試作品集   作:ひきがやもとまち

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賢者の孫(血縁無し)と自称の英雄(本人談)【注:仮題です】第1話

 

 唐突ではあるが。

 この星にある、アールスハイド王国という国で育った記憶を持つ者が、この国には大勢暮らしている。当たり前だが。

 この国では、貴族至上主義が主流の惑星において数代前から民衆優遇の政策を打ち出し、農業や工業の生産性を上げる能力主義による資本主義体制を採用している。

 

 さらに、ほぼ全ての国民に初等学院から中等学院までを義務教育と言っていい教育が施され、識字率も非常に高い。『読み』『書き』『計算』は全国民ができると言っても過言ではないだろう。

 

 それだけ多くの教科書やノートを大量生産できる森林資源に恵まれ、大勢の生徒たちを0から教えれる教師たち人的資源が溢れまくってて、成果が出るまで彼ら全員に報酬を支払える財源を持ちまくっていた、超大金持ち国家だったからこそ可能な偉業であったのは間違いあるまい。

 

 その結果、この国では民衆の中から現れた成功者たちが、『王族』『貴族』『平民』に加わる新たな階級『ブルジョア階級』として誕生。

 繁栄を謳歌しながらも、旧来の者達との間で幾つもの諍いが発生する原因ともなり、一つの【悲劇】を生み出してしまった悲しい歴史を同時に併せ持つ国として、この惑星に生きる人々の間では記憶されている・・・・・・。

 

 そんな星の一部だけにあるアールスハイド王国には、三つの専門高等学院と呼ばれる特別な学校たちがあった。

 

 将来の官僚や商会の幹部を育成する、官僚主義の牙城『高等経済学院』

 卒業したら即座に軍隊に入って幹部になれる、キャリア組育成機関『騎士養成高等学院』

 

 そして、優秀な魔法使いを育成する、一番よくある設定の『高等魔法学院』の三校がそれだ。

 毎年国中から入学志願者が殺到しながら、入学者は100名までと定められている、選ばれた特別な存在たるエリートたちだけが集められた三大スーパーエリート学院。

 

 それほど特別な学校の一つである、アールスハイド魔法学園に―――今、一人の『落ちこぼれ』が入学しようとしていた。

 

 その生徒は筆記試験の結果は主席ではなく、むしろビリから数えた方が遙かに早い程度の点数で、実技試験ではショッボイ魔法を一つ使って魔力切れした真性の落ちこぼれだった。

 これが落ちこぼれじゃなくて何だというのだろう? だが入学したのだ。不思議である。

 

 その奇跡的に有り得ないレベルの珍事が起きてしまった要因とは何だったのか?

 それを知るには、入学試験の日より数日前の町中まで戻らなければならない―――

 

 

 

 

 

 

「へへ、こっちの世界に生まれてから始めて買い物しちゃった。

 しっかし、爺ちゃんと婆ちゃんが昔は、そんなに有名人だったなんて・・・・・・やっぱ実感沸きづらいよなぁー」

 

 シャクリと、片手に持ったリンゴに齧り付きながら独りごちる。

 街路を歩く一人の少年が発言の主だった。

 そこそこ整った顔立ちと身長体格をもった、普通の服装をした普通の少年に見える十代半ばほどの男の子。

 

 シン・ウォルフォード。

 それが彼の名であり、王都で今最も注目されている二人の人物の孫と目されている人物。

 

 そして地球で死んで、この星に生まれ変わった転生者でもある少年だった。

 ついでに言えばチート持ち。

 そんな彼が王都の町中を歩いているのは、高等魔法学院に入学するため森から引っ越してきたからだった。

 

「それに爺ちゃんたちの家ってことで用意されてた屋敷も、使用人の人達の数もスゴかったもんなぁー・・・。俺の魔法も普通のレベルじゃないってディスおじさんから言われちゃったし。

 まっ、いーか。何とかなるだろ、今から気にしても仕方ないし。今は観光でも楽しんどけば」

 

