Afterglow   作:N@gi

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個性把握テストという名の理不尽

 あの日、雄英から学費免除などの話をされた夜に父さんは帰ってこなかった。いつもならそんな事はありえないのだがこの日から一日帰って来ないなんて日がちょくちょく出るようになった。俺が話そうとしてもはぐらかしてくるし母さんとしっかり会話しているみたいなので特に心配するようなことはないのかもしれない。

 

 けれどどこか思いつめた顔で仕事に向かう父さんなんて今まで一緒に生活してきて初めて見たので不安になる。万が一ということもあるので何もなければいいのだが。

 

 

 さて、父さんの話は今は少し置いておいて俺の話をしよう。今日は雄英の始業式、つまり初の登校日となる。誰が受かっているかなどは今現在俺は知らないので手元に来た封筒に書いてあるこの俺の組と出席番号を書いた紙しか情報はない。

 けど、時間にゆとりを持って登校すれば、同じ雄英生に会うこともあるだろう。

 

 「かあさーん、俺行くよー」

 

 「はいはいはいはい、これお弁当ね。今日が初陣なんだから気合入れていきなさい夕斗」

 

 母さんからお弁当を受け取りながら、曖昧に返事する。気合入れろって何をどうしろと…

 

 「っと、初日から遅刻なんて洒落にならないから行くよ。行ってきます!」

 

 「行ってらっしゃい!」

 

 俺の学校生活が始まった。

 

 ___________________________

 

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ! てめーどこ中だよ端役が!」

 

 なんて、気分よく学校に着いたは良かったが教室を開けた瞬間にこの有様だった。

 明らかにヒーローというよりは敵がお似合いですと言わんばかりの性格を表したような金髪の髪の少年と受験会場でプレゼントマイクに対して質問をしていた少年が口論していた。朝からなんだとは思ったが、まぁ元気があるっていいななんて思いながら席につく。

 

 必然後ろの方から言い合いがギャーギャー聞こえるが完全にシャットアウトして荷物を整理する。黒板の見えやすい、右から二列目の前から二番目という中々好条件の席だ。

 

 「おーー!後ろの人来てたんか!おはよー」

 

 「どーも、おはよう」

 

 「お、紅じゃん!やっぱりお前は受かってたかー…ってあれお前ネクタイピンなんて付けてきたんか」

 

 「えっ、まじ!?紅君まさかのオシャレ系男子!?」

 

 「あーと、切島これは学校から支給されたものなんだ。んでえーと……金髪の君、俺はどっちかっていうと服に興味はない」

 

 「悪い悪い、自己紹介まだだったな!俺は上鳴電気!これから宜しくな!」

 

 「ありがとう上鳴。俺は紅 夕斗、これから頼む」

 

 「さっき言ってた0P敵目の前で叩きつぶしたって奴がこいつなんだよ!まーじで漢らしかった!」

 

 その後、俺の0P敵を倒した時の話や切島と上鳴と好みなどを話し合って時間を潰していた。

 すると見慣れた緑の縮れ毛の少年が入ってきた。

 

 「出久ぅ!やーっぱりお前も受かったかー!良かった!」

 

 「あっ!紅君!ありがとう、君も受かっててよかったよ」

 

 「そりゃあもうな!このまま話がしたいが先生が来なさった。席に戻ろう」

 

 「えっ?先生なんてどこに…うわぁ!?」

 

 出久がキョロキョロして後ろを指さすとそれを確認して驚いた。

 出久の後ろからイモムシのように地面を這って現れた身なりがとてもいいとは言えない男性がそこにはいた。だが、その風貌とはまるで逆の印象を受ける隙のなさ。流石は雄英、生半可なヒーローが教師やってるわけないよな。

 

 「そこのグレーの男子以外は俺に気づいてなかったね、それに静かになるまで8秒かかりました。

 時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 パンっ!と気前よく柏手をして一旦言葉をあける先生。見た目とは異なり、周りをまとめ上げる空気感というものがプロヒーローそのものだった。皆も彼がなんというヒーローかは分かってはいないが本職の空気に当てられて何も言えずにいる。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 なるほど、やはり担任の先生だったか。挨拶を終えると先生はおもむろに何かを取り出した。

 

「早速だが、全員体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 始業式も入学式も始まっていないというのに波乱の学校生活の幕開けがした。

 

 __________________________

 

『個性把握テストォ!?』

 

 と大多数のクラスメイトがおどろきながら先生に問い詰める。いやはや、入学式すらせずにいきなり個性把握テストなんて手段に出るとはこれは正直いきなりの雄英からの洗礼だなと思った。

