或いはこんな織斑一夏   作:鱧ノ丈

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前回投稿した分に続きとして、別の短編を加えました。
既に前回投稿済みの分を読んでいるという方は、お手数ですが該当のところまで適当にスクロールをして下さい。
今回は、結構自重をポイしたので割とネタを露骨にぶっこんでいますww
このあたり、受け取り方は人それぞれだと思うので留意をお願いします。


第四十一話:夏休み小話集

 ラウラ・ボーデヴィッヒの帰国

 

 

「ふぅ、ようやくか……」

 

 八月の頭、ドイツ最大の空港であるフランクフルト国際空港に一人の少女が降り立った。言わずもがな、ラウラ・ボーデヴィッヒである。

 

「ボーデヴィッヒさん、またね」

「うむ、お前たちも壮健でな。また休み明けに、だ」

 

 同じ飛行機に乗って帰国した同郷の学友たちに別れを告げてからラウラも歩き出す。ちなみに、IS学園の夏休みに伴う帰国者は基本的にスケジュールに違いがあることや、最終的な目的の空港が違う場合などを除いて国ごとに同じ飛行機で帰郷することが殆どである。

つまり、今回のラウラの場合は同じ時期にフランクフルト国際空港へ行く生徒が纏めて同じ飛行機に乗っているわけである。

同じドイツ国内でも目的の空港がベルリンだったりミュンヘンだったりと違う場合もあるが、その場合はそこへ行く便に対象となる生徒が纏められる形になる。

さらに捕捉すればこれはドイツに限らず、例えばシャルロットは目的地がフランスのシャルル・ド・ゴール国際空港なのだが、ラウラ同様に同時期に目的の空港を同じくする同郷の生徒と便が同じであり、目的の空港が別の空港の生徒はそれはそれで同じ便で纏められている。セシリアのようなイギリス組もまた同様だ。

 

「さて、急ぐか」

 

 学友たちと別れて一人になった所でラウラは歩く速さを上げる。この後ラウラは用意された迎えによって原隊、ドイツ連邦空軍所属の「黒ウサギ部隊」に戻る。

事前に飛行機の到着予定時刻は伝えてあり、迎えに出向くのも部隊の仲間だ。万が一の事態でもない限り予定に狂いが生じるということは無い。そしてそのような連絡もないことから、既に迎えは空港に到着しているだろう。待たせるわけにもいかない。

ゲートを通り預けていた荷物を受け取ってからラウラは空港内を見渡す。そしてある一角で目を止めると、その方へ向かって歩いていく。向かう先に居る人物もラウラの存在に気付いたのか、ラウラの方に向き直ると背筋を伸ばし居住まいを正して彼女を待つ。

 

「出迎えご苦労、ハルフォーフ少尉」

「お帰りなさいませ、ボーデヴィッヒ中尉」

 

 短い敬礼を互いに交わし再会の挨拶をする。ラウラを迎えたのは真耶と同じ年くらいの女性と、その一歩後ろに下がった所で控える少女だ。

女性の名はクラリッサ・ハルフォーフ。ドイツ軍少尉であり、ラウラの原隊においてはラウラが指揮する部隊の副隊長として敏腕を奮う才媛だ。後ろに控える少女はクラリッサと同じくラウラの部下である。

二人とも、公共の場で目立つことをさけるためかラウラ同様に軍服ではなく、簡素な私服に身を包んでいるが、同時に左目を眼帯で封じているのもラウラと同じだ。

 

「お車を用意してあります。早速参りましょう。部隊の者たちも隊長の帰還を心待ちにしています」

「うむ。久方ぶりだからな。私も早く皆に会いたいものだ」

 

 言うや否やクラリッサが先導する形で三人は歩き出す。そして空港を出てすぐのロータリーで控えていた車に乗り込むと、車はすぐに目的の基地へ向けて走り出した。

 

「クラリッサ、私の出向中に何か変わりは?」

「過日のIS学園におけるトーナメントにおいて発生したレーゲンの事故について、我が黒ウサギを始めとした関係各所に政府、国連の委員会などの査察が入りましたが、幸い我々部隊は潔白の証明を得られました。上の方で数人、関与が疑われた幹部が処分を受けましたが、仔細は後ほど報告書をお渡ししますのでその際に。それ以外は特筆すべき点はありません。隊員一同、部隊の名に恥じぬよう日々精進を続けております」

「そうか、それは結構だ。――トーナメントの件はすまなかった。優勝はおろか、初戦での脱落となってしまった。これではとても示しが付かんな」

 