 今はまだ顔を知る者が少ないからこそ気楽そうに言い切る、有名人の孫の彼。

 ――まぁ、正確には養子であり、森で魔物に壊された馬車で泣いてた所を拾われただけの赤の他人過ぎる関係性しかもってない彼と有名人な祖父ではあるのだが。

 そこら辺は、森の中での襲撃現場での出来事だったので目撃者はなく、本人たちが黙ってる限りは他人達には知られることなき家庭の事情。そのため世間一般的には英雄の孫でファイナルアンサーな少年。

 

 

 それが彼、シン・ウォルフォード。

 16歳。独身。童貞。彼女いない歴=年齢だった。

 

 

 もともと地球でサラリーマンをしていた彼は、残業終わって帰る途中に、仕事疲れでボンヤリしながら信号無視して、走ってきた車にはねられて死亡した交通事故者の転生者。

 疲れて意識朦朧としてた中での死亡事故だったため、本人には死んだときの記憶がなく、もしくはイヤすぎる記憶だったから無かったことにして削除されたかして覚えておらず。

 

 どちらにせよ、本人にとっては都合のいい記憶状態で転生することができ、前世の出来事で誰かを恨むことなく、真っ直ぐ捻ることなく、世間も知らず関わりも持たず、今日まで生きてくることが可能になっていた。

 

 ――尚、相手をひき殺してしまった運転手さんは、世間から大変な扱いを受けているかも知れないけど、シンは前世のことを気にしないで生きている少年のため気にしていません。

 相手がボンヤリしてたのが悪くても、殺してしまうと牽いた人が悪く言われるのが現代日本のコレ系問題。

 だがシンは気にしない。殺されたことを恨んでないから、偶然に牽いてしまった人への恨みと一緒に忘れている。

 

 微妙に、凄まじく都合のいい記憶力の持ち主だったかも知れないシン・ウォルフォードは、始めてくる王都の町中で少しずつ少しずつ人気のない方へ人気のない方へと進んでいき――

 

「・・・・・・ヤベェ、迷いそうになってきちまった・・・。

 そろそろ戻った方がいいのかな・・・?」

 

 ぶっちゃけ、気付いたときには迷子になりかけてて困っていた。

 一応、森で一緒に暮らしてきた『賢者』と呼ばれてるらしい爺ちゃんである【マーリン・ウォルフォード】から学んだ魔法の腕と、自分オリジナルの魔法もあるから、いざという時は普通に一度行ったことある屋敷までなら戻れるのだが、その魔法の使用には先日『ディスおじさん』――この国の王である【ディセウム=フォン=アールスハイド】から制限をかけられたばかりなので、出来れば使わずに帰りたかった。

 

 出来ないときは、禁止されてても使う前提だが、一応ギリギリまでは努力はしてみる。

 それがシン・ウォルフォード流の生き様よォッ!!・・・・・・とか思ってたかどうかまでは知らないし分からないが―――とにかく。

 

 そんな彼の耳に、女の子の悲鳴が聞こえてきたのは、その時だった。

 

「イヤ! 止めてくださいッ!」

「アンタ達! いい加減にしなさいよ!」

 

 見ると、視線を向けた先にある街路の墨の壁を背にした、ただでさえ人目に付きにくい区画の中で更に見つかりにくい空間を人為的に作りだされてしまった場所に―――彼女たちがいた。

 

 そして、彼女たちを囲むように武装した男達が所謂『壁ドン』する体勢で語りかけている。

 

「おぉコワ、そんな怒んなよぉ。俺らと一緒に遊ぼうって言ってるだけじゃあん」

「そうそう、俺らと遊ぶと楽しいぜぇ。ついでに気持ちいいかもなぁ」

「ギャハハハッ! 違いねぇ!」

 

 なんとも紋切り型のセリフによるやり取りだったが、それを言う男達の容姿だけは平凡なものではない。

 壁ドンされてる少女達“3人”も、高レベルな見た目を持った美少女達だったが、それを口説いているのか脅していると言うべきなのかな男達の見た目も決して見劣りしないほどに特別な者ばかり。