 

 「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 と俺の後ろでショートボブの茶髪の女の子が先生に問い詰めていた。

 そんな彼女の問すら先生は気だるげに答えた。

 

 「ヒーローになるならそんな悠長な行事に出る余裕ないよ」

 

 先生の言葉に多少平静を装っていた者すら動揺していた。それもそうだろう、俺は父さんや母さんから雄英はいきなり授業する先生もいると聞いていたからなんとか動揺せずにこんな事もあるのかと思えるが皆そもそも今日はガイダンスと入学式がメインだと思っているのだから当然だろう。

 

「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。

 お前達も中学の頃からやっているだろう? 個性禁止の体力テスト」

 

 先生は一つのタブレットを取り出して、画面を見せる。表示されていた種目は基礎的なそれこそ皆がやると思われるソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横とび、上体起こし、長座体前屈の八種目。

 個性なしなら限界を取り払っている身体機能だけで上位は取れるだろうが個性アリなら総合一位を取れるかは分からない。

 

 「実技入試トップは……あぁ、そうか紅は特別推薦枠だったな。なら爆豪、個性を使ってやってみてくれ」

 

 ツンツンヘアーの金髪つり目の少年は爆豪というらしい。あいつ今日聞いていた会話の中で一つもヒーローらしい言葉は言ってなかったが本当に大丈夫なのだろうか。

 

 

「じゃあ爆豪、お前ソフトボール投げ、何メートルだった?」

 

「…67m」

 

「よし、個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何しても良いから、思いっきりな」

 

 先生の言葉に返事すらせずに円の中に入る爆豪。腕をほぐし助走をつけた勢いで個性を発動して……

 

 「死ねぇ!!!!」

 

 ………(死ね?)

 

 おおよそヒーロー志望の人間が口にしていいとは言えない言葉を吐きながら個性の爆発と見られる力でボールを遠くに飛ばした爆豪。

 言葉は粗暴で態度も横柄ではあるが俺の次に実技試験の成績がいいということもあり実力は本物だった。

 まぁ、人間的に好きになれるかと言われれば微妙なところだが。

 

 そんな事を考えている間に先生が手にした飛距離が表示されるプレートが705.2mを記録していた。

 個性禁止の体力テストでは見ることが出来ない脅威的な記録だ。

 

「まず自分の『最大限』を知る。

 それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 先生はまるで今のお前らの限界はこれから叩き上げて伸ばすのだと言わんばかりの言い方だった。

 しかし他の生徒は事をそう単純に考えていないのか先生の言葉を皮切りにはしゃいでいた。

 

「なんだこれ!! すげー面白そう!」

 

「705mってマジかよ……」

 

「個性思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

 などなど、どこかアトラクション系の施設に来たかのようにはしゃいでいた。

 

「……面白そう…か。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 先生はどこか、威圧するような攻撃的な雰囲気を醸し出しながらそう俺たちに告げた。

 先生のその雰囲気を察してクラスの面々は押し黙る。流石にやってしまったと思ったのだろう。

 

 そして先生は、俺らを選別するような口調でこう言った。

 

 

「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 唐突に告げられた、先生の発言に皆戸惑いを隠せずにいる。やはり甘くはない。

 

「生徒の如何は先生(おれたち)の〝自由〟。

 ようこそ、これが、雄英高校ヒーロー科だ」

 

 茶髪のショートボブの女の子がどこか非難するような口調で先生に歯向かった。

 

 「最下位除籍って……!!入学初日ですよ!?いや……入学初日じゃなくても…理不尽すぎる!!!」

 

 そんな言葉に先生はどこか馬鹿を見るような目でこちらを見ていた。

 

 「自然災害…大事故…身勝手な(ヴィラン)達…

  いつどこから来るかもわからない厄災。日本は理不尽に満ちている。

  そういう理不尽を覆していくのがヒーロー。」

 

 もう一度俺ら全員を見渡して、一層大きい声で更に続ける先生。

 

 「放課後マックで談笑したかったなら御生憎様!

