試作品集   作:ひきがやもとまち

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セレニア主役でオリジナルの恋愛ファンタジーみたいですね。3部作でーす。


言霊少女のファンタジーな恋物語 第1話

 セレニア・ショート伯爵令嬢、御年七歳。それが私です。・・・そう言うことになってます。なってしまっているのが現在、私が置かれている状況なのです・・・。

 

 

「現実というのは本当に難儀なものですよねぇー・・・」

 

 そうつぶやきながら本を閉じ、視線をあげた先に広がっている光景を視界に収めた私は続けて嘆息。

 

 煉瓦づくりで煙突の突き出してる家屋が建ち並び、あちらこちらから金属を叩く音と家畜として飼われている牛や馬などの鳴き声が聞こえてくる、如何にもな中世ヨーロッパ風ファンタジー景色。それが私の今見ている光景です。

 そして、“生まれ変わってから”今までずっと私が見続けてきた光景でもありました・・・・・・。

 

 失礼。挨拶が遅れてしまったようですね。

 私の姓名はセレニア・ショート。ショート伯爵家の長女にして、現時点ではただ一人の子供であります。

 

 それから、もう一つだけ付け加えるとするならば。

 ・・・・・・私、現代日本からの転生者ッス。ゾンビにはなってませんけど、男子高校生はやってましたね一応は。

 

 要するに、『死んで異世界に生まれ変わったら性別変わって女の子になっていた元男の現美少女キャラクター』。

 そこに至るまでの幼年時代、元男の現美“幼女”になっちゃっているのが今の私というわけです・・・・・・。

 

 

 

 

 事の起こりは、残念ながらよく覚えていません。

 なんと言っても、赤ん坊からやり直してましたからね。覚えていようがいるまいが、正しく思考し分析できる知能レベルなんかあるわきゃない年齢では風景を記憶しておくことすら事欠く有様。

 脳の機能上昇とともに引き継いでいた記憶との刷り合わせなどを行っていった結果として今がある私としましては、死んだときのことなんか赤ん坊になる寸前のことなので覚えていられるはずもなし。転生の神様とやらに会ってたとしても、一回だけ数分話しただけの人を覚えておける記憶力の持ち主なら前世の私は受験勉強で苦労しなくて済んでたと思いますので全面的に却下です。

 覚えてませんし、存じ上げません。用があるならそのうち自分の方から出てくるでしょうよ、ぐらいの認識しか持ち合わせない程度にはね。

 

 

 この様にしていろいろ割り切りながら生きていかざるを得なかった私にとって第二の人生な訳でしたが、最近になってから少しだけ困った事態が発生してきてたりしております。

 一応記憶に関係している事柄なのですが、前世の私が持ってた記憶についてじゃありません。転生時に与えられてた記憶。俗に言う『原作知識』と呼ぶべき代物なのですが、私の場合はちょっとだけ表現を変えなければ行けない事情が絡んだりしております。

 

 私の生まれ変わったこの異世界。

 そして、ギャルゲーにヒロインとして登場してそうな見た目の少女セレニア・ショートの体。

 年が重ねる事に少しずつ戻ってくる仕様になってるらしい私の記憶。

 その中で、これら二つについての情報が先日いきなり爆発的に流入してきていささか以上に困ってしまっているわけでしてね。

 

 単刀直入に言ってしまいますと、この世界は実在しないゲームの世界であり、『作者オリジナルの作中作品』みたいな感じで物語の舞台に設定されている架空のAVG世界。

 そして何よりも困ったことに、このゲームのジャンルはどうやら『純愛』。

 それも、一人の女の子が複数の王子様系イケメンキャラに囲まれまくるという分かり易い『乙女ゲー』ワールド。

 

 ・・・死ぬとき男子高校生だった人間に、美少女に生まれ変わって乙女ゲー主人こうやれとかクソゲー過ぎるでしょうが・・・!!! それともマゾゲーですか!? 私はこのシミュレーションゲーム世界でゾンビアタックを仕掛けるためにでも生まれ変わらせられたんですか! モゲろ!

