Afterglow   作:N@gi

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壁を超えろ

 皆さんこんにちは、俺が新しく生まれてから早三年。神様の言った通りに俺は『空想具現化』という俺の趣味が大幅に反映されたギフトをもらって生まれてきました。零歳の時は周りに親もおらず外に投げ捨てられていたのですぐに死んでしまうのではと思ったが心優しいスラムの子供たちによって今まで生きてこれました。

 話を戻すと、この力は使い方さえ間違えればこの世界を破滅に導けれる力を持った個性だ。

 しかし、制約も課せられておりそんな直ぐにコントロールできるほど甘くはなかった。

 

 その一、この力は一年(正確には三百六十五日)のインターバルが発生する。

 俺は初めに自分が育てばある程度の容姿を持った顔になるように空想した。これはこうだったらいいなーみたいな所謂希望論的なのだが、初め俺はぽんぽん使えるから先ずは容姿だよなと思っていたのだが、このインターバルにより見事に一年手持ち無沙汰になってしまった。

 その二、この力は自分以外に使用する場合はハッキリとした日時、シチュエーション、周りにいる人の数等、正確なコントロールが必要になる。

 俺は一歳になった頃、俺を見つけた人が金持ちで裕福な家庭に引き取られる妄想をしたが日時やシチュエーションを全然正確に決めていなかったためコレは成功しなかった。

 なので、二年目には自分が鍛えれば鍛えるだけ強くなる空想をして、次の年に備えた。

 

 その三、この世の理を曲げるようなことは出来ない。

 例えば明日隕石が降ってくればいいなーとかなら実現可能だが多世界に渡るなどこの世の理を曲げることは出来ない。

 これは俺が二歳の頃に、前の世界に戻る空想をしていたのだが出来ずに、飛行機が一分後にビルに激突して大惨事になるが死者は一人も出さないという感じで空想したのを確認して把握した。

 

 そして今は四回目の空想。今まではスラムの子供に育ててもらってなんとか生きてこれたがココは生きていくにはしんどい世界だ。なので、裕福な日本人夫婦が新婚旅行に訪れたこの土地で今から五分後に俺を見つけて養子にする空想をする。

 これならさっき言った制限のどれにも当てはまらないので大丈夫なはずだ。

 

 

 五分後、男女が目の前でこちらに向けて手招きしている。

 

 「君、親御さんは?」

 

 綺麗な声をした女性だ。その問は迷子になったの?というニュアンスではなくここで一人で生活しているのか?と取れる聞き方であった。

 

 「いない、スラムのみんなが育ててくれた」

 

 「そっか、君今何歳?」

 

 「三歳、貴方達は誰?」

 

 「そうねー、私達は通りすがりの新婚夫婦かな?ね、君良かったら私達と一緒に暮らさないかしら?」

 

 「ん、でも僕邪魔になるから」

 

 そう言うと困った顔をした女性をフォローするように男性の方が近寄ってきた。

 

 「君は悪いことしたのかい?」

 

 「してないよ」

 

 「親御さんがいないなら僕達が君の親になるよ。親には迷惑かけるものだろ?」

 

 ニカッとした笑顔で俺の頭を撫でる男性。あぁ、親っていうのは本来はこんなに優しいものなのか。何故だか、心が暖かくなった。

 

 「三歳でこんなに綺麗な言葉を喋れるんだもの、私たちの子供は将来有望ね!」

 

 「あぁ、そうだな花凛。この子は僕達なんて目じゃないぐらいカッコイイ大人になるぞ」

 

 「かりん?」

 

 と俺は女性を指さしながら問う。

 

 キョトンとした女性があぁ、そうかという顔をして自己紹介をしてくれた。

 

 「そう、私は花凛。紅 花凛。こっちは貴方のお父さんになる紅 剣璽よ」

 

 「紅 剣璽だよ。これからは僕達が君の家族だ」

 

 なんていうか、本当にこれが人なのだろうか。本来はこんなにも暖かく優しいものだったのだろう。俺は今まで生きてきた中で一番の泣き顔を晒していた。

 

