ひねくれはひねくれで今より更に本来の姿へ近くしながら書き進めるつもりですが、気持ちをスッキリするためにもこちらも書いてみたと言う感じの作品です。
大好きな原作ですので(小説版は一巻しか持ってないですけどね、高いんで)アンチと思わず気楽に読んでください。
『王道の異世界転生モノもいいとは思うけど、私はオバロっぽいのが好きなの☆
だからあなた一度死んで異世界に生まれ変わって王道アンチして魅せてちょうーだい♪』
「あ?」
学校からの帰宅途中、いきなり目の前にエロい衣装の変な美人が現れた次の瞬間。
俺の頭上から雷が落ちてきて感電死。
黒コゲになった死体一つを残して地球人の男子高校生だった俺は死に、異世界の峡谷で目覚めた『幼女姿の私』はチートを持って生まれ変わらせられた転生者ーーいわゆるチート転生モノの主人公という役割を演じさせられることになっていたらしい。
・・・『ダンまち』じゃないんだから神様の無茶ぶりはやめてくれよな、本当に・・・。
「ーーとは言え、雷で殺されてしまった以上は地球で生き返れたとしてもゾンビ呼ばわりですか・・・。このままこちらの世界で第二の生を全うするより他ないわけですねぇー、やれやれ」
肩をすくめながら彼女、肉体名『ユーリ』はトボトボとした足取りで普通に谷の中を進んでいく。周囲には二足歩行のトカゲみたいな生き物の死骸が山のように転がっているが、気にもしていない。
なぜなら自分も殺されてきたばかりだったから。一寸先は闇という言葉を心の底から思い知らされたばかりとあっては死体を見たぐらいでは悼む気にもなれない。「明日は我が身かもな」と感想を抱く程度だった。
・・・ちなみにユーリは神の娯楽として殺されて転生させられてきた特殊な転生者のため、転生得点としてチートは与えられている一方で異世界に関する知識はほとんど与えられておらず、むしろ一部を考えつかないよう意図的に頭から削除されてしまっている。
そのため彼女はこの世界のことを漠然と『オリジナルファンタジー世界』だと思い込まされていたが、実際には原作として『デスマーチからはじまる協奏曲』が選ばれていた。
最初からチートを持っての転生だったため「流星雨」を使った後の「蜥蜴人族の精鋭」たちが死屍累々となって横たわるだけの死臭に満ちた「竜の谷」から異世界旅をスタートさせられている。
また、本人の好みなどの理由により称号やらスキル拾得やらを伝えてくれるメッセーズウィンドウは全て消去してしまった。オフラインだろうとオンラインだろうと画面は見やすい方が好きなタイプのプレイヤーで、特にプログラマー志望でもないため設定をいじくることに面白さを感じるタイプでは無かったからだ。
「あん?」
そこにノッソリと起きあがりユーリに向かって槍を突きつけてきた、一匹のリザードマンがいた。瀕死の重傷を負っており、放っておいても長くはないだろう身体で最期の餞にと戦士らしい決闘を挑んできたのである。
腰に差していた剣を鞘ごと抜いて、ユーリの足下に投げてくる。
特に受け取るべき理由が思い当たらず、黙って見るに任せていたユーリは相手が槍を構えて見せたことから礼儀として一応聞いておいてやる。
「・・・で? この剣をとって戦って、自分と生涯最期の決闘をしてほしいと?」
「●●●●!」
別に返答は期待してなかったのだが、予想を裏切り返事をもらえた。ーー言ってる意味はわからなかったけれども。
「はいはい、了解しましたよ。じゃあ、はいこれどうぞ。《マスク・ド・ダンス》」
「・・・?? ーーー!!?? ×△☆□!?」
右手に持っていた魔術師用の初心者装備《樫の杖》を敵に向けて呪文を唱えたユーリ。魔法の名称が聞いたことがないモノだったからなのか、それとも単に人語を解する知能がない低脳な人間モドキの蜥蜴に過ぎなかったからなのか、相手は最初「なにやってんだコイツ?」と言い足そうに口を半開きにしていたが、すぐに状況を理解して慌てふためきだす。
彼の首から上の頭部を大きな水の泡が包み込んで、窒息させてきたからである。
慌てて泡を取り外そうと両手を伸ばしてはみたものの、所詮は水の塊。触れられはしても掴める道理がない。周囲の空気を魔法で操作し球状を維持しているとは言え、水そのものはタダの真水でしかなく魔法で取り出した以外に特別なところは何もない。
取り出した後なら普通の解除魔法で取り消すことができるが、たった一人生き残っていた敗残兵の彼には魔法で支援してくれる仲間など残っているはずがない。
順当通りに窒息し、やがては地上にありながら溺死するのは確実な彼に背を向けて興味なさげに歩き去るユーリ。
通り過ぎるとき、一瞬だけだけだがリザードマンが助けを求めるように手を伸ばしたように見えた気もしたが、気のせいだろう。
死ぬ覚悟を決めてこちらを殺そうと挑んできた敵が命を惜しむはずがないし、惜しんではなら無い。
滅びをもたらしに赴た者たちは、必ず滅びなければならないのだから・・・・・・。
王道ラノベも好きではあるが、同じくらいに『HELLSINGU』や『ドリフターズ!』『幼女戦記』なんかの王道アンチ系作品が好きな特徴を気に入られ、神様よって適当な異世界転生モノの世界に放り込まれたチート魔術師の少女ユーリ。
はたして、彼女の征く先には何が待っているのだろうか?
死か破壊か救済か? はたまた救いようがないほど混沌化したカオスの権化となる未来の自分か?
すべては道を選んで進んでみなければ分からない・・・・・・・・・。
「さて、人里はどちらに行けばあるのでしょう? ・・・ん? あれはーーー空飛ぶ蜥蜴・・・ワイバーンって奴ですかね?
行く宛も特にはないですし、追いかけてみるのも一興ですか」
つづく
設定:魔法《マスク・ド・ダンス》
コミカルな名前だが原典は最低最悪な魔法。『魔弾の王と戦姫』にでてくるサディストの敵キャラクター・グレアスト侯爵が考案した処刑方法『仮面の踊り』を再現する。
原典だと処刑する者の首に鉄の首輪をはめ、頭部全体を覆う鉄仮面をかぶせる。これは耳の上あたりに一カ所だけ穴が開けられているだけのものだ。
その穴から水をいっぱいまで注ぎこんで蓋をする。
刑を受けた者は息ができなくなり、踊るようにもがき苦しんだ末に地上で溺死するという残忍なもの。
これを魔法で再現したのが今話で使った《マスク・ド・ダンス》である。
ユーリはチート魔術師ではあるが原作で登場している魔法の総数自体が少ないので、オリジナル魔法を多く与えられている。
ただし禄なモノは多くないうえに、ヒドいの内容のが大半を占めている。
基本的には色んな作品で禄でもない使われ方をしていた逸話を持つ系の魔法。
本人の性格と相まって、本気で禄でもないチート魔術師として生まれ変わらせられている。