 顔を伏せて寂しげな表情と共に詫びの言葉を述べるラウラにクラリッサは首を横に振る。

 

「お気になさることはありません。隊長はまだお若い。まだまだ道は続いているのです。その中で勝つこともあれば負けることもある。その経験を糧として、先へ活かすことができたのであれば、その負けは決して悪いものにはならないでしょう」

「そうだな、確かにその通りだよ」

 

 優しく諭すような部下の言葉はラウラにとってありがたいものだった。ラウラとクラリッサ、上官とその部下という間柄にあるが、ラウラにとっては単純な部下以上にクラリッサは大きな存在と思っている。

ラウラが指揮する部隊はほぼラウラを含めほぼ全員が若年層で構成されている。その中にあってクラリッサは最年長であり、部隊の隊員たちはクラリッサを上官としてだけでなく、公私にわたり頼りになる姉のような存在として慕っている。

それはラウラも同じであり、唯一クラリッサよりも上の立場にあるが、それでも多くの面で年長者としての彼女を頼っている。本当にいい仲間に恵まれたとラウラは小さく口元を緩めた。

 

「それで隊長、IS学園はいかがでしたか?」

「あぁ、良い場所だったよ。流石に訓練のレベルや所属する者の総合的な質の面で部隊と同等と言うわけにはいかないが、それでも多くを学ばせてもらった。それに、一部の者は疑いようのない実力を備えている。私も良い刺激を受けるよ」

「そうですか、それは何よりです」

 

 満足げなラウラの言葉にクラリッサも顔を綻ばせる。彼女にとっての上官であるラウラだが、年齢の差などもあって時には妹のように思うこともある。特に左目を封じる眼帯の理由もあることから、クラリッサにとってラウラは特に気にかけていた。

そのラウラが単身で極東への留学をするとあって、内心では多少なりとも心配をしていたのだが、この様子を見るにそれは杞憂だったらしい。良かったと、そう言える経験をしてこれたということが分かっただけで何よりだ。

 

「色々と向こうのことについて話したいことはあるが、それは部隊に戻ってからで良いだろう。皆も知りたがっているだろうからな。クラリッサ、そちらの方では何か新しい発見などはあったか?」

「そうですね、劇的と言えるほどのものはありませんが、隊長が定期的に本部に提出して下さったデータより、越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)の運用について隊内での練度向上に目下務めているところです。開発部の報告によると、このままデータが集まればより安全性の高い処置も可能になると」

「そうか。それは実に結構なことだ。もう、私のような者は出してはならないからな」

 

 言って眼帯に手を添えるラウラの姿にクラリッサは口を紡ぐ。施したナノマシンの異常作動による能力評価の墜落、そしてそこから今のレベルまで持ち直すために這い上がってきた様を間近で見てきたクラリッサはラウラの心中を察するが、すぐに心の内で首を振る。

当時の彼女の辛さは当時の彼女しか知りえない。それをどれだけ推測しようが、初戦は推測。完全な解ではない。ならば、むしろ下手にあれこれと勝手に思わない方がラウラのためである。

 

「して、隊長。その後、目のお具合はいかがですか?」

 

 とはいえ、これくらいは聞いておかねばならない。もし何か更なる異常を感じたのであれば既に報告をしているだろうが、直に確認をするということも必要だ。何かあるようならば、すぐに対応をするつもりでもいる。

 

「具合は変わらずだよ。本当に、何もない」

 

 その言葉に一先ずは安堵と共に胸を撫で下ろす。だが未だに何かを考え込むかのようなラウラにクラリッサは怪訝な表情を浮かべる。

 

「隊長?」

「ん、あぁすまない。いや、問題というか、悪いと言うようなものは無いんだ。ただ、最近少し変わったと言えば変わっていてな」

「と、言いますと?」

「うむ。平時からそうというわけではない。そうしようと意識を集中して初めてなるのだが、明らかに今までより精度が上がっているのだ」

「それは本当ですか?」

「あぁ。とは言え、同じ「目」を持つ者が学園にいるわけでもないから他者との比較ができない、あくまで私の感覚の上での話だが、間違いなく精度が上がっている。織斑一夏、織斑教官の弟だが今更説明は要らないか。あいつは中々に腕が立つからな。時々格闘訓練の相手をしてもらっているが、そういう時は特に実感する。

ただ、先ほども言ったがあくまで私の感覚でしかないし、私自身もよく把握しきれていない。だから報告は保留にしておいたのだがな」

 

