2話連続で投稿しましたので、前の話が1話前に出されております。
前後編という書き方になっちゃいましたので、状況を知りたい方は1つ戻ってから改めてお読みくださいませ。
《サタニスト》――それは、格差や意見の対立や身分差や階級の違いはあっても、悪魔王を封印した智天使が実在している存在だったからこそ、何とか纏まることが可能になっていた聖光国の中から誕生した、新たな勢力の組織名である。
決して、異世界まで攻め込んできたジオニストの名ではない。
特権階級による搾取経済を断行しつづける聖光国の社会から切り捨てられ、社会的弱者の貧民となった者たちを中心に結成された彼らの勢力は、政府が支配の正当性として掲げる『天使』に対抗して、その対極にあるものを崇めることでアンチ勢力の代表的存在と化して現在に至る。
それ故の《悪魔信奉》
ジオニズムでもサタニズムでもなく、《悪魔信奉者集団サタニスト》それこそ彼らの掲げる社会変革と革命の旗印。
当初は、『裕福な者は貧しき者に少しは富を分配せよ』という大人しい主張から始まっていた運動だったが、こういう主張の組織は急速に過激化していくのが世の習い。
案の定、次第に彼らの主張は暴力性を増していき、『貴族制の廃止』を唱えてテロを実行し始めて、恨み辛みから『支配者たちが崇める智天使が格差を作った元凶だ』として、悪い天使の敵である魔王こそが本当は正義のヒーローだったんだと、ウソ歴史を信じ込むようになったのが今の彼らだ。
それが現在のサタニストたち。袖付きジオン残党ではない。
いつしか『ユートピア』と名乗る指導者が現れ、彼らを組織化するようになったことから、彼らの行動と思想は過激さをエスカレートするようになり、各地で無差別テロを繰り返すようにまでなっている。
そうなるよう仕向けた指導者が、ユートピアだ。ギレンではない。フロンタルでもない。
そんな悪魔信奉者たちサタニストは、悪魔信奉者として信奉者らしく悪魔たちの王である悪魔王を復活させる儀式をおこなって成功し、復活した悪魔王に魔王だから魔王らしく皆殺しにされて食われて、悪魔王も馬鹿エルフに脳ミソ握りつぶされて殺されたので、《貧民救済のための魔王復活計画》としては完全に失敗しちまっていた。
だが、その直後に魔王を討伐するため神都から離れた辺境まで、聖女たち二人が僅かな護衛とともに遠出してきたという情報を得た彼らは嬉々として出撃してきたのだ。――対聖女用の《切り札》を投入する覚悟とともに。
正直、三聖女のトップによる《結界》に守られた神都に籠もられたままでは手が出せないが、守りの結界がなく護衛も少ない現状ならば聖女二人のうち最低1人は殺せる自信が彼らにはある。その手段もある。
必勝の確信を胸に秘め、いま彼らは聖女姉妹と聖堂騎士団との戦いを始める火蓋を切る――先制攻撃の無差別攻撃によって!!!
「皆の者、やれ! この地に万民平等の理想実現という救済をもたらすために!!
偽りの天使に死を!――《ファイアバード》!!」
『おぉッ!! この国に正しき平等なる社会と政治をもたらすために!!
聖女に嘆きあれ!――《アイスハンマー》!!』
突如として群衆の輪の外側を囲むように現れた、漆黒のフード付きローブに身を包んだ怪しげな一団が、言ってることだけは正義の解放軍っぽいセリフを口にしながら、次々と魔法攻撃を放って聖女たちご一行と――彼女たちを見に来た見物人の群衆たち目掛けて発射しはじめる!
バコーン! ドカーン!! カチーン!!とか、色々な音や光が轟きまくって煌めきまくり、炎の矢や氷の塊なんかが聖女と関係ない民衆たちもろともに彼らの頭上へと降り注ぐ!
テロに巻き込まれることを恐れて逃げ惑う群衆たちを、足手まといの障害物として利用して距離を詰め、乱戦に持ち込んで数の利を生かし、敵に質の高さで優位に立たせない―――お得意の攻撃方法で、ルナやクイーンたちへ肉薄しようと試みるサタニストたち!!
