試作品集   作:ひきがやもとまち

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自称・魔王様リトライ!RX-78 第9章

 大きく4つの地区に分かれて構成されている、聖光国の中心都市『神都』

 この国における天使信仰の中枢でもあり、邪なる現実と聖なる真実とが混じり合う光と闇の狭間のような場所は今、悪の軍勢によって地獄の炎と阿鼻叫喚に包まれていた。

 

 悪の秘密結社軍団の名は《サタニスト》

 貴族制度や格差に満ちた今の世界を壊し、新たな世界を創造しての救済を志す、黒づくめの主観的には正義の騎士団な者達。

 

 そう、それこそが彼ら黒の騎士だ―――じゃなくて、サタニストたち。

 似てはいるけど似てるだけで、仮面の指導者に率いられた人達とは違うため、絶対遵守を強制する異能力とかもってない彼らは、神都の中心《聖城》以外すべての場所から同時に夜襲をかけるため、結界で守られてる神都の地下に穴を掘って進み、ついに潜り込むことに成功していたのである。

 年単位で穴を掘り進めて今日の実現に至った彼らの苦労を思えば、そこにはもはや狂気という文字しか浮かびようがないほどの執念だった。

 

 どっかの大泥棒Ⅲ世だったら多用しそうな方法だけど、現実にやる時には、換気とか排気とか落盤とかガス発生とか、いろいろな危険が目白押しの潜入方法だし。

 よっぽど金かけまくって、安全面を配慮しまくったホワイト企業環境での長期間作業で成功させたか、あるいは犠牲者続出でようやっと成し遂げた青函トンネル異世界版だったのか。

 

 いずれにせよ、スゴイ根性ではあった。

 根性論でバンザイ穴掘り突撃やりまくって神都内まで侵入するのに成功したサタニストたちの脅威によって、聖光国の首都は血と炎による邪悪なる赤い闇に包まれようとしている。

 

 それは、聖堂騎士団の本部や貴族たちの館が集まる高級地区も例外ではない。

 

 

 ―――ザッ、ザッ、ザッ・・・・・・。

 

 高級地区の一角にある上流階級の社交場、高級レストラン《アルテミス》の前に今、黒づくめの男たちが姿を現していた。

 

「・・・ここだな。この腐った国の貴族たちが集まっているという高級食堂とは」

「ああ。噂では、バカな聖女がヒイキにしている店だという。運次第では今夜もきているかもしれん」

「フン。しょせんは悪しき天使の加護厚きニセ聖女のハウスよ。どうということはない・・・」

 

 黒いローブ、黒いフードで体全体を覆い尽くした、如何にも黒魔術結社と思しき格好をした男たちの一団は、各地区に混乱を広げるため兵力を拡散していたサタニストたちの集団から離れ、自らの目的達成のため動き出そうとしている。

 彼らにとって、組織全体の大目標より優先すべき目的とは、即ち―――

 

「では、これより念のため点呼をとる。――我らは」

 

 

『第六天魔王様のシモベ様のシモベ、Aッ!!!』

『第六天魔王様のシモベ様のシモベ、Bッッ!!!!』

 

『そして俺は――第六天魔王様のシモベ様のシモベ、Cィィィィィィィッッ!!!!!』

 

「うるせぇぇッ!? バレるだろうが!? 潜入したのバレるだろうが! シーッ! シーッ! シーーッ!!」

「??? だから俺は、第六天魔王様のシモベ様のシモベCィィィィィィッ!!!」

「だ・か・ら!! ウルセーって言ってんだろうがこのアホォォォォォォォッッ!!!」

 

 

 ・・・・・・またしても、第六天魔王教徒化していたアクちゃんの村の村人たちによる布教活動でしたとさ。

 どっちも、黒づくめの服装で所属を示すエンブレム的なもの無い組織同士だからなぁー・・・・・・こういう時そーいうのが無いのは意外と厄介らしい似たものユニフォームな反政府カルト集団共。

 神都は確かに今夜、闇に包まれようとしているらしい。闇鍋っぽいカオスな闇に。

 

