とりあえず、【賢者の孫】二次創作ができたので投稿です。
結果として長くなりすぎたので、2話同時に更新となりました。最新話から見られた方は、1話前に戻って先に読まれるのをお勧めします。
改めて言うまでもないことではあるが。
英雄マーリン・ウォルフォードの孫として拾われた少年シン・ウォルフォードは、常識を尊ぶ模範的な青少年であることは周知の事実である。
地球で命を落とし、異世界に生まれ変わった彼は森の中で賢者に拾われ、15歳まで森の中だけで成長し、10歳の頃から魔物たちを狩って生活してきた末に、最近になって王都へと初めてやってきた青少年が彼だからだ。
そのような生粋の野生児として生まれ育ちながら、彼ほど常識と倫理をわきまえている同じ立場の少年たちなどほとんどいない中で大したものとしか言い様がなかったろう。
シンは町中を腰蓑一丁だけで歩き回ることはなく、四足歩行で急速接近して女の足を掴んで宙吊りすることもせず、エロ本と下ネタに興味津々な世界最強格闘家のジャングル王者になることすら一度も無かった。
これほどに倫理観と常識にあふれた、野生の森育ちでツタを掴んで「アーアア~」とか叫びながら幼年時代を送ってきてた、都会に出てきたばっかの田舎者野生児少年は彼しかいない。
・・・・・・だが残念なことに、世間というものは常に異端者を排除しようとする悪癖を持たずにはいられぬもの。
自分たちと同じに合わせられないものは、矯正する以外の対処を知ることが出来ないのが、人類社会が悪習の一つ。それは世界の異なる異世界であろうと変わることはないのかもしれない。
そんな人類社会の業という非情さを体現したような人物が、ここに一人いる。
名を『メリダ=ボーウェン』
他人を枠に嵌めたがり、倫理の檻に閉じ込めなければ社会秩序は維持できないと信奉する、社会の歯車の一つに成り下がってしまった過去の英雄のなれの果て――
「それじゃあ、行ってきます」
「ああ、がんばっての」
「・・・いいかい。くどいようだが、最後にもう一回だけ言っておくけれど――」
自らに与えられた屋敷の玄関前に立ち、今日から本格的に授業が始まる高等魔法学院へと登校するため、護衛を申し出た対象のシシリーと友達2人と共に保護者である賢者たちに見送られながら。
自らが実の孫のように思い育ててきた愛情そのものに、一切の嘘偽り欺瞞は存在しなかったメリダ=ボーウェンは、だが。
彼女が社会規範に汚染され尽くした社会の奴隷であるが故に、言わざるを得なくなってしまっている一言を敢えて、口にせずにはいられなかった。
「くれぐれも―――自重するんだよ?」
と、瞳にかけた眼鏡を光らせ、鋭い視線でシンを真っ直ぐに見つめながらハッキリと。
・・・それこそが人類社会が生み出した悪弊の中で生まれ育ち、生き続けてきた彼女がもたざるを得なかった業の深さとして。
「“自重せよ”・・・・・・か。良い言葉だ。
つまりは、“遠慮無く盛大にやってしまえ”という意味に意訳せよという言葉であるな。
その言葉を言われた者が、暴走しなかったことなど一度も無き、曖昧模糊としてアウト判定が微妙な良き言葉というものよ」
「え? そーいう意味だったの婆ちゃん。だったら好きにやっちゃうけど」
「違うわよ!? どういう耳で聞いてんだいアンタラは! 自重だよ自重! 自主的な自重を求めるって意味での言語表現! それをアンタら一体なんなんだーい!?」
具体性が乏しく、ハッキリと明言してしまえば問題がありそうな言葉は敢えてボカして、どーとでも解釈できる言い回しで伝えることで、実質やってOK許可を与えてしまう。
