試作品集   作:ひきがやもとまち

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「魔王様、リトライ」の別魔王バージョン最新話を更新です。
今作になった理由は特になく、他の連載作もけっこう書き進められたので、近日中に更新予定。


自称・魔王様リトライ!RX-78 第8章

 聖光国は現在、3人の国内トップたちを頂とした国家体制で構成されている。

 その3人とは言うまでもなく、聖女姉妹の三女ルナ・エレガント、次女のキラー・クイーン、そして残る一人の長女――ではなく。

 金持ち貴族のトップ大貴族『ドナ・ドナ』と、辺境貴族トップの武闘派『マーシャル・アーツ』そして三聖女トップ長女『エンジェル・ホワイト』の三巨頭のことである。

 

 彼女たちの下に対等な立場で、聖堂教会と聖堂騎士団があり、外敵に対しては一致団結して国を守っていた。――と言うことに表向きなってはいる。

 

 だが言うまでもなく、それらは建前であり、実際には激しい内部対立と醜い権力闘争で満ちつつあるのが、智天使を信奉する聖なる国の中枢。その実態だった。

 

 

「それでは、これより定例会議をはじめます」

 

 そんな聖光国の中心に立つ『聖城』の一室に三大トップが参集し、三聖女の長女ホワイトを議長として重要な会議の開始が宣言される。

 

 ・・・・・・何となくのイメージだが、この言い方で始まった会議って、何も決まらず終わるか、対立だけして終わるのが確定する言葉になってきた印象があるのだが気のせいだろうか?

 『大丈夫だ、問題ない』の会議バージョンの言葉になってるスゴク気がするけど、気のせいだと聖光国の民衆たちのためにも信じてあげたい。

 

「今回の議題は、先日報告のあった『魔王』などと名乗ったというエルフの少女と、その討伐に向かったというルナのことです。その後の進展はどうなりましたか?」

 

 キリッとした態度でホワイトが、側近の地位にある二人の貴族たちに向かって問いかける。

 ピンク色の長い髪と瞳、そして「ボイン♡」と突き出してる豊満なバストを誇る聖なる性女姉妹――もとい聖女姉妹3人の長女だ。

 ルナとは血が繋がってないはずの義理姉妹な少女だったが・・・・・・ビッグサイズに成長してた場合のルナとして見た場合には、末の妹とは決して相容れることが出来なくなりそうな、そんな人物。

 

「いやはや、ルナ様にも聖女としての自覚が出てこられたようで。復活した魔王を討伐しようとは、聖女の鏡と呼ぶべきで御座いましょう」

 

 聖光国一番の大貴族『ドナ・ドナ』が、答えになっているのかいないのか、よく分からん返答を返しながら、ニヤケ笑いを浮かべてお世辞を言う。

 この国の経済を実質的に牛耳っている小太りの男で、金と若い女に目がなく、貴族たちのあしらい方にも天性の才をもった―――商人の方が似合ってんじゃないかコイツ?な男である。

 名前的にも、売りに行く役の方で適切な気がするけど、貴族に生まれてるので貴族トップ。それが彼、ドナ・ドナ。

 

「・・・・・・めでたきこと」

 

 言葉少なに、やっぱ答えになってんのか分からん言葉で応えたのは『マーシャル・アーツ』

 齢60を超えた眼光鋭い老練の武人で、会議室まで鎧甲冑のままで参加している、筋力トレーニングとかプロテインとか好きそうな爺さん騎士貴族だ。

 「自分・・・・・・不器用ですから」とか言い出しそうな見た目と言えば分かる人には分かりそう。そんな異世界ショーワ臭ただよう爺。

 

「まぁ、ご安心を。その小娘がどうしても気になるようでしたら、私の方で如何様にも処断しましょうぞ」

「・・・・・・ドナ、その少女が具体的に何かの被害をもたらしたのかね。如何に亜人といえど、噂だけでルナ様が同行を許した者を処断するのが家臣の道か?」

「フンッ! 既に辺境のビリッツォからは、『願いの祠』やらいう場所でグレオールと密約を交わしている姿を目撃したという報告が来ておるわッ! 

