ようやく完成できました。他の作品も半端ながら続きを書きかけのが多いんですが、完成までいけるのが少なくて申し訳ありません。
ホグワーツにきてから、ハリーはずっと驚きの連続だった。くる前から驚いていたかもしれない。
キングスグロス駅に存在してないはずの九と四分の三番線。車内販売で買った動く絵のカード。中世のお城のように山の上でそびえ立つ壮大なホグワーツ魔法魔術学院。組み分け帽子・・・・・・。
思い出したら切りがないほど、ハリーは驚きっぱなしで入学式へとやってきていた。本当に驚きっぱなしの連続だったのだ。
・・・・・・悲しい別れを思い出してる時間もないぐらいに。
忘れなきゃいけないと思ってたことを忘れてしまえるぐらい本当に・・・・・・
そんな驚きっぱなしだったハリーにとって、今までで一番ビックリする驚きが今、目の前に立って挨拶している。
「どーも。明方朝露です。東方にある魔術学校からきました。
『闇の魔術の防衛術』の授業を補佐しますので、以後よろしく~・・・・・・」
やる気のなさそうな、だけど不思議とバカにしているとは感じない声と喋り方で、一人の女の子が学校の生徒たちに自己紹介をしていた。
その子は、“あの子”だった。
アンだった女の子が、アンになっていた女の子が元にもどった姿で、自分たちの前にホグワーツの臨時の先生として今年一年間、ハリーたちと一緒に同じ学校で授業を教えることになったと語ってくれている。
もちろんハリーには、とても複雑な気持ちになるしかない。そう簡単にアンとの思い出をなかったことになんて出来るわけがない。
――けれど不思議とハリーは、相手の女の子のことが「イヤだ」とか「嫌いだ」とかは思ってなくて、それが余計にハリーを困らせてなにを言えばいいのか分からない。
助かったのは、自分たちと同じぐらいの歳の女の子が先生になると聞かされて驚いていた人が、自分以外にも同級生や上級生にいっぱいいたことだった。
ホグワーツに向かう汽車のなかで出会って嫌味を言われた男の子の『ルシウス・マルフォイ』が、
「先生だって? あんな弱そうな女の子が?」
と小バカにした声で、手下の男の子二人と笑い合っている声が聞こえてくる。
でも彼とは逆に、彼女の名前を自己紹介されて気がついた、親たちから教えられて知っていたらしい生徒たちもいたらしい。チラホラと興奮気味に周囲の同級生たちへ教えている声も耳に入ってきた。
「私あの名前の人のこと、知っているわ! スゴい偉業を、たくさん成し遂げた人だって本にも書いてあったから! 『近代魔法史』や『白魔術の復権』なんかにも出ていたほどよ!」
「本当に? でも私、蛙チョコレートの写真で、あの人の姿なんて見たことないわ・・・」
「それは彼女が、自分の姿をたくさんの人に知られるのがイヤだったからって、聞いたことがあるわ。
ダンブルドア校長がニコラス・フラメルと共同研究で表彰されたときも、本当は彼女が3人目だったのにメダルも受け取らず、名誉はぜんぶ渡してさっていったって書いてあったもの」
別のところから、汽車の中で出会った女の子『ハーマイオニー・グレンジャー』が得意気に語っている声も聞こえてくる。
ハリーとあった時よりも、今の方が興奮しているようだった。どうやら彼女はアンだった女の子――明方朝露に魔女として憧れているらしい。
そのハーマイオニーの話している内容を聞いて、汽車で出会って仲良くなった兄弟たちで一番下の男の子『ロン・ウィーズリー』が不愉快そうに、ちょっと鼻を鳴らす。
「・・・彼女の名前なら、僕も父さんから聞いたことがあるよ。スゴく良いことを沢山やったけど、悪いことにもいっぱい関わってた魔女だって。
『例のあの人』から一番最初に仲間に誘われたのも、あの人だって話だよ」
良い話と悪い話、良いことをした人の話と、悪いことをした人の話。けれど両方とも同じ人の話。
色んなところから聞こえてくる、両方に極端な話の連続にハリーは訳が分からなくなって頭が痛くなってきそうだった。