それでいて、何かあったときには自分の責任追求からは逃れられる官僚的答弁テクニックを駆使して孫のように思っている少年にGOサインを出してくれるメリダ女史。
やはり彼女も人類社会が生み出した悪しき弊害のひとつ、官僚主義社会に生まれ育って染まりきった人間として、こーいう言い方しかできない人みたいですね。
それでも許可してくれたみたいなのでバンバンやりましょう。やりまくりましょう。
賢者の祖母から免罪符と許可を、曖昧な言い方で与えられちまったチート転生少年は意気揚々と魔法学院へと向かっていくのであったとさ。
曖昧な言い方は、人類社会が生んだ文化である。――かもしれない。
今日は魔法学院に入学してから初めての本格的な授業が始まる一日目であった。
昨日イロイロあった末に結果として、この異世界基準では国宝級の防御レベルを付与された学生服を、訪ねてきた全員(-2名だけ除外)の制服に付与して、空間と空間を繋げ合うオリジナル魔法の存在も明かして一夜明けた翌日だった。
魔法学院が生徒たちに支給している制服は、それなり以上に高性能な防御系の魔法効果が付与されている優れものではあったのだ。
だがシンは敢えて違反を承知で改造し、『スゲー!格好いい!超カッコYEEEE!!』とか騒ぐ周囲に『これぐらい普通だってハッハッハ☆(キラーン☆)』とか返す展開が好きすぎて自覚したくないぐらい求めるタイプの超典型少年。
当然のようにやりたがり、許可されくれれば仲間たち全員にもやりたがる。
これまでは『壁』をイメージしていた制服の防御を、魔法の無効化へと変更。
つまりは、ガンダリウム合金からフェイズシフト装甲への時代進化を促すことに成功した。
それによってシンを始めとするSクラス生徒たちの愉快なメンバー何人かは、赤服をまとった遺伝子調整人類のエース部隊か、薬物改造兵器人間のエース部隊並の装備をもった状態で、入学初日のはじまり1話目みたいなスタートを切ることになってる訳であった。
「さて――ざっと一回りして分かったと思うが、学院の校舎は大きく分けて二つあるんだ。
一つは授業で使う校舎で、もう一つは職員室や生徒会室なんかがある校舎で、それに実験室や研究会なんかもこっちにある」
最初っから国宝級の装備をまとって、「ひのきの棒」や「旅人の服」はレベル1から排除して強くてニュー入学授業一日目をしにきたシンたちには、最初にチュートリアルの施設説明が担任の先生から教えてもらっている最中になっていた。
この世界の魔法学院は、教える授業内容こそ違っているが、学校機関そのものはシンが前世で過ごした高校や中学とそれほど変わらず、世界一の魔女や魔法使いが学ぶお城学園みたいな西洋風の作りじゃなかったため、東洋育ちで死地も東洋だった彼にとっても受け入れやすい。
・・・ただ、『研究会』というものについてだけはピンと来なかったので、少しだけ首をかしげる。
たぶん名前からして部活みたいなものか?と思いはしたのだが――如何せん、思い当たる候補が多すぎる表現なので、ちょっとよく分からない。
「研究会」と名のつく、制度とか組織とか有志の集いとか多すぎる国の記憶もったままだと、こーいうときだけは流石に不便。
「今更言うまでもないとは思うが、一応説明しておくと研究会というのは、同じ目的を持った生徒たちが5名以上集まり、顧問を引き受けてくれる教師がいることで発足が許可される学内組織だ。
たとえば、『攻撃魔法研究会』魔道具を製作する『生活向上研究会』
他にも、身体強化魔法を極める『肉体言語研究会』などがある」
先生から改めて説明してもらって、なるほどと内心で納得させられるシン。