  これから三年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」

 

 

 「〝Plus ultra(更に向こうへ)〟さ。全力で乗り越えて来い」

 ______________________________

 

 「3秒04!!」

 

 アレから50メートル走から体力テストが始まった。今は俺の前の真面目委員長君が走っている。脹脛の所にあるエンジンが加速力をあげていて爆速で走り抜けていた。

 

 「次は爆豪、紅!」

 

 「はーい」

 

 ツンツンヘアー君と一緒に走ることになってしまった。どっちかというとあまり関わりたくなかったので一緒は嫌だったのだが。

 

 そんな事を気にせずにスタート地点につく。この場合は個性の運用の仕方を二つに分けて使うことがメインになるな。

 まだ慣れていないのでこういう所で慣れていこう。

 

 「位置についてー…よーい…ドン!」

 

 ロボットから言葉が聞こえた瞬間に自身の重力を限りなくゼロにし自分の前方に引力を常に発生させながら走る。これなら身体も鍛えているのでさらに早く走れるしマルチタスクの訓練にもなる。

 常に自分を引っ張る引力を自身の前方に発生させるのは難しいがなんとかペースを維持したままゴールできた。

 

 「2秒37!!」

 

 ふーむ、まずまずかなぁ。なんとも言えないが中学の時より素の身体能力が上がっているため個性を上手く使ったおかげなのか分からないな。

 

 「4秒13!!」

 

 後ろから爆豪もゴールしたみたいだ。個性を見る限りそんなにこの競技に生かせそうな個性ではなかったようだが、さすがは才能の卵。

 

 「っクソ!調子乗ってんなよクソモブが!」

 

 「いや、乗ってないんだけど…」

 

 「ッソが!」

 

 爆豪はそれだけ告げると立ち去って言った。プライドが高い人物のようで俺に記録で負けたのが凄く悔しかったみたいだ。

 

 ふーむ、難しいなぁ。

 

 

 握力測定、俺の個性が使える競技だ。心なしか皆どこかはっちゃけてきてはいるが爆豪からはずっときつい視線を向けられてるし、出久とはまともに話せないしで中々辛い初日だなぁ。

 

 「よーし、次紅!とっとと済ましていけー」

 

 「はい」

 

 個性の発動をして、握力計に指をかけていく。握力計と自身の指に力を加えていき結果は872kg。大体俺の握力が84kgほどなので大体790kgぐらいが個性で出せる重力の限界か。

 ふーむ、目標はとりあえず1000kg…1tを出せるぐらいか。重力という力自体がどれだけの事が出来るのか俺が把握出来ていないのが問題なのだ。

 

 重力とはそれだけで時間を止めたりだとか磁場を発生させたりだとかが出来るはずなのだが如何せん自分で理解していないとどうしても力として使えないのだ。

 

 「前途多難だ…」

 

 

 三種目目立ち幅跳びは俺は測定不能だった。反復横跳びは紫色の髪の毛の小さい男のが一位をとって俺は四位だった。

 やはり向き不向きがある。反復横跳びは重さを限りなく失くすとスピードが早すぎて踏ん張りが効かないのでどうしても順位が下がってしまう。

 

 そのまま上体起こし、長座体前屈ときたがここもまた俺の個性では何も出来なかったため普通にした。

 どうしても個性というのは前の世界の俺から見るとビックリ箱的な要素もあるため中々他の生徒を見るのは楽しい。

 

 ていうか、どうしよう。口下手というか仲良くなるまで壁が取れないっていうか切島と上鳴と出久以外に話す人物がいない…。

 これはまさか早々にボッチルートをたどってしまうのか俺よ。

 

 「おい」

 

 「えっ?」

 

 後ろから唐突に声をかけられて間抜けな声が出た。髪の毛が白と赤の半分君が俺にたいして話しかけてきてくれたようだ。

 

 「お前、推薦入試の説明会でも見なかったが何か特別に優遇してもらったのか?さっき先生がお前のこと特別推薦とか言ったが」

 

 「一般入試でちょっといい記録出せただけだよ。えーと名前いいか?」

 

 「悪ぃ、俺は轟 焦凍」

 

 「轟か。俺は紅 夕斗。これから一年間よろしく頼む」

 

 轟と自身の名前を教えてくれた彼は思っていたより負けん気というのが強いのかもしれない。先程の挨拶もお前には負けないぞというニュアンスからのものだと思われる。まだ彼の個性を見れてはいないが身体能力だけでも中々高水準な様でやはり推薦入学生というのは実力も高いということか。

 

 「おい、紅。さっさと用意しろ、時間がもったいない」

 

 「すみません、先生」

 

 先生に咎められ、少し反省しながら円の中に入る。多分このボール投げが俺の個性と一番相性のいい競技だろう。

 茶髪のショートボブの女の子が∞という記録を出していて俺と似たような個性なのかと思ったが彼女は少し違うと見た。なぜなら彼女の個性はボールの引力を無くす個性だった、これは多分似たような個性の俺だから気づけたが似たような個性でありながら別物なのだ。