 「泣くなよー、ほら行こう行こう…えっと名前は?」

 

 「グスッ、名前無い」

 

 「名前無いのかー、そうかそうか…花凛名前つけてあげよっか」

 

 「そうね、そしたら君は…今日から紅 夕斗。夕焼けのように綺麗で人の心に寄り添える人になってほしいって願いを込めた名前。どう?」

 

 夕斗か…いい名前だ。あぁ、俺の空想の力ではあるがなんて心地いい所なんだろうか。

 

 「夕斗…僕夕斗!!」

 

 「そうだ、君は夕斗だ」

 

 頭をぐしぐしとして撫でる剣璽さん。それを微笑ましい顔で見る花凛さん。こんな幸せの横で俺は生活を続けていくことになる。

 

 

 

 

 そして月日が経って俺は今十四歳。

 あの後父さんと母さんに育てられた俺は今いる世界がどんなものかド肝を抜かれることになる。

 

 世界人口の八割が昔では考えられない『個性』を持ち『超常』が「日常」となった現代において最も脚光を浴びる職業であるヒーロー。

 個性を使った犯罪者、『敵』に対抗するために生まれた職業だ。

 自分だけの個性を使って華々しく敵を倒し、街や国、更には世界の平和を守る職業は夢見る子供を中心に絶大な人気を誇っている。

 今や数多くのヒーローが存在し、社会の安定のためになくてはならない存在となっている。

 個性が溢れる昨今、個性自体がランク分けされており、良い個性を持てばそれだけで才能充分とされ、個性を持っていなければ見込みなしという烙印を押されてしまう個性最重要社会となっている。

 

 そんな中で日本のトップヒーローの五番目にいるのが父さんことブレイドヒーローグラムだ。

 母さんは元々秘書だったのだが俺を引き取ってくれてからは専業主婦になっており、俺の戦闘指南役として毎日稽古をつけてくれている。

 

 空想具現化という身に余る才能を貰えた俺は上限を知らない身体に、良く回る頭、それに加えて強力な個性を身につけたため周りから期待してもらえるようにはなった。

 

 俺は両親によって心に幸せというものを教えて貰った。そんな両親がしている職業に憧れるなと言われる方が無理だった、俺は人の心に残れるような人間になりたい。ヒーローが目標になったのは当たり前の選択だった。

 

 なんて、頭を回しながらも現在は自主トレーニング中。個性を使い部屋の中に負荷をかけた状態で逆立ち伏せをしている。

 

 「九十九…百!! あぁ、疲れたぁ…」

 

 俺が空想によって手にいれた個性は『重力』。かなり汎用性の高い能力だし、四歳の時の空想具現化でこれを選んだ。

 

 「いっつもトレーニングしてるわねぇ、夕斗は」

 

 「母さん!いつからそこに居たの、すぐ個性消すよ!」

 

 逆立ち伏せが終わってボーッとしていると母さんが横から顔を覗かせて笑っていた。結構な負荷を掛けてるのでしんどいはずなのに母さんは汗一つ出していない。

 

 「にしても夕斗の個性はホントに便利よねぇ。特にデメリットもないし汎用性は高いし、頭もいいし運動神経はいいし…やっぱり自慢の息子だわ」

 

 「母さん、本人を目の前にして褒めるのやめて。素直に恥ずかしいよ俺」

 

 「やーねー、いつも母さんは貴方のこと自慢の息子だって思ってるわよ!」

 

 「分かったから…、そんでどうしたの急に」

 

 「父さんと母さんから貴方に話したいことがあるのよ。リビングまで来て」

 

 「分かった、着替えてから向かうから先に行っといて」

 

 母さんは俺の言葉を聞いて、すぐにリビングへ向かっていった。

 にしても何となく話したい事って言うのがわかるから困る。俺は現在中学三年生、そして今日は先生と両親が俺の進路希望表を元に面談を行った日、となると自然と話題は一つしかなくなる。

 なんて言われるのかなぁ…、はぁ、鬱だ。

 

 

