艦隊これくしょん 狂乱『完結』   作:サルスベリ

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少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

迷走中につき、回想にてまとめました。

暴走してます、何故でしょう?




矜持にかけて7

 

 ポツンと額に落ちた水滴で、彼女は瞳を開いた。

 

「ああ、久し振りの入渠中だぁ」

 

 ズタボロのボロボロだ。航空機は全滅、新型の『鴉』まで持っていったのに、一機も残らない。

 

 三千機全滅、流石に凄い。

 

「はぁ・・・・・・」

 

 溜息をついて、再び瞳を閉じた。

 

 あの時は本当に大変だった。

 

 あいつ―敵の親玉に最初に接敵したのは、吹雪だった。

 

『目標視認!』

 

『装甲空母? 戦艦? いえ、ちょっと待って』

 

 暁からの報告も明瞭ではないため、偵察機を向かわせる。

 

 念のため電星にフォールド・ブースターつけたタイプ。

 

「発艦!」

 

 自分の背後に控える第零種装備の空母型から、最大出力のリニア・カタパルトで出撃。

 

 行きはワープ使用、目標地点は吹雪からの情報連結で把握済み。

 

 偵察機が目標上空に到達、画像送信開始。

 

「ふぇ?」

 

「何何、瑞鳳さん、何が見えたの?!」

 

 隣を進んでいた清霜に、反応もできない。

 

「電、先行します」

 

 少し後ろを進んでいた彼女は、画像を見る前に増速。

 

 彼女に従っている大型の二隻から、腕の長いロボットが浮かび上がり、飛翔していく。

 

「何これ?」

 

 偵察機からの情報途絶。

 

 落ちる瞬間、光が見えた。

 

「対空ビーム?」

 

「光学兵器搭載タイプ?! 座標地点確認、衝撃吸収機能最大設定。弾種炸裂徹甲弾!」

 

 清霜が停止、続いて彼女の第零種に命令を下す。

 

 百センチ連装砲。規格外の大きさを持つ巨砲が、静かに頭を上げる。

 

「装薬強! 撃て!」

 

 五隻の船から放たれた百センチ砲弾は、轟音で周囲を揺らしながら相手に突き進む。

 

「瑞鳳さん! 弾着!!」

 

「今用意してる!」

 

 偵察機は落とされたが、まだまだ数はある。今度はバリアー搭載型で行ってみるか。

 

 一機ではなく十二機投入。

 

 これで今度こそ、と考えているところに、清霜の一撃目が入った。

 

「弾着!」

 

 まだ五千メートルはあるのに、衝撃波が響いてくる。

 

 怖い威力だなぁと瑞鳳が思っていると、通信機が鳴った。

 

『清霜! 連射! 位置はあっているから連射して!』

 

 珍しく、吹雪が悲鳴じみた声を出している。

 

「え?」

 

『相手は無傷です、信じられない』

 

 今度の報告は、大和から。合流したらしい。

 

『瑞鳳は現在位置から動かないで! なんて防御力!』

 

「え、え?」

 

『清霜も近づかないのよ! かばって戦えないわ』

 

 珍しい、暁が弱音を吐くなんて。

 

「了解! 瑞鳳と清霜は現在位置にて援護します!」

 

「行くよぉぉぉ!!」

 

 轟音が、再び大気を揺らして、瑞鳳の体も震えた。

 

「はっくしょん!!」

 

「・・・・・・・浴槽で寝ないでください」

 

 気がつくと入渠中。隣には呆れた大和がいた。

 

「は、ははは、ごめん」

 

「いいえ。今回は本当に、大変でしたから」

 

「うん、そうだね」

 

 瑞鳳はそう呟き、天井へまた顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流れる景色を見ながら、電は膝を抱えていた。

 

 今回の作戦では、第零種をもっとも多く使った。誰もが第零種を持ち出して、多くの深海棲艦を撃った。

 

 けれど、自分は、撃つだけだった。

 

 ギュッと唇をかみしめる電は、瞳を閉じた。

 

「電、先行します」

 

 瑞鳳と清霜を置き去りにして先行。ニヒトが動き出し、敵の航空機や魚雷艇を闇に沈めていく。

 

