試作品集   作:ひきがやもとまち

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『悪役令嬢転生おじさん』の二次が、ようやく出来たので投稿してみました。
意外と難しい原作だったため、アイデアだけあって完成が遅れまくり、今さっきようやくです。

内容はいつも通り、人を選ぶと思われますので、癖あるのが苦手な方は避けた方がいいかもしれません。


悪役令嬢転生おじさん×女主人公転生おバカ女子高生(知り合い)

 

 

 私の名は、グレイス・オーヴェルヌ。

 今日から、この王立魔法学園に通う生徒になる、オーヴェルヌ公爵家の令嬢。

 そして――日本のしがない公務員、頓田林憲三郎(52歳)でもある。

 

 ある日、私は馬から落ちて頭を打ったはずみで思い出したのだ。

 この世界は『マジカル学園ラブ&ビースト』という乙女ゲームが現実となった異世界であり、その世界に交通事故によって死んだ私は生まれ変わってしまっていた、という事実にである。

 

 いやまぁ、そこまではまだいいとしてだ。私にとって、この転生について問題となっていることは―――

 

 

 ――なんで、52歳の公務員であるオッサンの私の転生先が、よりにもよって金髪ドリルロールでゴージャスな見た目の態度がキツい、いわゆる『悪役令嬢』だったという事だ!

 

 神様のいたずらにしたって、ミスマッチにも程がある!

 そもそもこの世界は、数多くのイケメンたちとの恋愛を楽しむ乙女ゲームで、私は異世界転生を理解する程度にはオタク知識を持っているとは言え52歳のオッサン公務員に過ぎないのだが!? 現実世界には妻も子もいた身でもあるのだが!?

 

 なぜ、この乙女ゲーム世界に52歳の公務員(妻子マイホームのローン持ち)である私などが転生されてきてしまったのか・・・・・・そこのところを記憶が戻ってからずっと考えているが未だに答えが分からない・・・。

 

 分からないが・・・しかし。今の時点ですべき役目は他にある。

 それこそが『彼女』である。

 

「えっと、前髪は・・・・・・変じゃないよね――よしっ、行きますか!」

 

 希望に満ちた顔で、貴族しか入ることを許されていないという設定の王立学園の前に立って、校門をくぐろうとしている紫色の髪の女の子。

 彼女は、これから三年間を過ごす学び舎へと、大きく一歩足を踏み出して―――

 

 

「へ・・・? ふぁべしッ!?」

 

 

 ズルッ! ズデン!!

 

 

 ・・・・・・盛大に転んで、頭から石畳が敷かれている校門の地面に衝突していくという・・・なんと言うかまぁ、ユーザーに共感されやすいよう《ドジっ子属性》を付与されているキャラのお約束とは言え・・・・・・現実にやらされてる姿を見ると痛そうだったなと、思わず同情がわいてくる登場の仕方をした女の子。

 

 やはり間違いはない。記憶に残っている現実世界で過ごした最期近くの日に娘がやっていたゲームの中でも描かれていた、この乙女ゲームの主人公。

 

 それが彼女、『アンナ・ドール』だ。

 

 生徒のほぼ全員が貴族の学園に、平民の娘として例外を許された只一人の少女。

 つまづきながらも意気揚々と学園の初日を迎え、その直後に立ちはだかってきた大貴族出身の悪役令嬢から――つまり私から手厳しい言葉を浴びせられ、その悔しさをバネに成長していく切っ掛けとなる。・・・・・・そういう設定とストーリーを持っているらしいのが彼女だった。

 

 そのため悪役令嬢として転生してしまった私としては、個人的には気が進まずとも彼女の心を入学初日に砕くようなことを言って奮起させてやらなければならない義務を、今の私が負っている相手ということになる。

 

 無論、善良な一公務員である私としては幼気な少女を言葉責めにするなど本意ではない。そういう趣味もなければ性癖もない。

 だが、しかし。悔しさに涙を流し、奮起して成長する切っ掛けとして屈辱が必要だとするならば・・・、それが悪役令嬢からの厳しい叱責だとするならば・・・っ、そして今の私が悪役令嬢グレイス・オーヴェルヌで、他の者では変わることが出来ない役割だとするならば・・・!

 

 私は敢えて、未来ある少女の成長のため壁となって立ちはだかることを受け入れよう―――それが悪役令嬢の勤め。

 

 

 彼女の成長のため私は―――お蝶婦じPになる!!!

