或いはこんな織斑一夏   作:鱧ノ丈

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遅ればせながら第二話の投稿となります。前回から一週間と少々でしょうか。とりあえずは、このくらいがおおまかな更新ペースと言うべきでしょう。実際は結構変動したりするものですが。
冒頭部分で妙ちきりんなことを書いていますが、『もしもIS世界のwikiみたいなのに作中の用語とかが載ってたら』という感じの妄想です。RPGとかで時々世界情勢の解説だとかそんな感じのモノローグみたいなのが入りますよね?
あんな感じでの入れ方をイメージしました。

はてさて、今回は読者の皆様にどのように受け取っていただけるのか。割とビクついていたりしますww


第二話 チャンバラ一本勝負! あ、セシリアのことも調べなくちゃね

『白騎士』

 

 かの白騎士事件において世界に存在を知らしめたIS第一号機。現在と異なり当時はISという存在が未だ社会的に不確かな存在であったために、現在のIS各機に付けられている型番は存在せず、篠ノ之博士が用いた『白騎士』という呼称をそのまま用いている。IS第一号機ということもあり、そこに用いられている技術は現在のIS技術の基盤となっており、当時博士が発表し、国連の調査団が解析したデータが拡散したものが、現在の各国のIS技術の根幹を為している。

 IS自体は当時日本の各企業、研究機関が開発していた人間の行動補助用の外殻装置の技術が下地になっていると言われているが、PICやシールドに代表されるISの代表的システムの数々が理論面などから実質的に篠ノ之博士個人の開発によるところから、世界は改めて博士の天才性を知らされた。

 

 白騎士事件において艦隊を相手に完勝を成し遂げた白騎士ではあるが、この白騎士自体について一つの疑問が提唱されている。それは、『白騎士を単純なISと認識して良いのか?』というものである。

 その疑問の根拠となるのが、白騎士事件そのものである。ISは確かに現行の兵器の中では最強と呼べる戦闘力を有している。攻撃力、防御力、速力、個々の単純な数値にのみ目を向ければISでなくとも同じ結果を再現することは可能である。

 

 ISが強みとしているのは、それら個々の側面において高い領域にありながら、それを人一人大に収めていること。そして、人型であるために従来の戦闘機や戦車などの用途、運用方法が限定されたものと異なり、様々な状況下で性能を柔軟に運用できる点にある。しかしその『最強』も然るべき機体、然るべき乗り手が揃って成し遂げられることであり、極端な例として現在IS学園に配備されている訓練用機体、並びに操縦者を学園の生徒――技量的に未熟な面が多い一年生(代表候補生などを除く)とする――として白騎士事件における白騎士と同じ状況下に置いたとして、そもそも勝利自体が難しいという試算が出ている。(そのため、有力国が想定するISの実戦運用については、通常の部隊との連携を主とし、戦闘の間隙を突き敵側司令部などに速やか且つ確実に大打撃を与える強襲が想定されている。当然ながら例外もあり)

 

 この疑問における白騎士の論点は乗り手よりも『機体』に焦点があたる。当時博士は白騎士を『ISの確立を為す第一世代』と評し、事実確認された武装も近接攻撃用の大型ブレード、遠距離攻撃用の荷電粒子砲(白騎士事件当時はおろか、現在でも荷電粒子砲は開発難度の高い武装であり、このことも博士の能力の証明の一つになっている)のみであり、多彩な兵装を駆使する最新型と比べれば見劣りすることは間違いない。しかし、それでもなお白騎士の挙げた戦果は巨大なものであり、仮に白騎士の乗り手が凄まじい技量を持っていたとしてなお、機体そのものへの疑念を深めるものであった。

 

 『白騎士はISであってISでないものなのかもしれない。忘れてはいけない。人類(われわれ)は未だ篠ノ之束個人の居る領域に到達していないことを。我々が推し量った結果は、絶対的なまでに完全ではない』 とある軍事評論家兼哲学者の発言より。

 

 

 ――『白騎士』の項目より一部抜粋

 

 

 

 

 

 

 IS学園の設備は基本的にどれも最新式のソレと言って差し支えない。それは訓練施設に設置される大掛かりなものを始めとして、寮や各校舎の空調、果ては水道などの細かい部分にも至る。基本的に日本国外からの留学生も多数受け入れることを前提としているため、建築様式の和洋を問うのであれば、間違いなく洋が当てはまるのだが、そんな中で必要とされているために純和風の建築様式で建てられた施設も存在する。剣道場もまた、そうした施設の一つだった。

 

 

 

「……」

 

 無言のまま一夏は正面を見据える。道場という空間に似つかわしい胴着、自前のソレに身を包み木刀を構える姿には、張りつめた空気が纏わりついており空間に実によく似合っている。胴着の上からでも分かるやや大きめな肩の幅、裾より僅かに覗く腕に付けられた筋肉の隆起、一夏自身の同年代の男子の平均よりもだいぶ高い身長、それらが相俟って、文字通り『力強さ』による存在感を示す。