「はぁ・・・、はぁ・・・、まったく、無駄な体力を使わせて・・・・・・まぁいい。とにかく神都内への侵入には成功できたのは事実だし」

「ふぅ・・・、ふぅ・・・、確・・・かに。街の入り口では検問を敷かれていたからな。危うく入るだけで、金と時間が減るところだった」

「まったくまったく。第六天魔王様に従いさえすれば幸せになれると教え広める救済のため布教の旅をする我らから金を取ろうとは許されない悪政」

「やはり今の世界と国は腐っている。救済のため、より良く世界を指導する絶対者が必要ということだな。第六天魔王様という絶対的指導者が」

「その通り。そうなってこそ我らの理想と苦労と、功績が報われるというもの。黒い人たちに紛れ込んだのは正解だったな」

 

 相変わらず清々しいほどに、利己主義と自分たちも儲けしか考えてない信仰心の持ち主共である。

 しかもどーやらサタニストと似てた格好を利用して、入場料をケチって同じ一員だったことにして便乗したっぽい。どこまでも碌でもない奴らである。

 

「とにかく、今宵の騒ぎは想定外の事とはいえ、これは好機。

 この騒ぎの中で怪我をした神都の住人たちに、この『第六天魔王様のシモベより生み出されし井戸の主様』の聖域となった井戸から汲み上げた《超魔王水》を提供して信者を増やすのだ」

「うむ。この街には悪しき天使の信者が多いからな。普段であれば買う者は少ないだろうが―――緊急時なら、あるいは・・・ッ!!」

「まさしく。念には念を入れて、最初は知らせることなく傷を癒やし、回復してから名前と効果を告げるよう意識しよう。その方が相手も飲みやすいだろうし、気を遣わねばな」

 

 そして相変わらず、やり方が悪徳商法そのものを地でいく連中。

 サタニストの襲撃さえも利用して、神都内に地下第六天魔王ネットワークを張り巡らせるため、第六天魔王教徒の狂信者たちは今夜もいく。

 

 

『では、行くぞ。全ては―――青き聖城よりもセイジョウなる世界を創るために。

 ジーク・人類統一政府の国家!!!』

 

 

 挙げ句の果てに、まーた河童ロボットから何か言ってた言葉を又聞きして、ゴチャ混ぜした思想として信じ込んでいるらしい。

 バカたちは、どんな状況下でもバカとしての道を突っ走ることしか知らんようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――馬鹿たちが不法侵入してた高級地区は、馬鹿が来ただけだからまだ良いとして、他の三つの地区では入り込んで暴れてたのがサタニストの実働部隊だったので激しい戦闘が繰り広げられている。

 

 たとえば、商会や露天が多く集まっている商業地区では。

 

「おのれッ! 卑しい冒険者共が・・・!! 《氷刃/アイススラッシュ》!!」

 

 利用者が多いことから冒険者ギルドや、彼らを顧客にした歓楽街などがある地区であることから、対冒険者用に魔法が使える者を多めに編成されていたサタニストの襲撃部隊は、攻撃魔法を連発しながら街路を突き進んでいく。

 

 

「同志マージの言う通りだ! この地に嘆きを! 偽りの幸福を守る冒険者共に死をッ!

 《火鳥/ファイバード》ッ!!」

 

「我らの宿願を果たすたには、より多くの嘆きと生贄が必要なのだッ!!

 《氷槌/アイスハンマー》ッ!!!」

 

 

 この地区の攻撃隊リーダーを任されている『マージ』が使った第3魔法に続いて、部下たちの魔法攻撃隊から第2魔法の連続発射が放たれる!

 たとえ一対一なら格上の魔法が使える魔術師だろうと、これだけの数が集まればベテランの凄腕冒険者たちでさえ数の差で押しつぶされてしまうものなのだが。しかし。

 

 

「クック・・・・・・我が深遠なる闇よ、嘆きを降らせよ。《聖なる雨/ホーリーレイン》!!」

『ぐ、ぐおわァァァァァァッッ!?』

 

 ズドドドドドッ!!!!

 

「ふっふっふ・・・・・・脆弱なる人間共め。我が闇の前には手も足も出ないと見えるな・・・くっくっく」

 

 

 たまたまの偶然に、最高位のSランク冒険者『ミンク』が古巣の酒場にきてたところで、厨二トモダチの馬鹿エルフと出会ったことで長居しちまってたせいで、サタニストが襲撃してきた時にも居合わせちまって迎撃戦力になっちまっていたという次第。

 

「く、くそぉッ! こんな場所にSランク冒険者ミンクが、何故・・・ッ!?」

「怯むなッ! 数はこちらが上なのだ! いくらスタープレイヤーといえど気力が尽きるまで攻め続ければ、必ずやッ!!」

「そ、そうだ! 新たな世に導くため、奈落に力を! 地に嘆きを――」

 

 

「クックッ・・・・・・我が木偶となりて、滅びの刻まで戦え――《聖なる泡/バブルキュア》

 私に続きなさい! 凍てつく闇に血を捧げよ~~~ッッ!!!」

 

 

 ズドォーッン! ズドーッン!! ズボォォ~~ッン!!!