だが、そこは流石に国内治安維持の専門家にして、分かりやすい勧善懲悪の実践者たるキラー・クイーンと手下の騎士団たち。
「ご機嫌じゃねぇか、サタニストども・・・・・・フジっ!!」
「へいっ! 姉御ぉッ!!」
呼べば響くタイミングの良さで、副官フジが常時は管理を任されているクイーン専用の大剣を主の求めに応じるため投げ渡し、レンジの長い武器を使うときの手間をショートカットして――大きく横薙ぎに振り払う!
ズドンズドンズドン!!!
自分に向かって飛来してきた分を全て迎撃して撃墜し、馬車の上にある玉座から地面に降り立ったキラー・クイーン。
だが見た目通り彼女の部隊も彼女自身も、接近戦は超得意そうなヤツばっかりで、遠距離魔法戦や支援魔法や防御魔法はチョー下手くそとしか思えん見た目の奴らばっかでもあり、実際ド下手くそというより皆無に近い聖堂騎士団精鋭部隊のメンバーたちには、群衆たちまで降りかかる火の粉から守ってやれる人員もスキルも魔法もまったく無かった。これっぽっちも無かった。
結果として、自分たちを一目見ようと集まってきて、感謝と尊敬の視線で注目してくれてた一般民衆からは被害者の悲鳴と絶叫、幾つかの死体が周囲に飛び散る羽目になり、クイーンとしては内心で舌打ちさせられる事になる。
「やってくれたな、クソ共が・・・・・・弱い奴らに同情してやる気は少しもねぇが――俺のシマを勝手に荒らしやがったケジメは付けさせてもらうぜ!!
野郎共ッ! サタニスト共を紅に染めてやれぇぇぇッ!!!」
『オオオオオォォォォォォォッ!!!』
そしてトップに立つ聖女の先導に乗っかって、正義のヒーロー軍団による悪の下っ端戦闘員たちへの一方的な虐殺という勧善懲悪を実行するため、襲いかかってくるサタニストたちに襲いかかっていく!!
『ヒャッハー☆ サタニスト共を消毒だーッ!!』
『ヒーハー♪ 姉御に血を捧げさせろーッ!!』
『俺、この戦いに勝ったら姉御に罵倒してもらうんだ~~♡♡』
悦びイキんで――もとい、喜び勇んでサタニストたちの接近戦部隊が挑んできた白兵戦に応じて奇声を上げまくる聖堂チンピラ騎士団のモヒカンたち。
基本的には初撃のようなサタニストたちの魔法攻撃を使うことが出来ない彼らだったが、今は彼らの背後から魔法で援護してくれる今一人の正義と断罪が味方にいる。
「アンタたちぃ! この私の魔法で死ねるなんて光栄に思いなさい! この悪魔共め!
バカは死んじゃえ!――《ゴールド・スプラッシュ》!!!」
ピカッ! チュドーン!!
ぐわぁぁッ!?
「ヒャッハハァッ!! サタニスト共ぉー! 紅に染まる気分はどうだ~ッ!? ヒーハー☆」
「オーッホッホッ! この私の魔法で死ねるなんて光栄に思いなさぁい! この悪魔共!」
モヒカン騎士団と剣を交えていたところにルナによる、敵後方からの支援魔法砲撃が撃ち込まれて吹き飛ばされるサタニスト軍団の隊員たち。
彼らの側にも魔法使いはいるのだが当然、聖女と同レベルの魔法勝負なんて出来るわけがない。数の差で勝っていても、質の差では圧倒的に負けているサタニスト側の魔法使いたちにはルナの高レベルすぎる魔法に対抗することが出来なかった。
革命と平等という正義を掲げるサタニスト軍団と、力づくの勧善懲悪による正義を貫く聖堂騎士団とキラー・クイーン。
二つの正義がぶつかり合って火花を散らし合う戦場は、だが地力の差で聖堂騎士団たちの方が優勢であり、その差は時間経過によって少しずつ大きくなっていく一方だったように聖女たちにも、サタニストの幹部『ウォーキング』にも思われていた。
「く・・・っ、やはり隙を突いたとは言え易々と取らせてくれるほど甘くはないか・・・やむを得ん。
大事の前に『秘蔵の闇』は温存しておきたいが・・・・・・聖女2人と引き換えならば許されよう――」
戦況不利と見て取って、切り札の使用を決断した彼は暗い笑みを浮かべて呟くと。
後方から持ってこさせた大きな箱を持ち上げて―――蓋を開く。
そして・・・・・・ヤホーの街の通りは《闇》に飲まれる事になる・・・・・・。
――さて、このとき。
この緊急事態にケンカしか取り柄のない馬鹿エルフのナベ次郎は、一体どこで何やっていたのだろうか?