 

 

「はぁ・・・・・・とりあえず日が暮れてきたので、うち帰りましょう・・・」

 

 カラスが鳴くのに夕暮れを待つ必要性のない自然豊かな辺境地域ショート伯爵領。

 本来ならば中央付近に位置すべき高位の爵位をもちながら辺境に甘んじて平然としていられる美形の父には、そこはかとないバックボーンを感じられ、彼の一人娘である私としましては胃が痛いことこの上ない日々が続いいる今日この頃です。

 

 

 ・・・いや、本当。平和が一番なんで何も起きないでくださいね? この歳から乙女ゲー主人公をロールプレイしろって命じられてもマジ無理ですんでね・・・・・・。

 

 

 

 

「ーーそう言えば昼頃に王都からの使者が訪れてきて、書状を置いていったよ」

 

 そんな話を父が持ち出してきたのは、家族揃って食卓に着いてる夕食の最中のことでした。

 

「国王陛下の側室が御子を身ごもられたとのことだった。国に仕える貴族の一員として喜ばしい限りだね。

 ーーそれで書状の内容なんだけど、皇子の誕生を祈願する意味も込めて王都では盛大な祭りを催しているから、王城でも国内各所の貴族を集めてパーティーを開きたい。だからボクにも久しぶりに上洛してきてほしいと書いてあってさ。

 ボクが独身か貴族でなかったら一人で行っても良かったんだけど、伯爵な上に妻子持ちで娘は七歳ともなるとそうもいかないみたいだから家族旅行も兼ねて、明日から準備を始めて明後日にでも王都へ向けて出立しようと思ってるんだけど二人はどう思う?」

 

「「はぁ~・・・・・・・・・・・・」」

 

「愛する妻と幼い愛娘の口から、揃ってため息が!? 何故にどうしてHWI!?」

 

 妻子からいつも通りの反応を返されて、いつも通りに慌てふためくダメっぽいパパ伯爵。その名も『ロンバルディア・ショート』。

 強い騎士の典型みたいな名前の持ち主ですが典型的な名前負けで、武勇とかは空っきしな大貴族出身者の三男坊。

 

 長男が正式に家督を継いだことよりお払い箱となったため就職活動している途上で出会った絶世の美女にして社交界の花、曰く付きの辺境貴族ショート伯爵家の姫君さまの心を射止め見事に逆玉の輿。現在では、名ばかり伯爵な妻の七光りを自認しておられる私の父君様。

 幼少の頃から寝物語代わりに聞かされ続けてきた『ダメな貴族の立身出世物語』の嘘くさいこと嘘くさいこと、この上ありませんよね。いくら子供相手といえども、よくこんな嘘話を信じてくれるなどと思えたものです。

 そう言うところが昼行灯を装ってそうで警戒心剥き出しにせざるを得ないのだと自覚してくれないものですかねー、まったくもう。

 

 

「・・・あなた。陛下の側室が身ごもられたから盛大に祝いたいと言う申し出の意味。正しく理解しておいでなんでしょうね?」

「うん? 王家に跡取りが多く生まれるのは普通に考えて良いことだろう? そりゃ王位継承問題はあるけど、そこら変は序列がはっきりしているし、今は戦時下じゃないから能力主義で国王を選出する必要性も特にはない。比較的穏やかな式典として進むと思うんだけどね。違ったのかい?」

「・・・・・・だと宜しいのですけれど・・・」

 

 ナフキンで口元を拭いながら氷のように冷たい視線で愛しているはずの夫を一閃。北海の冷たさと色をもった青い瞳と、永久凍土の吹雪ごとくと例えられる白銀の髪。

 この国でも珍しい身体的特徴を二つも併せ持つが故に『蒼氷の魔女王』という「当時は嫁入り前で花嫁修行中だった貴族令嬢に付けるにはどうなんだ?」な通り名を奉られてしまったお母様は、相も変わらず冷静な視点で宮廷を見つめており楽観的な観測を忌み嫌われる御方です。

 

 結婚して母となった今もそれは変わりなく、『ショート家の魔女姫 イセリア・ショート』の政治的警戒心は平常運行で作動中な様でした。

 

「現在、陛下の御子は7人いますが、そのうち正室の子が長男と次男三男と上位三人を占めてらっしゃいますので、後からポット出の側室が何人身ごもろうと大勢には影響を及ぼせません。

 その程度のことをわきまえていない中央貴族の方々とも思えない以上は、今回のことも次期王位継承者であるお三方の支持者集めというのが本音なのではありませんか? 

