試作品集   作:ひきがやもとまち

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諸事情あって本腰入れて何かをすることが出来ない状況にある作者が暇つぶしに書いてみたオリジナルファンタジーです。序章分だけですが、良ければどうぞ。


転生の邪神さまによる異世界転生

 

 異世界転生というジャンルがあります。

 死んでから地球とは異なる世界、異なる時空、異なる作品世界へと別人になって生まれ変わるか、本人のまま生まれ変わるかして新たな人生を歩む物語の主人公によくある奴ですね。

 

 これとは少し違って異世界転移というジャンルもあり、こちらの方だと主人公は死ぬことなく別世界にワープしたり、勇者として召喚されたり、ゲームの中に閉じ込められたりが多いみたいです。

 

 さて、ここで質問です。――今現在、ボクたちのいる学校の教室で起きているコレは、どちらに分類すれば良いとクラスの皆さんは思われてますか・・・?

 

 状況1、授業中に床から触手なのか蛇なのか髪の毛なのかよくわからないナニカが出てきて、先生含むクラスにいた全員を絡め取って出てきた床の中へと帰って行こうとしている。

 

 状況2、全員が悲鳴上げまくってるけど、負傷者はいない模様。ただし捕らえた獲物を離す気はないらしく泣いても叫んでも許すことなく容赦なく何処かへ強制連行されてってる。

 

 状況3、事前通達はなし、太陽は黒く、昼なのに空は血のように真っ赤っか。

 

 状況4、床には魔法陣っぽいナニカが描かれてるけど、字が蠢いてて不定型。なんか怨嗟の悲鳴みたいなのが聞こえてくる気がするけど確かめる術は今のところ無し。

 

 ――以上を踏まえ、正当と思われる回答を40秒以内に用意しな・・・っと、ごめん。無理ですね。もう床が肩の先超えちゃいましたので、答えてもらっても採点できそうにありません。

 

 みなさん、短い間でしたがどうかお元気で。いや、本当に短かったですね、普段からボク話さないから一緒のクラスになって初めて話をした最初の日に別れの時がやってくるなんて、なんと言う悲劇。この世は所詮、諸行無常です。

 

 それではみんな、さよーなら。来世だか異世界とかでまた会う日まで。長いか短いかはよく分かりませんけどグッバイ!

 さよーならー! 皆さん本当にさよーならー! お達者で! お元気で! あの世に行ったら元気で暮らせよ――ブッ!? ・・・ついに飲み込まれちゃった。ボクもついでにさよーなら~・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・んん?」

 

 目を開けて起き上がり、周囲を見渡すと、そこは異世界だった。

 小鳥の代わりに怪鳥が歌い、真っ赤な小川に人の死体が浮いて流されている。

 頭が真っ白になりたかった。冷静に状況観察している自分を間違いだということにしたかったけど出来なかった。世の中はやはり諸行無常。

 

「ん? あれは・・・・・・」

 

 なんか流されてきた死体が川縁から伸びた木に引っかかって停止して、その背中に見覚えのある印象的な文字が書かれた紙が貼られているのに気づいたボクは、手を伸ばそうかどうしようか迷った挙げ句に遠くでギリギリ見える距離から眺め見る道を選択した。得体の知れない物には触れないのが吉。

 

 紙にはこう書かれていました。

 

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 ハロ-、ハロー、僕の名前は邪神ちゃん。ちゃん付けで名乗ってるけど男の子。年齢は八十億ちゃい。誕生日はヒ・ミ・ツ☆ きゃはっ♪

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 ・・・よし。近寄らずに破ける物を探しましょう。今すぐに。

 

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 いやいや、落ち着こう落ち着こう。話せば分かる、話さなければ分かるものも分からない。人類皆兄弟。兄弟同士で相争うよう言葉が通じなくしたのはバベルの塔壊した神様。つまり戦争が起きるのは神様の御業、出会いは人の仕業。まずは話し合うところから知らない人類同士のコミュニケーションは始まるので。つまりは、レッツ・コミュニケーション!!