その答えは、こうして箇々にある。
「いや~、意外と高く売れて良かった良かった♪ です♪
やはり良いものの壺を、美術品屋さんに持って行くと、いい値で売れるものなんですね~♪」
ルンタッ♪ルンタッ♪と、スキップしながら上機嫌に分厚くなったサイフを放り投げてはキャッチしながら高級宿屋ググレへと続いてる道をのんきに帰ってきてる真っ最中だったりする。
と言うのも、この馬鹿エルフ。
珍しく早起きしちゃって、一度目が冷めると眠れなくなるタイプのため暇潰しもかねて軍資金調達のため買い物に出かけることにして、ルナが起きる少し前に宿を出たきり帰ってきてなかったりする。
とりあえずマさんという名で宿屋に宿泊してる訳だから、マさんらしくマさんが好きそうなマイホームに飾る用のインテリアアイテム《いい物の壺》を、ナンデンさんだかマンネンさんだかいう美術商にもっていったら結構いい値で売れて嬉しくなり、色より寄り道してから帰ってきたので予定より帰宅時間が遅れちまって今に至る。
具体的には、「踊り子の服」っぽい装備した褐色の肌のエキゾチックな美女たちとか、少女たちとか、マーニャさん探しとか。
色々と冷やかしては、女の振られているケツを追って、ケツを追いかけ回した後に、美少女と美幼女2人がまってる宿屋の自分の部屋へと帰宅した直後。
なんか色々とヒドいっつーか、キャバクラ通いに明け暮れる朝帰り夫みたいなダメ人間臭満載過ぎるヤツに成り下がっちまっていた訳ですが・・・・・・ダメ夫だからこそ、こういう事にもなる。
「しっかし予想以上に高く売れちゃいましたし、お裾分けも兼ねてアクさんとルナさんも連れて、昨日とは別の店にハシゴでもしに行くとしますかねぇー☆
フッフッフ・・・今夜もオールナイトだぜぇ~・・・行きますぜフジヤマゲイシャ~ッ!―――って、アレ? なんか宿屋の方から騒がしい音が聞こえてくる気が・・・・・・」
『偽りの天使に死を!――《ファイアバード》!!」
『聖女に嘆きあれ!――《アイスハンマー》!!』
『ヒャッハハァッ!! サタニスト共ぉー! 紅に染まる気分はどうだ~ッ!? ヒーハー☆』
『オーッホッホッ! この私の魔法で死ねるなんて光栄に思いなさぁい! この悪魔共!』
『俺、この戦いに勝ったら姉御に罵倒してもらうんだ~~♡♡』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・????」
なんかよく分からないが、訳わかんない事態が勃発してるらしい状況になってるみたいだった。
ヒドすぎる台詞ばかりが抜粋されちまってるが故の解釈だったけど、聞こえてきた台詞だけで判断した場合は本気でまったく訳が分からない状況としか思えんので仕方がないといえば本気で仕方がナッシング。
正直、関わり合いになりたくない性癖の方たち同士がなんか騒いでるっぽいみたいだし、「ピカーン☆」とか「キラキラ~☆」とか変な音が轟きながら、青とか赤とかケバケバしい色の光が点滅しまくってるのが遠目に見て取れるし・・・・・・本気で何やってんだろう?