 第一、亜人ごときの分際で、ルナ様の護衛を投げ飛ばしたというではないか! 不敬にも程がある! 身の程を弁えさせてやるのは当然だろう!?」

「・・・・・・その件について後半はともかく前半部分は、私の得た情報と些か異なるな」

 

 静かな口調で返しながら、アーツの相手を見る目つきは鋭い。

 国に対する感情も評価も人としても違いすぎる二人は敵意を隠そうともせず睨み合う。

 

「・・・・・・ビリッツォの領地内で不穏な動きが散見されているそうではないか? それどころか領内の村で、奇妙な新興宗教が起こっているとの噂まである始末。

 もし事実であれば、智天使様を信奉するという点でだけは我ら貴族全員が一致しているべき所を、許しがたき失態よな」

「アーツ! 貴様は貴族のくせに、貴族の言葉を疑うのか!?」

「・・・・・・身分ではなく、信用に値する者の言葉であるかが重要だ。少なくとも私にとって、ビリッツォの言より部下の報告に信がある」

 

 実質的な経済トップを睨みつける、実質的武力トップのアーツ。

 もっとも――彼が信じる部下は、その報告を最後にプツリと消息が途切れてしまい、今では調査に行った村で『第六天魔王♪魔王様ったら魔王様♪』とか歌って踊って食べて過ごす信者に入団しちゃった一人になっているのだが。

 

 それすらも、ドナたちが口封じのため密かに殺したんじゃないかと疑っているアーツ的には、部下の敵ってことで睨む気持ちも分かるのだが。

 

「戯言を! ビリッツォからの報告に、その様なことは一言も記されてはいなかったのだぞ!? それほどの大事が発生しながら見逃す貴族がいるものか!!」

「・・・・・・私が部下から受けた報告もそれだけではない。ビリッツォの領内で発生したという新興宗教の噂は、意図的に流されたデマ情報で、その真の意図は貴様の領地内で起こっている出来事を隠すため、奴に流させるよう命じられている―――という内容だった」

「あ、アーツ! き、貴様、言うに事欠いて私を! この私までもを愚弄するのか貴様ぁっ!?」

 

 更に更にヒートアップしまくっていく聖光国政軍トップ同士による、立場も絡んだ政敵批判。

 そんな中で順調に実行され中らしき、『領内になんの問題も起きてないから大丈夫アピール』のため、都合の悪いことは報告しない領主ビリッツォの保身的情報の取捨選択と、新たな信者にデマ情報流して報告させてるらしき新興カルト変態宗教村の偏向報道合戦。

 

 責任者が『事なかれ主義』で現場の異常を報告せずに、大したこと起きてないって事にしたがってるのを利用して、カルトってのは増えるもんです。

 

 

「たしかに魔王を名乗る亜人のたぶらかされている可能性は心配ですが・・・・・・あの子が珍しく自発的に言い出したことです。今しばらくは、様子を見ようと思います」

 

 

 そんな状況だったが、ホワイトの言葉で方針は決することになる。

 即ち――『今のところハッキリ被害が出たわけじゃないから何もしない』という、ナァナァ事なかれ方針の典型例な結論に。

 

 定例会議の結果って、大体こんなもんである(偏見)

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・さて、そんなグダグダ定例会議で、魔王を名乗るケンカ馬鹿のエルフ少女が議題に上がった聖城は、聖光国の首都として《神都》にある。

 そこは流石に一国の首都であって、最近では国内各地で多発するようになった『サタニストによるテロ攻撃』への備えとして城下町の入り口には検問所が設置され、侵入者チェックが行われるようになっていた。

 

 このため正面入り口前などで行列が出来てしまい、物資流通と人の出入りで一部に混乱が発生してしまったが、それでもまぁ魔王を名乗るケンカ馬鹿パーティーに気づかぬまま入り込まれる恐れだけはなくなった状況にはなっていた。

 

 目立ちまくる面子ばっかだからなぁー。

 

 見た目はいいけど亜人ロリ巨乳のチビエルフと、金髪オッドアイ幼女と、亜人で巨乳の恐怖大王バニー族&聖女の末っ子パーティー。

 

 これだけ濃い連中ばっかで編成されてるパーティーが町に入るの見過ごせる門番は、『きえさり草』無しでは勇者ですら入場できない島国へと研修させるべきだと天は思う。

 そんな状態の警戒態勢を取っていた、聖光国の首都を守る入り口ゲートにて、

 

 

「控えい控えい控えおろう!!  この御方をどなたと心得る! この方の持ち物“だった”大金貨が目に入りませんか!?」

「そうですピョンそうですピョン! 恐れ多くも私たちの仲間が暮らすラビの村の領主にして、未来の先の聖女姉妹長女となられるルナ・エレガント様ですよピョン!? 

