久しぶり過ぎる更新です。まだエタらないので頑張ります。
朝宮龍斗の前に立つのは辻堂軍団の辻堂愛に江乃死魔の恋奈。
まず何故ラグナレクのリーダーである朝宮龍斗が湘南に来て2大不良チームに顔を合わせているかというと勢力拡大のためのスカウトだ。
スカウトと言うが要は傘下になれということ。しかし、本当の目的は拳豪入りできる人材を探すことだ。
この中で拳豪入りできそうな才能持ちを一瞬のうちに予想する。
(ふむ…辻堂という奴は拳豪入りできそうだな)
「おい、てめえ」
「何かな?」
「さっさと何が目的か話せよ」
「そうだったね。悪い悪い」
朝宮龍斗は何故、自分が彼女たちを探していたかの理由を淡々と説明する。
スカウトと言う名の傘下にならないかというものだ。だが湘南の2大不良チームがそんなのを首を縦に振るはずがない。
「ふざけてんのか?」
「真面目だよ。それに僕としては君はラグナレクの拳豪入りできるだろう」
「拳豪?」
「ラグナレクの幹部さ」
拳豪入りすればラグナレクでの地位は確定される。そうすれば自分だけのチームを持つことができる。
第三拳豪のフレイヤは自分だけのチームである『ワルキューレ』を持っている。ワルキューレはラグナレクの中でも上位にあたるチームだ。
そのためラグナレクに所属する不良たちに比べれば扱いは上である。
もし、辻堂愛や片瀬恋奈がラグナレクに入って拳豪入りすれば自分のチームもラグナレクでは扱いは上になる。
「辻堂愛。君なら拳豪入りできるだろう」
戦ってはいないが分かる。彼女は強い。
きっと他の八拳豪も拳入りするのに反対しないだろう。
(もしかしたら師匠…拳聖様も気に入るかもしれないな)
そして次に片瀬恋奈の方を見る。彼女のチームは辻堂軍団と違って数が多い。そしてその数をまとめるということはリーダーである片瀬恋奈にはカリスマがあるということだ。
それに彼女の周りには幹部クラスが4人いる。何故か全員女だが、フレイヤのように女性構成員が多いのだろうか。
(筋肉質の彼女は力がありそうだ。あの青髪の小さい子は…ダメだな。緑の長髪の女はまあまあ。最後の彼女は身軽そうだな。アタランテのようにスピードがありそうだ)
朝宮龍斗は人材を見る目はある。そのせいあって今のラグナレクが出来ているのだから。
「で、アタシたちに簡単に言うと傘下になれと?」
「さっきからそう言ってる」
「なら返事を返すぜ。断る」
「それはアタシもな」
それは想定していた。どの不良チームも参加になれと言って簡単に首を振る者は少ない。
だから不良チームとの抗争が多いのだ。
「傘下になったからと言って雑用をさせるつもりではないさ。無茶な命令もさせるつもりはないんだがね」
「何故そこまで吸収しようとしてくる」
「ラグナレクにはある敵対チームがいてね。来るべき時のための戦力強化さ」
「なんて奴だよ」
「それは教えられない。仲間になってくれれば教えよう」
ラグナレクの本当の目的はそうではないが、表の目的としてはそうなっている。ある敵対チームとの決着。
「それに私たちの力が欲しいと?」
「まあね」
そこは適当。
ラグナレクとしてまだまだ始まったばかりなのだ。いずれは拳聖についていき、どうなるか分からない。
今はできるだけ力を手に入れたいのだ。そして親友との約束を果たす時が近いかもしれない。
「ふーん、だが断る。帰りな」
やはり辻堂愛は断るの一転張り。彼女にとって不良の抗争や勢力争いなんて興味はないのだろう。
おそらく彼女の力や人柄に集まってきたのが不良たちでチームが構成されていたというものだろう。
「アタシも断る。今ここでお前をつぶしても構わないんだぜ」
片瀬恋奈も断られる。
彼女はこの湘南でトップを手に入れることを目的としている。なのに今からラグナレクの参加に入るなんてするわけはないだろう。
力を貸すと言っても参加に入ることはない。自分の江乃死魔のチームに下るというのなら彼女は首を縦に振るかもしれないが。
「スカウト失敗か」
予想はしていた。なかなかラグナレクに傘下として入るのはそうそういない。
ここが地元ならばすでにラグナレクの権威が広まっているから弱小チームならすぐにでも傘下になるだろうが、ここは湘南。
まだラグナレクの権威は届いていないようだ。こればかりはしょうがないだろう。ラグナレクもまだまだというわけだ。
(まあ、そこまで勢力を拡大する気はないがな。ロキの奴はラグナレクの勢力拡大に力を入れているようだがな)
ロキの最近の動きは怪しいものがある。どうせラグナレクの乗っ取りでも考えているのだろうと予想できる。
目を一瞬だけ閉じてすぐに目を開ける。
相手が断ると言っているのならばしょうがない。それに無理にスカウトする理由もない。
「そうか。ならしょうがないな」
「やけに引きが良いな」
「無理と言っているのだから頼んでも変わらないだろう。それにお前たちが傘下に入らなくともいいさ」
「あん?」
挑発のつもりで言ったつもりは無いが片瀬恋奈にとっては挑発として受け取ったらしい。
ラグナレクは江乃死魔なんて傘下に入っても入らなくても変わらない。そう受け取ったようだ。
「それはアタシたちが弱いってのか、ああんっ!?」
スッと眼鏡のズレを直しながら思ったことを言う。
「弱いな」
「このっ!?」
江乃死魔はこの湘南で一番大きい組織だが朝宮龍斗にとっては脅威ではない。雑兵クラスは同じだが上に立つ幹部レベルは違う。
今、ラグナレクと江乃死魔と全面抗争になったとしても勝てるラグナレクが勝つ自信がある。そもそも朝宮龍斗1人でも勝てそうだ。
(僕だけってのは自分の過大評価すぎるかな?)