どうやら部活というより読んで字のごとく、『同好会』とか『愛好会』みたいな扱いに近いのが、この国の学校における「研究会」という学内組織であるようだった。
聞いた限りでは、正式な部活動みたいな存在はないらしいから、互いの特徴を掛け合わせたような制度として確立したものだと推測される。
日本の学校の部活動より、如何にも魔法学院らしい活動内容のものが多いのは多分そこら辺が理由なんだろう。部室が無限にあるわけでない以上は、許可を取りやすいものが増えやすくて残りやすいのは当然。
そーいうところは発足時の同好会と、残り続ける部活動とでバランスが釣り合っている。
・・・・・・まぁ、最後の一つだけ「魔法学院の部活動」としてどーなんだろう?と思わなくもない研究会が混じっていたのが気にはなったが・・・・・・。
「ちなみに今年度の我がクラスには、肉体言語研究会を発足した初代会長の縁者がいる。
ローゼンバウムだ」
「うむ! 我が一族の祖にして、魔術師の王道を歩みし魔術の戦士! その教えを貫くことこそ我らハイド一族の生き様よぉーッ!!!」
「ってやっぱりお前の一族か! そーだろうとは思っていたけどやっぱりか!!」
如何にもハイドの家系らしいご先祖様によって始まってたらしい、肉体能力を魔法で強化して戦う魔法を研究する研究会。それが肉体言語魔法研究会だったようである。
名前まで如何にもっぽすぎてビックリすぎるほどハイドな研究会だった。
「・・・もう今更お前に、転生者がどうのとか言う気失せてきたけどさぁ・・・・・・もう少しぐらい魔法使いらしい戦い方とか、しようって気はなかったのか? お前の一族って・・・」
「ハッハッハ。相変わらず面白きことを言う男よなウォルフォードくんは。流石は英雄の孫息子というべきであろう。
あるいは―――英雄の別れた妻との間に実は生まれていた孫だったのでは!?とでも呼ぶべきか」
「やめろ!? 婆ちゃんに俺と爺ちゃんが殺されるだけだからマジでやめろよ本当に! 本当にだぞ!? ネタじゃないからなマジで本当にガチでッ!!」
思わず真顔で念押ししたくなる反応返されて焦るシン。想像するだけでも、静かに怒り狂って黒い炎を背後に燃え上がらせてるメリダ婆ちゃんの顔が思い浮かんでマジ怖かったのだ。
何よりハイドの場合は本気で言いそうだから怖い。マジで怖い。変な知識あるから余計に怖い理由がプラスされているほどに。
「押すなよ?絶対に押すなよ? ネタじゃないから本気だから押すんじゃないぞ!?」とか強く強くやるなと頼まれたことは、「本当はやって欲しいという意味だ」と解釈されてそうで本気で怖い。怖すぎるガチョウが大好きそうなクラスメイトの性癖マジ怖い。
もっとも、そーいう奴だからこそ分かることが分かり、思いつくことができることも偶にはあるにはあるらしく。
「魔法使いという存在は、変化する時代の中で世界と共に変わり続けていく者達の名称・・・・・・その存在自体が世界の神秘といってよいほどに、姿形、正しき在り方は変化しながら今日まで存続することを可能にした奇跡の紡ぎ手たち」
「そんな現代を生きる魔法使いにとっての魔法とは―――空を超高速で飛び回りながら剣を振るって敵の大群を切り裂き、巨大な鎌を杖代わりに砲撃まで可能とし、魔力をまとった拳を打ち合い、過去の偉大な英霊たちを召喚しまくりサンタクロースの格好をさせ、鎧をまとって銃を撃ち、極東の島国まで海を泳ぎ、身の丈を超える長刀を振り回す!
・・・・・・それこそが現代における魔術師・魔法使い・魔法の少女たちの正しき戦い方と生き方というもの・・・・・・だからこそッ!!」
「私はここに断言しよう!!
