試作品集   作:ひきがやもとまち

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大分前に書くつもりで書かないうちに忘れ去ってた作品を思い出したから書いてみたシリーズとして、『俺ツイ』二次創作の投稿させて頂きました。

主人公は、TS転生ドラグギルティ。色々混ざってる作品ですがよければどうぞ~。


我もまた、ツインテールになります!

「ブレイクレリーズ!!」

 

 猛者が、征く。

 二つに揺れるツインテールを縁として、世界と人との絆を断ち切らせまいと強大なる存在へ向かって直走る。戦友たちと共に只進む。

 

 すべては皆、戦友たちのために。戦友たちと共に歩む未来のために。

 

「ドラゴニック・ブレイザ―――――――――――ッ!!!!」

 

 神々しさすら抱かせる幼女の叫びが勝ち鬨となって天へと至り、定めを変える。

 神の定めし裁きの決定は覆され、戦士たちは皆、己の在るべき場所へと還っていく。

 居るべきではない世界から、居るべき場所へ。

 終わりを迎えた物語の外伝は、続編の主役たちのため踏み石となれた事実を誇りとして。

 戦士たちの魂は、戦死者たちの招かれるべき土地へと帰還していく。

 

 

 それを、悲しいとは思うまい。命の定めとは、そういうものだ。

 

 だが、しかし。

 

 

「ドラグギルティ。来世・・・・・・逢おうぜ」

「テイルレッドよ。お前がツインテールを愛する限り・・・・・・そのようなこともあろうな」

 

 

 最後の最期に共に戦えた戦友の未来に続く勝利のため。

 

 ―――永久の別れ際まで『戦友(とも)』と呼ぶことを許されない己が運命だけは呪わしく感じてしまうがな・・・・・・。

 

 

 

 やがて、我もまた光の粒となりて天へと昇り、還っていく。一時だけの共闘が終わり、心地よい夢が終わりの朝を迎える。

 

 我が消え去る最後の瞬間まで背中越しに感じ続けた戦友の顔は、そのとき笑っていたのだろうか? 苦笑していたのだろうか?

 

 あるいは―――――もしかしたら―――――あのとき彼女が浮かべていた表情は――――

 

 

 

「――俺、戦い続けるよ。この世界のツインテールを守り抜く、その日まで」

 

 

 

 ―――戦友を見送る友人として、我らとの再会を祈ってくれる親友の顔をしてくれていたのかもしれないな―――――。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・ドラグギルティ・・・ドラグギルティよ・・・・・・』

 

 ――む? ここは一体・・・? 何も見えぬ。

 見渡す限りの“無”に彩られた見知らぬ地平で一人目覚め、我は戸惑う。

 

 何故なら、あのとき確かに我は役目を終えて消えたはず。もとより願望が形を得た者、思念体でしかないエレメリアンである我にはエレメーラを使い果たした後に存在を保つことなど不可能なはず。其れなのに何故、我は今このような場所でまだ・・・・・・

 

『落ち着くのだ、ドラグギルティよ。私はお前のツインテールだ』

「我の・・・ツインテールだと!?」

 

 馬鹿な! その様なこと、起きうるはずがない! 

 人間ならまだしも、エレメリアンの我にその様なモノが生まれるはずがないではないか!

 

『お前はエレメリアンのまま、自らをツインテールになろうとしたが、人間にはなろうとしなかった。何故だ?』

「それは、我らエレメリアンが人間とは別の種族だったから・・・」

『違う。お前は只、罪悪感に苛まれていただけだ。

 かつて滅ぼした世界で一人の戦士と出会い、正々堂々決着をつけたいと望みながら役割を選んだその時からずっと罪の意識を感じ、自分自身の可能性を狭めてきた。自らの願望を、欲望を抑え続けながら生きてきた。己に其れを望み叶える資格はない、と。

 人は其れを諦めと呼ぶ』

「・・・・・・諦め・・・・・・」

『だが、お前は今、肉体を失ったことでその支配から逃れられた。今なら、まだ間に合う。

 征け! ドラグギルティよ! 立ち止まり待つだけで与えられる結末などに価値を認めることなく、己の可能性を信じて歩み続けるがいい!