あの宿屋がある一帯は・・・・・・イカガワシイ祭りで騒いでるようにしか遠目からは本気で思えない。
遠くから見聞きした場合にはの話だったけれども。
「・・・な~んか危なそうな人たちが屯してるっぽいみたいですし、もう少し時間置いてから出直した方が良さそうですねぇ・・・仕方がない。
さっき見つけた踊り子さんの店が、少しお値段高めでしたが、修行場と看板には書いてあると男性客の人も言ってましたから、修行してきましょう。あくまで修行を。
修行だからアクさんの情操教育的に悪くな~い、と―――」
【・・・・・・・・・ナベ次郎よ。聞こえるか? 選ばれし者ナベ次郎よ】
「ハッ!? 何やらどこからか聞こえてくる天の声っぽいエコーかかった音声が急に聞こえた気が・・・・・・誰ですか! 姿を見せて名を・・・名を名乗りなさいッ!!」
そして踵を返した直後に天から聞こえてくる、天の声っぽい何かの存在からの音声を受信して慌てて立ち止まって周囲をキョロキョロ。
裏道を通って帰ってきてたので、彼女の近くには誰もおらず、声が聞こえてきた上を見上げても人っ子一人いやしないピーカン晴れのお天道様がいるばかり。
一体こんな場所と状況と相手に何者が、なんの用があってケンカ馬鹿エルフに話しかけてきたのでしょう? 謎です・・・・・・だからこそ話の続きを聞くしかありません。
【私はチート転生の星からやって来た、チート転生を司る神たちの父。
即ち、《チート転生ゴッドキング》!!
・・・・・・新たなるチート転生者ナベ次郎よ。
か弱き少女たちを救うため、あの敵と戦うには、お前はまだ未熟・・・・・・】
「・・・え? いやあの、助けに行く前提なんですか? って言うか、なにが起きてんですかね? 今のアソコって。それすら私なんも知らない状態なんですが・・・・・・」
【だが、お前は選ばれしチート転生者の一人! チート転生者とは生まれ変わりながらに世界を導く使命をおった選ばれし存在。お前が行かねば異世界の危機は救えぬかもしれぬ。
転生チートと現代知識を持たぬ現地世界人たちになにが出来るというのか!? 常に異世界を救い導いてきたのは、一握りの現代知識持ちチート転生者だけッ!
他の凡人たちが世界を救える可能性があるだろうか!? いや、無いッ!!】
「聞けよ、人の話を。あと、メタなこと言うなや。色んな作品の主人公さんたちの主張全否定になってんじゃねぇですか。
っつか、未熟者がイヤなら最初から他の人選べばいいのに何で私が・・・・・・」
【やむを得まい・・・・・・今回だけは私が力を貸そう。
弱い凡人たち皆で戦えば絶滅あるのみの世界を救済して平和へと導けるのは、特別な力と強さを生まれ持たされた特別なチート転生者だけなのだから―――】
「だから、そういうの言うの辞め――って、うッ!? き、急に頭が割れるように、痛くなって・・・! やめてくだ・・・さい、セフィ・・・・・・ス・・・・・・」
という訳わかんない存在の介入による訳わかんない流れによって、ナベ次郎の意識は闇のそこへと落ちていき、その肉体は闇色の空間に包まれて――再誕する。
この異世界を闇の脅威から救うため、選ばれしチート転生者として本来の力と姿を取り戻すために・・・・・・
そんな中、ナベ次郎が変な存在の変な意思の声を聞かされてた裏道から、距離的には近い位置にある高級宿屋ググレの前に広がる空間では。
「ううぅ・・・力が・・・抜けちゃって・・・立て、ない・・・・・・」
「ぐ、うぅ・・・クソっ! か、身体が・・・動か、ねぇ・・・・・・っ」
ルナとクイーンは姉妹そろって地面に膝をつき、顔色の悪くなった表情で必死に耐え忍ぶのが精一杯の状況へと形勢逆転されてしまっていた。