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 ・・・やっぱり破きたいんですけども?

 

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 だから落ち着けって。別に僕は君の敵じゃねーし。君に限っては敵になる気もねーし、むしろ味方だし守護霊様だしご神体様だし。・・・まっ、説得力ないだろーけどねー。まぁいっか。

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 いいんかい。

 

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 いいんだよ。ほら、本題に入ろう。

 見ての通り、ここは異世界だ。そして君は自分では気づいてないようだけど身体が変質してしまっている。心だけは微妙に変わってることに気づけてたみたいだけどね~♪

 ――そう、君が今想像したとおり、これは転生だ。生まれ変わりってヤツだよ。転生させたのが交通事故死をミスして連発しまくる無能で愚劣な旧神どもじゃなくて、面白けりゃ何でもありで人類魔族亜人種差別せずに皆もてあそぶ邪神さまだったって言う違いはあるけどね~。

 いやー、なんか最近そういうの流行ってるみたいだったから僕もやってみたくなっちゃって。んで、テキトーに「パジェロ!パジェロ!」叫びながらダーツ投げて刺さったところにいた少年を異世界転生させてみることにしたんだよね。そしたら、あらビックリ学校の教室だったよ!どうしよう!?

 う~ん・・・面倒くさいから皆まとめて異世界転移させて面白そうなのが混じってたらソイツだけ転生処置してくれるよう調整しちゃえー!・・・って、か~んじ。今の説明でお解り?

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 ・・・一応は。あまり判りたくはなかったですけどね・・・。

 

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 そりゃよかった。何事もあきらめが肝心だ。無様にあがく人間を見るのは大好きだけど、そう言うのは他のところに飛ばした転移組で見まくれたからお腹いっぱい。もういりません。君は別の反応見せてくれたから嬉しいです。

 まぁ、それはそれとして君の新しい状態と簡単な状況説明だけして今回のメールは終わりにしようと思う。これ以上教えちゃうとつまらなくなるしね。好きな料理は最後まで取っておく派な転生の邪神様です。

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 ・・・では、現在で教えられる範囲までの説明をどうぞ。

 

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 オーライ。それじゃあまずは君の身体からだ。身体“からだ”って韻を踏んでてなんだかいい響きだね。天丼って気もするけども。

 それで君の身体なんけど、本命だからね。他の連中よりだいぶ弄くってあるし強くしてある。

 ただし最初からチート級だと見ていて飽きるから、勇者みたいな無限に成長する可能性と、人間離れした成長の早さ、最初から他の奴らよりは恵まれてる強さと面白ユニークスキルを持たせてある。後で確認してみてくれたまへ~。

 

 んで、次。状況なんだけど、一緒に転移してきたクラスメイトの子たちは皆そろって同じ国の同じ城に勇者として飛ばされたことにしといてある。元の世界に帰還するため、きっと無茶してでも頑張る人もいるんだろうね。

 ――でも、それはフェイクだ。現地人たちの策略だよ。本当はこの世界から還る方法なんて存在してないのに知ってると嘘ついて勇者の力を利用する気満々な奴らだ。薄汚い連中だよ本当に。

 他にも、その国の周囲にあるいくつかの国々の王女さま方が個人的欲望を満たすために、異世界から帰りたくない一生ファンタジー世界で勇者やってたいと願ってる一部の子たちを誘惑しようと狙ってる。女であっても便利そうなら見境なしだ! いやー、女の子って怖いねーマジでまじでー。

 た・だ・し~☆ これらの事情は現在の君にとって何の関係もない。違う大陸の話だからね。再会するにしてもゲーム中盤以降までは無理だ。諦めるんだな・・・。

 ――え? だったら自分が置かれている状況について早く教えろって? はっはっは~! 忘れていなかったか、参ったな―もう。

 うん、分かってる分かってる冗談冗談。ちゃんと教えてあげるよん♪

 えっとねー、君の置かれた状況説明はね~え。

 ・・・・・・ここから北に少し行ったところに小さな町があるからそこへ行け。以上。それじゃあ、頑張ってね~ん♪

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 ・・・言うだけ言って(書くだけ書いて?)死体は、突っかかっていて木が折れたので流れていってしまいました。どうでもいいけど、あの人これやるためだけに殺されたのかな?

