試作品集   作:ひきがやもとまち

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昨晩までに思いついてたのを幾つかパターン分けして書いてみてるのですが、どうにもオリ作と言うのは良し悪しが解らず四苦八苦しております。(ギャグかシリアスかですら迷います・・・)

ひとまずは出来上がってる試作品の内プロローグが出来てるのを一本出させてください。反応が見たいですので。


オリ作プロローグの試作品

「悪いんだけど、君。一回死んで転生してもらってもいいかな?」

「は?」

 

 いきなり訳の分からないことをいわれた日本の男子高校生は「なに言ってんだコイツ? アホなんじゃね?」と思ったことを隠そうともしない露骨すぎる表情で、いぶかしげに返事を返した。

 

 場所は彼の家にある、彼の私室。時刻は午前0時丁度。そこで時計が止まって秒針も動いてないから間違ってはいないだろう、たぶん。

 

 目の前にはテルマエ・ロマエで阿部弘が着てたのよりかは小綺麗な色したトーガをまとった白人美青年が腕組みしながらこちらを見下ろしている。

 

 深夜に本を読んでたら、いきなり時間を停止させられてローマが出てきた。しかも周囲を見渡してみたら景色も一変していて白一色の謎空間に転移しているのである。これで驚かない方がおかしい。

 やはり異世界転生モノや転移モノの落ち着き払って神様とやらの話を聞ける日本人主人公たちは頭がおかしいと確信できた瞬間だった。

 

「・・・いや、そんな内容の思考を至って冷静にされても読んでる俺の方が困らされるのだが・・・・・・まぁいい。とりあえずはこちらの用件について説明されてもらおう。

 ただし、地球人には未だ解明できてないせいで理解できない部分とか、種族的な理由で説明不可能な箇所も多いから、この時代のこの星のこの国に住んでる地球人にわかりやすいよう俺なりに訳して話すから、そのつもりで聞けよ? 真に受けすぎて後から「聞いてない」的なこと言われても困るからな?

 思考を読めるテレパシーを開発したぐらいで、神様と同類扱いされても責任もてんぞ俺は」

 

 (口調は荒いが)懇切丁寧に前置きしてから説明してくれた彼の話によれば、どうやら彼は俗に言う『転生の神様』ではないらしい。

 

 本人曰く「お前たちの概念で言えば地球外生命体ーー宇宙人だな。もっとも、俺たちからしたらお前たち地球人の方が俺たちの星の外に住んでる星外生命体な訳だけど」

 

 との事だった。

 要は、『神様の奇跡レベルにまで近づいた超科学力を誇る宇宙人』と言うことらしい。

 ・・・ちなみにだが、興味本位で聞いてみた「神の実在、非実在」の件については『現時点では不明』とのこと。実在する証拠とされた物はあらかた否定し尽くしたが、実在しないとする証拠は未だ発見できていないからだそうだ。

 

「やったことを立証するより、やってないことを立証する方が難しい。俺たちの住む星でも、お前たちの住む地球でも生命体の作る全文明に於いて変わらない真理だな」ーーとのことだった。

 

 閑話休題。

 

「地球と違い俺たちの星では、世界を生み出す神様の猿真似ぐらいなら簡単にできる程度の科学力を持つまでには至ることができている。そのせいか、暇つぶしに世界を創造して管理運営するなんて趣味が流行っててな。最近、社会問題になってきてるんだよ。

 寿命が長すぎるから暇つぶしに丁度いいってのは分かるし、きちんと最後まで面倒見れるってんだったら悪い趣味とは俺も思わないんだが・・・・・・どうにも一度生み出した命に対して無責任になる奴が増えてきててな。創ってからしばらくして新しく生み出した世界の神に変わろうとしちまう奴が後を絶たない。

 法整備とかで減らしはしてるんだが、0に出来ないところもまた地球と変わらない知恵ある生物としての構造的欠陥なんだろうな。既に神様役が不在の世界が2桁に達しちまった状態だ。

