辻堂愛は長谷大と買い物をしていた。この前に里親に出した子猫に会いたくなったので子猫用品を買って行こうとしているのだ。
子猫の様子を定期的に聞くととても可愛がってもらってるそうだ。これを聞いて心から安心する。
「そうか。あの子が可愛がってもらって良かったぜ」
「うん。あのおばあさんは優しいから」
本当に良かったと思える。あの子猫はきっと幸せに育つだろう。
「そういえば辻堂さん。最近白い服で眼鏡の男性の人に会いませんでした?」
「ん? それってあの噂の男か」
「やっぱり知ってるんだ」
「ああ。会ってはいないが三大天を嗅ぎまわってるって噂だ。何でも今日も来ているらしいからクミたちが何人か連れて探してるみたいだ」
「会いにいかないの辻堂さん?」
「どうせ湘南で天下でも取りに来た奴だろ。面倒だ。まあヤバかったらすぐにで行くがな」
「最近多いみたいだよね」
「ったく面倒だよ。本当に最近多くて仕方ない」
本当にうんざりだと思う。つい最近なんて学校にまで来た不良までいるのだから。しかも関係無い者まで巻き込むのは本当に止めてもらいたい。
今回は今の所ないが、心の何処かで何か不安が燻る。今までにない何かが起こりそうだという小さく確定できない不安がだ。
今日は後で連絡でもして報告を聞こうとしよう。できれば何事も無かったという報告が聞きたいものだ。しかしその思いは簡単に崩された。
プルルルルルルルっと電話が鳴る。電話に出ると弱弱しい声が聞こえてきた。
『あ、愛さん。スンマセン…やられました』
「クミか!? 大丈夫か!? 何があった!?」
ここで急に男の声に変わる。
『もしもし辻堂軍団の辻堂愛で間違いないかな?』
「てめー誰だ?」
『僕はラグナレクのオーディーン。たぶんそっちで噂になってる人物だよ』
白服で眼鏡の男かとすぐに思いつく。
「てめえ。クミたちに何をした」
『襲い掛かって来たから抵抗しただけだ。僕は元々、君と話がしたかっただけでね』
「クミたちは無事なんだろーな!!」
『無事だよ。少し痛めつけたくらいさ。潰しに来たわけじゃなくて話にきただけだからね』
「…いいだろ。話ぐらいしてやるさ。どこにいる?」
『じゃあ海岸の方に来てくれるかな。そっちの方が見つけやすいと思うし』
辻堂愛は詳細な場所を聞く。
『人質なんて真似はしたくないけどこの青髪の女性を連れてく。ああ、安心してよ。この子が襲い掛からない限り何もしないから』
ピッと電話が切れる。せっかく何も無ければ良いと思っている矢先にこれだ。すぐに向かわなければならない。
「悪い大。急用ができた」
「辻堂さん!?」
辻堂愛は走り出す。
・・・・・・・
片瀬恋奈は信頼する幹部と50人の部下を連れて連絡があった場所へと向かう。その場所には件の男であるオーディーンがいるからだ。
そして新たな情報が入ってきた。それはオーディーンが辻堂軍団の不良十数名を叩きのめしたと言う。
この情報を聞いて「マジか」と呟く。辻堂軍団に手を出せば辻堂愛が黙っているはずがない。彼女もすぐにでもオーディーンの元に来るだろう。
「辻堂は皆殺しがやられたことを知ってんのか?」
「さあ分からないっすね。でもそのうち情報は確実に耳に入るはずっすよ」
その通りだろう。辻堂愛と腰越マキの関係は犬猿の仲。それでも互いのことで何かあれば情報はすぐにでも耳に入る。
それは嫌いな奴ほど無駄に情報が耳に入るというやつだ。
「辻堂の奴どんな顔をするんだろうね」
「ねー。ウチラでもメッチャ驚いたシ」
あの化け物と称される腰越マキがやられたなんて今でも信じられない。もしかしたら何かの間違いじゃないのかと思ってしまうほどだ。
しかし情報を短時間でも調べると確かにオーディーンが腰越マキを倒したという情報で持ち切りである。
「どんな男っすかねー?」
「会えば分かるっしょ」
「おい。急な呼び出しで何かと思えば…皆殺しがやられたのは本当か?」
「リョウ、来たか!!」
合流したのは『総災天』のリョウ。彼女も江乃死魔の幹部の1人だ。
「その噂は確かだ。ウチらの部下が確かに見たと言っている」
「し、信じられん」
「アタシだって信じられねえよ。あの『皆殺し』がやられるなんて」
「どこのどいつがやったんだ?」
「聞いたことの無いチームの奴だ。確かラグナレクのオーディーンって奴」
「ラグナレクだと!?」
リョウがここ一番の反応を見せる。その反応はまさに知っている、だ。
「知っているのかリョウ!?」
「ああ、ラグナレクは大型の不良チームだ。湘南をナワバリにしていなく、他所のチーム。そしてオーディーンは第一拳豪でラグナレクのリーダーだ」
「第一拳豪って何だシ?」
「ラグナレクにはリーダーを含めて合計8人の幹部がいる。それが『八拳豪』と呼ばれいていて実力が全員抜き出ているんだ」
「よく知っているなー」
「これでも湘南は他所からのチームが攻めてきている。ならば調べるのは当たり前だ。だが特に一番の危険なチームがそのラグナレクだ」
「マジかよ…」
「正直に言って規模が江乃死島より上だぞ」
リョウから出てくる情報に絶句するしかない。
「ウチらより上!?」
「ああ。特に第一拳豪のオーディーンは絶大な強さとカリスマでチームをまとめているという。恋奈、おそらくお前と同じ…それ以上だ」
「えー…れんにゃより上って信じられないし」
リョウの言葉に信じられないが、腰越マキを倒したという事実とリョウの確かな情報で大きなチームをまとめているというのなら、力とカリスマを兼ね備えた人物ということになる。
さらに部下には7人も強力な人物たちがいるらしい。
「どうやら幹部たちは北欧神話をコードネームにしているらしい」
「北欧神話?」
「ああ、だからオーディーンなんすね」
幹部たちの名前は上からバーサーカー、フレイヤ、ロキ、ジークフリート、ハーミット、トール。
「最近だとバルキリーという奴が拳豪入りして八拳豪になったらしい」
ラグナレクの組織図はトップがオーディーンで残りの八拳豪が下にいる。そして各八拳豪に認められた部下がいる。残りが末端で有象無象の不良たち。
これがラグナレクの大まかな組織図である。
「聞いた話だと八拳豪3人で50人はいるチームを潰したらしい。皆殺しや辻堂ほどではないかもしれないが八拳豪も相当の実力者だ」
「マジかよ」
「…油断していると八拳豪だけで江ノ死魔が潰されるぞ」
まさかの大型チームが湘南に来ているとは予想外。しかもそのリーダーが湘南に何の用なのか。
「やはり湘南のてっぺんを取りに来たのか?」
「可能性はあるじゃん」
「オーディーン…何者だ?」
その真実は海岸に行けば分かる。行けば三大天とラグナレクが会合する。
・・・・・・・
海岸にて。
「来たか…」
「愛さぁん!!」
「それに江乃死魔までいるとはな。ちょうど良い」
海岸には三大天の1人である辻堂愛。そして江ノ死魔の恋奈および幹部たち、部下一同。
まさかここまで大勢集まるとは一般人からすれば「何事か!?」と思うだろう。知らない人たちはそそくさと退散していく。
そして全員の目は朝宮龍斗に集まるのであった。
「じゃあ、話をしようか」
読んでくれてありがとうございました。
次回も気長にゆっくりとお待ちください。