 

『『『うおわッ!? ぐおわぁッ!? ふんぬらばァァァァッ!?』』』

 

 

 ずどどどどどボォォォ~~~~~ッン!!!!

 

 数の差では補いきれない戦闘力という数値の差を前にして、一方的に撃退されて殺されまくってくサタニスト達だったが・・・・・・言ってる内容的には被ってるぞオイ。

 双方の言い分を、どう解釈すれば良いのか分かりづらい状況ですね。

 

 ろくな被害も与えられないまま、アッサリと全滅させられてしまったサタニスト商業地区攻撃隊のメンバーたち。

 とは言え、流石にリーダーとして任命されてた者は、他の者たちよりレベルが高く、体力も生命力も防御力も上だったようで、

 

「お、おのれ・・・・・・っ、このまま死んでたまる、か・・・ッ!」

 

 敗北してボロボロになった姿で地に伏せながら、まだ死んではいない、《食いしばり》とかの能力で死ぬ寸前のHP一桁ぐらいでギリギリ耐え抜いてたらしいマージは、まだ動かせる腕を動かして懐からナイフを取り出し、手の甲に魔法陣を刻みつけた後。

 

「この呪われた、地に・・・・・・災いあれッ!!」

 

 自らの命と、殺された仲間達の死体を生贄に用いて、悪魔召喚の儀式を断行させる。

 普通は人間程度の生贄を500人やそこら捧げたところで、呼び出せるのは下級悪魔ぐらいが限界だったが、マージが死ぬ間際に取り出したナイフは指導者ユートピアが用意した特別品。

 

「《サモン―――デビル》ッ!!! ・・・・・・ぐふっ」

 

『ウオォォォォォォッ!!!

 ――って、あら? 人間なんかに呼び出されるなんて、いったい何事?』

 

 あちこちにキラキラ光る石を無数に縫い付けられた、道化師のような金色の服をまとって、頭から二本の角を生やした巨大なバケモノとしての中級悪魔《カーニバル》を召喚するのに成功してしまったのだ!

 

『ま、いっか。美味しそうなのがいっぱいいるしね。

 たっぷり絶望を引き出せるよう、お膳立てしておきましょう――《キリング・フィールド》!!』

 

 そして悪魔特有のスキルを発動させて、周辺の地域一帯を不可視の壁で閉じ込めてしまう。

 その結界に包まれた瞬間から空気が冷たく、寒く、そして重くなったように感じられ、悪魔を倒さない限り結界の中から脱出することは出来なくなってしまった。

 

「フッフッフ・・・・・・この迸るデスティニーの予感は・・・この右目の疼き――視える。

 視えるぞぉぉ・・・・・・! この悪魔によって混沌に陥る神都の未来がぁぁ~~♪♪」

『キャーッハハハハ! その通りよッ!!

 さぁて、子猫ちゃん達! この地獄のカーニバル様が遊んであげるわァッ!』

「クックック・・・・・・いいだろう。さぁ、悪魔よ。ここに血の盟約を交わしましょう・・・闇よりも深き、黒い、混沌になるような盟約を―――」

 

「・・・・・・・・・おい、ミンク。お前は一応僧侶で、相手は悪魔だろうが。流石に見ている側にもわけが分からない会話になってきてたのだが・・・」

 

『なっ!? ちょ、ちょっとアンタ! アンタ一体なんで人間なんかと一緒に話してるのよ!