 どうにもわたくしには、そう思われてならないのですけれど・・・」

「そ、それは流石にうがって考えすぎじゃないかな、イセリア? 殿下方は最年長の長兄様でさえ未だ9歳。その上婚約者さえ決まっていないと言う状況で先物買いも何もないだろう?」

「そうかしら?」

「そうさ、間違いない」

 

 間違えてる場合に言うセリフの代名詞キタ━(・∀・)━!!!! ・・・と言えばいいんでしょうかね?

 

「それにだけど、仮に君の予測したとおりだったとして、ボクたちショート伯爵家に関係してくる類のものでもないだろう?

 確かに爵位は高いし領地も広いけど、旧敵国に国境を接している関係上、長時間持ち場を離れるわけにはいかないし、この地をショート伯爵家以外が求めてうまくいった試しがない。旨みも少ないしね。わざわざ宮廷政治の場で握手を求める相手だと、ボクにはとうてい思えないんだけどね?」

「そうですわね。『個人よりも国への忠義と貢献』を家訓とするショート伯爵家の気風から言っても、的確な情報分析だったとわたくしにも思われましたわ」

「だろう? だったら大船に乗ったつもりで安心しながら家族仲良く物見遊山と洒落込むのも悪くはないとボクは思うのだけれどもーーーー」

 

 父が言葉を締めようとして最後に一言の部分で急停止し、そのままフリーズして動けなくなってる姿勢のまま見つめる視線の先にあるのは麗しい我が母の顔。

 私の位置からは背中しか見ることが叶いませんが、とりあえずはご愁傷様でした父上様。骨は拾ってあげませんので自分で何とかしてくださいませ。

 

「わたくしが気になっているのは、そこまで分かっていて何もする気がないまま遊ぶ気ぶんで王都にいこうと誘ってきている夫の甘言そのものなんですけどね・・・・・・?」

「・・・・・・愛する妻と子への家族サービス、ってだけじゃ不満なのかい・・・?」

「ええ、大いに“不安”です。特にわたくしに対して含むところが感じられない点がなによりも不安で仕方がありません。今この場には貴方とわたくしの他に後一人しか同席してはいないのですからね・・・」

 

 チラリと、私の方に意味ありげな視線を向けてくる母君様。こちらは素直に肩をすくめることで「何も知らない」アピールを返しときます。・・・なぜに実母との間で駆け引きじみたやりとりをしなきゃならなくなってるんでしょうかね私・・・。しかも理由が「私への心配」な辺りは、どんだけ歪んでんですかね我が家の肖像は。

 

「・・・・・・・・・(ぴ~ひょらら~♪)」

 

 そして冷や汗垂らしながら明後日の方向に向かって口笛を吹き始める父君様。ーーうまく逃げやがりましたね、この野郎。

 先ほど母が言ったことの全ては『不信の表明』に止まるものであり、なんら具体性のある選択肢を提示できておりません。このまま沈黙の砦に立てこもってしまえば『王都からの招待状』によるタイムオーバーで上洛は決定され実行されざるを得なくなってしまう。

 問答の勝敗に関わりなく、結果的に父の提案は可決されることが決定してしまっているハンディ戦。もとより母には勝ち目などない戦いだったのです。

 

「まったく・・・・・・自分の娘を悪巧みに用いるのも程々にしてくださいね? そのうち背中から後頭部を撃ち抜かれても知りませんよ? 『君君足らずとも、臣臣足れ』などという求める側にとってのみ都合の良い悪習を尊重してくれる奴隷精神はうちの娘には無縁なんですから・・・」

「うん、まぁ、ボクも気を付けるつもりだけど、『王家よりも国』がモットーの伯爵婦人が言うと洒落にならないからイセリアも気を付けようね? 今のは聞いてるだけだったボクが一番心胆を寒から締めてたよ・・・・・・」

 

 胃の辺りを撫でながら言った父の言葉で、この話題はしゅーりょー。後はふつうの家族団らん食卓へと移行いたします。

 

 まぁ、いつも通り私の意向は一切確認されない家族の方針決定会議なのですけれども、貴族社会で娘で子供じゃ致し方なし。大人しく席に座って出された食事をおいしくいただく子供らしい子供ライフを満喫いたしましょう。

 

