艦隊これくしょん 狂乱『完結』   作:サルスベリ

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少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

遅くなりました、天啓があったのです。

別作品はいいわけになりますか?





色々とありまして?

 

 激動の大作戦、と後の歴史家はそう語る。

 

 稼働可能な艦艇すべてと動ける艦娘は全員が投入された作戦は、死者こそ出なかったものの、日本海軍に大きな傷跡を残すことになる。

 

 艦艇はすべてが大破、あるいは撃沈して消えた。

 

 艦娘は大破、轟沈寸前多数。

 

 物資は夏場の氷のように溶けた。

 

「ルリ君、非常用は?」

 

「三十ほどしかありませんが」

 

「三十しかないのか」

 

「はい、三十億しかありません」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 某所でとある代行と総長が、微妙な会話をしていた後に、総長が『こいつもかぁ』と言って倒れたとか、倒れなかったとか。

 

 高天原からの物資援助によって、何とか立ち直れるほど回復できた。

 

 今回の一件を受けて、政府は軍事改革を実行。

 

 日本帝国軍は、国防軍へと名称を変更していく。

 

 ほぼ機能していない陸軍も吸収された国防軍は、陸海空の垣根を取り払った形となって、日本の護りを司ることになった。

 

 こうして、栄光の帝国海軍はその姿を消した。

 

 同時にある御方の発言により、帝国主義から民主主義へと移行を開始。

 

 大作戦の混乱の後押しもあって、日本帝国は名前を『合衆国日本』へと名称を変えていった。

 

 北海道、東本州、西本州、四国、九州、その上で今回の作戦への引き換え及び復興援助への見返りとしてアメリカから譲られたハワイ。 

 

「遠すぎませんか?」

 

「遠すぎるな」

 

「いっそのこと、海上拠点構想でも立ちあげればいいんじゃないですか?」

 

「言うね、嬢ちゃん」

 

「無茶を言うな」

 

「高天原くれるなら、考えるが」

 

「上げましょう」

 

「マジですか?!」

 

「嘘です」

 

 某所で今回のアメリカから得られたものについての、内密の話がされたとか、されなかったとか。

 

「・・・・・・あ、ルルーシュに釘をさしておかないと、騎士団とか立ちあげそうです」

 

「忙しいから来ないよ」

 

 提督と代行の昔馴染みが遠い宇宙の彼方でくしゃみをしたとか。

 

 作戦後の大混乱と政府間のやり取り等々。

 

 世界はやっとの勝利に次第に湧きだした、そんな最中の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高天原の執務室で、ルリは書類を持ち上げていた。

 

「ふむ」

 

 ボーキサイト、燃料、弾薬、鋼鉄。色々と数字が減った今日、もっとやりようはあったのではと少しだけ後悔。

 

 というより、何だろう。何時も戦術や戦略を考え、体術や技術を向上させていたはずなのに。

 

 最後の火力を前に出したごり押しは、何なのだろうか。

 

 波動砲と砲弾が飛び交う戦場。

 

 交差するのは一兆度を超える火花と、虚無の闇。

 

 ちょっとした終末大戦だったなぁ、とルリは感想を心の中に仕舞いこむ。

 

「吹雪が剣を『全力解放しなかった』代わりに、暁が『流刃若火』の大盤振る舞いと」

 

 海って蒸発するんだと呆れて見ていたのは、いい思い出だ。

 

「あ、ルリちゃん、俺ちょっとハワイを再生させてくるから」

 

「は?」

 

 いきなり言われて、ルリは固まる。

 

 同じように大淀も処理済みの書類の束を持ったまま固まっている。

 

「・・・ルリより総員へ!! 提督脱走! 全員、速やかにテラさんを確保しなさい!」

 

 慌てて警報のスイッチを押すルリに、大淀は止めなかった。

 

 もう何度目だろう。

 

 作戦が終わってから、テラはこうやって時々は抜け出す。

 

 前の時は。

 

「ルリちゃん、俺ちょっとアメリカを修復してくるから」

 

「はい?」

 

 その次は。

 

「あ、大陸ごとやらないとだめか。そっか。もう一回」

 

「ちょっと待ってください」

 

 そして前回は。

 

「おお、そっか。マントルか。その下から再生させないとダメだったのか。なるほどなるほど。鉱脈も作らないとなぁ。じゃ」

 

「待ってください!!!」

 

 そして、今回。

 

 さすがのルリもそう何度も能力を使用させるものかと、今回は全員を配置しての非常線を展開。

 

 これで逃げられないか、甘いか。甘いだろうな。

 

『テラさん、確保できませんでした』

 

「未だに全艦娘の総合力より上って、そんな」

 

 上がってきた報告に大淀が崩れ落ちるが、ルリとしては予想できたこと。

 

 もう諦めるしかない。

 

「しばらく、休暇にしましょう。休みましょう。それがいいです」

 

「はい」

 

「高野総長には許可をもらいます。ええ、絶対に。大高総理にも恩を売っておきましょう」

 

 半ばヤケクソのようにルリは言ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いきなり休暇となると、人は困惑するらしい。

 

 仕事が嫌な人も、休日が楽しみな人も同じように。

 

『君、明日から休みね』なんて言われたら、『クビか?!』と疑う。

 