 何故ならお前はドラグギルティ!! エレメリアンでありながら人との絆を! ツインテールを! 魂のつながりを結ぶことに成功した只一体の・・・只一人のエレメリアンなのだから!!」

「おお、おおぉぉ・・・・・・オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!」

 

 雄叫びと共に我は覚醒し、そして消え失せ消滅する。

 この邂逅が消え去る寸前、瞬きの間に見せられた永遠に時を止まらせることなく歩み続けるため、己に残された最後の一欠片を宇宙の彼方の何処かへと放り投げ、幾星霜の可能性の海を漂う果てに此処とは似て非なる別の地球で運命の訪れを待つ戦友の下へ流れ着いてくれることを願い縋った、ほんの僅かな一縷の希望を託すだけの行為だったと知る余裕もないままに我は欠片も残さず消え去ったのだ。

 

 

 戦友との再会を信じ、戦友と再び轡を並べて戦い合い、今度こそ衒いなく親友とツインテールの素晴らしさを語り合える。

 そんな夢幻がごとき都合のいい妄想を、願望を、欲望を願い、祈り、信じながら我という存在は消えていく。

 

 ―――友と笑い合う幻の景色を夢に見ながら、今度こそ本当に最後の別れ―――を―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁ・・・・・・」

 

 俺、観束総二は記念すべき高校生活初日の放課後、自宅が経営している喫茶店『アドレシェンツァ』で遅めの昼食を摂りながら頭を抱えて、後悔の海に沈み込んでいた。

 

「・・・何であんなこと書いちまったんだ・・・」

「まぁ、そうね。ツインテール部はないわよねぇ」

 

 正面の席に座って注文したカレーをかっ込みながら、幼馴染みの少女、津辺愛香が呆れ顔で言ってきて、馬鹿にしたような仕草で胸を張る。

 

 自覚しないままやってるらしいけど、絶望的なまでに無い胸板が今の俺の心と同じにワビサビを感じさせてくれて、ちょっとだけ安心してしまった。

 

 

「うむ」

 

 そして、同じ席に座って愛香と俺を等分に眺めている『もう一人の幼馴染み』である少女、路理野竜姫も胸の前で腕を組んで愛香に同意するように何度も何度もうなずいている。

 

 座ると床に届かなくなる足先が所在なげにブラブラ揺れてるのが見えて、こんな時だけどこいつの身長問題がちょっとだけ頭をかすめてしまった。・・・小学校高学年になった辺りで止まっちまったもんな、こいつの身長・・・。

 いっぱい食べたら伸びるかもしれないし、母さん早く帰ってきてコイツに美味しいもん食わせてやってくれー。

 

「入学初日のアンケートで、希望する部活動の名を署名する欄に『ツインテール部』と記入して提出するとは・・・・・・ツインテール愛に満ち溢れた偉業と呼ぶより他あるまい!!」

「なんでよ!?」

 

 愛香が竜姫の言葉の途中で立ち上がって怒鳴りつけた様に見えたけど、俺はツインテール愛を理解してくれる幼馴染みの言葉が嬉しくてそれどころではいられない!

 

「だよなぁ!? お前ならわかってくれると信じてたぜ竜姫!」

「総二は黙ってて! 今あたしは竜姫と話をしているんだから!」

「うむ! 見事であったぞ観束! 我は主と幼馴染みで在れたことを誇りに思う!」

「竜姫も黙って人の話を聞きなさいよ!?」

 

 幼馴染み二人の内、俺と同じくツインテール馬鹿の竜姫が参戦してくれたことで勢力バランスが崩れた。今や俺たちの方が優勢だ。

 と言っても、ツインテールは競い合うべきものなんかじゃないから俺としては勝ち負けには拘りたくない。出来れば愛香にも、垂らした自分のツインテールに相応しい髪型への愛の語らいに参加して欲しいと心から思ってるんだけど、なぜだかいつも拒絶されてしまう。ホントに不思議なこともあるもんだ。

 

「竜姫だって見てたでしょうが! コイツのあの愚行を! バカ発言を!