 あー、魔法が存在してるファンタジー世界だと毒味した後も冷めにくい宮廷料理うめー。

 

 

 

「・・・目の前で両親が自分の今後について怪しい語り合いしまくってたって言うのに、ぜんぜん反応返さないまま美味しい食事を続けられる7歳児の愛娘っていったい・・・」

「そう言う娘だからこそ、あなたの企む悪巧みで駒の役目を果たせると踏んでいるのでしょう? 持ちつ持たれつで我慢なさいな。男の子でしょう?」

「ううぅぅ・・・男性優位社会であるはずの貴族社会の中で、何故だかうちだけ極端な例外になってる気がするのは何故に・・・? ああー・・・胃が痛いぃぃ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 その頃、王都の王城では。

 

「ほう。ロンバルディアめ、ようやく重い腰を上げたか。自慢の一人娘を見せびらかす目的で此度のパーティーに参加すると使者に即答を返したそうだ。

 登城後にお前たちとも対面することになるであろう。くれぐれも王族の一員として礼を失することの無いように頼んだぞ?」

「「はい、お任せください父上。いえ、国王陛下」」

 

 四十台も半ばに達した中年男性にはとても見えない精悍な男前っぷりを披露している短い茶髪の男性。アラストール王国国王『マティアス・アドラスティア』。

 

 その御前に控えて膝をついている二人の少年。

 母親似で金髪碧眼の長男ヘクタール、御年9歳。

 金髪碧目の次男ビクター、御年8歳。

 

 兄二人と比べて大きく見劣りする才能しかないからと、周囲に見下されて育ったが故に自信を損失し他者に合わせる作り笑顔だけがうまくなった三男に、愛情は感じても後継者に指名することのはとうの昔に諦めているマティアスにとって、自分の後を託せる可能性があるのは頭数だけは多い子供たちの中でもこの二人だけと考えている後継者候補筆頭のコンビ。

 

 兄弟以外にも多くの人間の思惑に介入されざるを得ない彼らの関係性は、感情の面だけ見ても結構複雑でこんがらがっていた。

 

 

(ふん。またしても恒例の行事である試金石か。父上もつくづく用心深いことだな。政治とはそう言うものだと分かってはいても面倒であることに変わりはなし・・・か。やれやれだ。

 しかし、ショート伯爵の子女か・・・当時は第三王位継承者でしかなかった父上の即位を流血を見ずして成し遂げておきながら、辺境泊の婿養子に自ら甘んじられる男《ロンバルディア・クロスティア》と、その彼が秘蔵してきた愛娘・・・他の有象無象に等しき飾り人形と同列に扱えば竹篦返しを受けかねん可能性が高い。

 ならばここは通常より2ランク上の対応《公爵家のご令嬢待遇》で迎えてやるのが上策か。・・・よし!)

 

 

(兄上が、またしても悪どいことを考えておられるときの顔をしておられる・・・。まったく、王位なんて誰が継いで誰が途絶えさせようとも大した意味のあることではないだろうに。

 ーーー所詮、我ら王族は貴族どもにとっては政治権力を振るう際の大義名分にすぎない。誰も本気で心の底から僕たちに忠誠なんか捧げちゃいない。

 それが悪いとは思わないけど、利用される当人としては意欲が削がれること甚だしいのも確かなんだ。せめて王位を継いだ時にもらえるご褒美に個人の趣味も反映させてくれればいいのに・・・つくづく大人という生き物は気が利かないものだな。

 ・・・・・・まぁ、いい。どのみち僕に王位争奪戦に参加する意志はない。安全第一、今回もまた僕の方針は《保身を大事に》のもと臨機応変に無難な受け答えでいいだろう。

 誰だって耳に痛い諫言よりも、耳障りのよい誉め言葉の方を好み易いのが人間という詰まらない生き物の特徴なのだから・・・)

 

 

 目の前にたつ自分たちの実父であり王でもある男の言葉に報答しながら、その実ふたりの王子の意識は自分たちを見つめてきている周囲の貴族たちの目に傾けられていた。

 

 受け答えの仕方ひとつひとつで、計られているのが解るからである。

 そう言う環境の中で育てられた彼らは、すっかりヤサぐれ切っており、生来もっていた優れた才能もあって同世代に並び立つ相手が互い以外にいないと言う状況に飽いてもいたのだ。