 ゴクリ、と喉を鳴らす。飲み込んだ唾は緊張によってか粘性が高い。視線を外すわけにはいかないから直接の視認はできない。だが、気配で感じ取る周囲の観衆もまた、一様に緊張の面持ちで自分を見つめているのが分かる。

 

(あぁ、これは良いもんだ)

 

 僅かに口角が吊りあがる。単に固いギスギスとした空気は好かないが、このような張りつめた空気がもたらす緊張というものはむしろ心地よさすら感じる。何より、完全に格上と分かっている師との手合わせ以外でこのような空気を味わうのは実に久方ぶりだ。気分も高揚するというもの。

 

(しかし、正直驚いたな。流石は天下のIS学園か……)

 

 すり足で右足を小さく前に出す。それに呼応するように眼前の少女もまた僅かに動く。

 二年、斎藤初音。そう手短に名乗った彼女は一夏に手合わせを申し込んだ。それも彼女が属する剣道部、その本分であろう剣道ではなく木刀を用いての実戦形式の立ち合い。思いもよらない申し出だったが、一夏からしてみれば好都合であり断る理由も無かった。IS学園に所属する剣士の実力たるやいかなるものか。それを試す意味も込めての承諾であったが、それからの流れは一夏の予想を良い意味で裏切るものだった。

 

(久しぶりだよなぁ。俺が同年代相手にこんだけ手間かけるのも)

 

 剣術を学ぶ中、師に引っ張られての出稽古で同年代の者達と手合わせをすることも幾度かあった一夏だが、その全てにおいて苦戦をすることなく勝利を収めてきた。

 敗れるとすれば稽古の最中の師との手合わせであり、それについてはそもそも心技体何もかもが別格なのだからカウントのしようがない。そういう点で、今の状況は一夏にとっては新鮮味に満ちたものであり、知らず心が昂る程のものだった。

 

「しかし、このままもつまらんわな……」

 

 小さく口の中で、それこそ外に漏れないほどの小声で呟く。そろそろ睨みあいにも飽きてきた。試合が始まってこのかた、数度打ち合った以外は互いに出方を図るためのにらみ合いが続くばかり。その緊張も確かに面白くはあるのだが、そればかりというのもまた興が無い。やはり、直接剣で打ち合うのが一番だ。つりあがっていた口角を下げ、口を真一文字に引き締める。眉根に僅かな皺を寄せ、じっと相手を見据える。

 元々の癖があるという、箒程ではないが長い黒髪は緩やかなウェーブが掛っており、それを後ろで一つにまとめ上げた上級生の姿は、箒とはまた異なった柔らかさを伴う趣での整った容姿をしている。そう評価できるのは間違いないが、今の一夏にとっては至極どうでも良いこと。互いに距離を開けた状態ではあるが、その上で相手の全体を俯瞰して呼吸の流れを読み取ろうとする。

 目の動き、呼吸の要である口と鼻の僅かな動き、体全体を俯瞰しての力の入り具合。それら全てを観察し、得た情報を脳内で直感的に統合、最適な打ち込みのタイミングを見出す。その時が来るのはいつと決まってはいない。一秒先か五秒先か。二十秒先か一分先か。五分も先か。あるいは――

 

(今ッッ!!)

「キェイッ!!!」

 

 反射的に踏み込んでいた。動き出した時点でそれ以前の思考の全てを破棄した。これよりすぐに打ち合いが始まる。全身全霊を傾けるのは、そこにのみで十分だ。

 袈裟がけの一撃。通常の剣道の試合とは異なる、実戦形式の立ち合いということで両者合意の上で防具の着用はしていない。安全のために寸止めという規定を設けはしたが、それを承知の上でも一夏の放った一撃は必中必倒を意識した裂帛の気迫に満ちていた。

 

 対する初音は一切の表情の変化を示さなかった。元より物静かな気質の持ち主である彼女だが、それを考慮しても自分よりも大柄な男子が一息で距離を詰めて斬りかかってくるのを前に平然としていられるのは、斬りかかった一夏本人をして軽い驚きを感じさせるものだった。

 正眼に木刀を構えたまま、初音も動く。足袋の布と木張りの床が擦れる微かな音のみを立てるすり足で小さく自身の左、一夏から見て右の方向に動く。

 

「ふぅん……」

 

 漏れた呟きには得心いったというような意思が込められている。立ち合いを始める前に簡潔な自己紹介を行ったが、口数の少ない初音はあまり多くを語ることをしなかった。その中で彼女が語った自身に関することの中に、学ぶ剣の流派の名があった。溝口派一刀流に心得有りということは一夏の興味を引くと共に、この回避を予測させたものであった。

 それがどうしたと言うように初音の動きを眼球の動きだけで追う。現代に伝わる古流剣術の中でも実戦寄りとされている溝口派一刀流は小刻みな左右への回避、そこからの斬りつけを得意としている。一夏にも最低限の知識として頭に入っていたために、一夏は素早く次の手を練る。

 