 あ、アンタの体から感じられる血の気配と力ってあの、あの御方の血を引いてる存在のはずじゃ――』

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・人同士の争いなどに何の興味も無かったが・・・・・・気が変わった。

 ――貴様は殺す。生きたまま絶対に、煮殺してやる・・・・・・ッッ」

 

『ヒィッ!? ちょ、待っ! 待って待ってお願いやめて!? こんなところで人間なんかに殺されるのも、どうぞくにごろざれるのもどっぢもいやぁぁぁぁぁ~~~~~ッッ!?』

 

「安心しろ、すぐには殺さない・・・・・・十分に苦しませ、自らの失言を後悔しながら死なせてやる・・・・・・ッッ!!!」

 

『イィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!????』

 

 

 

「う、うわぁぁ・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、本来ならミンクたちが夜には訪れる予定になっていた、一般市民の住宅が集まる一般地区。

 ここには聖堂協会の本部もあるので、立場的に優遇されやすいミンクが情報を得る予定になっていたのだが、バカと出会ってバカ騒ぎしたまま夜になり、馬鹿っぽい喋り方と服装した悪魔を拷問&処刑する相棒と同席する羽目になっちゃったため、防衛戦力が欠けている状態になっていた場所にも、サタニストの攻撃隊は向かっていた。

 

 その途上、

 

『あ、悪魔だ!! 中級悪魔のカーニバルが現れたぞぉぉぉッ!?』

 

「なんだと!?」

「馬鹿な・・・早すぎる! ユートピア様の計画では、聖城前で《逆十字》を使う予定だったのでは・・・っ」

 

 一般市民が多い地区のため、主に長剣で武装した剣士隊によって編成されていた部隊のメンバーは遠くから聞こえてきた異常事態の発生を告げる悲鳴を聞きつけ、逆に頬を引きつらせて怒りと戸惑いの声を上げざるを得なくなる。

 

 自分たちの計画とは大分異なるタイミングでの切り札使用。

 聖女姉妹の長女が敷いた結界によって守られている、聖城への攻撃手段を他に持たないサタニストにとって、その計算違いは無視するには大きすぎる計画の狂いだった。

 

 きっとナニカが起きたのだ。それは分かる。

 問題なのは、その想定外なナニカの問題が生じてしまった状況下で、残された自分たちの力で計画を修正するため何ができるかを考えて実行すること。

 

「おそらくは、不測の事態が起きたのだろうが・・・どうする? 我らの力だけでは聖城の守りまでは流石に・・・・・・」

「・・・・・・やむを得ん。我らはこのまま進み、一般地区への攻撃を開始する。

 だが計画通り一定時間で引き上げるのは、一部の者たちのみだ。残りは地区にとどまり、できるだけ多くの民衆を殺すことで生け贄の不足を少しでも補填する。それしかない・・・!」

 

 悲壮な覚悟を固めて再び走り出すサタニストの一団。

 人間程度の生け贄、それも自分たちだけでも簡単に殺せる一般市民の命など数百人分貯まったところで大した量には達することは期待できないが、無いよりかはマシだと信じるしか他に彼らにも道はない。

 

 非人道だろうと何だろうと、世の中は変わらねばならないのだ。変えねばならんのだ。

 理不尽や不条理がまかり通り、庶民の命など貴族たちが金の都合のため犬のように浪費され、平等や公平など支配者たちの唱えるお題目の中にしか存在しない。

 

 そんな腐った世の中を! 世界を! 今の社会を変えるために!!

 自分たちが志し、指導者ユートピアが示してくれた理想的な世界へと作り替えるため!!

 自分たちは死ぬ。新世界を作る生贄として死ぬためにこそ自分たちは今夜、この町へ攻めてきたのだから―――

 

 

 そう思い、そう考え、悲壮な決意と血の色をした覚悟を決めた瞳をした一団となって市街地へと迫り、まずは目についた教会を襲って医療技術をもつ者たちを皆殺しにするため全速力で走り寄っていき、そして!

 

 

 

 ・・・・・・ヒュ~~~~~~~・・・・・・・・・・・・ン。

 ―――――――ザクゥッ!!!

 

 

 

 教会めがけて走りよる彼らの横に、奇妙な形をした大剣が落下してくる。

 

「・・・?? な、なんだ? あんな剣、一体どこから落ちて・・・・・・」

 

 集団の一人が、何もない空の上から落ちてきた巨大な剣という存在に目を白黒させながら疑問を呈する。

 当然ながら空を見上げても、建造物などあるわけもない。落ちてくる先がある訳もない場所のはずだったのだが――。

 

 

 しかし、見れば見るほど奇妙な見た目をした大剣だった。

 柄も、刀身も、刃渡りさえも、なにもかもがデカ過ぎるのだ。剣先には奇妙な凹みがあり、先へ伸びれば伸びるほど剣の幅は太くなる作りは、鞘に収めて持ち運ぶ前提とはとても思えない。