 ラウラの考えも尤もだとクラリッサは頷く。基本的な機能は真っ当に働いているものの、本来当然であるそれに稼働非稼働の部分での異常だけがあった状態だったのだ。そこにいきなり機能の向上などが生じたとしても戸惑いしか感じないだろう。

 

「分かりました。それでは部隊に戻ってから隊員との比較試験と、それと念のための検査も行いましょう」

「うむ、そうしてくれ」

 

 クラリッサは手荷物のカバンからタブレット端末を取り出すと、戻ってからの予定にラウラの目の事についての必要事項も加える。

ラウラが言った通り、部隊員全員が目の処置を施している黒ウサギ隊ならば調査は行いやすいだろう。

 

「ところでクラリッサ、そちらの方では目について何かあったか? 分からないことも多いが、折角機能が上がったのだ。役立てることは取り入れたい」

「そうですね、取り立てて目立つようなことはありませんが、一つ。少々面白い発見はありましたよ」

「ほう?」

 

 信頼する部下が面白いと語る発見、その内容にラウラは一気に興味を惹かれる。

 

「以前、眼を使用しても格闘訓練を行っていた時のことですが、私が動きを切り返したと同時に相手が足をもつれさせてその場に転倒しまして。その時は私も何があったか把握できなかたのですが、後ほど記録映像を見返してみたら、ちょうど切り返しにより相手側の足のバランスが崩れたらしく、それが転倒に繋がったらしいのです」

「ほぅ。それで?」

「はい、調べてみたところ対人での接触や動きの切り返しの多い、サッカーやバスケットボールなどの球技では稀に見られる現象らしいのですが、根幹をなすのがバランスの把握と切り返しのタイミングを合わせることならば、越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)によって意図的な誘発も可能なのでは、という結論に検証した隊員と達しまして。目下、研究中であります」

「なるほど、それは興味深いな」

 

 これは良いことを聞いたとラウラは部下の発見に嬉しさを感じる。もしそれが可能になれば、格闘戦において大きな力となるだろう。そうすれば、一夏との格闘訓練も優位に運べるかもしれない。

 

「それで、その方法には何か名前はあるのか?」

「はい。スポーツの用語としては『アンクルブレイク』と言われているようすでが、調べていく中でどうも日本では別の呼び方もあるということが分かりました」

「それは何なのだ?」

「はい、何でも『ズガタカ』と言うそうです。語源として中世、日本ですと有名なオダやトクガワ、少々遡るとゲンジなどいわゆるサムライが政治の実権を握っていた時代に、時の権力者が目下の者に自身の権威を示す叱責として『頭が高い』と、即ち頭を下げろという意味で言った言葉が語源と推測されています。おそらくは強制的に相手を転倒させ、それを相手の頭を下げさせたように見立てての表現なのでしょう」

「なるほど、古くから伝わる言葉を分かりやすい形にしたうえで現代の用語と合わせたということか。未だに難解に感じることは多いが、このあたりの語感の豊富さは流石と言うべきだな」

「全くもって同感です。最近は日本で生み出された若者向けのライトカルチャーの世界的な台頭が目覚ましいですが、やはりその背景にはこうした文化の歴史があるのでしょう」

 

 感心するようにしきりに頷くクラリッサとラウラ。ちなみに後日、IS学園に戻ったラウラがこのことを一夏に得意げに話したところ、一夏を始めとして話が耳に入っていた数人の生徒たちも含め、一様に何とも言い難いコメントに困るような表情を浮かべることになったのだが、その辺の仔細は割愛することにする。

 

 

 そうして軍務に関する連絡や他愛のない雑談を交わしていくうちにラウラたちを乗せた車は目的となる基地へと到着する。

到着するや否や、基地内にある元々ラウラ用に割り当てられていた部屋で軍服への着替えをすませると、隊員たちが待機している場所へと足早に向かう。

そして目的の場所に着くと同時にラウラの視界に入ってきたのは、整然と並んだ隊の部下たちだった。

 

「お帰りなさいませ、ボーデヴィッヒ中尉!」

 

 敬礼と共に再び同じ言葉でラウラの帰還を迎えたクラリッサに続くようにして、並ぶ隊員たちも敬礼をする。

それを受けてラウラも敬礼を返すと、一度だけ並んだ面々を軽く見回して口を開く。

 

「出迎え感謝する。私の留学中の貴官たちの働き、ご苦労だった! 以後、私が再び日本に赴くまでの間、黒ウサギ隊の指揮は私が執る!」

 