 智天使様の寵愛篤き聖女様を前に頭が高いですウサ! 皆の者、控えおろうウサーッ!!」

 

 

『『『は、ははァァァァァ~~~~ッ!!!!』』』

 

 

 もっと目立ちまくりながら、堂々と権力乱用して一国の首都への侵入果たす気満々すぎまくっていやがった!

 コソコソ侵入しようって気が全くない連中だった! 指名手配の人相書き出回ってること気にする犯罪者思考あるとは微塵も思えねぇ潜入仕方! 全国の指名手配犯の皆さんに謝れと、犯罪者擁護の人がいたときには言いたくなるほど堂々と!

 

 こんな風に自分自身と信仰対象の天使を利用されて、一応は聖女姉妹ではある末っ子は怒ったりとかしないものなんだろうか?

 

「ええっ!☆? そんな私が未来の聖女姉妹長女様だなんて♪★♪

 いやだわ、もうそんな―――この国の未来に最高の聖女として君臨する私が通ってあげるんだから、ありがたく思いなさーい!! こそがオ~ッホッホッホ♡♡」

「せ、聖女様・・・・・・チョロ・・・(ボソッと)」

 

 遂には幼女からも小声でツッコまれるほど、煽てられて木に登るサル並の知能指数を披露して国の恥を晒しまくる“現”聖女姉妹最弱の存在たるルナ・エレガント。

 彼女の将来は・・・・・・南無。

 

「それとですが門番さん――ウサ。

 言うまでもないですが、ルナ様は今お忍びで国内漫遊の悪人退治中ですピョン。商家のお嬢様として素性を隠しながら旅をしてる最中ですので、上の偉い人には他言無用ですウサ」

「え・・・? コレでお忍――あ、いえ。承知しました。ルナ様ですからな。

 ルナ、お嬢様はお忍び中だと我々もよく理解しておりますので、我らも気にしませんから、どうぞお気になさらずに」

 

 どうやら普段から暗黙の了解で、そーゆー事にする前提でやってきてたらしい。

 魔王討伐に来てアッサリ負けたときも、似たような言い訳して密かに出てきてたのかもしれない。

 蛇の道は蛇で、類は友を呼ぶとは、よく言ったもの。

 

「さて、何事もなく穏便に快く正規の手順を踏んで、無事にこの国の首都まで入ることに成功したわけですが・・・・・・お腹が空きましたね。

 腹が減っては戦は出来ぬと昔の武人さんも言ってますし、テキトーな店にご飯に食べいきましょう。大丈夫お金はあります、私の奢りです」

「違うわよ!? 私のお金でしょうが! アンタが私から奪ったお小遣い、いい加減に返しなさいよコノコノコノ~~ッ!!!」

「ハッハッハ♪ なんのことでしょうかねぇ~? 金貨に持ち主の名前なんて書いてありましたっけ~?

 その人だけしか使用できない限定品以外すべての道具は、他人の手に渡った時点で入手した他人の物になるのですよ! それが世を統べる世界の絶対法則というもの!

 即ち、《オヤクソクの掟》には、神も魔王も天使も世界すらも逆らうことが出来ないという現実を思い知るがいいのです! この愚民聖女めがッ!!」

「キーッ! キーッ!! この魔王! 罰当たり魔王! いつか天使様の怒りに触れて天罰の雷土を落とされて海の底へ沈んじゃえ! 罪深き背徳のアホ魔王~ッ! キィィ~ッ!!」

「せ、聖女様・・・どうどう。他の人が見ていますから、その・・・・・・目が・・・・・・(////)」

 

 そうして幼女にまで恥に付き合わせながら馬鹿エルフたちが向かった、神都の中にある店で魔王たちが選んだ食事処。そこは――

 

 

 ダンッ!!!