 星に住んでる人々が神を信じる信じないは人の自由だから、別に気にはしないんだが・・・神様不在のせいで起こる天変地異とかで滅びられるのは流石に目覚めが悪い。出来ればそういった星で起きてる問題解決用のワクチンになって欲しいんだよ」

 

 ずいぶんと善良的というか、子役人風の性格している神様モドキだなと思いつつも質問してみる。

 そのワクチン役とは不在となった神様の代理をやれと言うことなのか、と。

 

 答えは手をパタパタさせてのNo。断固とした否である。

 

「違う違う、そうじゃあないんだ。てゆーか、一度創ったモンを手放して問題が生じても代わりを連れてくるから大丈夫なんてなったら再発奨励になっちまうじゃないか。意味ないどころか逆効果だよ。断固としてNoだ。

 俺たちがお前に望むのは、あくまでワクチン役としての星に打つ薬になってくれることだけだよ」

 

 然もありなん、だ。現代日本でも問題になってる部分だから分かり易かった。なるほどこれが「現代日本風に訳す」と言うことかと感心しながら次の質問。ワクチン役とは具体的にどういう物なのか?

 

「その星の一員として生まれて生きて死んで大地にーーつまりは星に還る。魂の循環って奴だな、地球では輪廻転生とか言うんだったっけか? アレになって星を癒して欲しいってことだよ。

 クローンとか機械の体に脳を移植しなければ魂は普通に星へと還って別のナニカとして根を張り直せるから、本来その場にいない人間をワクチン用に付け足して地に帰すことで薬に出来るならそれに越したことはないだろうって言うのが俺たちの星の倫理観でな。

 こればっかりは地球人に理解できるよう説明できてる自信が俺には無い。倫理観なんて個人で異なるものだし、住んでる場所に依存するものだからな。納得できなければ拒絶してくれてかまわない。所詮は俺たちの都合で勝手に起こしちまった問題に多星人を巻き込んでやってる善意の押し付けボランティアでしかない作業だし」

 

 微妙に自虐的な神様モドキに内心では苦笑しつつ、その世界というか星について詳細な説明を求めてみた。さすがに世紀末英雄伝みたいな世界観だったら強制されても行きたくないし・・・・・・。

 

 言われて神様モドキは「ぽん」と手を打ち、

 

「そっか、最初にそれを説明しなきゃいけなかったな。悪い、忘れちまってたわ。これと同じ説明をいろんな星のワクチンになり得る素質持ちの元を回り続けて百八十一人眼だったせいで知らずに省略しちまってたようだ。以後は気をつける。

 ーーーんで、星についての説明だが・・・・・・」

 

 謝罪した上で説明してくれた彼の話によると、その星というか天体全体を含めた世界は現代日本で言うところの『ファンタジー世界』に当たるらしい。

 エルフやドワーフみたいな種族がいて、人間もいる。数の上では繁殖力旺盛な人間が一番だが、モンスター系の亜人種族もあわせればゴブリンみたいなザコ種族がダントツで多いらしい。だからこそ人間側の国家にとってはモンスター退治も立派に産業として成り立つ流れになっているとのこと。

 宗教が崇めている神は実在しているが、世界そのものが彼らの科学力で生み出された物でしかないので、彼ら神を称している者たちも宇宙人たちによって神として創造された人造生命体でしかない。・・・なんか夢のない世界だった。

 

「実際には名前は違うが、お前が転生を承諾してくれるなら現代日本人に分かり易く脳内変換するよう設定し直しておく。魔法じゃなくて科学だからミスする可能性は限りなく0に近いぞ?