 

 

「そこのあなた、お待ちなさい」

「は、鼻が・・・鼻がぁぁ・・・・・・って、へ? あ、は、はい」

「話は聞いていますわ。あなた、平民の身分でありながら、ここの入試を主席で合格なさったそうですわね」

「えッ!? い、いやあの・・・・・・は、はははい。い、いいい一応、は・・・?」

「・・・?」

 

 どことなく記憶に残っている主人公アンナの反応とは違っているようにも見える対応に首をかしげつつ、まぁゲームと現実とは違うものだし、ゲーム内での会話シーンを本当にやったときにはこんな感じになるのかもしれないと心の中で折り合いをつけつつ。いよいよ私は本題に入ることとなる。

 

「ですが、この学園は本来、貴族の生まれでなければ入れない場所ということは、ご存じなのかしら?」

「は、はい! その部分についてはハッキリきっぱりよーく理解しております!本当に!いやもうホント、嘘偽りなくアンナ・ドール嘘吐かない!」

「・・・・・・?」

 

 このゲームを堂々とリビングでプレイしていた娘から聞かされていた話によれば、これからのシーンで彼女はグレイスから身分の違いについて説教をされ、大好きな家族のことまで侮辱され、悔し涙を流す展開が待っているのだという。

 それが魔法の勉強を頑張って見返してやろうと奮起する理由となる。・・・・・・そういうストーリーと設定になっているらしい。

 

「まぁ、いいでしょう。それを分かっていて、ここにいる。ということは・・・・・・」

 

 繰り返しになるが、本意ではない。本意ではないが――若者たちの成長のため、嫌われ役の鬼にならねばならないことも時にはあるのかもしれない。

 泣かせてしまって、すまない! 少女よ!

 私の冷たい言葉を糧にして、さらに大きく成長するがいい! さぁ、行くぞ! 私からの思いを込めた渾身の冷たい言葉を!! 

 

 

「あなた、さぞかし―――見識のある親御さんに大切に育てられたのでしょうね♪」

 

 

 ニッコリと微笑みを浮かべて頷きながら、立派に子供を育て上げたご両親の教育と、それを無駄にすることなく真っ直ぐ育った娘さんの双方に暖かい感情のこもった瞳と言葉を、心の底から嘘偽りなく本当に――――って、違う!? そうではないだろう私!?

 

 いかん、日本のしがない公務員として過ごしてきた数十年分の人生による蓄積が身体と心に染みついてしまっていて、今の立場が悪役令嬢なのを分かっていながら体と心が言うことを聞いてくれず、つい普段通りの対応をしてしまうことに!?

 こ、これでは彼女の成長が! 主人公アンナ・ドールの物語の始まりを邪魔してしまう事になるのでは!?

 と、とにかく今は彼女の反応を見極めた上で、適切な対応を臨機応変に心を込めてしっかりと―――そう思った次の瞬間。

 

 

 

「・・・え? そ、その反応は・・・・・・まさか! 頓田林さん!?

 あなた、まさか頓田林憲三郎さんじゃないですか!?

 交通安全啓発ポスターでありながら【機械獣士ワイヴァーン】の図柄で、原作ファンの皆さんから「わかってるね☆」とイイネを付けられまくっていた、あの頓田林憲三郎さんなのでは!?」

 

「な、なん・・・・・・ですって・・・ッ!?」

 

 

 

 相手からの思わぬ言葉に、私は嘘偽りなく衝撃を受けさせられる!

 なぜ彼女が、あの時のことを!? 娘や妻だけでなく、まだまだ同士たちは多くいるのだと事実によって示され、現代はまだまだ捨てたものではなく日本の未来は明るいと確信させられた、あの時のイベント結果と周囲からの評価を知っている相手―――いや、そう言えばこの反応には見覚えがあるような気がしなくも・・・・・・ま、まさか、まさか彼女の正体は・・・ッ!?

 

 

「あ、貴女は・・・あなたはまさか、梅田坂、さん・・・?

 梅田坂さんではありませんの・・・・・・?」

 

「はい! そうです!! 梅田坂です!

 梅田坂笹ノ子五郎、女子高生17歳ですッ!!」

 

 

 本名をフルネーム言っちゃったー!?

 異世界で現代日本でも恥ずかしい本名を大声で叫んでしまったぞこの子は!? って言うか言っちゃダメだろう、その名前は本当に!

 いや、娘さんを思って名付けてくれた親御さんたちに失礼な言い分だとは分かっているのだけれども! それでも!

 

 何故この名前で許可してしまったんだ、彼女の出生届を受け取って受理した当時の役所の係員よ・・・!