 

 そんな彼らは気づいていなかった。

 

 ーー大人たちの汚い社会に早くから染まることを可能とした天才的才能。それが却って彼らの成長を妨げてしまい、最近では《早熟すぎる子供》程度のレベルにまで成長速度が落ち込んでいるという事実に、比較基準が同類しかいない彼らは未だ気づけていないまま他者を見下し心の中でゲスな笑みを浮かべながら取り繕うように作り笑いを浮かべる毎日を送っていたのである。

 

 

 そんな主の子息二人を等分に背中から眺めながら、冴えない中年髭男の風体をしている中流官僚貴族出身の宰相《ウィーグラフ》は、ソッと小さな吐息を漏らす。

 

 

(・・・この方々は地位と才能に恵まれすぎてしまった。どちらか片方だけであるなら救いはあったのだがな。この地位をもつ優れた才能の持ち主に、実績を示された上で叱責できる者などおりはすまい。ましてや表面上は礼儀正しく目上を立てられてしまったのでは表面を取り付くろうを良しとする我々貴族の評価基準的に《理想的な王位継承者》としか移りようがない。

 ーーーだが、彼らはまだ若い。失敗や挫折を経験しておかなければ正常な成長など期待できない年齢に過ぎぬ年齢なのだ。修正が利きやすいうちに手を打っておく必要性があるだろう。現に教育係の老臣殿から渡された資料を見るに、ここ数ヶ月間の停滞は甚だしいものがあることだしな。

 ・・・全体を通して見るという発想がない宮廷に仕えてきた前例尊重主義者どもには理解しがたい事例なのは解るが、国家の大事に情報を共有しあえない閉鎖性を含めて何とか改善していきたいものだ。

 さて、それの先鋒としてショート伯爵家のご令嬢は使い物になるや否や? 私の方でも軽くテストをしておく必要性があるかもしれん・・・)

 

 

 

 

 

「ーーーへくちっ!」

「あら、どうしたのセレニア? 風邪でも引いたのかしら?」

「ははは、存外どこかの誰かがセレニアのことを良い形で噂していたのかもしれないぞ? ほら、よく言うじゃないか。

 《誰かが誰かの良い噂をしているときには神様がそっと本人の耳に伝えてくれる》逆に《悪い噂をしている場所には近づくなと頭に直接話しかけてきてくれる》って。だからさーーーー」

 

 

「「迷信です。いたとしても要りません。そんな《人を破滅させる悪魔なんて》滅ぼされてしまえばいいのです。

 人に害を与えようとしている警告から耳を逸らさせるなんて、神は神でも邪神としか言い様がないではありませんか、気持ちが悪い」

 

 

「ーーーうぃっス・・・・・・(今のって一応、この国の国教である《バルバトス教》の司祭たちが語り聞かせてくれた聖典の一節なんだけどなぁー・・・。

 そして僕たち貴族です。伝統を重んじる前例主義者であるべき貴族の中でも大貴族の末席に連なる者。・・・・・・胃が痛い・・・)」

 

 

『(そして私ども使用人はもっと胃が痛い。うちの主様方はなぜ揃いも揃って貴族社会の異端児ばかりなのか・・・。まさか、ロンバルディア様のご実家クロスティア家に御仕えし始めたころが懐かしく感じられる日が来ようとは思いもしませんでしたが・・・・・・長生きはするもんじゃない時代なのかな~・・・?)』

 

 

「・・・・・・(身分にも因習にも囚われない考え方ができるなんて、流石です! セレニア様とイセリア様! この下級貴族出身で三等メイドのアン! 一生涯ついて行かせていただく所存で御座います!

 ーーーそれにしても、まだ7歳であるにも関わらず将来性の豊かさを感じさせずにはいられないセレニア様のロリデカパイぶりは流石ですわね、はぁはぁ・・・ゲヘヘ♪)」

 

 

 

 

 

「お母様、なんだか最近愛すべきはずの我が家にいるのが居心地悪くて仕方がない今日この頃なんですけれど?」

「セレニア、あなたも我慢しなさい。それがショート伯爵家に連なる者が背負わされた宿業なのです」

「・・・・・・(い、イヤすぎる家系に生まれ変わってしまいました・・・(T-T))」


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