いや彼女だけではない。副長のフジも、他の部下たち聖堂騎士団たちも軒並み倒れ伏したまま立ち上がることが出来なくなって苦しんでる状態に陥っている。
ウォーキングが持ってきて開かれた箱から飛び出した、ドロドロとする液体状の漆黒のナニカに足を取られたと思った瞬間には、こうなってしまったのだ。
それは近年、遠い異国の地で発見されたという《奈落》と呼ばれるモノの一部。
正体も原因もまったく分かっていない謎の存在だが、いくつかの判明している効果として《天使の加護篤き力》を吸収してしまうことが知られている未知の物質。
クイーンは噂ながらも《奈落》の存在を知ってはいたが、実物を見るのは初めてで、ルナの方は噂としてさえ眉唾だと思って軽視してしまっていた。その結果が今の惨状だった。
予測を遙かに上回る速さで拡大した《奈落》は、解き放たれたと同時に自分たちを飲み込み尽くすほどに広がって、聖堂騎士団も聖女姉妹も丸ごと戦闘不能状態に陥らせてしまっていたのである。
この《奈落》に足を取られていると、急激に力を奪われていき、意識も疲労させられ続けてしまい、戦闘どころではなくなってしまう。
動くことが出来なくなったルナたちに向かって、《奈落》の制御方法を如何な手段によってか把握しているらしいサタニストたちは沈着冷静に弓矢を構え、その狙いを他の一般団員たちは後回しにして二人の聖女だけに集中させる。
「ふっふっふ・・・・・・どうだ? 聖女共。我らが偉大なる指導者がお与えくださった《奈落》の威力は。天使の加護が消えては手も足も出まい。
コレを使ったからには確実に仕留めねばならぬ。皆の者、聖女どもを討ち取――な、なんだとッ!?」
そんな二人に勝ち誇りながらも油断なく、中距離からの集中攻撃で一気に倒させるため号令を下そうとしたウォーキングだったが、それを邪魔するように近くの通りから巨大な黒い球体が現れて、サタニストたちと聖堂騎士団たち敵味方の区別なく視線を集め、やがて消え去り静けさが戻る。
一体何があったのか、と戸惑いを隠しきれないサタニストたちに向かって、なにか変化が起きる前に聖女だけでも確実に抹殺しようとウォーキングが再び命じようとした彼らの頭上に。
『フフフフ・・・・・・つまらない行為をしているのだな。諸君らは』
「!? だ、誰だ! 我らの救国を愚弄するのは許さんぞ! 姿を見せろ卑怯者め!!」
『フフ、救国か・・・ふふふ、ハハハハハ―――』
どこかからか聞こえてくるが姿は見えぬ、謎の笑い声。
無礼な発言者に思い知らせてやるため、周囲の建物をキョロキョロ見回すウォーキングの耳に「ウォーキング様!あれを!」と部下の一人が屋根の上に人影を見つけて報告してくるッ。
「貴様か! 一体何者だ!? さては聖女の仲間であろう!」
『ふふふ・・・フハハハハ―――』
そいつの姿は―――白かった。
全身を白い衣服に身を包み、歳は若そうだが髪の色まで純白色。
距離があるからなのか陰になっているのか、素顔はどうなっているのか見えづらい、その人物は腕を振り上げながらバサッと
「フハハハハハッ!! よくぞ私の居場所を見破った!
だが、この私を捕まえることは人にも神にも、正義の味方にさえ決して出来んッ!!
何故なら私こそ、悪のチート転生怪盗軍団の幹部!
悪を守るため正義と戦う、悪の味方だッ!!!」
――って、お前か~~~~~~ッい!?
ナベ次郎、生まれ変わってから今まで二度目の人生最大の罵倒!
自分を殺して生まれ変わる原因作りやがった、無差別大量殺戮テロリスト怪盗と、よりにもよって転生後のファンタジー異世界でも再会させられるとか、どんな嫌味すぎる運命だよ!?
嫌すぎるわ!! 今回ばかりは馬鹿エルフの気持ちも理解できる! せざるを得ないわ本当に!!