 それは言われるまでもなくこの場の全員が承知していることだ。

 

「そして日本に戻るまでの間の隊の訓練も私が主導を取る。私がかの地で見てきたこと、再びお会いした織斑教官より教授賜ったこと、得てきたものをお前たちに伝えられる限り伝える。各員、余すことなく取り込め!」

『ハッ!』

「そして、私もまた貴官らが私が不在の間に積み重ねてきた研鑽を学ばせて貰う。今まで以上の祖国ドイツへの貢献、報恩のために、諸君。気を引き締めていくぞ!」

『ハッ!』

 

 そうしてラウラは悠然と一歩を踏み出す。気持ちを新たに舞い戻った祖国での研鑽に励もうと気を引き締めたその矢先のことだった。

 

 

「――ほぅ、極東のぬるま湯で性根が鈍ったかと思っていたが、思いのほかまともではあるようだな」

 

 

 氷のように冷たく、鋭く、それでいて秘めたる烈火のごとき気性を隠し切れない声が背中に投げ掛けられたのは。

 

「ッッ!?」

 

 その声を聞いた瞬間、ラウラの背が一瞬ビクリと震えるとその場に直立不動の状態で立ち止まる。

ラウラだけでない。クラリッサ、以下黒ウサギ隊の隊員全員が、緊張に表情を強張らせてその場に立ちすくしている。

 

「い、いらしておられましたか」

 

 あるいは千冬と話す時以上の緊張と共に、ラウラは後ろに向き直り声の主を迎える。

唐突に背中から不遜な口調で声を掛けられるという、少しばかり礼に欠けている相手側の挨拶にも関わらず、ラウラはただ畏怖するような姿勢を崩さない。

 

「久しいな、ボーデヴィッヒ。ここに来たのは気まぐれだが、どうやら来た甲斐はありそうだ」

「ご無沙汰しております、ヴァイセンブルク少佐」

 

 敬礼で迎えたラウラに、相手もまた最低限の礼儀として敬礼を返す。

長く伸びた燃えるような赤毛をシンプルに一つ縛りで纏めているシルエットはまさしく女性のものだが、軍服を纏う総身から発する気迫は「女」という認識を完全に吹き飛ばしている。

仮に彼女の姿を一夏が見ればこう言うだろう。「姉にそっくりだ」と。そしてこう付け加えもするだろう。「いや、下手したら姉よりも豪傑の気迫がある」と。

 彼女の名はエデルトルート・フォン・ヴァイセンブルク。『大魔弾(デア・ザミエル)』、『火砲の王(アーティレリィ・グーニッヒ)』などの二つ撫で知られるドイツ最古参のIS乗りにして、一線を退き後進の育成を主とする今もなお、ドイツ国内では最強、欧州全体を見ても三指に入ることは確実と言われているIS界における千冬に並ぶ古豪の一人だ。

そしてラウラやクラリッサたちにとってはかつての教官の一人でもある。

 

「して、少佐殿。本日はいかなるご用件でしょうか?」

「二度も言わせるなよ、小娘。言ったろう? 気まぐれにここの連中に稽古でもつけてやろうと思ったのさ。曲がりなりにもこの黒ウサギは我が国におけるIS部隊の顔の一つ。温い練度など認められんからな。そこで来てみれば久しい顔があるじゃないか。良い機会だからな。纏めてしごいてやろうと言うのだよ」

「それは……光栄であります」

 

 そう答えるしかラウラにはできなかった。下手な異議申し立てなどできようはずもない。階級差があるから? そんなのは理由としてはチンケなものだ。もっと単純に、エデルトルートという女傑の存在それそのものが逆らえない理由と言っても過言ではない。

 

「では、早速始めようか。総員、位置に着き給え」

 

 その言葉に部隊員たちが慌てて動き出す。隊長言えども今このときは指導を受ける生徒の一人にすぎない。不興を買わない内にすぐに対応しようと動き出すラウラだが、その肩にいつの間にか接近していたのか、エデルトルートの手が置かれる。

 

「しょ、少佐殿? 何か……?」

「なに、一つ事前に言っておこうとな。ボーデヴィッヒ、貴様は特に念入りに揉んでやるからな。腰を据えて臨めよ」

「――ッ!」

 

 その言葉にラウラはただ愕然とする。

 

「先のIS学園におけるトーナメント。それなりに素養や下積みがあるとはいえ、素人の小僧に敗れたのを見逃すほど私は甘くは無いのでな。それに、先日の太平洋沖での不覚も然りだ」