 無論のこと0はありえないが、それ言い出したら注射器一本打つことすらできなくなるだろ? 確率論に0は無いんだと割り切ってもらうしかないのも地球と同じだよ」

 

 これもまた分かり易い説明。さらに続きを要求。説明を再開。

 

 文化レベルは中世ヨーロッパに近いが、若干和洋折衷が混じってもいる。

 これは神の不在と関係あることだが、世界は周期的にリセットを掛けられているため、元あった文明の一部が遺伝記憶として次に生まれてくる世界に継承されてきた結果らしい。

 同じ大陸の同じ地域に、ヨーロッパ風の国と和風の国とが存在していた異なる世代も普通にあり得るのだと。

 

「文化は住んでる土地に依存する形で育まれる。リセットするのは文明であって星そのものじゃないから、時にはそういう奇妙な偶然も起こり得るさ。

 むしろそう言った想定外が起きてくれないと俺たちにとっての娯楽性がない。『ここはこうだから必ずこれが生まれる』なんて法則が遵守されてたら、管理運営する側にとっては作業でしかなくなっちまう。退屈なだけで楽しくないよ」

 

 もの凄くよく分かる理屈だった。

 あと、この神様モドキたち思っていた以上に俗っぽい。

 

 ーーー説明を再開する。

 

 周期的に文明をリセットしている理由は『それ以上続けると却って彼らを滅亡に追い込む物を作り始めるから』。約一万年ぐらいを目処にしてリセットを掛けることで星と住んでる人たちを結果的にだが永らえさせるのが目的なんだとのこと。

 

 よくある「世界を滅ぼさないためには今の進みすぎた人類は邪魔だー!」的な思考かと思ったのだが微妙に違っていて、どういう理屈でなのかその世界の文明は一万年ぐらいを目処に必ず末世状態に陥ってしまうらしい。

 世界滅ぼす目的でトンデモ無いもの造り始めてる国やら個人やらが多く出てきてる時点で、その世界の終わりは確定されてしまっているから、代わりに世界破滅ボタンを押して次の世界のための肥やしになってもらうと言うわけだった。

 

 思うところがないでもないが、平和に生きてる人たちを「後の世のため!」とか言って正当化しながら世界滅ぼさないだけマシかと一時は納得し掛けたが、はたと気づいて確認しておく。

 

 ーーーもしも一万年経って世界が末世になってなかったらどうするのか、と。

 

「その時は保留して末世がくるまで待てばいいだけだろ?

 文明や平和なんてどんなに長くても百年か二百年の短時間で腐り落ちるものなんだから、数十万年単位で生きてる俺たちが待ってやれない理由がどこにあるんだ?」

 

 本気で不思議そうに聞き返されてしまうと返す言葉がない。この宇宙人さん、変なところだけ超絶シビアだった。

 

「その時のために『約一万年』と大雑把な括りにしてあるんだし、三百年や四百年ぐらい四捨五入して0だろ。猶予してやれよ、そんな短時間ぐらいなら。

 つか、「絶対に一万年コッキリでないとダメなんだ!」とか叫んで数字にこだわり、平和に科学が使われている時代に「将来の危険性」がどうとか言って殺戮して来るやつがいたら普通に妄想独裁者だろソイツ。言ってることとやってることにギャップ有りすぎで、キモいし引くわ。

 むしろソイツを皆のためにも殺せって感じ」

 

 宇宙人さんは過激思想。でも分かる。

 

「・・・ああ、また一番重要なこと言い忘れてた。お前のワクチンとしての必要性と役割についてのなんも説明してなかったな。本気ですまん。割とマジで疲れてきてるんだよ、お前の前の適合者の奴が面倒くさすぎる奴だったせいで精神的にさ・・・。

 ーーーよし、気分入れ替えた。説明はじめるぞ?