あの子が、いい子なのか悪い子なのか、ハリーにはサッパリ分からなくなってきてしまいそうだ。
「ダ、ダ、ダンブルドア先、生。私はそのような話はき、聞いておりません、が・・・・・・」
先生たちの中からも、不満を口にする人がいるみたいだった。
最初の日にハグリッドが連れていってくれた『ダイアゴン横町』へと魔法の道具を買いにいったとき、『漏れ鍋』で出会っていたクィレル先生が一番手だった。
あのとき聞いた話だと、たしか先生は『闇の魔術の防衛術』を教えているらしい。つまり朝露は彼を補佐する先生としてやってきたことになる。
あの時より、もっとオドオドするようになっているクィレル先生には、たしかに怖そうな相手に見えるだろうなとハリーにも思える怖がりぶりだった。
「それは当然じゃよ、クィレル先生。なにしろワシが三日前に決めて、今日になって到着してくれたばかりの新しい先生じゃからな。いや間に合ってよかった、ワシも安心しておるところじゃよ」
「そ、そ、そんな話を急に言、い、言われ、ても、我々だって困りま、ます。も、も、もっと前もって話しておいてく、くれないと・・・・・・」
「ええ、もちろんですともクィレル先生。確かにおっしゃる通りじゃろう。他の先生方にもワシの勝手を怒る気持ちもあると思う。
じゃが、先に言っておれば反対したじゃろう?」
「そ、それは、は・・・・・・ま、まぁ・・・・・・」
「だからじゃよ」
真っ青な顔色で、女の子の顔を横目でチラチラ見つめて、クィレル先生がどもりながら言ってくる苦情に、ダンブルドア校長は逆に穏やかに、けれど自信満々に答えてくる。
「ワシは以前から、ホグワーツ以外の魔法学校とも交流をおおくしていくべきじゃと思っておった。
ホグワーツの教え方だけが最高じゃと、一番だなどとワシは思ったことはないし、歴史が浅い魔法学校からも学ぶべきところはいっぱいあると考えてもいる。
とはいえ、いきなり他校と交流していきましょうと言われても、先生方からは反対されることじゃと思う。
今ワシが朝露を先生にしたいと言って、反対されたのと同じように」
「そ、それは・・・・・・いえ、ま、まぁ・・・・・・」
「だからまずは、少ない人数で小さいところから始めるべきじゃと思ったのだ。先生の助手として彼女一人だけを迎え、その結果で先生方にも考えてもらおうと。
そういう理由があっての招待なのじゃが、どうじゃろう、クィレル先生。わかってくれるじゃろうか?」
「え、えぇ・・・そ、そういうこ、ことでしたら、ら・・・・・・ご立派なお考え方かか、と・・・・・・」
柔らかい笑顔と丁寧なしゃべり方で答えてくれたダンブルドア先生の説明を聞いて、クィレル先生は何度もドモリながら何度かうなずいて、他の先生たちも納得してくれたようだった。
「全員、納得してくれたようじゃな。では諸君、就寝時間じゃ。かけ足!」
大広間でみんな一緒に食べた晩ご飯が終わったグリフィンドールの一年生たちは、パーシーに続いてホグワーツ城内をのぼったり隠しドアを通り抜けたりしながら、階段を上へ上へと上がっている中。
その途中で、突然みんなが立ち止まったのてしまったのは、一体の幽霊のイタズラによるものでした。
「ピーブスだな、姿を見せろ!」
パーシーが監督生として、一年生たちの先頭にたって見栄を張るが、返事は風船から空気が抜けるような無作法な大きい音が応えただけ。
「『血みどろ男爵』を呼んできてもいいのか?」
大声で叱っても、ポンと音がして意地悪そうな暗い目をした大きな口の小男が現れて、かん高い声で笑いながら一年生たちの頭上を飛びながらイヤがらせをしてくるだけ。
「ピーブス、行ってしまえ! そうしないと男爵に言いつけるぞ、本気だぞ!」
『おおおぉぉぉぉぉっ! かーわいい一年生ちゃん! なんて愉快なんだ!』
「アケガタ・アサツユが戻ってきた! 彼女にも知らせる、それでもいいのかピーブス!?」