 自身の右側に逃げた彼女を、袈裟がけから返す刀で打つのは簡単だ。だが、今の初音はその反撃を予測してか、回避行動からそのまま一夏の懐に潜り込もうとしている。今このまま木刀を振ったところで、掠めるだけで満足な一撃にならないのが関の山だろう。

 よって一夏は一捻り工夫を加えることにした。

 より素早く次の移動に転じるために、先の一撃の際に一夏は足を踏み込んだ際の足の開きを気持ち小さめにした。ここからが本番だ。「ガマク」と呼ばれる空手における身体操法、丹田を中心とした筋肉を鍛えることによって体の正中線などをずらさずに重心を移動、相手に動きを読みにくくさせる技法がある。ガマクをかけた一夏は後方に位置する己の左足側に重心を移動、そのまま踏み込んだ右足を外側に回転させる。そのまま初音を懐から引き離すように体を後方に下げると同時に、その横腹目掛けて木刀を叩きつけようとする。

 

 乾いた音が鋭く道場に響き渡った。

 一夏の振るった二撃目、それを初音の木刀が受け止めていた。流石に片手では無理があるのか、両手によってだが、確かに一夏の一撃は防がれた。横薙ぎの一夏の一太刀、初音は木刀の切っ先を下に向けその一撃を止める。片手とは言え相応以上に鍛えた一夏が全身の回転の勢いを込めて放った一撃は速さ、重さともに十分な域に達しており、それを受け止める彼女の腕は、木刀は小刻みに震える。見れば先ほどまで平静そのものだった表情にも、僅かに眉根に皺が寄るという変化が見受けられた。

 防がれたのであればもはやこれ以上は無駄。そうさっさと割り切って一夏は木刀を握る右腕を引く。僅かな軽い音と共に木刀同士が擦れ離れる。数歩分だけ後方に移動し初音を再び視界の真正面に捉えると、一夏は仕切り直すかのように木刀を正眼に構えなおした。

 

「お見事」

 

 静かに、しかし軽薄さを伴わない明るさを含んだ声で一夏は称賛する。身体能力ではこちらが圧倒的有利。元より生物学的見地から言っても、肉体的強さでは女性より男性の方が強く鍛えられやすいもの。一夏とて物心ついた時には姉の見守る下で竹刀を握り、体を鍛え、そして今の師の下に弟子入りしてからは更なる高み、極限を目指して周りから「トレーニング馬鹿」と揶揄される程に鍛えて来た。そのことへの自負はあり、故に多少鍛えているからとは言え、こと剣に限って言えば女性はおろか同性、同年代、或いは少々年上相手でも早々遅れは取らないということを自身にとっての厳然たる事実と思ってきた。

 

 だが、そう思っていた時に目の前の上級生の存在だ。このあたり、流石は未来の国防の一角を担う人間を育てるIS学園の生徒と言うべきか。まだ自分が知らない強者が居る。それが一夏の心を刺激する。鍛えてきたという自負がある自分に対抗できることへの怒りか? 嫉妬か? 憤怒か? 嫌悪か? どれも違う。そんな粘着質な性質の悪い悪感情ではない。

 

「本当に、面白いですよ。先輩」

 

 湧き上がるのは歓喜と高揚だ。元々同年代と立ち合う機会など殆ど無く、あったとしても大抵は勝利を収めた。中学時代は自分の訓練への集中や在り方の違いなどから剣道部に入っていたわけでもなし。故に、こうした手合わせは純粋に歓迎できるものであり、相手が年の近い実力者ともなれば嬉しさは更に高まる。そしてそれを打ち倒したときの感激たるや、上等な菓子の甘さに震えるかのごとしと言える。

 

(っと、落ち着け落ち着け……)

 

 楽しいのは事実であり、それを心地よく思うのもまた事実ではあるが、だからと言って高揚のし過ぎは良くない。あまりに熱くなりすぎれば無駄な力みが入る。それは好ましくない。より効率的な動き、相手に与えるダメージを考えるのであればむしろ適度な緩みこそが肝要だ。

 常に冷静さと余裕を持って落ちついて相手に対処し、熱くなって周りが見えなくなるようなことにはならないようにする。一夏が自分自身に常々言い聞かせていることだ。

 

 刹那の交差によってか、道場内の緊張は一層高まったようにも見える。観衆となっている生徒達も、一夏が仕掛けた先手からの攻防に飲み込んだ息がそのままとなっているかのように固い面持ちを崩さない。その表情には単なる緊張とはまた別に、明らかな実力者同士の立ち合い。見ることは確実に自分達にとってプラスになる。それゆえ、誰もが真剣な眼差しを二人に向けていた。

 そんな中でただ一人、渋面を作っている生徒が居た。篠ノ之箒。学園剣道部に新たに入部した一年生であり、中学時代は剣道女子の部において全国優勝を果たした経歴を持つ部における期待の新人である。

 

 

 

 

 

(いったい、なんだというのだこれは……)

 

 目の前で上級生と木刀を交わす一夏の姿を見遣りながら箒は苛立つような呟きを心中で漏らす。このような流れは明らかにおかしい。いや、おかしいというよりもむしろ――

 

(まるで意味が分からん……!)