 お前にやって欲しい役割は、神様がいるならやってもらわなきゃならない役割の一つで、『地表の文明がリセットされた星の回復薬』になって欲しいってものなんだよ」

 

「言うまでもないが、世界中の超文明根こそぎ壊し尽くすからには星に与える被害もバカにならん。地下数千メートルにある核シェルターまで吹き飛ばそうと思ったら星の中心部近くにまで被害が及ぶことは避けられないからな。到底、その時死ぬことになる人類含めた生物数百億程度の魂じゃ土に返ったところで星の傷が癒しきれん。

 と言うか本来、時間をかけてゆっくり直すのが自然の回復力なんでな。それを短時間で一気に傷つけるわけだから、普段と違って特効薬が必要になっちまうと言うわけだ」

 

 時間をかけて人類の文明滅ぼしたらどうか? ーーーと言おうとして止めた。本末転倒すぎたから。まぁ言わなくても読めちゃう相手なんだけども。

 

「その通り、滅ぼすのを最終手段としてギリギリまで待ち続けるから必要になるのがワクチン役としてのお前だからな。星のために人類を時間かけて真綿を締め上げるように殺していくんだったらお前を求めにこないし、そもそも他の効率的な手段をとればいいだけだろ? 数字だけを問題にするならやりようは幾らでもあるんだからな。

 人が自分たちの過ちで滅びる分には人類の勝手だ。好きにやらせるさ。俺たちが守りたいのは自滅したバカどもの次に生まれてくる子供たちの住んでく場所と環境だけだ。バカがバカ思考する分にまでは責任もてんよ。・・・おっと、一応言っておくが啓蒙とか予言だとかで滅びの警告はちゃんとしているぞ? 不在になった神役の奴は面倒くさがってやりたがらないから、俺たち他の手が空いてた奴とかがな。それでも滅びを迎えるのを防げたことがないからこそ、お前みたいのをあらかじめ星に打ち込んどく必要性がある訳なんだから」

 

 ここまでの説明を聞いて、ふと疑問に思ったので聞いてみる。

 

 特効薬とワクチンでは役割が真逆すぎるのではないだろうか? ーーと。

 

「ああ、これも説明してなかったか・・・どうも今日の俺はダメダメだな。明日あたり休暇申請しといた方がいいかもしれない・・・。

 特効薬とかワクチンって言うのは、言葉の彩でな。今のフヤケたシチューみたいな俺の脳味噌じゃあ地球言語の中から適切なのが思いつかなかっただけなんだ。本当にすまん、マジで自分でもこれほど疲弊しているなんて思ってなかったから・・・。

 ーーーああ、もういいや。気を使うの止めて俺なりの言い方と表現だけで話させてもらうぞ? その方が今の俺が話す場合に限りにおいて分かり易く話せそうだし」

 

「つまりだ。俺風の表現を用いて説明すると、薬って必要になってから作ったんじゃ遅すぎるだろう? 患者の方が完成よりも先に死ぬから。

 と言って、使う患者は一人というか星一つに対してだけだから、専用に調整した方がいいに決まってる。患者用にあわせるなら患者の側に寄り添いながら、時間をかけた方が効果の程は上昇しやすい。

 んで、お前を先に転生させて生きてる内に星専用の薬として機能するよう魂を調整する。人間には環境に適応して進化する機能があるから、別の星に記憶と魂を保持したまま、別の肉体を持って生まれ変わらせた方が比較的自然にとけ込めるはずだと俺たちは考えている訳なんだ。

 要するに、数千年後にくる文明崩壊後の星が生きてけるように、数千年まえから根を張って時間を掛けて星全体に行き渡って於いてほしいと、こう言うわけだ」

 

「え? 「つまり世界を救う勇者に慣れって事なのか」って? 違う違う、俺が救いたいのは星っていう場所の寿命であって、上に乗っかってる他人が創った人間たちには大して興味ないよ。

 なんだったかな・・・たしかお前たちの国の娯楽に『アラヤ』とか『ガイア』とかって概念が出てただろ? アレと似たようなものさ。勇者はそれぞれの種族から選出された現地の神が選び出して使わした魂の持ち主。お前は星を死なせないためだけに打たれる薬。敵対する必要性は皆無だが、仲良くする必要性もこれと言って特にはない関係性だよ。