 リビングに行くと既に母さんと父さんは、テーブルについており俺を待っているようだった。

 俺も緊張しながら二人の前に座る。

 

 「夕斗、父さんたちの話したいことっていうのは大体わかってるね?」

 

 「う、うん。俺の進路のことでしょ?」

 

 「そうだ、夕斗はヒーローになりたいのか?」

 

 試すような眼差しで俺を見る父さん。そこにはプロヒーローとして修羅場を潜ってきた戦士の顔があり、甘い考えでは生きていけないぞというプレッシャーに似たものを感じた。

 

 「俺さ、昔父さんたちに拾ってもらった時のこと今でも憶えてるんだ。まだ小さかった俺を二人して慰めるみたいに頭撫でてくれて、そんで家族だよって言われた時のこと。あの時あぁ、俺もこの人達みたいに誰かの事を救けれる人になりたいなって子供ながらに思った」

 

 俺の言葉を懐かしいことを思い出したような顔で聞く父さんと母さん。俺の話を促しているように無言だったので話を続ける。

 

 「だから、父さんと同じ職業になって成長したなって褒めてもらうんだってその時から決めてた。父さんがヒーローだって知った時も俺の父さんはこんなに凄い人なんだって知った。母さんはいつも俺の事を気にかけてくれて自慢の息子だって言ってくれるけど俺だって母さんも父さんも自慢の両親だって思ってる。だから父さんに追いつくためにも俺はヒーローになりたい!」

 

 俺の話を聞いて、母さんが静かに泣いていて父さんは目を瞑って首を上に向けていた。

 なんて反応するだろうか、俺はハラハラしながら両親の言葉を待った。

 

 「母さんね、初めて夕斗を連れて帰った時実は不安だったの。私が母親でいいのかって。父さんもそれは同じだと思う…でもね夕斗が父さんの隣に立つんだ!って力強く語った時に私思ったのよ。あぁ、この子はなんて優しいんだろうかって」

 

 まるで今の答えがわかっていたような話をする母さん。思えば俺は大事な場面でいつも母さんを泣かせているような気がする。

 

 「父さんはね、正直に言えば夕斗にヒーローになって欲しくない。危ないし、恨みも買うし罵倒されることだってあるからね。でも夕斗は僕の隣に立つんだって今でも言ってくれた。それが嬉しくてね…」

 

 父さんはどこか誇らしげに俺に向かってそう言った。

 

 「だから、夕斗なら出来ると信じて課題を出すよ!ヒーローになりたいなら雄英高校で歴代トップで入試を突破しなさい、それが僕からの夕斗への課題だ」

 

 父さんからの課題、燃える…燃えてしまう!

 なら俺が父さんにいう言葉は一つしかない。

 

 「見てて父さん、俺が来たって雄英に示してみせる。未来のNo.1ヒーローが来たぞ!ってね」

 

「僕の母校だ、歴代トップは甘くないけど夕斗なら出来るって父さんも母さんも信じてるよ」

 

 「そうね…夕斗はこんなにも大きくなったのね剣璽さん。晴れやかな気持ちだわ、私」

 

 「…よし、今日はもう寝なさい夕斗」

 

 「分かった、父さん母さん。ここまで俺を育ててくれてありがとう。俺は絶対プロヒーローになるから!」

 

 そう言葉を口にして、自室に向かう。父さんが期待してくれている、それだけで入試に身が入る。

 俺のNo.1ヒーローが期待してくれるって言ってくれたんだ。俺は絶対にヒーローになる!!

 

 

 

 「ねぇ、剣璽さん知ってる?夕斗実はもう三百キロ近い負荷をかけながら逆立ち伏せ百回も出来るのよ?」

 

 「改めて考えてみると、雄英歴代トップなんて簡単すぎたかもしれないね花凛」

 

 「そーねぇ…でも私達の息子はあんなに立派になったのよ」

 

 「そうだね、僕も誇らしいよ」

 

 夕斗が居なくなったリビングでは夕斗への慈愛に満ちた会話で満たされていた。




はい、能力説明回でした。次からは特訓編になります。
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