「相手は誰なのです?」

 

 突き進む先に見えた影は、まさに異形だった。

 

 空母でも戦艦でも、陸上型でもない。初めての相手は、狂気に染まった顔を向けて笑っていた。

 

 怖いと初めて思った。救えないと思ってしまった自分に、電は拳を振り上げる。

 

 頬に一発入れる。

 

 そんなこと考えていたら、敵を救うなんて言えない。

 

 誰でもない自分でいいだしたことだ。他の誰かに押しつけられたことじゃないのに、自分から捨てるなんてできるない。

 

 あの日に傷つけてしまった由良達のためにも。

 

 特訓してくれた暁と吹雪の涙のためにも。

 

 何より力をくれた人達のためにも。

 

「行ってニヒト!」

 

 舞いあがった虚無の申し子は、鋭く飛ぶ。

 

 砲火をかいくぐり、敵の攻撃を交わし、懐に入り込んだところで、バリアーに弾かれる。

 

「なら、足元です!」

 

 ニヒトの背から、ワイヤーが舞う。

 

 突き刺さったそれらから結晶が生み出され、相手の艤装を支配する。

 

 同化現象と呼ばれるそれが、ニヒト達ファフナーの特徴。

 

 条件さえ合えば、相手の艤装さえも支配下における。

 

 しかし同時に、それは諸刃の剣でも有る。

 

 瞬間的に流れ込むイメージ。電の体中を駆け巡る、相手の憎悪。

 

 アメリカに裏切られたこと。死んでいく仲間たち。どう足掻いても抜け出せない泥沼に落ちてく感覚に、電は足を止めてしまった。

 

「ファフナーなんて操るんじゃない!!!!」

 

 目があった。相手の攻撃、光学系が迫る。

 

 咄嗟にニヒトが楯になった。闇のようなスフィアを広げてビームを吸い込み、再び突撃していく。

 

 姫が狂気に染まった顔を向ける。

 

 でも、今度は電は下がらない。

 

 色々な感情の中、狂気の底にあったものを見つけてしまったから。

 

『助けて』。

 

 彼女は確かにそう言っていた。

 

「助けるのです。私の全部をかけて、助けますから!!」

 

 叫びながら近づいた電は、僅かな振動に立ちあがる。

 

 高天原が進路を変えたらしい。

 

 結局、彼女を救ったのは吹雪。自分は途中で、精神力が尽きて後退。

 

「まだまだなのです」

 

 もっと強くなりたい。強くなれば、救える命が増えるから。

 

 決意を決めて、電は鎮守府の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 深くため息をつく。

 

 鉄の焼ける匂いと、飛び散る火花。

 

「明石、どうですか?」

 

「まあ、根幹は無傷なのでパーツごと交換すれば」

 

 目の前に置かれた艤装は、大部分が歪んでいたり、破損していたり。

 

「今回の作戦は全員の艤装が破損しているから、修理が完了するのにかなりかかりますよ」

 

「ごめんなさい。今回は、なりふり構っていられないから」

 

「金剛さんが気にすることじゃないですよ」

 

 慰められ、彼女は小さく苦笑する。

 

 大丈夫ですよと明石は告げて、再び作業に戻る。

 

 舞い散る火花が、ゆっくりと金剛の視界を染めていく。

 

 あの時、合流した時にはすでに吹雪と暁、それに大和が敵の周りを囲んでいた。

 

「追いついた!」

 

「お姉様! あれはどんな敵なのですか?!」

 

 追従してきた榛名の質問に、金剛は答えられなかった。

 

 長い白髪に赤い瞳。漆黒のドレスを纏った女性は、巨大な砲身を持つ武装を抱えていた。

 

 それだけなら、姫級だろう。

 

 彼女が立つ場所、その周囲からは腕のような主砲、飛行甲板のようなもの、あるいは単装の砲身、魚雷艇や戦車のような物体。

 

 海面を埋めるほどの巨大な何かが、周りにひしめいていた。

 

「要塞・・・・・・・」

 

 海軍基地を要塞化したら、恐らくこんな感じになるのでは。

 

 不意に金剛はそう思った。

 