 

 

「ぷっは~~~ッ!!

 やっぱり朝っぱらから働かずに飲むビールっていうのは、美味しいものなんですねぇッ♪ 子供の時から大人がやってるシーンを見るたび、私は一度コレをやってみたかった!」

 

 神都にある酒場の店内でした。

 その酒場にやってきた見た目だけエルフ美少女は、昼間っから酒場に酒飲みにくるダメな大人として、ダメな台詞を大声で叫ぶ駄目エルフになってます。

 

 酒場の店名は『ノマノマ』

 神都のなかで冒険者が一番集まりやすい酒場として有名な店で、新人の頃から高ランクになった後でも通い続ける者が多いことでも知られている馴染み客御用達の店。

 

 また、この店は『性別を超越した第三の性別』として生まれた美少女ウィザードを全力で愛している熱き男性冒険者たち(+少数女子)の会合場所としても一部の趣味をもった人達からは人気を集めていたりもする。

 ときどき薄い本や、グッズ製作販売の打ち合わせなんかも行われているとかいないとか。

 

 

 ・・・・・・要するに、間違っても幼女を連れてきていい店では全くない場所だった。

 治安的にも良俗的にも情操教育の面から見ても、絶対に幼いお子様を同伴して来店しちゃいけない類いの店だったんですが・・・・・・女将の『イエイ』さんが恰幅のいい豪快な人だったのが災いする結果に。

 

 年齢制限の張り紙とか、店の入り口に出してなかったのである。

 結果として、フラフラと適当に知らない町中を歩いてきた馬鹿エルフが、『この店からは何らかの力っぽいナニカを感じます』とか妙なこと言い出して、幼女連れで入店するのを許しちまう羽目になる、と。

 

 

 お酒は二十歳になってから! 酒場は未成年者の入店お断り!!

 ――と出来れば教育的にはいいんだろうけど、十代半ばの凄腕冒険者多くなってく一方の、昨今の異世界ファンタジー事情では無理なんだろうなぁ~。

 

 とか馬鹿エルフが思ってたかどうかは、まったく分からぬ未知の心の問題分野での話として(約:可能性0とは認めていない)

 

「しかし・・・・・・フフフ。冒険者が集う酒場というものは、やはりイイものです。

 私も若い頃を思い出し、この体に流れる強者との飽くなき戦いを求めて彷徨い続けたファイターとしての血が騒ぐというもの・・・・・・クックック」

「ま、魔王様・・・魔王様には、そんな恐ろしい過去があった人だったんですか・・・?」

「フフ・・・昔の話ですよ、アクさん。

 強者を求めて各地を巡り、倒した相手の武具を戦利品として奪い続け、コレクションとして飾っていた若くヤンチャな・・・・・・遠き昔の日々の思い出話って奴。・・・・・・ヒッヒッヒ」

「な、なんて恐ろしく、おぞましい行為を・・・! やっぱりアンタは許されざる悪徳の魔王だったのね! 智天使様は決してアンタの悪行を許さないわよ! 改心しなかったら許してもらえる可能性0以下なんだから!

 だから早く改心して忠誠を誓って、私にお小遣いを返しなさいッ!!」

 

 格好よさげに聞こえなくもない一人語りを聞かされて、純粋無垢なアクちゃんとオマケ1人が信じ込んだのかなんなのか。

 とにかく本気で驚いて、自分たちが知っている相手とは全く異なる、長命種たる亜人の一種『エルフ族』だからこその若い時代エピソードに戦慄を交えた表情で激しく反応してくれていた――のだけれども。

 

 

 ・・・・・・ゲーセン巡りしてた話なんじゃねぇかな?

 しかも趣味と性格と世代的に鑑みて、パンツとかブラジャーとか倒した敵のコスチュームとかを奪って集めて強くなってく系のアクションゲームある店だけ巡るタイプの。

 

 昔と違って異世界現代のゲーセンは、コイン片手に巡る必要なくなって、自分用のカードが造れてデータ保存して別店舗でも使えるようになって久しいし。

 一時期そーいう系統のゲームが、色んなゲームセンターに置いてあった時期が異世界チキューの国家ニッポンにはあった事あるんだけど、今ではどーなっているんだろう?