 勇者ってのは、単一を守るための存在だ。全体を守るために動く奴も希にいるが、基本的に自分たち種族の文明を犯すガン細胞と戦うために生まれてくる。

 一方で勇者と敵対する連中は種族全体にとっての敵であり、ガンではあっても星にとっては地表に生まれた生物の変異体でしかない場合が多い。

 地上に生まれた生物同士が互いに滅ぼしあうだけなら生存競争だ。星にゃ関係ないから好きにしていい。味方してもいいし、敵になってくれてもかまわない。極端な話、星と敵対する道を選んだとしても俺がお前を殺しに行くことはないだろうな。

 俺が欲しいのはあくまで星と同調して薬となったお前の魂が死後、惑星全体に根を張ってくれて数千年後に訪れる滅亡後に備えてもらうことだけだから。

 転生してもらう交換条件として与える特権も、神様の代わりじゃないから星を滅ぼす力まではやれんし、調整に必要な間は強制的に生きさせるから、生きてる間になにしてくれ用がどうでもいいんだ。

 別の星に強くなった別人として生まれ変わっただけだと思ってくれてかまわない」

 

「あ? 星の神様たちは薬として使えないのかって? ダメダメ、あんな奴ら使い物にならないよ。あいつら犠牲精神は説くくせに自分が犠牲になるのだけは滅茶苦茶イヤがるもん。

 そのくせ僧侶たちが使う癒しの魔法は、アイツらの恩恵がないと使えるようにならないんだよなぁー。魔術師たちの使う魔法にも傷を癒す魔法はあるんだが、魔法は信仰心と違って素質を持ってないと使えるようにすらなれないせいで魔法貴族社会が生まれやすい性質を持ってるし、一長一短を保つためにも出来れば両立しておきたい。だから奴らは使えない」

 

「ーーこれが最後の説明になるんだが・・・ぶっちゃけちゃうと、お前は本当の神が改心して自分の役割を果たせるようになり戻ってくるまでの時間稼ぎのためだけに使い潰される捨て駒に近い立ち位置なんだよ。

 使い捨ての薬ってそう言うものだと俺たちは思ってるし・・・、もともと構成目的で作られた制度だし、俺たちには俺たち以外の星に住む人間たちに然したる愛情は抱いちゃいない。自分で創った世界に住んでる生き者たちなら別なんだけどな。

 最終的には新しく創った分も含めて元の神様役が戻ってきて管理運営してくれるようになるのを目標にしてるから、お前に多くの者を与えて送り出すけどそれ以外は完全に放置する。死にそうにならない限りは手を出さない。

 だからこそ無理強いだけはしたくない。こっちの問題に巻き込むわけだし、さっきから言ってるとおり他の候補がいないわけじゃない。最悪の場合、星諸共すんでる生物たちすべてを見捨てる選択肢だって選べはする。だからお前がイヤだと思ったら断ってくれて全然かまわないんだ。

 薬として根を張るまでに時間がかかりすぎるから、あまり多く考える時間はやれないが、それでも一週間ぐらいは待てるから検討してみてくれ。一週間後にまた来るよ。それじゃあ」

 

 そう言って去っていこうとした彼を呼び止めて、男子高校生は言った。その提案を受け入れますと。

 

 宇宙人は少しだけ驚いてから質問する。「いいのか? 考えなくても・・・」と。

 男子高校生は肩をすくめながら、

 

 

 

「どうせ今のまま学校に通っていい大学に入学して一流企業に就職できるような学力ないですからねぇー。おまけに両親とはソリが合わなくなってきましたし、クラスメイトにも知り合い以上になりたいと思える人たちがいない。新しい出会いの可能性がないこともないんでしょうけど、それ言い出したら切り無いですし意味ないでしょう?」

 

「それに何より、今の日本に生きていると、なんだか気持ち悪く感じる日が多くなってきましてね・・・。

 いい顔をして正論を吐きながらつまらない反論を聞いて心の中で舌を出し、相手を見下しながら表面上の礼儀で皆にあわせようとする自分自身の醜悪さに愛想が尽きてた所でもありますし、このさい世界諸共に捨て去ってしまうべきなのかもしれません。