その女の子の名前を負け惜しみのように怒鳴られたとき、ピーブスに与えた変化はパーシー自身にも予想してないものだった。
一瞬前まで、ベーッと舌を出してネビルをからかおうとしていた半透明の幽霊の顔色が、まだ青ざめることができたのかと思えるほど真っ青になってブルブル震えだし、まるで幽霊に脅かされた子供みたいな恐怖の悲鳴を叫びながら一目散に逃げていってしまったのである。
その光景を見せられて、一年生たちはポカンとなったけど、一番ポカンとなっていたのは言った本人のパーシーだった。
思わずポカンとしていた一人だったハリーが、
「ねぇ、あの幽霊と朝露との間になにかあったの?」
「い、いや・・・僕もよく知ってるわけじゃないんだ。一年生のとき先輩から聞いた話だったから冗談だと思ってたんだけど。
先輩の話だと、昔ホグワーツに彼女がいたとき、何人かの生徒と一緒になってピーブスが酷いイヤがらせをされた事があったらしい。それ以来ピーブスは、彼女の名前を聞くだけでも怖がるようになったって」
もっとも、ジョークが好きな嘘ばっかりの先輩の話だったんだけど、と付け足してくれたパーシーの説明は、残念ながらハリーの不思議に思った気持ちにはまったく応えてくれるものではなくて、余計に不思議になっただけでしかなかった。
何個も何個も、悪い想像と良い想像がつぎつぎと浮かんでいる内に、気づいたときには心地よい円形の部屋にフカフした肘かけ椅子がたくさん置いてある、グリフィンドール寮についてしまっていた。
女の子の女子寮と、男の子の男子寮とに別れて、らせん階段のてっぺんに案内されたハリーたちは、四本柱の豪華な天蓋つきベッドを見ると、クタクタになった疲れと満腹のお腹を今になって思い出して急にすごく眠くなってきてしまう。
同じ部屋のベッドで眠る4人も同じように疲れてたんだと思う。
みんなパジャマに着替えてベッドに入るだけで、しゃべる元気も残ってなかったらしく、そのまま気づかないうちに眠ってしまっていた。
朝から、みんなよりも驚くことが多すぎていたハリーは、特に疲れていたから眠るのも速かったし、今日あったことを思い出している時間は少しもなかった。
けど多分、それがよくなかったのだろう。
同じ寮のみんなが寝静まった夜の遅くになってから、ハリーは急に「パチリ」と目が覚めてしまって、今度は逆に眠れなくなってしまった。
昔ダーズリー家にいたころに、ダドリーがやった悪戯を自分がやったことにされた罰として、ペチュニア叔母さんから命じられた作業に夜までかかってしまった日のことを思い出す。
疲れすぎて眠いのに、なぜだか眠れなくなってしまう。
けど、それは今のハリーには良いことだったかもしれない。
夢の中でハリーは、奇妙な夢を見てしまっていたからだ。
その夢の中でハリーは、クィレル先生のターバンをかぶっていて、そのターバンが絶え間なくハリーに話しかけてきて、
「すぐスリザリンに移らなくてはならない。それが運命なのだから」
と言い続けてくるのだ。怖かった、とても。
今眠りなおすと、また同じ夢を見てしまうかもしれない。今は眠るのが怖くなったけど、同じ部屋の他の男子たちを起こしたい気持ちにはなれなかった。
とりあえず寮の中を一人歩いてみることにする。
ホグワーツでは夜の時間だと、生徒たちが寮の中から外に出ることは許されてない。けれど、グリフィンドール寮の中だけなら夜の間も移動ができる。
狭い範囲だけだけど、寮の中を歩いていたハリーの耳に、誰かと誰かが話している声が聞こえてきたのは、その時だった。
こんな夜中にいったい誰が・・・? そう思って声のした方に足音を殺して近づいていったハリーは、思わず驚いて声を出しそうになってしまう。
ボゥ・・・と青白く光る体を浮かべている甲冑姿のゴーストを、夜の暗闇の中に見つけてしまったからだ。
ただ驚かされたのはゴーストだけじゃなくて、話している相手もだった。