この世界の魔法とは、私が――――私たちこそが、魔法だッ!!!・・・と」
「悪いハイド。今回のだけは完全に、まったく意味が分からない」
素直にジト目になって片手を上げながら、一応は真面目にツッコミだけはしてあげるだけ女の子に優しいシンではあった。
そうした上で――魔法は自由だ、じゃなかったんだ――とは敢えて言わない。
思っていても相手が言わなかったことはノーカンで済ませる柔軟性にあふれる現代人らしい魔法使い少年が彼シン・ウォルフォードであったとさ。
ついでに言えば近い将来、自分が「魔法使いとしての生き方を間違えている」と心の中で評した戦い方を、自分自身が貫き通して敵と斬り合う日々を送ることになるのだが・・・・・・現在を生きる彼は、そんな未来の自分をまだ知らない。
知らないので他人事として、ジト目でツッコめます。自分事になった後には言えないことでも、やる前の他人事の時なら言える。
人は今を生きるものです。
そんな昔のことは、忘れる生き物。それが―――人間。チト最低ではありますけれども。
「ん~、じゃあハイドちゃんはご先祖様が創ったって言う肉体言語研究会に入りそうだとして。
シンくんは、なにか入りたい研究会とかある?」
「え? あ、ああ、いや俺は特になにも・・・・・・」
ハイドとの馬鹿話をしてる途中でいきなり横から話を振ってこられて少しだけ驚かされながら、シンは普通に返事をする。
相手の少女は、小さな女の子だった。
といっても子供ではなく、自分と同じ同級生で15歳ではあるのだが、見た目的には小さな女の子サイズだったのは事実ではあり。
たしか、『アリス=コーナー』というのが彼女の名前だったと、シンは昨日の記憶を思い出していた。
背丈も見た目も子供っぽいが、性格にも子供っぽいところが多いようで、今朝も遅刻寸前に通学してきて、「今日からの授業が楽しみすぎて眠れなかった」と笑っている姿をマリアからツッコまれていた女生徒。
「まぁ、そうだろうな。賢者様方から直接魔法を教えられてきたお前にとっては、学生レベルの研究会程度でやることなど所詮はお遊び。物足りないのは当然か」
「いや、そういう意味で言ったわけじゃ――って言うか、嫌みったらしい解釈するんじゃねぇよオーグ。わざとか」
「フッ――ならいっそのこと、新たな研究会を自分で立ち上げてみるというのはどうだ?
賢者様の孫であるシンが、どのような研究会を創って、どのような活動をするのか・・・俺たちだけでなく、この国の民すべての者達が興味あるところではないでしょうか。
それはまさに、『英雄の孫研究会』と言っても過言ではないほどにッ!!」
「過言だろ!? 過言過ぎるだろ! 嫌がらせにも程があるわ! 明らかに活動内容に趣旨、別物になってんだろーが!?」
「・・・確かに! 賢者様から教えを受けた孫のウォルフォード君が新たに創る研究会の活動――興味深いッ!!」
「って、ええぇぇっ!? 賛成するのかよ!? しちゃうのかよ! 今の説明で本当に!?」
明らかにノリと勢いとムードで賛成してるだけとしか思いようがない反応で、すぐさま賛成票を投じてきた一番手。
彼女の名前は確か、『リン=ヒューズ』
眼鏡をかけて、表情の変化が少しだけ乏しい真面目そうな文系少女っぽい見た目の人に見えたのだが・・・・・・どうやら中身の性格は結構違うタイプだったらしい。なんかノリがいい。
シンは今のところ知らない話だったが、リンは宮廷魔術師の娘で、魔法研究と魔術の腕を高めることには人一倍熱心で興味津々という趣味趣向の持ち主だった。
自宅には家業故に、魔法の修行専用の部屋が設えられているおかげで、周囲を気にせず魔法の修行がいつでも出来て、死にさえしなければ制御に失敗しても致命的な被害がでる恐れは低いため遠慮なくやれてしまう、そんな少女。