 俺の重力という個性は〝重力を操作〟する能力なのだ。それに加えて彼女の個性は〝引力を無くす〟能力なのだろう。まだ確定的なことは言えないがどちらかと言うと俺の方が個性としてはランクが一つ上なのかもしれない。

 

 なんて考えながら、メテオインパクトの擬似版としてボールの重力を限りなくゼロに近づける。そのまま俺の身体もゼロに近づけて勢いをつけながらボールを投げる。ボールを投げる最後まで重力を軽くしておいて、手から離れる瞬間にボールを重くする。すると力の伝わり方は軽い時のそれなのだが加速度は重い時と同じになる。

 

 そのままボールの飛距離はグングン伸びていき俺の記録は1807.4mだった。

 ボールぐらいの軽さならさらに遠くまで行けそうだ。

 

 ボール投げが終わり、俺の次は出久だった。出久は先生の最下位除籍の言葉でかなり視野が狭まっているようで、ガチガチに緊張していた。

 

 「出久!落ち着け、お前は雄英に受かってるからここにいるんだろ!?」

 

 出久の肩を両手で持って、そのまま真っ直ぐに彼の目を見る。

 

 「なら、お前がやることは一つだ。迷惑をかけずに全力で行け!!」

 

 「っ!ありがとう、紅君!」

 

 出久はそれだけいうと先程よりはマシな顔をして円の中に入っていった。さっきの言葉で何か決心がついたならよかった、折角一緒のクラスになれたのに別れるなんて悲しいからな。

 

『48m』

 

 出久の一回目の記録は普通の個性を使っていない記録だった。出久のあの使わなさは彼の個性は莫大なデメリットでもあるのだろうか。

 

 「緑谷と何か話してるな先生」

 

 あの話してる感じ、どこか責めるような言い方なのだろうな。出久の精神性は本当にヒーローのそれに適しているのだからここで消えてしまうのは惜しいが……

 

(そんな理不尽吹き飛ばすのがヒーローだろ!緑谷 出久!)

 

 爆豪は出久と並々ならぬ因縁があるのか辛辣な言葉をひたすら呟いていた。それが何故か俺には見過ごせないことを呟いていた。

 

『無個性』

 

 それは一種の差別用語。俺自体は神様からのギフトがあったから何とかここにこれたのだ。それを頑張ってここまできた出久に向かって言っていいことではないだろう。

 

 「おい、爆豪。それ以上は出久に対して失礼だ。口を慎め」

 

 「あァッ!!?無個性のクソカスに向かって何で俺が気を使わないといけねぇんだよクソモブがァ!」

 

 「はぁ…もういい」

 

 爆豪という人物はどこまでも自分本位な人間なのだろう。無個性無個性と出久のことを馬鹿にしている事から最近までは出久の事なんか眼中になかったのが彼が雄英まで来たので彼の琴線に触れたのだろう。

 なんともみみっちい事だ。

 

 さて出久はそんな俺達のことなんか意識の外にあるようで決心をして構えた。

 

 出久はそのまま個性を発動したそうで人差し指が腫れ上がっていた。

 なるほど、超パワーの反動に身体が耐えられないのか。これは迂闊に使えないのも納得だが、制御さえしっかりすればかなり使えるだろう。これからの出久の頑張り次第だろうなこれは。

 

 そのまま特に目立ったこともないまま、全競技が終了。

 

「んじゃ、パパっと結果発表。

 トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する。ちなみに、除籍はウソな。

 君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 誰かの声にならない声が聞こえた。それもそうだろう、いきなり最下位除籍処分と言われて本気でやったのにアレは合理的虚偽など言われれば頭が混乱するのもそうだろう。

 出久、委員長君、ショートボブさんが絶叫していた。まぁ出久なんかは一番不安だったのだろう。

 

 

 

 そんな騒がしいイベントも終わって個性把握テストという最初の騒動が一段落した。

 初日から飛ばしていたが何だかんだ楽しかったので俺も人並みに子供なのかもしれないな。




はい、個性把握テストですね。
今回は夕斗君の容姿の描写が少ないと思いましたので参考までに

紅'sHear グレー色の軽く目が隠れる長さの前髪。
紅'sEye 綺麗な紅色
紅'sArm 鍛えてることによってでこぼこしている。
紅'sWhole body 身長も高く引き締まっているぞ!

なんて書いてみましたが身長は180cmの体重は75kgの設定です。
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