『おお、これはご馳走だ! 嬉しいですよ。
青カビのケーキに、苔のピザとは・・・わたくしの好物を覚えていていただけるとは光栄の至りです、ミィ・レイディ・アケガタ』
「そう、よかった。昔の話だから思い出すため挨拶がてら、お土産を配ってたんだ。忘れてなかったみたいで何より」
朝露が、騎士の幽霊と声だけなら楽しそうに話しているのが聞こえていた。姿も見える。
でも彼女がほんとうにホグワーツの幽霊たちと親しかったなんて。
『そういえば先頃、ピーブスに会いましてな。どうやら貴女が帰ってきたと誰かに聞かされて、怖さで隠れ潜んでしまったようですな。これで我々もしばらくは穏やかなで仄暗い静寂の中で過ごすことができそうですよ』
「・・・ぴーぶす・・・? いたっけ? そんなゴースト・・・」
『ん? ハハハハ! 相手からは恐れられていても、貴女からは覚えてすらいなかったようですな。無理もない、あの頃から貴女には小物としか見えていなかったようでしたからね』
「そう・・・だね。覚えてないなー、その名前は」
表情もしゃべり方も変えないまま、出会った日とまったく同じで、ハリーには見覚えのない、無愛想にも見えなくはない話の仕方。
ただハリーの目には不思議と、懐かしい景色だったように見えた気がしていた。
ダドリーが悪さをした子供の家に、代理として謝りにいったアンが、その後も挨拶に回ったり、誰かからの贈り物のあまりを押しつけられたときには、不快そうにあしらわれても配ってまわっていたときの姿と表情が、ぜんぜん似てないのに似ているような気がする。そんな気がした。
話を続けている二人をそのままに、その場からハリーは何となく立ち去った方がいいように思って部屋へと戻ると、そのままベッドで眠ってしまった。
不思議と先ほどまでの怖さは忘れてしまっていた。
今度の夢には、クィレル先生も、先生のターバンも、ターバンからの声も聞こえなかった。
代わりに、アンが朝の挨拶とともに起こしてくれる夢を見た。
次に目覚めたとき、ハリーは怖くはなかった。ただ、とても寂しかっただけで・・・・・・。
その次の日からホグワーツでは、さっそく本格的な授業がはじまっていた。
魔法を使うための授業は、ハリーが考えていたものとは大分違っていて、星の動きや星座の名前、奇妙な植物の育て方を学ぶところから始めさせられる。
ただ呪文を唱えて魔法の杖を振るうだけで使えるほど、魔法という力は簡単なものではないのだと思い知らされる厳しい内容だったけれど、覚える内容はどれも面白いものばかりで飽きることは全くない。
その中で、一年生の子供たちが一番待ち望んでいた授業が『闇の魔術の防衛術』だったのは、ハリーたちの年齢だと仕方がないことだったし当然でもあった。子供はいつの時代でも、強いヒーローには憧れるものだ。
ただ一番憧れる魔法の授業だからこそ、教えてくれるクィレル先生の授業は肩すかしなものに思えたのは当然の反応だった。
「わ、わ、私が教える授業であるや、や、闇の魔術のぼ、ぼ、防衛術は非常にき、き、危険で強力な魔法、です」
実際に生徒たちを前にしたときまでドモリながら、先生は子供たちに教えようとはしてくれる。
教室には、ニンニクの匂いが充満していて、ルーマニアに研修でいったときヴァンパイアに襲われたアフリカの王子を助けたときに褒美としてターバンをもらった際、同時に背負わされた名誉の負傷だと先生は語っているらしいが、少なくとも生徒たちの中で信じているのは0だった。
「で、で、ではまず基礎的なこと、と、とから・・・・・・運悪くヴァンパイアに遭遇してしまった時ゆ、ゆ、有効な手段について学んでいきましょう・・・。
ミスタ・ウィーズリー、ニンニクを使ってど、ど、どうやって吸血鬼を倒して仲間をま、ま、守れると思いますか?」
そんな授業で、いきなりそんな質問をされても答えられるはずもない。