 

 溜息ひとつ吐いて、とりあえず言われるまま町を目指そうと一歩目を踏み出そうとしたとき。空からカラスが一羽落ちてきて、死んでいました。死体には紙が貼ってあります。

 

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 言い忘れてたけど今の君の種族は邪神で、職業はダーク・ウィザードっていう、この世界には存在しないはずのユニーク種族&ユニーク職業だから。

 多分きっと、魔を敵視する連中からは一緒くたにされて攻撃されるだろうし、魔王軍の連中からは勧誘されるか王は二人もいらん!て殺しに来るかのどちらかだと思っといてくれ。

 外見は人間の女の子にしてあるけど、見る人が見りゃ普通にバレるし、魔王と魔族が実在する世界で邪神なんてものがどういう風に定義されてんだかサッパリ分からん。バレたらやばいかも知れないし、問題ないかも知れない。とりあえず気をつけるだけは気をつけてね。

 ――見た目は子供の女の子! 頭脳と正体はダークウィザードの邪神! その名は! 

 ・・・・・・・・・そういや、名前なんて言うの? 正直気にしてなかったからよくわかんない・・・

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 知らん。

 

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 いや、知らんて。

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 元々の自分と入れ替えた人間、もとい邪神が何を言うか。

 ・・・でもまぁ、考えてないんだったら『ナベ次郎』で。これが一番使い慣れてますし。

 

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 ・・・いや、いいんだけどさ別に・・・。

 ・・・・・・でも何故にナベで次郎・・・・・・?

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 ボクが主人公の名前変えられるゲームでずっと使ってる定番ネームなんですよ。

 性別年齢見た目職業、一切合切関係なくナベ次郎で統一中。漢字がないときゃ『なべじろう』です。

 

 この名前のせいでレトロゲームやるときなんかは困りました。4文字までしか入力できないですから。あと、『マザー2』みたいにアメリカ風の世界観が舞台だと別の意味で困ります。

 『イーグルランドの小さな町オネットにあるナベジロウの家』になってしまい、「いや、日本人名だろお前どう見ても」と自分がゴッドファーザーになった主人公の名前に自分でケチを付けなければいけなくなってしまいますから。

 

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 いや、それこそ俺としては知らんけれども。とりあえずは了解。ナベ次郎ちゃんね。うん。・・・この異世界だと表記どうやるもんなんだろ・・・? よくわかんないけど多分なんとかなる!はず!

 

 そんな訳で冒険の旅に出発だナベ次郎ちゃん! ボクを愉しませてくれる摩訶不思議な異世界大冒険を期待しちゃってるZE! ファイトー! ひゃっぱーつ!!

 

 PS、面白そうだったらまたすぐ連絡するね? バイチャ☆

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 うんまぁ、まずは感想を一言だけ呟くところから冒険を始めてみるとしましょうかね。

 

 

 

「・・・・・・この転生の邪神さま、超ウゼぇ~・・・・・・」

 

 

 こうしてボクか私の性別強制変更が一人称に影響してきちゃってる、異世界転生冒険記がスタートするのでした。ちゃんちゃん。




*『ナベ次郎』は作者が本当にゲームするとき多用しているPC名だったりします。
名前の由来はオバロの『ナーベ』と、GGOの『フカ次郎』から取りました。
出来れば使いたかったオリ主ネームの筆頭格だったりします。

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