「救国とは国と民を救うこと・・・・・・即ち、それ正義!
手段は知らんが目的が正義のものは、悪にとって全て正義!! 倒すべき存在だッ!!
貴様らが誰かは知らんが、正義の軍団の手下共というなら見過ごすことはできん――身の程知らずにも掛かってくるがいい! この正義めッ!!」
―――なんか言い回しが変!? 単語入れ替えてるだけのはずなのに!!
ナベ次郎、再び絶叫!そして驚愕!
言い方とか正義とか悪の分類って意外と重要なんだねと、悪の言い分で気づかされる変な状況に! これも呪いか!?
その呪いの影響なのか、それとも別人なのかパチモンなのか、2Pカラーか。
前世で殺されるとき見せつけてきた、黒いタキシードに仮面姿から、純白のタキシードに仮面姿というカラーチェンジだけはしてきた、色以外はなんも変化してねぇ変な存在!
その存在から、よく分からない言い分ながらも「お前らは正義」と認められたから倒される存在として戦い挑まれたウォーキングたち悪魔信奉者集団サタニストの反応はと言うと。
「えぇい!訳の分からんことを! 構わぬ、皆の者やれ! やってしまえ!
どうせコヤツも聖女の一派に違いないのだ!!」
『オオオォォォォォォッ!!!』
当然ながら、喧嘩売ってきた相手は「救国テロを邪魔する敵=聖女一派に決まっている」、というシンプルイズな二元論で考えて決めつけて、自分たちを邪魔して国を救うのを邪魔する奴を倒そうと襲いかかってくる当然の展開に!
そして無論、「正義から」この手の反応をされた悪の側の対応と言えばコレになり。
「フッ・・・正義の分際で、悪に挑もうとは学ばぬ者たちだ。
正義は必ず悪に敗れるという現実を認められぬ愚者共よ!
地獄に――否。天国に行って堕落するがよいッ」
そう言って、クイッと。
拳をあげながら、人差し指と中指だけを立ててみせる『例の侵略者ポーズ』をやった瞬間。
ゴォォォォォッ!!!
『ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁッ!?』
まぁ当然ながら、町一つ分を全部一瞬で吹っ飛ばせる戦闘力3000パワーと同じ破壊はできない訳だけども、それでもレベル10にも満たないザコ敵集団が襲ってきたのをカウンターするには十分すぎる威力ぐらいは発揮できる訳でもあり。
「たった一撃でそのザマ・・・・・・ゴミが」
「ば、馬鹿な!? 指を立てただけで地面から火の壁が・・・! 貴様いったい何を!?」
「フフフ・・・さて、自分で考えてみるのだな」
「ヒッ!?」
そして悪らしく悪っぽい攻撃として、次から次へと正義の味方に(注:主観です)連続攻撃放ちまくって反撃する隙を与えてやらない定番パターンを実行していくテロ怪盗の2Pカラー。
直接触れて攻撃してこないところも悪っぽく、ポケットに両手を入れたまま、時折火の粉を払うような素振りでサタニスト達を次々と激減させていく。・・・レベル差ありすぎますからね。
正義とか救国とか名乗ってるのは同じでも、勝てる正義の味方キャラは大抵強いし。弱い正義は負ける。よくある光景です。所属の正義は微妙ですが。
「こ、これほどの力を持つ者など聞いたことが・・・! い、いったいお前は何だ! 何者なのだッ!?」
「フッ・・・か弱き婦女子に敗れそうになれば詭弁でごまかす貴様らに教えたところで理解はできまい?
