試作品集   作:ひきがやもとまち

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前のと違うバージョンで「悪の魔法使い」なネギ君ストーリーみたいですね。


悪の魔法先生ネギま?

~麻帆良学園入学ガイドブック~

『麻帆良学園都市は、明治中期に創設された学園都市です。

 学びの里として、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関が存在し、学生の数は優に三万を超えるマンモス校。

 情操教育のため、豊かな自然に囲まれており、都市一帯には各学校が複数ずつ存在している。

 交通機関、公共施設、病院、巨大アーケード、レストランといった生活環境もすべて整えられている。

 都市機能などを含め、大学部の研究所なども同じ敷地内に併設されていて、学生寮自体も都市内にある。

 所在地は埼玉県麻帆良市、最寄り駅は麻帆良学園都市中央駅。

 全寮制であり、エスカレーター式で高等部に進学できるため、全体的に生徒はのんびりしている傾向があり、学生たち同士の中も極めて良好です。

 

 まさに「夢の学園都市」と呼ぶにふさわしい学びの里です。

 皆様が愛する御子息さま、御息女さまの未来を考えるなら是非とも当学園を進学先にご検討ください!

 詳細は「世界中の子供たちの未来を守りたい」をモットーにしている『まごころ麻帆良学園広報課』までお問い合わせください』

 

 

 

 

~麻帆良学園独自メディア『麻帆良スポーツ、Mahoo!』新入生歓迎特別号~

 すっごい面白い学校です! 

 おかしな特殊能力や特殊技術を備えた人たちの組織があちらこちらに氾濫していて、その人たちが毎日のように色々なトラブルや事件を起こしてくれてます。

 大自然に囲まれてますので、それらが都市に住んでる人たちの目に触れることはあっても、ニュースになる騒ぎなんかにはならないみたいです。専門の対策機関があるのかもしれまんね!

 学園内で起きる異常事態が外部に漏れることも少ないらしく、情報管理に限って言えば陸の孤島の様相を呈しているかもしれない場所です。

 

 他にも、寮から駅まで距離がありますので毎日朝の登校時には鉄道・道路ともに沢山の生徒たちで混雑しまくっていてイエローカードもらうギリギリの速度で駆け足する「朝の通勤ラッシュ」が、学園朝の名物になってます!必見です!

 また、しょっちゅうギャンブルが行われていて、学園内で起きるケンカや格闘技の挑戦があると「○○に×円!」といった声が初等部まで飛び交います。

 食券トトカルチョが行われたことなんかもあるんですよ!?

 

 ――最後に、エスカレーター式で高等部まで進学できるんだけど、中等部以上は全寮制となりますので「性格悪くなって年増のオバさんたち」みたいにならないよう気を付けてね!お姉さん達との約束だぞ☆

 

 

 

 

 

『・・・兄貴、さすがに笑い過ぎ。不謹慎だから、少しくらい場所弁えようぜ。な? オコジョから兄貴への心からのお願です頼んます。これ以上目を付けられたら俺っちの給料マジでピンチなんです』

「くっくっくっ・・・・・・いや、本当にごめんね、カモ君? もう大丈夫だから・・・ぷはっ! あはははは! ヒィ、ヒィ、はぁ、はぁ・・・ああ、お腹痛くて死にそう~」

『・・・・・・ぜんぜん大丈夫に見えないし、安心できないし誠意も伝わってこない謝り方だし』

 

 ブツブツと「宝石の付いた首輪付き」のオコジョが、麻帆良学園中等部の校舎内を歩いている一人の少年の肩で愚痴るようにつぶやいている。

 少年はと言うと、未だに笑いが収まらないらしく肩を震わせながらうつむいて、涙を指で拭っている。

 彼の手元には都市内で発行されている二種類の冊子が片手に一冊ずつ握られており、どちらともに同じ都市内にある同じ学校から異なる名義で発行されている辺り麻帆良学園の混沌ぶりが実によく伝わって来てスゴク面白おかしかった。

 

(・・・正直、学校卒業したせいで厄介払いされて追放同然に飛ばされた僻地かと思ってたんですけどね・・・どうしてなかなか極東の島国も侮れません。

これはボクの目的である“例の件”以外の面でも期待して良さそうです――)

 

 知らず顔がニヤケてくるのを抑えきれずに口元を手で隠す少年に、呆れたような視線を向けて「処置なし」とばかりに首を振るオコジョ。

 

 

 ――と、その時。

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・

 

 

『へ?』

「ん?」

 

 平和な日本と呼ばれる国には似つかわしくない轟きが背後から聞こえ、二人はそれぞれの反応とともに背中を振り返る。

 そこには制服姿の女子たちの大軍が軍隊もかくやと言う勢いで、背後から猛烈に突っ込んで来つつあった。

 

 彼我の距離は約二メートル。

 『魔法』なしでの回避は不可能。

 押し潰されるか『罰則覚悟で禁止されてる魔法を使って逃げだすか』。選択肢はどちらか一択のみ。

 

 当然、『彼の性格』を考えるなら選ぶべき選択肢は最初から決まっている。『子は、親に似るのだから』――。

 

 

「マギ・ステイル・テレポーリープ(瞬間跳躍)」

 

 呪文を唱え、発動させた魔法は彼が使える『6つだけ』の内、最も多く多用しているワン・カウント(一文詠唱)の魔法。瞬間跳躍。

 一言だけ唱えれば発動できる代償として、移動可能な距離がすこぶる短く短距離移動にしか使えない多くの魔法使いたちが不要として忘れ去られていた魔法の一つである。

 彼は自分の憧れるヒーローについて調べを進める過程で幾つかの遺失呪文を発掘し、復活させるている。これもその内のひとつだ。

 

 主な使用目的は、窮地におちいった時などに『自分ひとりだけ逃げ出すこと』

 

 

 

『ちょっ!? 兄貴っ!? また俺を置いて逃げやがったな! この裏切り者めぶぇうぇはぇはぁぁぁぁっ!!!!???』

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!