まさに、『魔法は爆発だ』を地で行き、『魔力を高めるためなら多少の犠牲や苦痛など考慮する価値はない』を貫く魔法使いらしい魔法使いって、悪の魔法使いだなそれは。
「ほほぅ? ウォルフォードの創る研究会か。それは興味深いな、本当にやる気なら俺が顧問をしてやろう。宣伝効果もあるから学園執行部もアッサリと許可してくるのは請け合いだしな」
担任の先生からも許可をもらえてしまった上に、他のクラスメイトたちまで賛成してしまったことで多数決的にはすでに敗北が確定した状況。
もっとも、最後に決めるのは当然ながら自分自身なので、「イヤだ。断る」と言えば済んでしまえることではあるのがコレ系問題ではあるのだが。
なんと言ってもシン・ウォルフォードは、現代日本でシンで異世界に生まれ変わったチート転生者。
「シン殿が会長だとすると、新しい研究会の活動は何をするのがいいでしょうかね・・・?」
「“やる”って言ってねぇよ俺!? 俺まだ“やる”なんて一言も言ってないんだけどオイ!?」
アウグストの護衛である眼鏡少年『トール・フォン・フレーゲル』が、そう言って既成事実化しようとしてきてシンはツッコむ。
王子の護衛でもある彼は、王子の護衛らしく護衛として「殿下が提案したことだから“やる前提”」で考えて当然のように話を進めていってしまう。
そんな彼だからこそ、シンとの相性は最悪だったと言ってよい組み合わせだったかもしれない。
何故なら現代日本からの転生者であるシンは、『やるとは言ってない』と曖昧で意訳を求める言い方だったら言えるけど、『やらない』とハッキリ断る言葉を言うのは苦手な、気遣い意訳文化の中だけで生きてきた人物だった過去をもつ少年。
現代日本人としての生き方を間違えている行為が『相手に向かってハッキリ言う』というコミュニケーション術だったので、シンには無理。
自分では直接言わずに、相手たちが自主的に察して辞めてくれることを求めるタイプの、半端リア充シンには難易度が高すぎる選択肢です。相性悪かったと諦めるしかなし。
「だったら、ウォルフォード君を中心にあらゆる魔法を極めるっていうのは?」
「――は? え? え?」
「そう、名付けて―――【究極魔法研究会】ッ!!」
―――痛いっ! 痛々しいよリンさん!?
思わずシン的には頭痛を感じて、こめかみを押さえてしまう程の痛ネームを言い出されて、すぐに返事ができないぐらいにダメージを受けさせられるシン。
別に邪気眼厨二ネームというわけではなく、邪気眼の人が聞いたら鼻で笑ってしまう程度のまっとうなネーミングセンスではあったものの、半端な「厨二カッコ悪YEEE」を地で行くシンには受け入れがたく感じる名前だったようだ。
どうにも彼は基本的に、『漢字』を気にしすぎる癖があるようだった。
特に意味はなくても、『究極』だの『超絶』だのといった漢字が使われてるだけでも拒絶反応を起こしてしまって、言葉の意味はあまり考えないタイプの少年。それがシン、15歳の異世界人。
もし仮に、【夜露死苦魔法研究会】とか提案されてた時は、どんな反応してたか少し気になる少年ですね。
邪気眼厨二として痛々しさを感じるのか、それともDQN厨二か、両方とも同じ厨二カテゴリー扱いで細かいこと気にしないで痛い痛いと言い出すのか・・・・・・ちょっと気になる。
「なるほど・・・【究極魔法研究会】か。シンにはピッタリな名前かもしれないな。なんとなくだが、「究極」という単語が似合っている気がする」
「いや待てオーグ! それは聞き捨てならない! 断じて聞き捨てならないセリフだったぞ今のは絶対に!