 

 どうしてこうなってしまったのか理解に苦しむ、といったところだろうか。目の前で行われている二人の試合、そもそも初めから予定されていたことではなかった。

 事は前日、学園生活開始から二日目に遡る。学園側の事情により同室となった一夏と箒だが、会話は箒が思っていた以上に少なかった。授業中は当然として、休み時間にしても一夏は箒と積極的に話すということはしなかった。例外的な入学である一夏は座学の面で他の生徒よりも遅れる立場にあり、それを補えるように努力せよと彼は実姉より直接言い渡されていた。授業中の教室でのことであったのでその現場を箒も目にしていた。

 

 その言葉に従ってか、休み時間に一夏は周囲の座席の生徒と授業のノートを見ながらその内容について話し込んでいることが多く、その大真面目な表情に話しかけるタイミングを見出せなかった。結果として、箒は一夏が他の女子生徒と話すという個人的に気に入らない光景を見る以外無かった。放課後にしても真耶につけてもらうことになった補習やら、部屋の一夏のベッド脇に積まれた訓練器具を引っつかんだ上で行っているトレーニングやらであまり部屋に居ることはなく、仮に部屋に一緒に居るとしてもあまり喋らない、喋ろうとしないために会話をせずにいられる。

 

 たった三日。たった三日で箒はストレスを抱え込んでいた。

 

(おのれ一夏め! 少しはこちらの気を察せという話だ!)

 

 ちっとも自分を気にしようとしない幼馴染に内心で憤慨する。思い返せば、この流れに至った過程もそれが原因のようなものだ。寮では生徒達は基本的に私服でいることが多い。特に夕食後ともなれば顕著だ。それは一夏も同様であり、主に彼はハーフパンツにTシャツというラフな軽装を好む。軽装な分、着ている人間の体つきがより鮮明に分かるのだが、最初に見たときには箒も驚きを禁じ得なかった。

 全身を覆う筋肉。明らかに丹念に鍛えたことが明らかなそれに、一武道家として強い興味を持った。そして思いついた一つのアイデア。それが、一夏との剣道での手合わせだった。IS開発者であり実姉でもある束の突然の失踪、そこから政府に身柄を抑えられての離別となるまで共に学び思い出を共有してきた剣道。思う所あるものの、全中優勝という実力への自負も相俟って剣道を通じて一夏に自分を意識させる。その心づもりだった。

 

 摺り上げで竹刀を弾き飛ばされてからの面一本。完全に実力差を示された上での完敗だった。『剣術』の修業のために『剣道』からはしばらく離れていたという言葉通り、確かに試合のさなかの一夏の動きにはブランクを感じさせるような色があった。だがかつて学んだ技術を錆つかせているというわけではなく、むしろその身体能力や剣腕によってほぼ真正面から突破され一本。

 試合後の一夏の表情は冷めたような余裕を持っており、その表情を見て箒は察した。試合によって一夏に自分を印象強く刻みつける。それが果たされなかったことを。その直後だった。試合を見ていた初音が一夏に剣道ではない、木刀を用いた実戦形式の手合わせを申し込み、今や完全に観客の注目を掻っ攫っていったのは。

 

(私のことは、どうでもいいとでも言うつもりなのか……!)

 

 今、初音と打ち合っている一夏の表情を見れば分かる。自分との試合以上の緊張、そして見せることはなかった高揚を、今の一夏はその表情で、全身で示している。こうなってしまえば箒でも分かる一つの道理がある。仮に一夏に箒と初音、どちらを相手にした時が満足できたかと言えば、確実に初音と答えるということをだ。

 

(いや、よくよく考えれば理解できる道理だ……)

 

 多くのルールの下でスポーツ化された剣道と、いかに効率的に相手を斬り伏せるかを目的とした剣術では、剣を扱うという共通点や握りなどのいくつかのごく基礎的な技術を除けば異なる点が多い。そしてここはIS学園であり、その本分はISの操作技術の習熟にある。ISにもいくつかのタイプがあるが、中でも対ISを主眼に置いた刀剣を主武装とする近接格闘戦型、例として千冬の現役時代の愛機であり、現在の日本の主な開発コンセプトとなっている機体を駆るとして、適しているのは剣術の方だ。

 

 こと格闘戦においては二年はおろか三年を交えた上でも上位に入るという初音は、より実戦的な技にも長けているのだろう。だからこそ、同じ領域の技を磨いてきた一夏と、奇妙な言い方になるが立ち合いでの波長が合いやすい。

 そして自身もまた、剣道だけでなく元々実家に伝わっていた古流剣術に嗜みがあるからこそ言えるのだが、剣術に限らず現代において『古流』と名のつくものはその性質もあってマイナー寄りだ。それゆえ、学んでも振るう機会がほとんど無い。もちろん、たんに振るうためにではなく自己の精神性の向上などを目的として学ぶのであればそれは目をつぶれる問題だが、おそらく一夏はそれを振るう機会を求めていたのではないか。そして今、その機会が訪れている。

 