「金剛! 榛名! 攻撃には触れないで回避を!」

 

 チラリとこちらを見た吹雪は、そう叫んだ後は目の前の『姫』級に顔を戻した。

 

 あの彼女でさえ、集中しないと不味い敵か。

 

「行きます!」

 

 砲撃開始。

 

 従えた第零種艤装は、五十二センチガトリング砲を備えた、徹底的な数で押すタイプ。

 

 一方、榛名は重力波砲と呼ばれる一撃必殺の主砲を備えたもの。

 

 あるいは、突撃をするためのドリルを備えた艦艇。

 

 そんなに接近戦を意識しなくても、と当初は思ったものだが。

 

 攻撃を当てる。次々に当てたとしても、薄く光った幕のようなものに弾かれて反らされる。

 

 それに、先ほどから清霜の攻撃も炸裂しているが、煙が流れるだけで本体にダメージを与えられていない。

 

「全員回避を!!」

 

 吹雪からの警告に、全員が飛ぶ。

 

 海面を薙ぎ払うようにのばされた光が、周辺海域を薙ぎ払う。

 

「波動砲を振り回すの?!」

 

「お前達は邪魔だぁぁぁぁ!!」

 

 光はまるで、叫び声のように周辺海域だけではなく、遥か遠くまでも鳴り響いた。

 

『きゃ?!』

 

『清霜!! 全員! 援護射撃が止まるからよろしく!』

 

「あっちまで届くって無茶苦茶じゃない。瑞鳳、下がれる?」

 

『うん、大丈夫だと思うけど・・ははは、嫌になる。敵航空機、凄いね』

 

「知っているよ」

 

 吹雪が答えるように上を見上げると、まるで雲のような影が一つ。

 

 千機は下らない敵航空機の群れが、獲物を睨むように逆落とし。

 

「対空・・・・・はいいから突撃!」

 

 吹雪は一瞬だけ迷いが、すぐに前を向く。

 

『追いつきました』

 

 加賀の声と同時に、千機の航空機が突撃開始。

 

『遅れました』

 

『お待たせしました』

 

 蒼龍と翔鶴の航空隊も合流。

 

 千機対千機の壮絶な航空戦の下、吹雪達は再び突撃を開始。

 

 敵バリアーを破らないとこちらの攻撃が届かない。

 

 まだまだ損傷はないが、どうやって破るのか。

 

 出来るのだろうか、迷いながら金剛は主砲を放った。

 

「金剛さん?」

 

「え? あ、はい」

 

 火花が散る工廠の中、目の前で夕張が手を振っている。

 

「もう休んでください。後は私と明石の仕事ですから」

 

「そう、ですね。ならお願いします」

 

 少しだけ迷い、金剛は一礼した。

 

 本当に大変だった。今回ばかりは、もう沈むかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カチャンと食器同士が鳴った。

 

 しまったと思いながら、暁は視線を上げた。

 

「暁が食器を鳴らすなんて、珍しいね」

 

「私も疲れているのね。本当に今回は轟沈が出るかと思ったわ」

 

 目の前に座る吹雪は、『私もだよ』と言って紅茶を飲む。

 

「損傷の大きいのは、清霜らしいわね」

 

「テラさんの艤装を纏っていたから、轟沈しなかったからね」

 

「咄嗟に瑞鳳が庇ったらしいのよ。瑞鳳も瑞鳳で、第零種を楯代りに使ったらしいけど」

 

 本当に、あの波動砲の直撃を受けて、二人が無事だったのが救いだ。

 

「今回の件、考えさせられたわね」

 

「まだまだ、私達は未熟だよ。だから、もっと強くなりたい」

 

「ええ、私もそうよ」

 

 もっと強く。暁は強く思いながら、あの瞬間を思い返す。

 

『清霜、大丈夫?』

 

『うん、テラさんの艤装妖精さん達が・・・・・・』

 

『嬢ちゃんに心配されるほど軟弱な奴はいねぇよ! それより、飛行甲板がやられちまって航空機が出せないなんて、へたくそはいねぇからな!』

 

『なら出すよ! まだまだやれるから』

 