 

 理由を告げるとガクガクと恐怖に肩を震わせるラウラの背をバンッと力強く叩いて隊員たちの下へと合流させる。

 

「では、訓練開始だ」

 

 そう告げるエデルトルートの目からギラリと光る怪光線を部隊員たちは幻視したと、後々に語っている。

そして黒ウサギ隊の基地にはしごきに苦しむ隊員たちの悲鳴と、展開されたエデルトルートのISによる火砲の轟音がひっきりなしに響き渡ることになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 野郎ズ・トーク ~ヤマ無しオチ無し好き放題~ 自重? そんなものは知らんよ

 

―とある通話系アプリでの会話から抜粋―

 

一夏:休みktkr!

数馬:とりま集まるか

弾:また俺ン家で良いか?

一夏:あーいや、駅のモールとかで良くね? ぶっちゃけオレが一番そこなら動きやすい

数馬:あー、それならしょうがないね。じゃあモールの、どっか適当な店で

弾:賛成

一夏:おk

 

一夏:つーか、そっち最近どうよ?

弾:【速報】数馬、またもやらかす【もう慣れた】

一夏:なにごと? 荒事ならオレに任せろー<バリバリ

数馬:うん、一夏が出るとただの苛めだからね、腕っぷし関係の荒事は

弾:呂布だー! 一夏だー!

一夏:(´・ω・`)ショボーン

弾:……まぁアレだ。そう悪いことじゃあないから

一夏:なんなの?

数馬:俺氏、一学期の期末考査学年一位<ドヤァ

一夏:なんだそんなことか

数馬:まぁ言われるだろうとは思ってた。実際、僕にとっても大したことじゃない

弾:五科目平均97点で何を言うか

一夏:その頭脳を少しで良いからオレに分けろ

数馬:だが断る!

一夏:まぁ貰っても変態が移ったらな

弾:ニートだしな

一夏:変態ニート

弾:変態ニート

数馬:(´・ω・`)ショボーン

 

一夏:弾、結局なんだったの?

弾:あー、まぁ成績絡みではあるな。まぁ高校入ったからこそってやつだけど

一夏:なになにー?

弾:IS学園はどうか知らないけどよ、俺ら全国の模試を受けさせられたわけよ。ゆーて対象は俺ら一年だけのやつだけど。それで数馬、全国一位取りやがった

一夏:あ、そうなの

数馬:え? 軽くない?

一夏:いや。すげーはすげーけどさ。オレだって全国の高1集めてバトロイしたら生き残る自信あるぞ

弾:あ、そーゆーの

数馬:相変わらずの脳筋である

一夏:うるさいよ痩せチャビン

数馬:お黙りなさいよバカチャビン

弾:座布団全部ボッシュート

一夏:なんでや!

数馬:阪○関係ないやろ!

弾:そしてこの連携である

数馬:いやしかし、たかだかあの程度で校長室行きはちょっと驚いたね

一夏:は? 良い成績取って校長室送り?

数馬:いや、なんか学校内でも初めてのレベルの成績だから。校長直々にお褒めと激励のお言葉を頂いたのさ。特にありがたみも何も感じなかったけど

弾:まぁあんなどこにでもあるような高校から全国トップの成績出ればビックリするわな

数馬:その気になればカイセーだろうがナダだろうが余裕だがね。ま、二人とこうしてつるんでるのが何より楽しいわけであって

一夏:だってオレ達

数馬:仲間だもんげ!

 

 

 

 

 

 

一夏:じゃあ明日の昼前にモールのセントラルなー

弾:把握

数馬:おk

一夏:あ、レア駆逐泥

数馬:mjkオメ

弾:あ? 一夏もやってたん?

一夏:へ? 弾も?

数馬:そうそう、こないだ弾も始めたんだよ。祝・提督デビューさ

一夏:良かったやん。オレそこまでinできないしなぁ

数馬:イベ海域は完徹で突破しますが何か?

一夏:廃人

弾:よし、ちょっと溜まったから大型回してみる

一夏:え?

数馬:お、溶鉱炉行っちゃう?

弾:景気づけだ景気づけ。ダン、いっきまーす!

一夏:17分に1ペソ

数馬:マイクチェック来ちゃうか?

弾:(写真)

一夏:なん……だと……?

数馬:え? 8時間?

弾:バーナー行くぞオラァ!