(私は、どうすれば良いのだ……)

 

 出口のない迷宮に迷うとはこのことなのだろうか。考えても考えても答えが出ない。

 

(私はただ、一夏ともっと話をしたいだけなのに)

 

 結局のところ、剣道にしても一つの手段、一夏との繋がりを持つための道具の一つに過ぎない。あとは、強いて言えば政府に監視される生活の中での数少ない気晴らしくらいだろう。だが、前者の比率の方が大きいことは否定できない。

 けれども今、その剣道ですら一夏には及ぶことができず、その心を向けさせることが叶わないと思い知らされた。一体どうすればいいのか。話をしようにも、同室であるがゆえに逆に気を使われているのか一夏から話しかけるということはあまりなく、自分から話そうにも生来の気質から中々切り出せない。

 いつのまにか箒の視線は道場の床に座る自身の足、つまりは下に向けられ、その思考は延々と答えの出ない自問を繰り返すだけであった。

 

 

 

 

 

 斬りかかり、交わされ、反撃をかわし更に反撃。繰り返される攻防が続いて既に数分が経っていた。たかが数分、されど数分と言うべきか。立ち合う一夏と初音の緊張に当てられてか、緊迫の表情を浮かべる観衆もほんの数分がそれ以上の長さであるように感じ取っていた。

 元々剣道部に在籍している者達はもちろんとして、学園で唯一の男子生徒である一夏が剣道の試合をするということで、珍しもの見たさでやってきた部員以外の生徒達、その全員が一様に緊張した面持ちで見守る中で二人は迫っては離れを繰り返す。ヒットアンドウェイ、不意の一瞬で決まることもあると理解しているからこそ、二人とも不用意な深追いを避けて数度打ち込んでは離れるに留める。

 

(いけなくは……ないな)

 

 手の内に湧いた汗の湿り気を感じながら一夏は自身の勝算の有無を考える。無いというわけではない。むしろ十分にあると言える。目の前の上級生の経歴がどのようなものかは知らないが、恐らく『剣術』というものに打ち込んでいた期間は自分の方が上だろう。こちらは剣道場に通えなくなった十歳の頃からだ。

 それに、身体能力も確実にこちらが上。筋力は元より、持久力や体格差、曲がりなりにもこちらは男性で、それなり以上に鍛えてきたのだ。いくらなんでも同世代の女性に負けることはないと自負しているし、認められない。何より、そうなったら恰好がつかない。

 技と力、その二つより成る『強さ』という要素に関しては自分が上回っているという認識で間違いはない。

 

(まぁそれで勝負決めなかったの、言い訳するなら観察とか楽しみたかったでイケるかな……?)

 

 考えてすぐにどうでもいいことかと思考から切り捨てる。強いていうならばもう一つ、決め切れなかった要因もある。それは、彼女の突き技だった。とにかく鋭いの一言に尽きる。いや、単純な速さや威力という点で見れば自分だって同等、あるいはそれ以上の一撃を繰り出すことは可能だ。だが何より一夏が警戒したのは――

 

(何と言うか、気合い以上に執念こもってるんだよな……)

 

 一応これは寸止めを原則とした試合であり、安全上という観点から一夏も容赦はしないがその点に関しては最低限順守しようとも思っている。それは相手も理解しているはずだ。

 

(……はずだよな?)

 

 そう疑いたくなるほど初音の一突きには、「おどれの(タマ)取ったらー!!」と言わんばかりの気迫がこもっていた。

 気迫、それが厄介なのだ。窮鼠猫をかむということわざがあるが、まさしくその通りであり気迫と共に向かってくる相手というものは決して馬鹿にならない。そうした相手と対峙した経験が多いというわけではないが、師よりそのあたりはよく言い含められていた。

 

 『強者が必ずしも勝者ではない』との言葉と共に、例え強さで劣っていても執念で勝利をもぎ取る者も居ると。基本的に師と仰ぐ以上、その言葉には基本的に従う一夏であるが、だからと言って師の言葉になんでもかんでも頷くイエスマンというわけではない。時には疑問に思ったことを意見することもあるし、師もそれを戒めるでもなくむしろ推奨していた。

 ただ、そう語る時の師は頷く以外にほか無い重さを言葉に込めていたのが一夏の記憶によく残っている。だからこそ、その教えを忘れず今もこうして危ない場面を回避できたのだろう。だが――

 

(このままじゃあジリ貧だな……)

 

 いつまでも安全牌を切ってばかりというのも問題だろう。負けはしないだろうが、それで勝ちも拾えないのであれば本末転倒も良いところだ。あくまで第一目標は勝つこと。となれば、多少は博打に出る必要も出てくる。それに、相手から勝ちを奪う以上はこちらも逆に勝ちを奪われる覚悟をしなければ筋が通らない。

 

(もっとも、安々と勝ちはくれてはやらないけどな……!)

