。
「あ、ありがとうございました! え、えっと・・・に、日本語わかるんですよね? オレあの、め、メリケン語とかちょっと分からないんですけど・・・」
「気にすることはないだら。オレっちも行き倒れのコウモリだったところを助けられ、人の心と体を取り戻すことができた鬼・・・・・・そう、『吸血“鬼”ヴァンパイア』の一員。
今度はオレが、二人をヒーローとして守るだっち! そのためにも妹を治すため一緒に旅するだから安心してほしいだら!」
「え? あ、はい・・・え? あの・・・・・・緋色・・・?」
なんかよく分からないメリケン語が、また出てきた。
たしかに自分は、緋色にも見える赤の髪色をしているけど・・・・・・それが今なんの関係があるのだろう? やっぱり訳がさっぱり分からない。
異人さんの言葉は、極東日本の田舎育ち少年少女には分かりづらい。