弾:大和キタ━━ヽ(゚ω゚)ノ━━!! (写真)

一夏:くたばれ

数馬:寄越せ

弾:やなこった

数馬:まぁぶっちゃけると弾の段階じゃまだ十全に運用はできないけどね。資材消費マッハだし、今ので結構とんだろ?

弾:しばらく溜めに徹するわ

一夏:ですよねー

弾:つーかさ、武器どうすりゃ良いの? なんかネットだとお勧めは主主水上機電探らしいけど

数馬:んんww

一夏:大和型はww

数馬:主砲四積み以外ありえませんぞww

弾:ハッハッハー! うっしゃー! 景気づけに今夜の飯は気合いれるわ!

一夏:祭りですね分かります。\カーニバルダヨッ/

数馬:やめろトラウマを引き出すんじゃない。青ビーム、ワンパン大破、纏めて三隻、消し飛ぶ鋼材……何故だマヤッ!?

一夏:クラスメイトのイギリス人お嬢で何故か脳内再生余裕ですた

数馬:だからね、そういう危ない発言は控えろとあれほど(ry

 

 

以下どうでもいい会話がダラダラ続く……

 

 

 

 

 所と日付が変わってとある日曜日。

IS学園に直通するモノレールの本土側駅、そこに隣接する大型ショッピングモールの一角に一夏、弾、数馬の三人の姿があった。

 

「なぁ、どこ行くー?」

「確かレストランフロアに例のコーヒーチェーンが入ってたはずだよ。そこにしないかね?」

 

 目的地に着いたは良いものの、そこからどうしようかをまるで考えていなかった男子学生特有の適当さで行先に迷った三人。どうするかと話を振った一夏に、数馬が候補を上げる。

 

「あそこか。メニューには前々から興味があったからな。俺も良いと思うぜ」

 

 数馬が候補に挙げたのはここ数年で一気に全国展開の波に乗ったコーヒー喫茶のチェーン店である。同種の他のチェーンとは違い、長時間の居心地が良い空間を作ることで固定客をガッシリ掴もうという経営戦略が功を奏し、一気にコーヒーチェーン業界の大手に名乗りを上げた店である。

度々夕方のニュースや昼のワイドショーなどでも取り上げられる店の名物にはそのメニューも当てはまり、料理人の自負が強い弾も興味を惹かれた様子だった。

 

「じゃ、行こうか」

 

 数馬の先導で一行は目的の店へ向かう。休日の昼日中ということでモール内は多くの買い物客で賑わっているが、幸いにして件の店は待たされることもなく入ってすぐに席へ通される。

 

「この店、来るのは初めてだけど、本当に長居向けだな」

 

 ボックス席に腰掛けて軽く周りを見回した一夏が感心するように呟く。他のボックスとは高めの壁で仕切っており、ボックスごとの独立性を維持している。確かにこういう空間なら、メイン客層の主婦方が好む長時間のお喋りにはもってこいだろう。

 

「とりあえず、まずは頼むものを決めなきゃだ」

 

 テーブルの上に置かれたメニューを開きながら数馬がどれどれを品選びを始める。

 

「一夏、君の注文は?」

「うさぎで」

「いやそれはおかしい」

 

 数馬の振りにボケで返す一夏、そこにすかさずツッコミを入れる弾。高度に洗練された、淀みなく流れるようなボケとツッコミの構図がその場にあった。

 

「いや、冗談だ冗談」

 

 カラカラと笑いながら流す一夏に弾は無言で数馬の方を見ろと指を指す。

 

「こころ……ぴょんぴょん、したいです……」

 

 一夏が視線を向けた先にはテーブルに突っ伏しながらピクピクと体を震わせる数馬が居た。

 

「あ~、こいつ難民だったか」

「なんか相当気に入ってたみたいだからな。ま、どうせまた次の『嫁』が見つかるだろうし、そうすりゃケロっと治るだろ」

「というか、お前も結構分かってんのな、弾」

「ブーメランブーメラン」

 

 人のことは言えないだろと言う弾に一夏もそれもそうだと頷く。

 

「まぁ僕としては親友二人が理解を示してくれて嬉しいところなのだけどね」

「そりゃあ、ね?」

「あそこまで薦められたら見ないってわけにもいかないし」

 

 友人の義理として趣味に付き合っていると言う二人に数馬も満足げに頷くと共に心のうちで「計画通り!」と黒い笑みを浮かべる。

 

「で、結局注文はどうすんだよ?」

「とりあえずコーヒーかね?」

「それに適当な軽食だな」

 