 

 

 左右に分けた、髪型だけなら爽やかイケメン風のオッサン。

 頭の上だけ髪を残して、左右は刈り込んでる名前知らない髪型の金髪。

 タコ入道みたいな顔芸を連発した、変なイントネーションの喋り方戦士。

 

 

 ・・・・・・物すっごいブサイクたちの集団だったのである。

 この大勢の人たちが暮らしている広い王都の中で、今最もブサイクたちと美少女たちによるルックス格差が発生しているのは今いる地区だったかも知れないが――そんなことはシンの知るところではない。当たり前だけれども。

 

 彼にとって重要なのは、男達のまとう物々しすぎる雰囲気の方だった。

 なんというか、断れたら誘拐して拉致監禁、そのまま陵辱エロゲルートとかに直行させそうな印象ありまくりな連中だったのである。

 

 ただのナンパなら見過ごしてもいいと思っていた。

 どーせフラれるの確実な見た目の連中だし、フラれて意気消沈してスゴスゴ帰って行く姿を見せられたときには、前世の高校時代とかを思い出して涙を浮かべて夜空を見上げ、慰めの一杯でも奢ってやろうかという気持ちになっていたかも知れない程度の問題。

 

 だが流石に、性犯罪は未遂でも見過ごせない。

 被害者になりそうなのが美少女達なら尚のこと見過ごすわけにはいかないのは男の子だから仕方がない。

 

 

「待ていッ! そこの男達よ!!

 それ以上続けるというのなら、この私が相手になろう! 掛かってくるがいいッ!!」

 

 

 そして街路に響き渡る、男達へと向けて放たれた―――美少女3人組の1人からの制止の声。

 

「「「「・・・・・・・・・はい・・・・・・?」」」」

 

 あまりにも予想外すぎる展開に、思わず助けるため声をかけようとしたシンまでもが男達と異口同音に同じ疑問符の言葉を上げてしまったほどのもの。

 よ~く目をこらして、被害者“になると思われた”3人の美少女達の姿を改めて観察し直すと。

 

 一人は、セミロングで茶色の髪をした勝ち気そうな瞳と態度の女の子。

 一人は、スッと鼻筋の通った小さい鼻と、ちょっと大きな垂れ目をした青い髪色の、思わずドキッとさせれてしまった。女の子

 

 そして、発言者は最後の一人の女の子らしかった。

 先の二人と比べて背が低く、物凄く低く、胸も身体も小さくて、黒い髪の毛はとても長い。

 綺麗な見た目の持ち主だったが、何となく偉そうで態度の大きい、子供が意地を張ってるようにも見えて愛らしい見た目にも感じられた少女が―――今。

 

 

「君たちからの勇気ある挑戦・・・・・・このハイド、深く感じ入らされていた・・・感動した!!

 戦いを『遊び』とし、強者との戦いこそが最大の快楽であると、求め欲し止まない、その精神性・・・・・・見事!! 実に見事であると賞賛するしかない!!」

 

 

 ――ものスッゴい美化して、男達の言い分を解釈されて涙ながらに絶賛していた。

 どこをどう聞いたら、そういう解釈が出来るのかはシンにも全く理解できない異次元解釈による絶賛だったが、そんな彼にも一つだけ理解できる点はある。

 

 これ・・・・・・褒められてる側には、全く嬉しくない褒められ方だろうな・・・・・・という部分への理解だけは。

 

「え、え~~と・・・・・・ハッ!? ば、バカにしてんのかガキィッ!!」

「そ、そうだそうだ! 格好付けてんじゃねぇぞガキ!!」

「正義の味方気取りのつもりかぁ!? 俺らハンターは魔物を狩ってテメェらを守ってやってんだぜ? なら俺らの方が正義の味方だろッ!!」

 