 会長のツインテールに見惚れてフラフラしながら教室戻って、会長とは似ても似つかない完全に無関係な先生から渡されたアンケートに『ツインテール部』なんて書いて提出して『新設希望ですね~?』とかみんなの前で言われてクラス中から笑い者にされてた醜態っぷりを晒してたのよ!? そんな奴のどこに褒めるべき要素があるってのよ!?

 こんなツインテール馬鹿は、どこを探したって他にはいないんだからね!?」

「・・・やめてくれ、愛香・・・。せっかく持ち直した心が今ので折れ砕けて死にかかってるから・・・」

 

 竜姫が絡むとなぜだか俺への攻撃がパワーアップする愛香の不思議は、止まることを知らない。年齢が上がって高校生になったら落ち着くと思ってたのにまだダメなのか・・・一体、いつになったら俺の心に平和は訪れてくれるんだろう。

 

「如何にも。まさしくその通りである。馬鹿と呼ばれるほど一つのことに集中して全てを注ぎ込める男などそうは居らず、注ぎ込むべき対象がツインテールに特定されている勇者など観束以外他に居るまい。即ち世界で唯一の選ばれし者、勇者ではないか」

「だ―――ッ!!! こいつら毎度のごとく日本語通じてるのに通じなくて会話にならなーい!!」

 

 愛香が制服姿のまま激しく地団駄を踏みだし、竜姫と俺はテーブルから落ちないよう皿とかを持ち上げたり移動させたりしてやる。

 なんだかんだ言いながらでも、十年以上続けてると慣れてくるよな。これらの動作って。

 

 だが、慣れたのは俺たち二人の方の主観であって、愛香の方には別の主観というか事情があったらしい。

 彼女は地団駄ダンスを踏み締めながら、こう叫んだのだ。

 

「あんたら二人がいつもいつもいーっつも時と場所と状況も考えずにツインテールについて語り始めて二人だけの世界構築しちゃうから食み出したあたしは迷惑しちゃってるんですけども!?」

 

 ガミガミと怒りまくる愛香。

 ツインテール愛について語るのは止められないが・・・確かに場とか状況を考えないで話し出しちまったのは悪かったなと反省する。

 自分が好きだからって、他の人に迷惑をかけるような愛はいけない。これは人から色々言われるマニアック趣味の持ち主である俺たちだからこそ強く思ってしまうこだわりだ。

 

「ごめん、愛香・・・。頭ではわかっているんだけど、ツインテールのことになると全ての理性が蒸発しきって頭の中がツインテールのことで一杯になっちまうんだよ。それで聞こえてくるんだ。『ツインテールのこと、語っちゃっていいんじゃな~い?』って言う天からの声が」

「幻聴よソレは!? 百パー確実に幻聴で間違いない奴よその幻聴は!!」

「我もすまなかった、津辺愛香・・・。

 自制できないこともないのだが、友とツインテールについて語り合える今この時が他の何より尊く感じてしまったりすると、どうにも考えるより先に千の言葉と万の表現でツインテールへの愛を紡ぎ合いたい気持ちを抑えきれなくなるのだ・・・」

「病気よソレは! 只の病気で未知の不治の病! 完全に間違いなくアンタ以外には罹患者が出たことがないから直しようがない末期の病気! だから病院行って隔離病棟入れてもらってきなさい! 今すぐに!」

 

 やいのやいの、楽しく騒ぐ俺たち幼馴染み三人はいつも通りに同じ場所、同じ空間で同じ時を過ごしていく。これまでも、これからも。ずっと変わらない日常が今まで通りに続くと思っていた俺たちだけど。

 

 まさかそれが数秒後には壊されていて、怪しいけど頼りになる大切な仲間の少女に壊され尽くすことになる近い未来なんて、俺たちは誰一人想像してさえいなかったんだ・・・・・・。

 

 

(・・・くふ♪ もの凄い量のエレメーラ反応の持ち主が“二人”も・・・。しかも二人が二人とも私好みな男の子と美幼女だなんて!