所詮ザコはザコ、正義は正義だ。聖なる側に属する者たちには、我ら悪の言葉を聞く心など持ち合わせることなど出来はすまい」
「おのれ! コヤツも聖堂騎士団の一員に違いない! 者ども! 怯むなぁッ!!」
うん。・・・訳わかんね。
どっちも相手を『聖なる存在扱い』してる勝負ってなんなんだろうね本当に。
「まったく、やれやれだな・・・・・・。救いようのないゴミ共の相手には些か飽きた。そろそろトドメを刺させてもらうとしよう。
“――漆黒の闇より来たれ、我が僕よ・・・・・・”」
「!? 退けッ! 皆の者、逃げよッ! 総員退却ーッ!!」
『う、ウォーキング様!? なにを・・・ッ』
相手の気配が変わったことを敏感に感じ取ったらしき指揮官ウォーキングだけは、未知の意味不明だが強すぎる新たな敵を前にして退却を決断して実行することが出来、他の者たちは追い詰めて仕留め掛かっていた聖女を倒す寸前までいけた現状に未練があった。
その違いが致命的なまでに生死を分ける。
「怯えろ、竦め、私に戦いを挑んだ者には勝利以外の逃げ場など許さない。
派手に踊り狂って派手に死ねいッ! 竜は生贄を欲しているぞ・・・?
貴様らザコの血という生贄がなッ!! 【ネオブラック・ドラゴン】ッ!!!」
目前に姿を現させた、半透明の黒い竜の姿をしたナニカが―――地面を猛スピードで接近しながら・・・・・・サタニストたちの頭上に覆い被さり、喰らい尽くすッ!!!
『ぎ、ギャァァァァァァァッ!? う、ヴォーギングじゃまだ助け、ふぎゃあああァァァァァあああああaaaaaaaッッ!?!?!?』
そして喰らい尽くした後。・・・消滅してしまった。後には死体一つ残っていない。
「ふふふ・・・ザコ共でも花火としてだけは綺麗に咲くか。
半人前の力なき正義が、私の前に立つとは百万年早い。
生まれ変わりチート転生したら、また会おうッ!! さらばだっ!!」
バサッと。そしてまたいなくなる。前世と同様に悪の怪盗らしく悪の怪盗らしい逃げるときの速さは天下一品の撤退速度で。
その結果、
「あ、動けるようになったみたいですね。もう行っていいんですか? 広場の方に」
【うむ。問題ないぞ、選ばれしチート転生者の少女ナベ次郎よ】
屋根の上から見物したままになっていた、ナベ次郎の行く手を遮るように張られていた光の壁が消えて無くなって、無事に悪の怪盗が暴れていた広場へ侵入可能になった模様。
「でも、コレ必要あったんですかね? どうせ力貸してくれるなら、あの怪盗と私の2人で戦った方が効率いいし、一般市民も守りながら戦いやすかったのでは?」
【君の気持ちは理解できる。だが仕方が無いのだ、仕様なのでな。転生の神が力を貸して出てきた系の能力中には、本人自身は関わってはいけないのが、チート転生の心構え。
神たるもの、ルールを破らせずに守らせるため強制しなければならないのだ。それこそが転生ゴッド】
「そうですか。仕様じゃ仕方ないですね仕様では。・・・・・・チッ、どさくさで復讐するの無理ってことですか・・・チクソウ」
小声で、見た目はロリ巨乳・中身は腹黒エルフがなんか言ってるけど、実行できそうにないからノーカンのナゾ能力が新たに付与されたのか、今回だけ貸してくれたのか、またやりに来るのか分からんオッサン現れつつ。
なんとか、竜の顎門から逃げ延びて、食われずに生き残ることできた唯一のサタニストであるウォーキングさんはどうしてたかと言うと。
「ハァ・・・、ハァ・・・、おのれ“龍”め! 化け物め!
龍の血を引き、魔に抗い、人を従え、地を舐め尽くす者・・・・・・! あれが龍人か!
女と聞いていたが、まさか2人もいるとは・・・まさか奴ら聖光国と密約でも結んでいたのか・・・!?」
――盛大に相手の話聞いてなかった人なんでしょうか?
それとも『貧民を救おうとしてる自分たちの邪魔する者=ぜんぶ権力者のエコヒイキ仲間』とかの分類を、ガチで信じて地で行くタイプだったのか否か。
とにかく彼の解釈と報告内容と、報告聞いた人の解釈次第で余計メンドー過ぎる事態になりそうな状況でッス。
つづく