 あっちはまだ元気らしい。

 

「空は気にしないで! バリアーを!」

 

 暁の号令に、最初に動いたのは意外にも榛名だった。

 

「榛名、行きます! まだまだ未完成な技ですが、どうぞ!!」

 

 接近。最大加速をかけて、彼女自身が接近していく。

 

 その瞬間、残りの全員が攻撃を仕掛けた。

 

 彼女が何かやろうとしているなら、相手の気を反らさないと。

 

 砲撃に次ぐ砲撃。魚雷は相手の周りの艤装部分に止められ、本体まで届かない。

 

 接近していた榛名が、右手を振り上げる。

 

「この身は剣なり、けれど今はこの右手に黄金の輝きを!」

 

 相手が気づく。目線が向けられたが、すでに遅い。

 

「榛名行きます! 見よう見真似!! 聖剣(エクスカリバー)!!!」

 

 振り降ろされた手は、半透明の光を切り裂いた。

 

「私の小宇宙(コスモ)は燃えています!」

 

「何時から訓練していたんですか?!」

 

 大和の叫びに、暁は大いに同意を示す。前々から、剣だとは言っていたが、まさか山羊座の黄金聖闘士の技を使うなんて。

 

 企画外が増える。

 

「でも突破口はできた!」

 

「後でとびきりの紅茶を御馳走するわ、榛名」

 

「感無量です!!!」

 

 一人だけ感激する榛名が下がり、変わるように飛びこむ吹雪と暁。

 

「出し惜しみなしよ! 万象一切灰塵と為せ、『流刃若火』!!」

 

「貴方にならやれるはずです」

 

 暁の焔を纏った刀が、吹雪の白い剣が、姫級に突き刺さる。

 

「おまえらぁぁぁぁ!!」

 

 周りの艤装が蠢く。内側へと向かうそれらを、大和と金剛が叩き潰す。

 

「こっちにもいますから!」

 

「私達もいますよ!!」

 

「三番手!! 蒼龍突撃します!!」

 

 弓を収め、ナックルガードを纏った彼女は、突撃してきた。

 

 空母なんだから、下がりなさいとは言えずに、暁は姫級に刀を向ける。

 

「おまえらは! 何故そこまでできる! 何故そんな力が持てる?!」

 

 叫び声が響き渡る。

 

 怒りと憎しみに彩られた慟哭、最初はそう思っていた声が、徐々に泣き声に聞こえてくる。

 

「貴方は、苦しいのね・・・・・・・なら、救ってあげるわ」

 

 刀を振りあげる。

 

 この焔は、最古の死神のもの。

 

 あの世界では死した者を見送る、厳しくも優しい好々爺の刀。

 

 ならば、送ってあげよう。苦しいこの世界から、優しい世界へ。

 

「私の全身全霊をかけて、ね」

 

 刀を振り回す。舞い踊る焔が世界を照らし、やがて胸の中に赤く燃える炎となった。

 

 強くなりたいと今も、願っている。決して消えることなく。

 

「強くなりたいわね」

 

 溜息交じりに告げる暁に、吹雪は頬笑みを向ける。

 

 本当に今日は珍しいねと言葉を添えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時計の針が廻る。

 

 ゆっくりと時刻を告げていた針が、十二時を指し示す。

 

 普段なら聞こえない音、それを吹雪は聞いてしまった。

 

 目を開けて体を起こす。

 

 見なれた居室は、今は静かに闇の中にうかぶ。

 

 きっと彼女もこんな闇の中にいたのだろうか。

 

 小さく思い出し、彼女は『姫』が沈んだ時を思い出す。

 

 焔が踊る。流刃若火の炎が周囲を照らし、大気中の水分を消し飛ばし、さらに海面も炙る。

 

「暁・・・・・・・」

 

「ええ、解っているわ、吹雪。私じゃ、もう限界みたいね」

 

 赤い炎が徐々に小さくなっていき、やがて刀の形が見えてきた。

 

「まだ、落ちないのね」

 

 艤装は隅のように焼け落ちた。

 

 装甲も砲撃でボロボロになって砕け落ちる。

 

「こっちもボロボロだよ」

 