その字が一番イヤだったところだからな俺的には! それ以外がよかったとは言わないが、そこが一番イヤだったんだよ俺的には絶対に!!」
「ん? そうだったのか? なにやら一番反応していたから、てっきり気に入っている単語だとばかり・・・」
物凄い勘違いをされてしまっていた! なんとしても誤解を解かねば! 自分は厨二ではない! 断じてない!と、焦りながらも適切な否定の言葉を返そうと頭をひねり続ける彼の頭に、別の声と名前がもたらされたのは今その時であった。
その声の主は新たな研究会の名前として、シンの嫌がる厨二的ではない、別のカテゴリーの名前を提供してくれたのである。
「ふむ、ではコレでどうかね? 【至高の魔法研究会】というのは」
「イヤだよ!? グルメ勝負になりそうな名前もちだして何する気だお前本当にッ!!」
厨二ではなくなったし、別カテゴリーの研究会にもなったが、なり過ぎである。
もはや完全に別のものと化して、育ての親マーリンと義理の息子の自分で親子対決しながら魔法グルメ勝負に発展しちゃいそうなネーミングになってしまっている。
しかも、この名前の組み合わせだと自分の方が勝率低いし。息子だから。
最初の究極より、会長(予定)の自分が弱くなってどーすんだと、ネタが分かる人がいるなら言いたい欲求に駆られざるを得ない転生者シン・ウォルフォード心の苦悩。
でも言っても伝わる人0だと分かってる異世界なので、言うと変な人扱いされちゃうだけだから言えないフラストレーション心の苦悩。
「では、【究極対至高の魔法研究会】」
「駄目じゃねぇか!? 完全に駄目じゃねぇかよそれ! パクってんじゃねぇかよパクるなよ!
お前の知識に“版権”って言葉はないのかお前は~~~~ッッ!!??」
ガックンガックン!と、相も変わらず英雄の孫に首締められて振り回されながら楽しそうに笑い続ける変な光景。
アリスよりも小っこい同級生女子の女の子を、怒りの形相で額に青筋浮かべて体を前後に振り回してる光景って言うのも、初見の人達にはスゲー退く光景に見えてるらしく、残り半数ぐらいのクラスメイトたちはドン引きした視線と瞳を向けてきていたが・・・・・・多分3日もすれば慣れて気にしなくなるのだろう、きっと。
「【究極対至高の魔法研究会】・・・・・・っ! 究極を極めながら、更に至高の魔法さえも超えようとする意欲的な研究会―――カッコいい!! それ採用!」
「えっ!?」
「いいねいいね! 究極対至高の魔法研究会! めっちゃ凄そうだし、スッゴく強そうじゃん! 強くて凄くてカッコいいなんて最高じゃん♪」
「ええっ!? い、いやちょ、待っ――」
「ふ~む、そろそろ見学は終了の時間か。まぁ名前だけは賛成多数で決まったようだし、活動内容は授業後に決めるとして教室に戻るぞー。これから最初の授業をはじめるからなー」
「ええぇぇぇっ!?」
そんなこんなで、一度は決定しかかってた名前に一部プラスしたネーミングをなし崩し的に採用してしまった結果として、【究極対至高の魔法研究会】は発足されることが決定してしまうことになる。
後に新たな英雄として国の歴史に名を残すシン・ウォルフォードは、この時の出来事について多くを語ることは生涯にわたってなかったと後世には伝えられている。
数少ない記述として、英雄本人の独白が残されているところによれば。
「何故こうなってしまったのか。それは誰にも分からない。俺に聞かれたって分かるわけがない・・・・・・」
――と。
あらゆる魔法を極め、この世に解らぬことなど無かったとさえ称されている彼の大英雄が残した謎めいた言葉には、未だ多くの学者たちが研究し続け、新たな説が提唱されながら今日がある。
それは英雄の残した言葉が、全てを識ることが可能となった唯一の存在が彼だったからこそ、自分とは異なる者達には学び続けること、思考し続けることこそが自らに近づく只一つの道であることを、彼が解っていたからこそ残した伝導の言だったのではないだろうか?
究極と至高の魔法へと至った史上最強にして最高の存在シン・ウォルフォード。
彼が生み出し、後世の我々へと残した遺産の数々は、今も我々を導き続け、高見への道標となってくれているのである。
英雄シン・ウォルフォード研究会会報・学園入学編
『究極と至高の英雄の事績をたどる3章』
つづく