みんなの予想通りロンは質問に、大した答えを返せなかったけれど、クィレル先生が教えた答えと実践方法の授業も、とくに大した内容だったわけでもなかった。
ついには、『ニンニクを溶かしたスープを吸血鬼に飲ませて倒すため罠にはめる』などという倒し方の道具を作るため、にんにくスープを煮込んでいる時間だけが過ぎていくという為体。子供たちが1時間もたたずに飽きて失望するのは当然の授業内容だったのだ。
それが授業時間の3分の1ぐらいまで進んだ頃。
「そ、そ、そろそろ時間のようで、で、ですね・・・・・・闇の魔術と防衛術の助手をしてくださるアケガタ先生とこ、こ、交代します」
「どーもー」
やる気のなさそうな態度と表情のまま、朝露とクィレル先生が位置と立場を入れ替える時間になったのは。
「えー、クィレル先生の授業はたいへん参考になるものでしたし、非常に勉強になる優れた内容でしたねぇー。お見事な内容でした、私に文句の付け所がないほどでしたよ」
ものすごく退屈そうな表情で、文句だらけだったと言いたそうな声で彼女は語る。
そこまではハリーにも、そうなるだろうなと思っていた話だったんだけれど、
「ではせっかくですし、クィレル先生の授業でやった内容を応用して、助手としての授業に活用してみようと思います。
ヘル・ウィーズリー。
先ほど作ったニンニクのスープを、もし吸血鬼に奪われて魔法使いを倒すために利用されてしまったとしましょう。
あなたは、このスープを使って魔法使いをどう倒そうと考えますか?」
「え? それは・・・えっと・・・・・・」
何で自分に、そんな質問を2度も聞く相手に選ぶのか?そう思いながらもロンは必死に考えて、ない知恵を絞ってそれらしい答えを見つけ出そうと努力してみる。
「・・・普通のスープと入れ替えて、相手に飲ませる。じゃないですか・・・・・・?」
その末に出てきた回答には、教室内にいた子供たち全員が笑わせられることになる。
そんな悠長に待っていてくれる魔法使いがいるはずもないし、マグルだってもう少し知恵は回るだろうに・・・・・・失笑と冷笑がクラス内を飛び回る中。
恥ずかしくなって着席しようとしていたロンに向かって、
「はい、素晴らしい回答でしたね。さすがはヘル・ウィーズリー、お見事です」
補佐をやっている助手の先生からは絶賛されて、他のクラスメイトたちと一緒にポカンとさせられるしかなかったからだ。
朝露もとうぜん説明ぐらいはするつもりでいる。
「なぜなら、その方法を“もし本当に実行できた時”には、今の話を「ありえない」と笑った人たちは、全員たおされることになるからです。
『そんなこと絶対ないから大丈夫』と思って笑った方法は、ただ本当に実行しただけで防衛術は意味がほとんどなくなってしまうしかない」
「・・・・・・」
「初歩の話になってしまいますが『闇の魔術の防衛術』とは、闇の魔法を学ぶための授業ではなく、『闇の魔法から防衛する魔法』を教えてもらう授業でもないのです。
『闇の魔術を使って他人を傷つける魔法使いから防衛する術』を学ぶための授業のことです。
闇の魔法使いという人たちは、『自分の使う魔法への防衛術』を使える相手と戦うときに、『自分の魔法から防衛する魔法を突破できる工夫』を考えて使ってくる人達の名前だからです。
常に予想外の手を使ってくることがあり、今知られている魔法だけで挑んでくるかは決まっていません」
「・・・・・・・・・」
「――今より暗くて闇に包まれた時代がありました。
その時代に生きていた闇の魔法使いという人達は、闇の魔術の防衛術を学んだ魔法使いたちが『これを守っていれば大丈夫』と思っている心の隙間をついて、警戒していなかった油断していたところから近づいてきて、そして沢山の人が倒された悲しい時代として知られています。
闇の魔術をつかう闇の魔法使いとは、そういう人達のことです」
「・・・・・・・・・・・・」
「たとえば―――『例のあの人』がそうだったように。
そして―――『私』のように・・・ね?」
つづく