 

 ・・・・・・だが、その剣がまとっている凄まじい魔力の量だけは、メンバー内で数少ない魔法の使い手であるリーダーには理解できていた。

 あるいは魔法を使えぬ者でも、この剣の威力は見ているだけで想像することができたかもしれない。

 

 禍々しくも強大な魔力を帯びて、地に突き刺さっている天から落ちてきた大剣。

 それはあたかも、その剣を抜くことができた者に、強大な力を授けてくれるという勇者の伝説にある聖剣であるかのように。

 

 あるいは、今まで誰一人として見た者がいなかった、地にそびえ立つ巨大な山脈が自分たちの前だけに突如として姿を現したかのような・・・・・・そんな誘惑と恐怖をかき立てられるような、そんな大剣―――

 

 

「・・・これが何かは分からんが、優れたマジックアイテムであることだけは確かだ。

 ならばその力、我らのものに――我らの理想社会実現のための力とするためにッ!

 我らの富を奪い返すために! 不当に奪われた金を! 家族を! 絆を! 愛を!!

 楽土は屍の上にこそ作られるのだからッ!!!」

 

 

 どのみち生きて帰れる計画ではない《逆十字》を使った聖城への攻撃計画。

 死ぬ覚悟を決めて挑んでいる者として、今更リスクの増加を恐れることに意味は無いと判断したリーダーはずかずかと大剣へと歩み寄り、その柄を「ガシッ!」と鷲づかみにする。

 

 

 

 その瞬間―――――禍々しい妖気が、剣の周囲へと急速に集まり、カタチを成す!!

 

 

 

 

 ―――肉体は滅びるとも、理想は死せず!!―――

 

 

 

「な、なんだ! 一体なにが!?

 黒い霧が剣の周囲に集まってきて、人のカタチに似たものにな――!?」

 

 

 

 ―――無知蒙昧な民衆と堕落した世界に鉄槌を下さん!!――――

 

 

 

 

 《八十過津日神招来》!!!!

 

『ぎ、ぎゃああああああああッッ!!??!!?』

 

 

 

 ズバズバズバズババババァァッ!!!!!

 

 

 

 突如として黒いカゲのようなものが人の形をとって大剣を抜き放ち、おそらくは剣技なのだろう技を使ってサタニストたち全員に攻撃を開始する!

 最初の一撃だけで多くの者たちは即死させられてしまっていたが、ギリギリで防ぐことができた者や、攻撃場所が遠かったことで回避に成功した者などがいたことで全滅には至らず、まだ彼らの攻撃計画は潰えていな

 

 

《超次元穿刀爆砕》!!!!

 

 

『なぁッ!? なぁぁにフヌオギャァァァァァァァァァッッ!?』

 

 

 ズバズバズボボボボォォォォッ!!!!

 

 

 ――いと思ったら、どうやら二連続攻撃が前提での一撃目だったらしい。

 これで完全に隊としては全滅させられることになるサタニスト。

 聖城への攻撃はおろか、仮に生き残りがいても一般地区を襲撃することすら数的にできない悲惨な状況に。

 

「お、おの・・・れ・・・・・・だが、この、まま・・・死んで、堪る・・・か・・・・・・ッ。

 この、呪われた地に・・・災いあれ・・・! 《サモンデビ」

 

 

 

《ゲート・オブ・イゾルテ》!!!!

 

「って、え? ちょ、待っ―――あッ!? アジャブワァァァァァァッ!?!?!?」 

 

 

 ズゴゴゴゴォォォォォッ!!!!!

 

 

 そして最後にとどめの三連撃目が炸裂!!