 

 柄を握る手の内を締め直し、一夏は眼前の初音を見据える。彼女もまた、一夏が勝負に打って出ることを気配から察したからか、表情を硬く引き締め直す。そうして互いに構えを取った。そして両者の構えは奇しくも、切っ先を相手に向けた刺突を狙ってのものだった。二人の距離は五メートル弱。互いに接近する以上は一息で詰まる距離だ。

 

 二人が動きだしたのは唐突であり同時だった。互いに一歩、二歩。それだけで既に二人は相手を木刀の間合いに収め、同時に相手の木刀の間合いに入り込む。

 一瞬、初音の腕が早く動き始めた。

 

(そこッ!!)

 

 左利きである初音はある意味当然と言えば当然となるのだが、ここ一番の正念場であるこの一撃を左手で放ってきた。それは対面の一夏にとって刺突が自身の右側から、つまり右手で刺突を放った自身の木刀を真正面からぶつかり合う形になるのだが、そこで一夏は僅かに突きの軌道を変えた。ほんの少しだけ肘を開き、手首のスナップを利かせて外側から初音の木刀の下に自身の木刀を滑り込ませるようにする。高速で直進する物体は総じて横からの衝撃に弱い。高速で走行する車が対向車と僅かに接触しただけで大きく動きをずらし、結果として衝突事故に発展したという事例も存在する。

 

 もちろん、生身の人間が放つ突きがそこまでの速さを持っているというわけではない。だがそれでも横合いからの衝撃に揺さぶられる程度には速く、そして一夏の木刀が下方から掠めたことによる衝撃も、微弱ではあったが初音の木刀を揺さぶるには十分なものであった。

 

「っ!?」

 

 不意に己の木刀、更にはその勢いが伝播して自身の腕を揺さぶられたことに初音の目が見開かれる。その動きが鈍ったのを一夏は見逃さなかった。

 

(勝機ッ!!)

 

 決めるならば今しかない。ここで失敗すれば後は無いという覚悟で以って、一夏は更に一歩深く踏み込んだ。初音との距離が30センチも無くなる。十分に高いと言えるレベルにある容姿の少女と至近距離まで近づくのは本来であれば一男子として喜ぶべき場面だろう。だが、今の一夏の思考からはそのようなことは綺麗さっぱり消え失せていた。

 

「ぬん!」

 

 踏み込みながらも腕の動きは止めていなかったため、現在の一夏の木刀の初音の物との接着点は柄に近い刃の部分となっている。そこで一夏は空いている左手をそのほぼ真逆の方、つまり切っ先部分の峰に当てた。そしてそのまま、左手で木刀を押し上げた。

 

「え?」

 

 見開いた目のまま、初音の疑問の彩られた声が漏れる。渾身の力をこめて半ば力ずくで初音の木刀を外側に押しやると、空手の回し受けのように木刀を器用に回転させて初音の木刀を流す。そのまま一回転させた木刀を、腕が弾かれたことによって状態を大きく開いた姿になった初音の首筋に添えた。

 

「勝負あり」

 

 低い声で告げる一夏に、腕を開いたまま初音は僅かに固まる。やがてその全身から戦意をかき消し、ゆっくりと両手を降ろして言った。

 

「参った」

 

 自身の敗北宣言を。

 それを受け取った一夏は初音の首筋から木刀を離すとそのまま後退。少々の距離を離して彼女と向き合う。初音もまたクールダウンさせるように息を一つ、深く吐くと居住まいを正して一夏と向き合う。そして互いに一礼。これを以って、唐突な始まりを迎えた二人の立ち合いは終了と相成った。

 

 

 

 

 

 

 試合後、外部からの観客もそれぞれ散っていき、一夏もまた剣道部の部長や顧問と二言三言会話をして道場から去った後、予想外の出来事によって大きく時間を遅らせてだが、通常の部活動が開始となった。

 IS学園は基本的にISの操縦技術の習熟を第一目標と掲げているため、部活動も存在しこそすれどそこまで力は入れていない。部活動として存在し、顧問なども各部に振り分けられてはいるが実際はむしろ同好会のソレに近い。

 

 運動系の部活にしても学園の極めて特殊な立場上、インターハイなどの大会への出場をすることは叶わず、どれも経験者が学園入学後も続けたいという意思を持った上で入るものとなっている。結果としてこの剣道部も箒含めて新入部の一年生は全てが剣道経験者で構成されており、入部したてであってもすぐに上級生などと一緒に同様の練習を行うのが通例になっていた。

 

「ヤァーッ!!」

 

 他の部員達と同じように道場で規則正しく並びながら箒も竹刀の素振りをする。だが、その胸中はお世辞にも落ちついたものと言うことはできなかった。自分から申し込んだ試合での完敗、一夏の自分へ向ける意識の低さ、自分との試合ではなく他の者との、それも女子との立ち合いに充足を見出していたこと。道場にやってきて、正確を期して言うのであればそれ以前の学園入学からだろう。

 一夏と関わること。ただそれだけのことであるが、それが箒にとっては極めて重大なことであり、それが上手く行かないことが彼女の焦燥を大きくする。

 

「篠ノ之さん! 集中!」

 