 いや、疑わないか。喜ぶか。

 

 彼女の場合、休暇と言われて困惑するより先に、呆然となった。

 

「明石、貴方も休暇しなさい」

 

「・・・・・・・・またまた提督は、そんな冗談なんて口にして。私は騙されませんよ。エイプリル・フールですか? 今が、何月だと思っているんですか?」

 

「いいえ、本当ですよ。ちなみに、秋津洲も降りてきて休暇します」

 

 念を押すように、普段から働きっぱなしの艦娘を出すのだが、彼女は首を振ったまま。

 

「いえいえ、冗談ですよね。私に休暇なんて、そんなことはありませんよね?」

 

「本気ですが」

 

「クビですか?!」

 

「いいえ、休暇です」

 

「私が何か失敗しましたか?!」

 

 泣きだす彼女に、ルリは思う。ああ、これは自分の失敗だな、と。

 

 普段から文句も言わずに工廠にいたものだから、好都合と使い続けていた自分の失敗だ。

 

「たまには貴方にも休みを上げたいだけです。何時も助かっていますよ、明石。だからお願いです」

 

 ゆっくりとルリは頭を下げた。

 

「休暇を楽しんでください。このとおりです」

 

「・・・・・・・・私は死ぬんですね?!」

 

「おい、こら」

 

 思わず拳を握ってしまったのだが、自分は悪くないとルリは思った。

 

 鉄拳制裁の寸前で、『休みます』といった明石だったのだが、ここでふと思ったことがある。

 

「休みって何をすればいいの?」

 

「はぁ?」

 

 夕張は思わず半眼で睨んでしまったが、悪くない。

 

「だから、休みって何をすればいいの? 仕事をしちゃダメなら、工廠は駄目だよね」

 

「当たり前でしょうが。そもそも、工廠の設備点検も一緒にやるんだから、いたら迷惑じゃない?」

 

「何それ、初耳」

 

「さっき、バッタ達が『ついでアップグレードアンドメンテナンスだ、オールだぜ、徹夜だぜ。ヒャッハー!』って言っていたから」

 

 最初に休ませないといけないのは、バッタ達ではないだろうか。明石はそんなことを思ったのだが、口には出さない。

 

「どうすればいいんだろう?」

 

「趣味でも見つければ?」

 

「夕張は何をするの?」

 

「私? 私は北上と一緒にプラモデルでも作るから」

 

 そういえば、彼女の趣味は模型だったな、と明石は思い出す。

 

 最近、部屋を圧迫してきたとか、工具の置き場所がなくなったとか、言っていたなと。

 

「なら、私は・・・・・」

 

 といい掛けて、自分はあまり模型に興味がないことを知る。

 

 機械いじりは大好き、未知の技術は面白い。けれど、それが趣味といわれると首を傾げてしまう。

 

 仕事、と言い切れるほどではないが、趣味といえるほど気楽なものではない。

 

 使っている技術が怖いものばかりだから、気楽にしてはダメだが。

 

「機械関係・・・・・・・ゲームとか」

 

「廃人プレイヤーなら山風と朝雲だけで間に合ってます」

 

 溜息交じりに答える夕張にそれもそうかと明石は口の中で言葉を転がす。

 

 ゲーム機はフルダイブから、仮想空間を現実化するものまで、幅広くあるため、多くの艦娘が一度はやったことがある。

 

 その中でも、休日にやり始めると十二時間を超える艦娘は半分より少し少ないくらい。

 

 徹夜に行くのは十人から二十人程度であって欲しい。

 

 徹夜して任務を忘れかけてやりこむのが、あの二人。

 

 依存するタイプだったのではと提督が悩んでいたが、かといって任務などに支障が出たことはない。

 

 終わった後に倒れたことは、かなりあるが。

 

「絵でも描こうかな?」

 

「矢矧が書いた油絵、二千万で売れたらしいわよ」

 

「止めておく」

 

 匿名で絵画展に出店して、この不景気に二千万で落札されるほどの絵を描く人物は、普段のたち振る舞いから想像もできないタッチで、見事な作品を仕上げるらしい。

 

「ちなみに、酒匂の水墨画が次点で一千万」

 

「阿賀野型の下二人はおかしい」

 

「能代の簪は、京都の料亭から注文が来たらしいけど」

 

「次女もおかしい!」

 

「阿賀野の宝石加工技術も、世界でトップ3に入るって」

 

「うちの阿賀野型は全員がおかしいから!」

 

 明石の悲鳴が工廠に響いたという。

 

 その後、彼女は悩みに悩んだ末に、腕時計を作り始めた。

 

 数年後、明石による腕時計はとあるメーカーを追い抜いて、『戦場で壊れない幸運のお守り』として売れることになる。

 

「うちの艦娘達の作品が、何故か世の中で高級品扱いなのですが、どうしましょうテラさん」

 

「バレてないから問題ない」

 

 某所で提督と代行がそんな会話をしていたが、別の場所ではとある総長が胃潰瘍で入院することになったという。

 

 

 

 





それはたぶん、夢の残滓。

誰かが落とした、名残の想い。

だから、言おう。

夢はやがて覚める。

人の夢と書いて、儚いと読む、と。


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