 開始直後の一撃目での三連続必殺技使用はヒキョーだと、果たしてサタニスト攻撃隊のリーダーは感想を思うことができる時間的余裕は与えられてたのかいなかったのか。

 

 

 

 

 全ては―――革新的原理の名の下に!!!!――――

 

 

 

 サタニストたちの屍で山が築かれた戦場跡。

 その場所で黒い影は、手に持った剣を天高く掲げながら宣言していた。

 

 その上空高くにおいて。

 

 

 

 

 

「あれ? なんか軽いと思ったら、どこかで落としてしまったみたいピョン。

 うーん、新たな一千年がはじまる前の七の月に降臨する予定で寝てたら、結局起きる月が来なかったから持ってきてた、乾いた砂漠の惑星のお土産だったのにウサ・・・・・・ま、いっか。ピョン。

 どーせ全てを無にしちゃった後には全部同じになるんだし、気にしても気にしなくても同じだし別に。ピョン」

 

 

 

 というのが原因で起きてた地上の出来事だったわけだが・・・・・・サタニストたちよ。

 これが理不尽であり不条理というモノである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かくして、予定外な上に想定外な邪魔者ばっかりが横やり入れてきて、一向に上手くいってないサタニストたちの神都襲撃作戦の参加メンバーたちは、なんとか生き残った残党たちだけでも聖城前に集結することはできていたのだが。

 

 

「人数が少なすぎる。その様子を見ると、こっぴどくやられたようだな?」

「あ、ああ・・・・・・どうやら商業地区を襲った班はマージ以下、全員が討ち死にしたようだ・・・」

「な、なんだと!? 一体なにがあったのだ!?」

「それだけではない・・・・・・おそらく一般地区に向かって、到着していない者も全員・・・・・・」

「く・・・ッ! 生贄の数が多いほど《逆十字》は力を増すというのにっ!!」

 

 

 集まることができた者たちは、高級地区に向かって一定の成果だけで予定通り聖城前へと移動していた者たち以外には、ほとんどが他の地区を攻めて本体が敗れたときに一緒にいなかったから生き残れただけの奴らが、寄り集まってきただけな敗残の群れと化していた。

 

 計画では、襲撃そのものは陽動として戦力の分散を図らせ、一定時間で切り上げた後に聖城前にて悪魔召喚用のパワーアップアイテム《逆十字》を使いながら全員が死んで生贄になり、超強力な悪魔を呼び出して攻め込ませる―――そういう予定だったのだが、予定より数が減りすぎてしまっていた。

 これでは想定しているほど強大な存在が呼び出せるか否か・・・・・・

 

 神のみぞ知る―――いや、悪魔の王たる魔王のみぞ知る結末としか、彼らにも他に言いようがない。

 

「ええい、やむを得ん! 賭けになってしまうが、我らだけでも自ら死んで生贄となり、この地に災いと再生をもたらす礎となるしか他あるまい・・・!」

「それしかないだろうな・・・・・・“この呪われた地に災いあれ”・・・ッ」

 

 憎しみを込めて語り合った、最後に残っていた隊長格2人もまた、懐に手を入れて歪な形のナイフを取り出す。

 

 彼らもまた悲壮な決意と覚悟を固め、ある者は手の甲に魔法陣を刻みつけながら、ある者は首筋に刃を突き立て鮮血を吹き出させながら、みな異口同音に――その呪文を口にする。

 

 

()()()()()()()

 

 

 

 そうして、最初に2本だけある歪なナイフを突き立てた隊長格の1人の肉体から赤いモヤが吹きだし始め、それに続いて今1人の隊長格も懐から取り出した歪なナイフで自らを切り裂き、世界新生のため尊き生贄にな―――

 

 

「あ、あれ? あれ? えっと、確かここに、あれッ!?」

「ど、どうしたのだ・・・? 早く・・・早く、《逆十字》を使わねば、ただの生贄の一つと同じ扱いになってしま・・・う・・・・・・ぞ」

「わ、分かっている! だが、あれ!? あれ!? ――無いッ!

 《逆十字》がないのだ! 確かにここに入れてあったはずの《逆十字》が、あれ~~っ!?」

「な!? なな、なんだと、ぉ・・・っ!? さ、探せ! 早く探し出す、のだ・・・!

 私が使っ、た逆十字に飲み込まれるより先、に・・・・・・早・・・・・・ウオォォ、おおォォ・・・・・・」

「分かっている! 分かっているが、な―――オオオォォォォォォォ・・・・・・ッ!?」

 

 

 

 

 こうして、聖なる城の前で中途半端に生贄儀式用のアイテムが足りなかったせいで時間切れとなり。

 自分の命捧げる代わりに、召喚される対象のランクアップ恩恵を得られるアイテムは一個だけ使用して、残りの人は単なる普通の生贄その1その2その3扱いになってしまった程度の存在としてカウントされながら、干からびてミイラになってサタニストたちが死んでいっていた丁度同じぐらいの頃。

 

 

 