 お金払って接客してくれる、お店で働くオネーサン相手の課金ゲームに走って家庭用一択になって久しい前世だったからねぇ。

 

 尚、女神様たちから接待してもらえるのは、神ゲーである。

 キャバゲーではない。絶対にだ。それが馬鹿エルフの信念である(ただし前世)

 

「クックックック・・・・・・はーっははははははッッ!! 血だァ・・・・・・血が騒ぐぜェェ・・・ッ!

 この魂の内側にまで雪崩れ込む闇の血が、この小さな肉体すべてを飲み込む日も近いィィッ!!!」

「なぁッ!? こ、これが魔王の本性だったのね! ついに本性を現したのね邪悪なる魔王!

 そして世界を混沌に陥れる気なんでしょう!? 世界を破滅に導くために! この魔王! 破滅の混沌大魔王~~~~ッ!!!」

「ひーッヒャッハッハぁッ!! この私に流れる闇の運命が、世界をカオスへと誘う! 歴史は常にカオスが蠢き、カオスをもたらす! 私こそがカオスの王――闇を統べるダークナイト・エンペラーとは私の事よ!! フォッフォッフォッ!!!」

 

 酒の勢いでデカいこと言い出して騒ぎだす、ダメ大人の見本そのものな駄目エルフ。

 こーいう大人にだけはなっちゃいけない、なりたくない。前世年齢青年だったけれども、なっちゃいけない駄目な人。

 

 尚の余談として、前世では未成年でも今の肉体は長命種族のエルフだから、異世界だから、アルコール飲酒してもNO違法。自分の年齢が未成年だという証拠はどこにもなし。だから合・法(注:よい子は絶対しちゃいけない犯罪者の思考)

 

 そんな馬鹿がバカやっていた時のことだった。

 

 

「・・・へぇ。なかなかいい闇をもっているじゃない。やはり、デスティニーの予感には従っておくものね。

 こんな場所で、この右目を疼かせるほどの混沌を感じさせる者と邂逅を果たすことになるのだから――」

 

 

 そう声をかけながら――『ブルンッ♪』と。

 揺れる胸の、バストがあった。

 

 

「ほぅ・・・? この異界、もはや民草に邪心はなく、為政もまた暗黒を捨てた、そんな最果ての地かと思っていましたが・・・・・・まさかこんなにも新しく瑞々しい闇のカオスを生み出していようとは・・・・・・」

 

 

 その声に、そんな言葉を返しながら振り返り―――『ぶるるんっ♪♪』と。

 無自覚に合法ロリバストを揺らすバカがいて。

 

 

 そして、

 

 

「――1999の年、空から恐怖の大王がアンゴルモアの大王を復活させるために降ってくるだろう・・・・・・。

 その前後、マルスは幸福の名のもとに世を支配する――」

「え? え? なに!? なんなの、その世界を破滅させちゃうみたいな内容の不吉そうな予言は!? イヤ~ッ!! 世界が! 世界が滅ぼされちゃうわ! 恐怖の魔王に世界が滅ぼされちゃう前に魔王を倒して私のお小遣いを取り戻さないと世界が~~~ッ!!」

「せ、聖女様・・・どうどう。本当にその・・・どうどう、です」

 

 

 異世界バニー族な恐怖大王が、自分のこと語ってたことになってた予言っぽく聞こえなくもない怪文書を異世界でおどろおどろしく語って、異世界聖女を大いに困らせ慌てさせ、異世界凡人の幼女だけ冷静そうに落ち着くようにと注意される。

 

 なんか時代と時空を少し前ぐらいに、どっかの世界にある島国でも似たようなノリと理由で、トイレットペーパー買いまくって品切れ続出してたことありましたね。

 世界は変わっても、世の中は馬鹿ばっかりなのは変わらないようで。

 

 

「・・・・・・こんな所まで連れて来て、お前はなにを言っているんだ、ミンク。

 あと、“ソレ”は一体なんなのだ? ――お前の故郷の同胞、とかではないだろうな? 本当に」

「あ、オルガン」

 