 神様。これはもう・・・据え膳食って皿まで食らいつくしちゃってOKってことなんでしょうかねぇ!? げぇ~へ~へ~(ジュルリ))

 

 

 ・・・俺たち(の世界)に今、危機が迫ってきている!!

 

 

キャラ紹介:『路理野竜姫(ろりや・りゅうき)』

 この世界と似て非なる《俺ツイ》世界からやってきたドラグギルティの断片から生まれた少女。

 同じ原作者の著作《ふぉーくーるあふたー》の《モケーくん》と似たような存在で、同じように元の自分の記憶は無いが、心に焼き付いたテイルレッドの輝きだけは幾星霜の刻を過ごしても色あせることは決して出来ない。

 モケーくんと同じで本能的にやるべき事がわかっているけど、理屈ではなく感性に従ってやっているので他人にゃ理解できないし、説明もしてくれないから混乱を広めるだけの人。

 ただし、総二をはじめとする厨二的ノリに適用しやすい人たちとは言葉で言わなくても通じ合えるので問題ない。愛香をはじめとする一部の人たちだけにとっては大問題だけども。

 

 この世界におけるドラグギルティとは別の存在でありながら、同じ存在でもあると言う意味不明な関係性を持ってはいるが、お互いがお互いに関わり合うことで与え合えるモノも影響も何もなく、互いが必要としているのは自分たち同士ではないということを本能的に理解しているので戦い合わない。

 『自分を乗り越える』『自分の間違いを正す』どちらも自分一人でやるべき事ではないと信じるが故に・・・。

 

 元の世界にいた頃から人間に憧れていたというオリジナル設定が追加されており、その人間から奪わなければ生きていけない自分たちエレメリアンという存在を誇りに思うと同時に忸怩たる思いも抱いていた。

 部下たちの育成に力を注いだのも、奪わなければならなかった者達の犠牲を『無駄にはしない』とする決意の現れであり、部下たちに対する愛情も『人々から奪った大切なモノを受け継いでくれた愛しき者達』という認識を持っていた『愛の人』設定のオリ主。

 

 しゃべり方が厨二くさい上に、常時このテンションとノリのため総二の母の未春とは無駄に仲が良く、自覚のない厨二トークで厨二台詞を連発しまくったりしている真面目で変な女の子。

 

 愛香からは嫌いじゃないけど警戒されている。

「だって、竜姫って総二と気が合いすぎるんだもん・・・」

 

 

 トゥアールが、テイルギアを開発中に作った失敗作を使ったテイルギアで変身する。

 失敗作とした理由は、テイルギアを複数個作れないか調べる中でエレメリアンのデータをそのままコピーして、力となるエレメーラだけを取り出せないか調べてみたところ、『変身できるけど、エレメリアンになりかねない』と言う最悪の結果となってしまったため封印されたと言うオリジナル設定。

 元がエレメリアンのドラグギルティだった竜姫にとっては、逆に力を取り戻す役に立つ有り難いだけの存在だけれども、味方にとっては怪しさ爆発の存在になってしまってもいる。

 

 

 変身後の名前は『テイルドラゴン』。

 尻尾が生えてたり、角がついてたりなど竜を彷彿とさせる意匠が鎧の各所に取り付けられた野性味あふれるツインテールの鎧武者。

 武器は大剣。

 エレメリアンを斬ることが出来る以外には何の変哲も無い只の頑丈な剣でしかないが、彼(彼女?)は自分の愛を努力によって達成した技によって現すことを好むため、本当の武器は彼女(彼?)の使う剣術『ツインテールの剣技』にこそ集約されている。

 

 

 余談だが、総二に対して恋愛感情はない。

 ただし、友情が天元突破しちゃってるので、有るのと大して変わりないかもしれないけれども。




他に思い出した書いてみたい作品:

総二がはじっめからソーラとして生まれてた場合の『俺ツイ』。
8巻の限定版についてきてたイラスト集で、小学校入学式の幼馴染ソーラと愛香の画を見て以来書きたいと願ってた時期があります。

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