 箒の心の乱れ、竹刀を振る太刀筋に表れてしまったそれを見咎めた顧問の叱責が飛ぶ。はい! と一言だけ返事をして、箒は思考を切り替えるように頭を軽く振ってから今この時の練習に意識を向ける。

 外部からの一喝という刺激が功を奏したのか、自身でも意外と思うほどに気分が落ち着いてきた。落ち着きを取り戻した思考はある程度プラスな方向に物を考えることができるようになったのか、竹刀を振る意識の僅かな片隅で「もっと自分から接するように頑張ろう」とぼんやりと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『訓練機、書類出して使えるのが速くて明日とかマジふざけ』っと。送信」

 

 箒、そして初音との試合の翌日の放課後。既に日も夕焼けの茜色となった頃合いに一夏は一人校舎の廊下を歩いていた。片手には携帯が握られており、呟いた独り言が彼が何者かにメールを打っていることが分かる。そしてメールの送信完了からさほど経たずに一夏の携帯がメールの受信を告げる着信音を鳴らす。

 

「はやっ」

 

 まさかこんなに早く返事が返ってくるとは思わなかったため、やや驚きを感じながらも一夏はメールの受信箱を開く。新着メール一件、差出人の名は斎藤初音。前日の立ち合いの後、差し支えなければ今後も手合わせ願いたいと一夏からアドレスの交換を申し出ていた。

 開いたメール。その本分は極めて簡素なものだった。

 

『IS学園ではよくあること』

「ですよねー」

 

 そもそも訓練機の使用申請が如何に多大な手間を要するものか、そんなことは初日の放課後の時点で把握していた。だから今日、前日に書きあげた書類一式を朝一番でHRを担当した真耶に提出したのだが、返ってきた返答が「使えるのも早くて放課後。場合によっては使えないこともある」とのこと。

 思わず無表情で固まった一夏に真耶が語るに曰く、訓練機は常に使用予約の競争。そんな中でいかに使用許可を勝ち取れるかもまた、一つの勉強であり競争。こう言われてしまっては一夏も抗議をすることができず、渋々と大人しく許可が下りるのを祈りながら待つという選択を取る以外無かった。

 

「まぁ試合あるし、便宜は図ってやるって言ってたけどなぁ」

 

 ついでによくよく考えれば自分には専用機が貸与されるわけであり、それが行われさえすればISの訓練などアリーナの使用申請だけで後はやり放題だ。

 なるほど、自分が専用機を持つということににクラスメイト達が驚き、羨ましがるのも無理はないと一人ごちる。もっともそのことに関しては一夏は深く考えないことにしている。言い方は悪いが、単に自分に運があっただけのこと。自分はただその運を享受して自分自身のために志す道を邁進するだけであり、一々他者を気にかける必要性もそこまではない。

 

「さってと、IS使えないなら仕方ない。使えないなら、見ればいいじゃないか」

 

 廊下を歩く者が一夏一人しか居ないからか、気分の良さそうな弾んだ調子の声で一夏は呟く。だが、動く口の端はつりあがっており、その目は不敵な光が宿っている。一言で言い表すのであれば、「悪い顔」と形容すべきだろう。軽く振った指には細長く折りたたまれた紙が挟まれている。

 外からはその内容を読むことはできないが、中身は決して特別な内容というわけでもなく、単なる学園施設の時間外使用の許可用紙である。

 

『視聴覚室』

 

 一夏が着いた場所の名だ。IS学園の視聴覚室は各種機器を最新式の物としている以外は普通の学校のソレとさほど変わる点は無く、座席の一つ一つにコンピュータが設置され、教室前方の大型スクリーンやそれぞれのコンピュータの画面で映像などの視聴ができる。

 室内に入り照明を点けると、一夏は適当な席に座り端末を起動。そしてICカードの入ったカードタイプの学生証を端末脇の読み取り機にかけて、配布されたパスワードと共に予め設定されていた自身のアカウントにアクセスをした。

 

「え~っと、使い方はっと……」

 

 座った椅子の隣に置いた自身の鞄からいくつかの本を取り出す。ほとんどは教科書や授業用の参考書だが、そのうち一冊はそれらとは別物で、学園の施設の基本的な扱い方が記された生徒用マニュアルだった。

 開いたマニュアルの中から視聴覚室、さらにその中の映像閲覧に関しての項を開き、記された手順に従って端末を操作していく。マニュアルと端末、双方に視線を交互に向けながら一夏は無言で端末を操作する。マニュアルに従って操作をしているからか操作は順調に進み、プロセスは一夏のアカウントで視聴可能な映像から見たい映像を選ぶ段階に至った。

 

 事前にシステムの言語を日本語に設定してあるため、リストに表示された項目の全てにおいてどれが何の映像なのかはすぐに分かる。一度だけ開催され、その後の開催にあたっての取り決めや周期の調整が未だ議論されたままのモンド・グロッソ。そのモンド・グロッソの代替であり、各国が自国の機体開発及び操縦者の習熟の度合いにある程度自負を持てるようになった頃合いに、複数国の合意の上で行われた特例的な戦技披露会――という名目での実質的なモンド・グロッソの優勝国である日本、ひいてはその時の優勝者である一夏の実姉千冬へのリベンジを目的とした国際エキシビジョン。