 

 ・・・哀れ、ただでさえ小さな的である少年の姿が一瞬で消失してしまった事により、女子の大軍勢の前では極小の点でしかないオコジョの存在に気付く者など誰一人いる訳もなく。

 彼は、大好きな日本のギャルたちの美脚に踏みつぶされながらスカートの中を下から見上げられると言う僥倖を満喫させられた。

 スケベ冥利に尽きる死に様と言うべきだろう。彼の来世に幸あれ。

 

 

『――って、勝手に殺すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』

「あ、生きてたんですかカモ君。・・・・・・・・・ちぇっ、つまんないの」

『オイ! 今、なんつった!? なんか言ったよな今!俺っちが生還したことについて、なんか聞き捨てならないこと言いやがっておりましたよね!? 面白半分で俺っちを助けただけの恩人の旦那ぁぁっ!!』

「・・・無事でなによりでしたねカモネギ君! 僕は友達が無事で生き残り帰って来てくれたことを、心の底から嬉しく思います! 余りの嬉しさに涙が止まらなくなるほどに!」

『超誠実なウソ泣きしてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇっよ!!! アンタの本性なんか長い付き合いで思い知らされまくってる俺っちには引っかかりたくても出来ねぇから!

 この、見た目詐欺で外見だけ無害な爽やか真っ黒黒スケ美少年!』

「・・・・・・・・・・・・・・・ちっ、ダメでしたか。これだから腐れ縁って奴は嫌なんですよ。腐るほど長く側にいるから糸引いちゃっててやりづらい。

 トーヨーのナットウフレンドリーな監視役兼お目付け役なんて邪魔なだけなのに、まったく学園長先生も中退処分された生徒にまで律儀なことで」

 

 はぁ、と肩をすくめながら少年――イギリスから来た魔法使いにして『咎人』の少年ネギ・スプリングフィールドは面倒くさそうな声で吐き捨てる。

 

 彼はイギリス・ウェールズ地方にある若き魔法使いを育成するための施設『魔法学校』において、文句なしの優等生でありながら、“魔法使いとして道を踏み外した”外法の輩でもある悪の魔法使いだった。

 特別なにかしたと言う訳ではない。ただ、今は亡き父親に憧れて詳しく知りたくなり調べを進めていく内に『詳しく知りすぎてしまった』だけである。

 

 彼と同姓同名の父親は、魔法世界でも並ぶ者なき英雄だ。

 大戦当時に若干14歳でしかない少年の身でありながら世界を救う大偉業を成した。

 世間では死亡したとするのが一般認識となっている今でさえファンクラブが存在している、伝説の魔法使いなのである。

 

 そんな彼、千の魔法を使いこなす伝説の魔法使い〈サウザントマスター〉真実の姿に、父に憧れていた息子のネギは到達した。“してしまったのだ”。

 

 

 その結果として今がある。

 〈悪〉の烙印を押され、使える魔法も制限された状態でイギリスから遠く離れた極東の地、日本にまで「見習い教師の一般人として」放逐された「10歳の少年」という今現在の窮状が。

 

 

「いやー、よく考えてみなくても最悪過ぎますよね、ボクの置かれてる状況って。日本には子供を保護してくれる法律が存在しているらしいんですけど、イギリスにも導入を検討してはもらえないものなんでしょうかね?

 飛行機代やらタクシー代やらで正直、懐が寂しい限りなんですけども」

『あ~・・・日本のタクシー料金、高かったからなー。かと言って電車は本数多すぎて外国から来たばかりじゃ意味わからなかったから、埼京線ってのに乗れる駅まではタクシー使わざるを得なかったもんなー』

「おまけに優等生だったのを理由も無く中退処分は外聞悪すぎるからと卒業直前までは在籍させて卒業と同時にオコジョにするつもりだったって言うんですから酷い話ですよね、まったく。

 学園長先生がうまく調整してくれて日本への追放処分になったのは望外の幸福だったんですけど、よりにもよってカモネギ君まで監視役として派遣されてくるとは思っていませんでしたので少しだけアンニュイです」

『俺っちだって来たくて来たわけじゃねーし! ただ単に色々やらかしてきたのがバレての強制労働処分だし!』

 

 

「・・・ま、こんなところで愚痴っていても仕方がありませんね。誰か適当な学生さんでも掴まえて寄生して養ってもらいましょう。

 なぁに、魔法でパンツを消して皆にバラされたくなかったらと言えば一発です。

 そのために残してもらった6つの魔法のひとつに『パンツよ消えろ!』を指定しておいたのですから」

『・・・最低だ。アンタ本当に外見詐欺のクソガキ美少年でしかないよ。いやマジで』

「背に腹は代えられません。それに、どうせ生きるのであれば楽しいに越したことはないですからね。

 縛られてばかりでは楽しくありません。人生楽しんだ者勝ち。若い時に苦労したところで年取ってから楽できる保証がある身でもなし。気楽に生きましょう、気楽に」

『いいのかねー、魔法使いが本当にそんなんでも・・・・・・』

「さぁ? 良いか悪いかなんて他人が勝手に決めるものですからボクには何とも。

 ま、生きてさえいれば何かいいことの一つや二つぐらい起きますよ、きっと。そう信じて生きていった方が気楽に生きられます。

 来るときに調べてきた日本の諺にも「人生楽好き、苦は嫌だ」と言うのがあってですねー」

『兄貴・・・たぶんそれ、また何か誤解してると思いますぜ・・・?』


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