 そして新たに、呆れた表情と口調と声を隠そうともせず隠す気もなく、隠す必要性に至っては0以下の全く以て正しいツッコミを入れに来てくれた三人目が締めで登場してくる、露出過多な格好をしたチビっこい少女。

 どうやら知り合いらしいが、なかなかに個性的でインパクトのある二人組のコンビだった。

 

 二人の内、最初に声をかけてきた方は―――聖なる力に満ちあふれた青き衣をまとい、漆黒のフリル付きスカートを靡かせながら酒場へと降り立つべし。

 失われた右目を隠すように包帯を巻き、蒼バラの飾りが付いた黒き帽子をかぶり。

 

 高位の僧侶として回復魔法で人々の負った傷を癒やし。

 はち切れんばかりに『ボイン♪』と突き出た巨乳で、男心の飢えを癒やす、スタープレイヤーと称されるトップレベルの冒険者の一人。

 

 彼女の名は、『ミンク』

 美しい青髪と大きな胸を誇る、厨二病のプリースト。

 

 

 

 もう一人の少女は踊り子のような服装をした、もしくは悪の組織の女幹部っぽい格好の、負けた後にお仕置きされる悪玉軍団のお色気ボスっぽい黒い肌色の女の子。

 一応は上から全身を覆う黒いローブをまとっているから、あまり下にある服装とか肌色とかは見られていないが―――隠したい物は別にあり、露出狂っぽい服着て町中をうろついてることは彼女にとって見られて困ることではないという、ある種スゴイ少女。

 

 と言うのも、彼女の種族は『魔人』

 人と魔族との間に生まれた混血児だからだ。

 

 当然のことながら、かつて魔王を封印したという智天使を信奉する宗教トップが最高権力者になってる聖光国内で、『魔』の存在も『魔の血を引く者』も生存することを認めておらず、他の国でさえ討伐対象に指定されることが多いのだ。

 

 そんな扱いされる素性がバレそうな特定の部位を見られるリスクと比べたら、布切れを体に巻き付けてるだけみたいな服を見られた方がなんぼかマシ――そんな風に思っている、のかもしれないぐらい過酷な生まれの少女。

 

 それが彼女、『オルガン』という名のウィザード。

 ミンクと同じく、スタープレイヤー冒険者の一人。

 

 

「フフフ・・・・・・私が言った通りになったでしょう? オルガン。

 この右目の疼きに導かれ、『アルテミス』で食べてる途中で店を変えたことで、人相書きに描かれていた【異世界の魔王に取り憑かれた亜人の娘】と奇跡の出会いを得ることになったのよ・・・・・・これぞまさにディスティニー! 闇のディスティニーが私を喚んだのよ!」

「おかげで私は、食べ途中のサラダを半分残したまま店を連れ出される羽目になったがな。

 大体お前は僧侶だろうが。なんで“闇”だの“混沌”に僧侶が導かれるんだ?

 ――あと、そこの連中は一体何なのだ本当に・・・・・・人相書きで見たときに受けた印象とは全く違っているのだが・・・・・・あと、そのバニー族はいったい・・・」

 

「うっフッフ・・・“雷霆が白昼に落ち、抗議せし雷霆によりて凶事が予言されん”・・・・・・」

 

「キャーッ!? また予言が! 不吉な予言が! 早く魔王を倒さないと世界が滅びる予言が~~ッ!!」

「あとその・・・・・・なんだ。たぶんだが、聖女も」

「え~~~とぉ・・・・・・すいません」

 

 

 そんな人達と偶然にも(?)出会ってしまったせいで余計に混沌とした酒場になってしまった、昼からでも酒飲める店ノマノマ。

 ただ町来たばっかで腹減ったから食べに来ただけだったはずなのだが・・・・・・ケンカ馬鹿エルフの近くにいるとバカ騒ぎに巻き込まれる宿命にでも呪われてしまうデスティニー。

 

 挙げ句の果てに、

 

 