 

 

 彼らのいた地区から、そう遠くない路地裏の一角において。

 

「ん? お前それどうしたんだ、珍しいナイフを持ってるみたいだが」

「本当だな、なにやら禍々しい形状をしている。第六天魔王様的なイメージがないところなんか特に禍々しい。許しがたい形のナイフだなオイ」

 

「ああ、コレか? 町に入ってくるとき紛れ込んだ俺たちと同じような格好した人たちの一人が持ってたのを、珍しい形してたから寄付してもらってきたんだ。

 他のヤツらの持ち物は全部同じような物ばかりで貧乏くさかったが、コレだけは珍しい形してたから売れば金になりそうだと思って」

 

「ふむ、そうか。まぁ第六天魔王様の教えを広く世に知らしめ、救世の旅に役立てるよう喜捨した物なら、第六天魔王様のシモベ様もお許しになろう。その人にも恩恵が与えられるに違いない。

 本人にとっても、その方が喜びのはず。良いことをしたな、いや良かったよかった」

 

『『『ハッハッハッハ』』』

 

 

 

 

 

 どっかのビンボー村からきた、ビンボーだから手癖の悪い狂信者たちの手によって、教壇への寄付という形で(無許可で無断で)勝手にもってきてしまってた人達の手によって、サタニストたちの計画は最後の最後まで狂わされまくり続ける羽目になるのだった。

 

 

 果たして、ここまで弱体化させられまくった召喚アイテムによって呼び出される存在とは、なにが出てくるというのか? それは――――

 

 

 

 

「・・・・・・フン。随分と半端な召喚で、しかも忌まわしい場所に呼ばれたものですね・・・・・・体が重いですよ。

 これほどに不愉快な思いを味あわされたのは久しぶりです。一体これほどの非礼、どれほどの償いで贖えるか分かっているのだろうな・・・地を這うアリ共が」

 

 

 サタニストたちは自分たち全てを生贄に捧げることで、上級悪魔《闇公爵オルイット》の召喚に成功していた!

 ただし召喚儀式が不完全だったせいか、万全な状態ではないようだ。

 

 だが、問題は無い。

 悪の軍団が負けそうになってから命捧げて復活させたり召喚した悪魔とか魔王という存在は、大抵が不完全な状態で出てきててラストバトルになるもの。

 

 つまり、普通だ。普通だから気にしなくても大丈夫。

 不完全な状態でも、元が超強いから聖城にいる一般メンバーたちの誰より強い存在になれてるのも事実みたいだしね。

 

 

 ―――だからこそ。

 最終決戦用に召喚された切り札悪魔と戦うためには、敵側にも同様に《呼び出された存在》が必要になるのも異世界の常識。

 

 

 

 

「待てっ! 貴様らが進めている計画のすべては既に見抜かれている! もう諦めるんだ!!」

 

 

「なにッ!?」

 

 

 

 天から降り注ぎ、天から降り立つ声の主。

 そう。人間が弱い種族で、亜人種の方が強いに決まってる設定の異世界ファンタジーにおいて。

 悪側が召喚した、人外の超強存在を倒すため―――チート転生者が、必ず現れて敵を討つ!!

 

 

 

「俺の名は沖浦――チート転生名探偵さッ!!

 名探偵の名にかけて、貴様らの犯罪計画は必ず暴いて阻止してみせる!!

 犯罪者という悪は、正しい真実に必ず敗れる!!

 真実(正義)は、いつも1つだけなのだからッ!!!」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああっ!? 壁が!! またしても見えない壁が私の行く手を邪魔するように!!

 行けるはずの場所なのに、行けなくなってる見えない壁がまたしても私の邪魔を~~っ!!

 私を殺した私の仇が、すぐ近くに来てるのにクソウ!くそう!!」

 

【・・・・・・・・・ナベ次郎よ。新たなるチート転生者ナベ次郎よ。

 あの敵と戦うには、お前はまだ未熟。

 やむを得まい・・・・・・今回もまた私が力を貸そう】

 

「またかよ!? それアンタの匙加減一つでしょう絶対に!?

 もっと力を貸せることある存在ですよアンタは絶対に! 絶対にぃぃぃぃッッ!!!」

 

 

 

 チート転生エルフは、なかなか活躍させてもらえない馬鹿エルフであったとさ。

 ちゃんちゃん。

 

 

 

つづく

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