だが腰越マキと辻堂愛の相手をするとなると少し厳しいかもしれない。
腰越マキはあの時、冷静ではなかった。だから冷静に制空圏を発動していればいくらでも対処できる。
だけど辻堂愛は腰越マキ並みに才能がある。今もよく見れば彼女は冷静だ。ならば、もし戦ったら苦戦するかもしれない。
「…ラグナレクだか何だが知らないが今、ここで潰したって構わないんだぜ」
そう片瀬恋奈が言うと不良たちが囲んでくる。だがこの程度は問題ではない。その手に凶器を持っていようが怖くとも何ともない。
その凶器はただの威嚇させてるようなもの。そんなものは彼にとってみれば木の枝にしか見えない。
「やっちまいますか恋奈様!!」
「いつでもいけますぜ!!」
「ヒャッハー。何が皆殺しを倒しただぁ!!」
まるでテンプレのような不良だ。しかし、こういうのはラグナレクにもいるのだから不思議なものだ。
息を吐き、静の気を体の内側に練り始める。目をギラめつけさせていつでも襲ってきてもよいように対応準備完了。
「悪いがこの湘南に来た恐ろしさを…江乃死魔の恐ろしさを味合わせてやる。やれ、お前たち!!」
江乃死魔の不良たちが朝宮龍斗にいっせいに襲い掛かる。
「死ねやー!!」
「おらああああ!!」
「ぶっ殺す!!」
「ふん、雑魚どもが」
片瀬恋奈は何が起きたか分からなかった。確か部下が囲んでいっせいに攻撃したまでは見えた。
だけど、そのあとにいきなり部下の不良が後方に吹き飛んだのだ。まるで勝手に吹き飛んだようだ。
「何をしたんだ?」
「何も見えなかったシ」
「おいおい…これはオレっちが出ないマズイか?」
一条宝冠が片瀬恋奈の前に出る。同じように良子も木刀を構える。
2人はすぐさま彼が危険だと判断した。そもそも腰越マキを倒したという情報が入ってきた時点で危険という認識はある。
江乃死魔の人らは見えていなかったが、辻堂愛は見えていた。
それはもの凄く早く、鋭い突きであった。あんな突きを出すのは腰越マキ以外見たことがない。
(あいつ、ヤベエな…いかにリョウでも厳しいだろ)
辻堂愛もいつでも出れるように拳を握る。仲間である葛西久美子の身柄はもう無事だ。
(辻堂め…殺気が漏れてるな)
もう会話は成り立たない。これではスカウトなんてものはどうしようもなく出来ない。
だが、一応ラグナレクのリーダーとして何もしないわけにはいかない。ここで潰すのもいいが、ただ潰すのは勿体ない。
せっかくの才能ある人材だ。できれば欲しいものだ。
ならばここは、はるか昔から続く戦いで決着をつけるべきだ。敗者は勝者の言うことを聞くものなのだから。
「潰されるのはどちらかな?」
朝宮龍斗も構えるが戦いは起きない。懐から電話のコール音が鳴った。
一触即発の時に電話のコール音とは似つかわしくない。せっかくの殺気も薄まってしまうものだ。しかも案外、コール音がポップな感じだ。
「ちょっと失礼」
こんな状況だが電話を取るのであった。
「ハーミットが消えた?」
(ハーミット?)
「そう…そうか。分かった、すぐに戻ろう」
電話を切ると殺気が消える。
「悪いね。急用が入った。決着はまた今度にしようじゃないか」
「あんだと!?」
急用。電話からの情報によると第六拳豪のハーミットが新しく出来たチームである新白連合の切り込み隊長とかいう何処ぞの知らない馬の骨と引き分けになって行方を晦ましたらしい。
この前は第八拳豪のバルキリーが負けたとあって新白連合とかいうチームも無視できなくなってきたかもしれない。
(その件はロキにでも任せてみせるか…それでダメなら敵として認めてやろうじゃないか新拍連合)
「おい待て、逃げるのか!?」
「急用だと言ったじゃないか。では、また」
そのまま戻ろうした所に新たな乱入者が飛び込んできた。
「この眼鏡ええええええええ!!」
「む、お前は」
飛び込んできた人影はついさっき見た人物であり、辻堂愛たちもよく知っている人物である。
「皆殺し!?」
「あいつ…!!」
いきなり飛び込んできた腰越マキは怒りを爆発させて拳を振るう。その全てを避けて、受け流す。
「もう君のテンポ、リズムは覚えた。僕の制空圏は破れない」
「この野郎!!」
「君との再戦も良いが、急いでいるんでね」
そのまま朝宮龍斗と腰越マキは走り去っていくのであった。
「…なんだっていうんだ」
『三大天』とのスカウトは失敗。だがこれで終わったわけではない。
ラグナレクと三大天の物語はこれで終わりではないのだから。
久しぶりに読んでくださってありがとうございました。
また次回も気長にお待ちください。