「あ~、そう言えば、オルガン。来る前に、このこの子の話と一緒に聞かされたアレの方はどう思う? ヤホーの町に【龍人】が現れて町を救ったっていう噂話」

「アレか・・・もし本当にいるなら獣人国あたりが放っておかないとは思うが、世に100%は存在しないからな」

「でも夢がある話よね。悪を憎んで、町を助ける龍人の存在なんて」

「ふん・・・下らん。なぜ龍との混血であれば尊ばれ、魔との混血は否定され弾劾されねばならんのか。忌ま忌ましさしか抱きようがない存在だ」

 

「まったくですね。龍と人で混血だと、強くて尊ばれるなんてバカげてますよ。まして人と混血すると純血よりも強いとかチョームカつきますわ」

「・・・・・・ほう? 貴様もそう思うか。確かにお前もエルフの血が混じった混血児のようだ。その見た目が理由で、よい気になれなかった経験があることだろう。違うか?」

「ええ、その通りです。龍と混ざった強い人なんて大嫌いです。

 やはり、己が願いを叶えるため世界最強の殺し屋パワーを求めて、世界の脅威になってこそ至高というもの」

「願いを叶えるため力を求める・・・か。分かる話だ。貴様とは確かに理解できる部分が多い。フッ――私には珍しい話だがな」

 

 

 なんか結果的に仲良くなったみたいで、夜になるまで飲み食いし続ける展開になっちまっていたらしい。

 オルガンには自分の身に流れる血が原因で、とある願いを叶えるため強大な力を強く求める理由あった上で冒険者をしている事情があったりする。

 

 だから相手も、人との混血児ハーフエルフなので(注:という設定)似たような事情なり背景があった上で、亜人差別が強めの聖光国に来ていたのだろう―――と勝手に自分の事情と重ね合わせて分かった気分になっていたのが理由だったみたい。

 

 

 尚、彼女が賛成した馬鹿エルフが至高と信じる軍団は、『身長を3センチ伸ばしたい』という願いを叶えるため世界中で脅威になって、世界最強殺し屋雇ってた連中だったりするのだが。

 ・・・・・・改めて考えると逆にスゴイので合ってるかもしれないのが微妙だった。

 

 唯一つの願望器を手にするため、敵を殺し尽くして願いを叶えたがってる魔術師たちもビックリである。

 

 今日出会ったばかりの他人と意気投合して、酒場で夜まで楽しく乾杯し合って飲み食いしまくるダメな大人たちの溜まり場らしい溜まり場として、すっかりお子様ルナが

 

「きゅ、キュ~~・・・・・・(-_-;)」

 

 となってテーブルの上にバタンキューしちゃった後の頃。

 トロン、とした目付きになってきてたミンクが、血を満たしたような赤い液体の注がれたグラスを掲げあげ(ワインです)

 

 

「ふふふ。貴女たちと出会えた今日は、いい夜だわ。ええ、本当にいい夜・・・。

 この出会いを永久の絆とするためにも、血の盟約を誓い合いましょう。

 私には視える・・・視えるのよ・・・・・・。

 貴女という少女によって、更なる混沌へと導かれていく世界の姿が―――」

 

 

 そこまで言ったときだった。

 

 

 

 

 ドッカ~~~~~~~~~~ッン!!!!!

 

 

「た、たた大変だあッ!!

 結界で守られてるはずの神都に、サタニストが襲撃をかけてきたぞぉぉぉぉぉぉッ!?」

 

 

 その叫びを皮切りに、町のあちこちから轟いてくる阿鼻叫喚の叫び声と、絹を裂くような悲鳴、たまぎる断末魔と絶叫、破壊と殺戮とをもたらす炎の赤、赤、赤。

 

 一瞬にして、平和だった神都の夜は崩れ去り、混沌に満ちたブラッディナイトへと変貌してしまった中。

 

 

 

 

『『『『・・・・・・・・・・・・』』』』

 

 

「「違うよ!?(わよ!?)

  混沌は好きだけど、それでも私たちはやってない!!(からね!!)」」

 

 

 

 

 3人の少女と1人の幼女に、何か言いたそうな視線で見つめられた2人の闇好きが、酒場ノマノマの中心辺りで無実の叫びを上げていた。

 

 お巡りさん、この人達です。変態なので逮捕しておきましょう。

 

 

 

 

つづく

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