 将来的に虐められる理由になるのではとか考えなかったのかね本当に!? いや虐められることは無かったのだが!

 元気よく役所に見学に来た中学生の一団から声をかけてきて、オッサン公務員とゲーム談義を始めても温かい目で見守ってくれるだけだった、心優しいクラスメイト達に囲まれてるなと思わされる出会いだった子だけれども! しかし!

 

 『アクマくん』を通さなかった役所もあったはずなのに! それなのに何故!?

 

「よ、よかった・・・・・・こんな場所で頓田林さんに会えるなんて、まさに地獄に仏・・・!

 不思議のダンジョンで松明も薬草もなくなって、HP残り少しで落ちてたリレミトの巻物!

 どうか助けてください頓田林さん! お願いします! 助けてくれたらエロいこと以外なんでもしますからどうか! どうか後生ですからお願いしまずぅぅ~~!

 助けると思って何卒お慈悲をお与えくださいぃぃぃ~~~~~ッ!!」

 

「ちょ、人聞きが悪すぎる言い方は止めてくださらないかしら!? 人が見ているでしょうが! そんなこと言いながら鼻水垂らして縋り付いてくる人を友達だと噂されたら恥ずかしいでしょうが!?

 とにかくこっちへ! コチラヘ来なさい! 早やぁくッ!!」

「う゛ぇぇぇぇーッ! 見捨てないでください頓田林さん! この梅田坂、一生のお願いで御座いますからどうかお助けを! どうか助けてくださーいッ!!」

「だ・か・ら! その言い方はおやめなさいって、何度も言ったことあるでしょうがーッ!?」

 

 

『『『・・・・・・・・・・・・・・・ヒソヒソヒソ・・・・・・・・・』』』 

 

 

 

 

*後日、グレイスとアンナの関係について、周囲に悪い噂が広まっているようである。

 そうなった原因として、主人公アンナに転生してたらしい日本人女子高生『梅田笹ノ子五郎』が抱える悩みとは何だったのか?

 

 

 

「・・・・・・つまり、あなたも頭を打ったはずみで前世の記憶を取り戻したという訳ですね?

 そして、それはアンナ・ドールが王立学園に平民でありながら主席で入試に受かった後のことだったと」

 

「はい・・・そうです・・・・・・そのせいで今の私は・・・私は・・・・・・ッ!!」

 

「―――勉強が出来なさすぎて、入試トップで合格したハイスペック主人公キャラなんて自分には不可能だから、勉強を教えてくださいと。・・・・・・そういうことですの?」

 

「ばい・・・そうです・・・・・・だって私、数学と英語『2』の女子高生なんですよ!? これでも高二で数学と英語が『2』です! このままだと怖くて学校に通えません! 先生に怒られるより、自分の成績がなんか怖い!」

 

「知りませんわよ、そんなもの。ある程度は教えてもいいですけど、最低限ぐらいは自分でやらないと身につきません。しっかりなさい、今時の女の子でしょう? 一応は」

 

「そこを何とか! って言うか、主人公のスペックが高すぎただけなんです!

 なぜか凡人設定のはずがスペック高すぎなのがスタンダートな主人公に転生させられた、真なる凡人の私を哀れんでお慈悲を!

 そ、その代わり私だったら乙女ゲーの知識もありますから、交換条件で教えられますし! 平面顔で優しいイケメンたちと恋愛できるゲームの知識だったら少しぐらいは私にも!

 現実の恋愛に興味ない訳じゃないけど、まず無理なのは自覚してる私にも優しい、ゲーム内イケメンたちとの過ごし方情報だったら、脳内情報も含めてそれなりには!」

 

「・・・・・・その卑屈すぎるのに図々しいところ、いい加減に直した方がいいと思いますわよ? あなた・・・・・・本当に親御さんは、なんでこんな教育を・・・・・・ふぅ・・・」

 

 

 

 

 こうして、乙女ゲームの悪役令嬢グレイス・オーヴェルヌに転生した52歳の頓田林憲三郎は、同じく女主人公アンナ・ドールに転生していた梅田坂笹ノ子五郎との再会によって余計に苦労が増やされた状態で物語がスタートすることになる。

 

 果たして彼女たちが過ごす学園生活の果てに待つのは、栄光の進学・就職か、破滅の退学・停学・留年か・・・・・・

 

 そして、グレイス・オーヴェルヌの髪の毛は、梅田のストレスから守り切ることが出来るのだろうか・・・・・・?

 

 全ての物語は今、はじまる。(かもしれない)

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