 そしてワンテンポ以上遅れて、相手の言い分を(言葉だけ)理解することが出来たらしいIQ低そうな見た目と主張の持ち主な男達が色めき立って、小さな女の子にいつでも躍りかからんばかりに肉薄しようとする。

 

 それを見たシンは、「ヤベ!」と流石に思って、動き出すため腰を落とす。

 あの少女が変な性格の持ち主であることは分かったが、それでも彼女は子供であり、男達は精神年齢や知能はともかく体つきは屈強で武装もしている。

 流石に小さな女の子と、横にいる華奢な女の子たち2人だけで対処するには荷が重い相手のはず―――そう思ったのだ。しかし・・・・・・

 

 

「ほほぅ? つまり君たちは、こう言いたいのだな。

 ――異なる正義がぶつかり合う場所こそ戦場であり、現実の戦いに物語の如き悪役など決して存在することはできず、ただ強さと勝敗だけが戦いの正義を定める天秤。

 最終的な勝利者にさえなれれば、テロリストから始まった革命軍少年戦士達でも、世界に対して戦争を仕掛けたソレスタル戦士達であろうとも、戦場を混乱にもたらし続けた白き大天使の裏切り者軍団であろうとも!!

 勝った者として終われれば、正義の味方なのだと!! それこそが君たちの正義という訳か!? 素晴らしい理論だ!!」

 

 

『『『誰がんなこと言ったんだガキィ!?

   ってゆーか、それだと俺ら悪役じゃねぇか~~~~ッ!!!

   痛い目見ねぇと分かんねぇ様なら死ねコラガキィィィッ!!!!!』』』

 

 

 と、バカでも分かる、馬鹿にされてるとしか思えない解釈によって勝手に自分たちの正義主張が、【力こそ全てと信じる悪役理論】に翻訳されてしまったのを怒ったのか、理解できない理屈は全てバカにされたと思って殴る一択の人達だっただけなのか。

 

 兎にも角にも男達は『ウラァァァァ!!』と怒号を上げながら多勢に無勢で一人の少女相手に躍りかかる!

 ――そして、ついでにドサクサ紛れで少女の横に立って呆然としてた二人の美少女たちにも、『うらぁぁぁぁ♡♡』とか奇声を上げながら多勢に無勢のサルとなって襲いかかり、『キャアアアアッ!?』と恐怖の悲鳴を上げさせる。

 

 たかが女の子達をナンパするのを邪魔された末でのケンカ沙汰に、後遺症が残るほどのケガまでさせる気はないシンは、咄嗟にどちらを助けることを優先すべきか迷ったが、小さい少女の方は意外と機敏で最初の初撃を避けたようだったので、2人を先に助けるため庇いに入る。

 

 殴りかかってきた右拳を避けながら、その腕を掴んで足を引っかけて転がすと、相手は受け身も取らずに首から地面に落ちてゴチン。

 

「いっ!? ちょ、まさか・・・死んでないよな今のって・・・?」

 

 まさか魔物と戦ってるハンターらしい男が、いくら感情的になってるとは言え受け身も取らずに転ばされるとは想像してなかったシンは、思わず人殺しをしてしまったのではと相手のみを案じてやったのだが、武人の心を知らぬ素人の男は恩は仇で返す道だけしか知らなかったようである。

 死んでなかった、丈夫な首の骨をもつ男は激高して剣を抜くと、何の躊躇いもなく斬りかかってきたのでシンは手刀で応戦。

 思ったより頑丈そうな連中のようだったので、多少は大丈夫だろうと手加減はしても遠慮無く応戦してアッサリと無力化。その間、0コンマ3秒かそこらぐらい。

 

 あまった時間で少女の方に助けに入ろうとしたのだが―――その必要は無かった。

 別の人を助ける必要ならあったけれども。

 

 

「ハァァァァァッ! 食らいたまえ!!

 諸君らを勇気ある強敵と認めたからこそ放つ技! コレを受けて敗北して立ち上がり、また再び更なる強さを得る旅へと旅だって行くのだ若者達よ!!