 吹雪が軽く周りを見回せば、立っているのは吹雪と暁だけ。

 

 全員が第零種まで損傷を受けて、海面に漂っている。 

 

 合流した加賀と翔鶴も、海面に腰を降ろしている。あの航空機戦は、二人にかなりの消耗を強いたか。

 

 それより前に、無理やりに突破してきたからかもしれない。

 

「もう終わりにしようか」

 

 剣を持った吹雪がゆっくりと近づいていく。

 

 砲も魚雷も尽きた。後はこの剣だけだが、十分だろう。

 

 手が震える。抜いてから、かなりの時間が過ぎている。そろそろ、自分も限界なのが解る。

 

 周り中を消したい。周り中を食いつくしたい。そんな気持ちが湧きあがり、次第に自分を染め上げる。

 

「まだ、だ。まだ私はぁぁぁ!!」

 

「もう終わりだよ。あなたには何も残っていない。艤装はすべて破壊して、手持ちの武器もない。なら、もう終わり」

 

「まだだぁぁ」

 

 彼女が何かを持ち上げた。薄い光を纏うもの。棒のような、何か。

 

「サイブレード?」

 

「あの神とやらがくれたものだよ!!」

 

 刀身が伸びる。一見するとビームサーベルのようなものだが、発生させるものが違う。

 

 相手の精神力を刃とするサイブレードは、その色を青く輝かせる。

 

 まるで海のように、空のように雄々しく。

 

「そんなに憧れてたんだ」

 

「違う。私は違う。復讐したかった、あいつらに思い知らせたかった」

 

「うん、そっか。ならさ、私たちと一緒だよ」

 

 吹雪は微笑む。

 

 剣を真っ直ぐに構え、彼女に優しく語りかける。

 

「恨んでいるって言っても、憎んでいるって叫んでも、私達には聞こえたよ。『帰りたい、助けて』って」

 

「違う! チガウ! 私は・・・・ワタシタチハぁぁぁぁぁ!!!」

 

 真っ直ぐ突っ込んでくる彼女に、吹雪は剣を振りかぶる。

 

「戻ろう。一緒に・・・・・・帰ろう」

 

 一閃。白い刃は、青い刃を切り裂いて、彼女を。

 

 チンと、剣が鳴る。

 

 鞘に再び収めた剣は、あの時と変わらない。

 

 薄闇の中、吹雪は剣を再び元の位置へと戻す。

 

 思い出している最中に剣を抜いていたとは、自分はメンタル面でまだまだ未熟だ。

 

 もっと強くなりたい。もっと高みに上がりたい。

 

 色々と思うことはあるのに、まだまだ足りない毎日だ。

 

「寝よう・・・・・大丈夫だよ。もう、一人にしないから」

 

 ベッドに入りながら、吹雪は壁のほうへ向けて告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノ・ルリは見下ろしていた。

 

 治療用ポッドに入れられた女性は、今も目を覚まさずに眠り続ける。

 

「やはり、一致する艦娘はありません。未発見の誰かです」

 

「深海棲艦の可能性はゼロですね?」

 

「はい、反応はありません」

 

 大淀からの報告に、ルリは頷く。

 

 彼女はあの『姫』を倒した後に、浮かんできた艦娘だ。

 

 敵である可能性はゼロでも、『敵対しない可能性』はゼロではない。

 

 転生者。神か悪魔か、誰かに死んだ後に他の世界に生まれ変わることを示すが、こういった特殊なケースは初めてだ。

 

 前世の恨みを持ったまま生まれ変わるのは、ルリにとっては初めてのこと。

 

「彼女が目覚めるまでは監視を続行。念のため、ここには私以外の入室を禁止します」

 

「はい」

 

 大淀に念を押すルリだったが、杞憂だろうと思う。

 

「吹雪が連れてきたのなら、大丈夫でしょうが。目覚めるまでの監視は頼みましたよ、『イオナ』、『アリア』」

 

『了解』

 

『承りました』

 

 室内に響いた声は、大淀には聞こえずに、返答は空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 





幕は上がった。

彼女たちは、それぞれの願いを抱え、次のステージへ。

そこどこ?



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