 店員を呼んで各々の注文を済ませる。程なくしてやってきたコーヒーや軽食を堪能しつつ、三人はただ適当に言葉を繋いでいく。

 

「そういえば一夏、学校はどうだね?」

「ん? どうもこうも、まぁ普通だよ。毎日普通に授業受けて訓練して、ついでに自分の鍛練もして。内容はそりゃ変わってるけどさ、やってることの根っこは二人と変わらないさ」

「ま、曲がりなりにも学校だからねぇ」

 

 なるべくIS、あるいはそれに関わるワードは出さないように努めながら言葉を交わす。まさか世界規模の有名人がこんなショッピングモール内のコーヒーチェーンに居るとは予想していないのか、他の客などに一夏の存在を気付かれてはいないが、それでも不用意な言葉は控えるに越したことはない。

 

「ま、オレならその気になれば目立たないように気配殺すくらいできるけどね」

「あれだよな、チームのスポーツとかそれ使えるだろ。バスケとかやってみようぜ」

「リアル幻の六人目やっちまうか。いやでもなぁ、並みのが相手なら普通にやって勝てるし」

「中学の体育大会とか無双状態だったからなぁ」

 

 しみじみと思い出すように弾は呟く。

本人曰く鍛練の賜物であるフィジカルのスペックは中学時代においても、同年代と比して破格のレベルにあり、その手の競技ではまさに独壇場であった。

短距離走や長距離走などでは陸上部の面々を軽々追い越し、野球をやらせれば部のエース投手以上の速球と、4番以上の打率を叩き出す。バスケをすればどこぞのガングロよろしく一人で相手五人を全抜き、挙句には調子に乗って一人アリウープまで決める始末。柔道や剣道はもはや言わずもがな。

 

「サッカーくらいだっけ? 少し手こずったのは」

 

 数馬の問いにあぁ、と一夏は頷く。

 

「いや、野球やテニスは割とシンプルだし、バスケも手が使えるから良い。ただ、サッカーは足メインだからな。ちょっと慣れるのが大変だったし、相手にした部のエースも上手かった。あいつ、何て言ったっけ?」

「羽山、だね。彼も僕らと同じ藍越だよ。クラスは同じだけどあまり絡まないかな。けど、評判はよく聞く。何でも一年で既にレギュラーを勝ち取ったとか」

「道理で。あいつだけは他の連中と比べて頭一つ抜けてたからな。確か、見目も中々だったと思うけど?」

「いかにも。品行方正、成績優秀、運動神経抜群、爽やか系の甘いマスクに人当たりもよく誰とでも仲良くなれる。早くも学内の王子様扱いさ。まぁ、はたしてそれが本人にとって良いかは知らないがね」

「あん? おい数馬、そりゃどういう意味だよ。羽山なら俺も知ってるけど、いやそもそも俺や数馬と同じクラスだし。そんな風には見えないぞ?」

 

 同じ高校、同じ教室に通う故に件の人物を知る弾が言葉の意図を数馬に問う。

 

「そのままだよ。確かに彼の評判は非の打ちどころが無い。それは僕も素直に認めよう。だが、非の打ちどころがないのは彼の評判、外野が作り上げた彼という人間の像だ。だが、肝心の彼自身は、その内側はどうかな? はたして、本当に非の打ちどころのない人間などいるのか、いいや否だとも」

『……』

 

 友の言葉に一夏も弾も静かに耳を傾ける。まったく以ってその通りだ。織斑一夏、御手洗数馬、五反田弾。三人が三人とも、まずパット身で分かる点として悪くは無い、むしろ良い方に入る顔立ちをしている。

そして一夏はずば抜けたフィジカルを、数馬はずば抜けた頭脳を、弾もまた料理を始めとした各種生活スキルに精通しておりメンタル面も非常に落ち着いているなど、称賛されるべき要素を持ち合わせている。

だが彼らがそれで素晴らしい人間かと問われたら、まず最初に当人たちが否と首を横に振るだろう。

 一夏は、現在でこそ世界唯一の男性IS適格者や、IS乗りの業界における期待の新鋭などとそちらの方面で評されているが、それでなくとも然るべき場所で広めれば瞬く間に「天才少年現る」などと報じられるだろう武芸の能力を持っている。そして、同時に時や相手は本人にとって然るべくと選ぶが、もはや凶器にまで至ったそれを容赦なく他者に向ける冷たさも持っている。