 

 各国に中継されたこれらの試合の映像だけでなく、学園内で行われた行事内での試合など、多数のIS試合の映像が収められている。全ては先達の記録を後進達のためにという意図によってだが、一夏にとってはそのような意図は心底どうでもよく、単にあって自分に都合が良いという認識だった。

 

「さ、て、と。あるも八卦、無いも八卦と。あぁいや、当たるも八卦、当たらぬも八卦だったか」

 

 マウスをカチカチと鳴らしながらの操作で一夏はリストから目当ての映像を探す。実のところ、『もしかしたら無いのでは?』という覚悟もある程度はしていた。いま見ているリストに記録されている映像群を考えれば、自分が目的としている映像が当てはまるだろうカテゴリはここに載せるものではないだろうし、それ以外に思いつく幾つかの諸事情を鑑みても可能性は低い。

 無いなら無いで致し方無いと割り切れるつもりはあるが、できればあって欲しいというのが素直な気持ちだった。

 

 そして、一夏のマウスを動かす手の動きが不意に止まった。その目は画面のある一点に集中している。

 

「見ぃつけたぁ」

 

 ニタリと口の端が吊りあがり唇が三日月型をかたどる。一夏が見つめる一点、そこには閲覧可能な一つの映像の名前が示されていた。

 『20××年度 IS学園入試主席入学者実技試験 受験者:セシリア・オルコット(専用機:ブルー・ティアーズ)』

 

「孫子の兵法に曰く『敵を知り己を知らば、百戦危うからず』ってな。いやぁ、事前に相手のことを知ることができるのはラッキーとしか言いようがないわな。カカッ」

 

 できれば訓練機でも良いので、少しでもISを実際に動かす感覚を得たかった。だが、それが叶わないのであれば次善の策を取るより他はなかった。それが対戦相手であるセシリアに関しての情報収集だ。クラスメイト達は散々自分が不利だのあーだこーだと言ってきたが、そんなことは一夏本人が重々承知していた。学園に入学するよりも前から操縦者となっていた経験が伊達ではないと一夏にも理解できる。ましてや今回はIS。IS操縦の経験とは、ISを動かすことによってしか経験できないこともあるため、経験の差は極めて重要なファクターであるというのは授業における真耶の言だ。

 

 素の『武』ならともかくとして、『IS』となった場合は完全に実力は向こうが上で間違いない。ならば、少しでもそれを補う。そのために一夏が思い立ったのがこの情報収集だ。もちろん、ISの知識に関して乏しい自分が試合の映像を見たところで得られるものなど、たかが知れている。それでも、相手がどのような戦い方をするのかを知っておいて損は無いし、もしかしたら他にも見抜けることがあるかもしれない。そんな期待をしながら映像の閲覧が叶うことを祈っていたが、今回は運がついていたらしい。

 

「それじゃ、御開帳っと」

 

 画面のカーソルを件の映像の名前に合わせてマウスをクリック。そして、画面に映像が映し出される。それを一夏は無言で見つめていた。

 

(そう、実力的に俺が劣っているのは間違いない。否定しないし、しようがない。なら、それをできる限り補って、後は心持ちでカバーする)

 

 画面の中で動く二機のISを見ながら一夏は心を鎮める。

 

(大きく開いた実力の差。それを埋められるとしたら、どれだけ相手より心を強く持つか、どれだけ執念深くいられるか。なにがあっても、食らいつく)

 

 いっそやり過ぎと言われるレベルを持たねば意味を為さない。そう自身の内で結論付けて、一夏は静かに見据えた。映像の中でISを駆るセシリア、その色白の肌を持った首に。

 細められ、獲物を補足した肉食獣のような剣呑な光を宿す一夏の瞳。それを指摘するものは、この場には誰一人として居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず今回の更新で留意した点としまして――
(全体的に一話と比較して)
・表現がくどい部分があったので、すこし文章をシンプルにする。
・一夏が主人公、かつ改変モノであるためなるべく一夏にスポットを当てる。
・話を進める。

以上を目標にしました。絶対に三つ目が上手くいってない。だって今回の話、やったことなんて実際、木刀での似非武侠物語もどきと一夏の対セシリア戦自主対策そのいちですもの。
というより、原作であったラッキースケベイベントだとか、飯時などの半端な日常を『いらないよね?』と判断しカットしたら、まぁこうなっちゃったと。
……精進します

話の進行云々も頑張るとして、まずは読みやすさと主人公である一夏へのスポットの当たり具合ですね。この辺をしっかりしたいです。
あぁでも、やっぱり全体的にまだまだ精進足りとらんなぁと思ったり。

感想はいつでも大歓迎です。ちょっと「ん?」と気づいた点などの指摘や質問でも構いません。原作よりも設定などで色々弄ってもいますので、それに関しての質問も、重大なネタバレにならない限りはできる限りお答えしようと思っています。

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