 相手に気を使って我慢しながら、本心では罵倒している今の状態よりかは何もかも投げ出して異世界に逃避した逃亡者という名の負け犬になったほうがスッキリしますよ」

 

「気を使うべき家族も、学校に通う生徒としての役割と責任も、社会に大して果たすべき義務も、周りを壊したいほど憎んではいないからと言う理屈で何もしない自分を正当化する日常も何もかもぜんぶ放り出して逃げ出したい。

 負け犬になる道を自分で選びたいんですよ。負け犬にさえなれば、それ以上自分が落ちるところがなくなる。落ちてしまえば本音を言える。本音だけを言って生きていける。

 嘘ばかりついて吐き気をこらえ続けなければならない生活には、もう疲れました・・・。もう取り繕うにはウンザリですよーーーーーー」

 

 

「・・・いや、まぁ・・・引き受けてくれるんだったら俺としてはそれでいいんだけどさ・・・。今までの会話内容とは真逆にブラックすぎる内面吐露されてチト引かされてるぞ、今の俺・・・。ま、まあいいや。なにはともあれ了承してくれてありがとう。

 ーーーそう言うことにしておくよ・・・うん」

 

「それでなんだけど、生まれ変わりに際して要望とかなにか有るか?

 その星に打つ薬になってもらう必要があるから、現地人として生まれ変わらせるつもりだし肉体は完全に0からの作り直しになっちまうから、別の形にするのも労力的には変わらないから望みがあるなら叶えといてやるぞ?

 欲しい能力とかでも別にいいし、人間以外でも問題なしだ」

 

「では、エルフの女の子で魔法剣士をお願いします。それ以外は適当に」

 

「ふむ? その心は?」

 

「キャラメイク可能なRPGで最初に作ったキャラがそうだったせいか、惰性で延々と同じようなキャラ作っては使い続けてきた結果、なんか慣れちゃってるんで気楽そうだなーと」

 

「ああ、そう・・・。えっと、そのキャラメイクしたエルフってこのデータの奴か。これをそのまま再現するってことでいいのかな?」

 

「ええ、それで結構ですよ。ーー正直、最初に作ったのが昔すぎて細かい部分は覚えてないですからご自由にどうぞ」

 

「・・・・・・(なんか、今までで一番重い理由で提案を受け入れた奴が、一番適当な感じに生まれ変わった後の自分を決めちゃったなー)んじゃ、はいよ。元ネタがあるから再現するのが超楽だったわ。

 もうあっちの星にはお前用の新しい体が用意できたし、いつでもいけるが今から行くか? 魂の入ってない入れ物だけの肉体なら転移も楽だし、到着直後の場所も今なら変えれるぞ?」

 

「では、ある程度大きな国の辺境地域とかでお願いします。特権階級とか不正とかがあると尚良しです。利用して使い捨てるときに罪悪感を感じなくて済みそうですからね」

 

「(性格悪!?)わかった。人間の支配している大きな国のひとつに、人間以外を下等生物として見下して差別している国があるからそこにしよう」

 

「お願いします」

 

「(お願いしちゃうの!? お前が転生するの差別されてる種族のエルフですよ!?)わ、わかった。それじゃあ・・・・・・本当にいいんだよね?」

 

「お願いします」

 

「・・・・・・・・・それじゃ、しばらく眠ってくれ。てい」

 

 とん。と額の真ん中を宇宙人の人差し指が突いて、男子高校生は“死んだ”。

 そして魂が抜かれ、肉体の縛りから解放された魂が空へと昇って別の天体へと跳躍していった。

 

 

 

「しかし・・・・・・」

 

 高校生の魂を見送った宇宙人の彼は、なんとも表現しようのない顔でつぶやいた。

 

「“アレ”って本当に薬になれるのかね・・・? 魂の効能ってのは本当によく分からん・・・」


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