 秘技!! 《天空×字拳ハイドスペシャール》で、月に代わってお仕置きであ―――ッる!!!」

 

 

『『『って、うぇぇぇぇぇぇッ!?

   っちょ、空飛んで落ちてくるのはヒキョ――う、ウワァァァァァァッ!!??』』』

 

 

 

 ズガァァァァァァァァッン!!!!・・・と。

 どうやったかは知らないものの、空高く高~~~くまで舞い上がってから、落下してくる顔の前で両手をクロスさせたポーズで落ちてきた女の子が地面に墜落して、その衝撃で周囲にいた男達は吹っ飛ばされて気絶させられちまったらしい。

 

 物凄い力技だった。って言うか人間業とは思えなかったし、たぶん人間がやっていい技でもない。

 今のを技としてやっていいのは、なんかそーいう世界の住人達だけだろうとしか思えない勝ち方だったけど・・・・・・とりあえず暴漢達は一人残らず倒されたらしい。

 

 もっとも、今はそんなことよりかは。

 

「―――って、きみ大丈夫だったの!? 無事か!? あんな高いところから落ちてきてたけどケガとかしなかったか!?」

 

 慌てて空から落ちてきた少女を心配して、助けるため駆け寄るシン。

 無事か否かというより、普通は死んでる落ち方だったし、コレで無事だったら逆に怖そうな落ち方でもあったわけなんだけど・・・・・・少女は生きていた。そして無事だった。

 

 

「ふぅ・・・出来れば、この技だけは使いたくはなかったのだがな・・・・・・しかし、戦いとは空しきもの。

 戦い終わって勝利した後には、無人のガレキしか残らぬのだから。諸行無常とはこのことか」

 

 とか言いながら、パッパと肩に付いた埃を払いながら平然と土煙の中を出てくる小さな女の子。

 ・・・・・・って言うか、アレで無傷とか、どーいう身体をしてるのだろう? 後ろにある落ちてきた地点のコンクリートは穴開いて凹んでるけど、人間の身体の方はいいんだろうか? 本当に・・・。

 

 

「ハイちゃん! 無事だったのね、よかった・・・」

「まぁハイドのことだから大丈夫だとは思ってたけど、でも良かったわ」

「ハッハッハ、相変わらず諸君らは冗談が上手い。

 英雄たるもの、大気圏から落ちてくる星の屑が如く落下する日が来ようとも、ただ傷つくのみで駆け続けるぐらい出来て当然。それぐらい出来ずして、如何に英雄を名乗れようか!?」

 

『『いや、それはアンタ(貴女)だけだから。普通の人は死ぬのが普通だから』』

 

 

 そして助けた二人と彼女たちは、やはり知り合いだったらしい。

 和気藹々と(内容は別として)会話をはじめ、やがてすぐに茶色の髪の子がコチラを向いて頭を下げてお礼を言ってきてくれて、

 

 

「あの・・・改めてお礼を言うね。危ないところを助けてくれてありがとうございました」

「あ、いや、別に礼をされるほどのことはしてないし。結局、俺が助ける必要なかったみたいだったし・・・」

「そんなことない! ハイドって凄く強いけど中々本気出してくれないから私たち、いっつも危ない目に遭うこと多かったんですから! ね? シシリー。アンタも助けてもらったこと感謝してるんでしょ?」

「・・・え? あ、う、うん。もちろん、すごく嬉しかったです。助かりました・・・その、ありがとう・・・・・・(ポッ♡)」

「まったく、町中で魔法さえ使ってよければ、あんな奴ら簡単にやっつけれたのに」

 

 どうやら親しいだけでなく、昔から付き合いがあるらしい三人の少女達。

 そして最初のセミロングの子が再び気付いたようで、慌てたように話しかけてきて、

 

「あ、ごめんなさい。自己紹介もしないままで。――私はマリア、こっちはシシリーよ。

 そして、あっちが本人の言ってたとおりハイドね」

「あ・・・シシリー・・・・・・です」

「うむ、リッテンハイド・ガイエスブルク=フォン=ローゼンバゥム。略してハイドである。英雄と呼んでくれたまえ」

「ご丁寧にどうも。俺はシンって言うんだ。ところでマリアは魔法を使うみたいだけど、高等魔法学院の生徒なのか? ――あと、その呼び方は謹んで辞退します」

「ううん、まだ違うわね。来月の入試に合格してないから。でも絶対入ってやるって決めてるし自信もあるから、今んとこ“まだ”ってことで」

 

 その答えを聞いてシンは納得して頷く。

 この国では、許可を取ってない者が攻撃魔法を町中で使ったら厳罰に処される法律が決められている。

 

 シンはまだ、その法律があるのは知らなかったが、来月に魔法学院の入学試験を受けようとする受験者が、受験日の前の月に魔法で人を殺傷するのは避けたがるだろうな、というのは日本基準で考えても流石に分かる。

 

 言ってみれば、会社の昇級試験を受ける日の近くに、上司と揉めるのを避けて無難なことしか言わなくなるようなもの。

 波風立てず、普段よりも大人しく過ごして、当日までは見て見ぬ振りして無難に日々を送るのが、社会人の社会生活マナーというものだった。

 

 

「へぇ、マリアたちも来月の入試を受けるんだ」

「・・・・・・そう、こっちのシシリーとハイドも一緒に――って、“も”・・・?」

「うん。俺も受けるからね」

「ウッソ!? あれだけ体術使えるのに魔法使いに―――って、そこまで驚くことでもないのか・・・」

「う、うん・・・まぁ、ハイドちゃんが魔法高等学院を受けるんだし・・・えっと、その・・・」

「ハッハッハ!! 魔法は奥が深いという、頑張りたまえシン君。私は高見にて、いつまででも君を待ち続けると約束しよう!!」

 

 そして、いきなり超上から目線の偉そうな言い分を、無い胸を反らしながら上を見上げるポーズで言われてしまった。実に反応に困る状況ですね。

 とりあえず現状、シンが言える言葉として思いつける内容は一つだけ。

 

「え~~とぉ・・・・・・マリアやシ――こほん。シシリーたちと一緒に、ハイドも魔法高等学院の入学試験を受けるんだな。

 マリアじゃないが、正直驚いたよ。あれだけ身体能力が高いのに魔法使いを目指してるなんて―――参考までに聞くけど、君が学びたいと思ってる魔法ってなに?」

 

 

 シンは、特に考えることなく、その問いを発していた。

 面白そうだったら自分も学んでみようかなと思っていた程度の質問だったのだが・・・・・・

 

 ハイドは、この問いかけに「ニヤリ」とした笑みを返す。

 そして自信満々な態度で、一族の誇りと共に宣言した、その魔法の種類。

 

 それこそが――彼女を、『落ちこぼれ』にして『英雄』でもある、異常な存在にまで昇華させることになる最大の要因。それこそが

 

 

 

 

「私が極めんと欲する魔法・・・・・・それは我が一族の祖が生み出し、幾世代を重ねて成就を目指して止まぬ悲願。《身体強化魔法》を超えた《身体強化魔法》

 それこそ―――《肉体言語魔法》である!!!

 魔法によって強化された拳と拳とで語り合ってこそ、正しき魔法使い同士の生き方であり戦い方というもの! そうは思わぬかね!?

 我が友書いて強敵シン・ウォルフォード君よ!!」

 

 

「いや間違ってるだろ!? 魔法使いとしての生き方を完全に間違った魔法の使い方としか思いようがないだろ、その魔法は!!

 あと、そのルビの振り方もやめい! 俺は出会ったばかりの女の子と殴り合う気も、殴り合いで絆を深める変なコンビになりたい気持ちも微塵もねぇよ!

 って言うかお前、現代日本からの転生者じゃないだろうな!? 転生者だろ! 転生者だって正直に言え!! そーじゃなかったらお前はいったい何者なんだよ~~~~ッ!?」

 

 

後半に続く

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