数馬は、単純な学業成績に秀でているだけではない。頭を使うという行為に長け、時として様々な知略を巡らせられる。そして、時にはそれを己の利のために、あるいは興味や嗜虐心、あるいはただの気まぐれや暇つぶし気分で、他者を陥れ絶望や悲嘆の慟哭の上げさせるために仕向ける非道、一種の悪辣さも持ち合わせている。

弾も、先の二人に比べれば遥かに良識的だ。自分から誰かを害そうなどとは滅多に思わないし、友人二人の手にかかった者を憐れむ心もある。だが、それでもその二人の友の非道を友であるが故に致し方なしとあっさりと受け入れ、余程のことで無い限りは然程咎めもしない、ある種の淡白さがある。

 そうした気質を本人達が誰よりも理解しているため、三人とも自分が「良い人間」であるとは、少なくとも声に出して外へ発するということは絶対にしないのである。

 

「彼もそうさ」

 

 件の羽山少年を指して数馬は言葉を続ける。

 

「これでも人を見る目はあると自負しているのでね。同じクラスでもあるし、それなりに面白そうだから人間観察の対象によくしているが、あぁ、現状を良しとしているのは紛れもなく彼の本心だとも。だが、それだけではない。彼に自覚があるのか否か、あるいはあった上で蓋をしているか、おそらくは後者だろう。彼の内には紛れもなく淀みがあるとも。

生憎僕らは中学からの彼しか知らず、その時から今に至るまでその原因にようなものを知らない。自然、それ以前にあると見るべきだが、流石に僕もそこまでは見抜けない。いやいや、我が身の不手際を嘆くばかりだよ。ただ、そうしたものがあるのは事実さ。そして彼は周囲の評ゆえにそれを表に出せない。出すことができないのだよ。既に「理想の王子」とも言うべき偶像を周囲の全てから張り付けられた彼は、斯くあるべしという周囲の認識に従ってそう動くしかできない。

彼自身、その行動は間違いなく彼の主体によって行っているだろうが、そこに周囲の意思が介入しているのも間違いないだろうね。いやはや、難儀なものだ。もっと自由に生きられれば彼も楽だろうに」

 

 相も変わらずよく人を見ているものだと一夏は思う。とはいえ、だからどうしたと然程興味が無いのも事実。確かに知己ではあるが、既に通う学び舎は異なり、そもそも接点も少なかったのだ。今となってはほぼ無縁に等しい。そのような相手を気に掛ける必要性は欠片も感じはしなかった。

弾も弾で、それがそいつという人間で本人が自分でそうしているのならそれで良いだろうと、あえての無関心を貫く。

そんな友人二人の態度に数馬も「ま、僕にとってもどうでも良いがね」と自分の中での重要性の低さを告げる。

 

「ただ、仮にだよ。早々そんなことはありはしないだろうけど、彼に対して僕が何かしらのアクションを起こすことになったら、それはそれで面白そうだとは思うけどね」

「と言うと?」

 

 二人の親友を除き、基本的に他者の扱いがぞんざいな数馬が面白そうと評する。その意図するところは何なのか、興味が湧いた一夏が問う。

 

「これでも人のトラウマ抉ったり、メンタルをどん底に叩き落すのは割とできる方だからねぇ。彼がそういう状況に陥って、にっちもさっちも行かなくなって、張り付けた王子様フェイスがどう崩れるのか。それは興味があるなぁ」

『……』

 

 親友を自負する二人をして擁護不可能と言える程に下衆い笑みを浮かべる数馬に揃って閉口する。とは言え、そういう奴であるということはとうに百どころか千万承知なので今更何も言いはしないのだが。

 

「お前アレだよな。学園モノドラマとかじゃ絶対ラスボスみたいなタイプだろ。ほら、こうクラスの空気とかを裏で操っててさ、でもってやたら熱血な転校生だとか赴任してきた教師だとか、三十代半ばで高校生やってるヨネ○ラ・リ○ーコ的なのとぶつかるの」

「否定はしないけどねぇ。けど、届かせないさ。早々僕の裏をかける奴が居るかよ。最後に笑うのはこの御手洗数馬さ」

 

 自身満々に言い放つ数馬に二人は再度閉口し、やれやれとため息を吐く。

 

「そういえば、さっき一夏がいったその手のドラマの典型だとさ、ヒトノキモチガワカラナイノカーなんて台詞があるけど、それも僕にとっては失笑ものでねぇ」

「何だよ、自分なら分かるとでも?」

「イェス。だからこそ、動かせるんじゃないか。まぁきっちり把握したうえで踏み躙らせてもらうけど」

(今更だけど親友の下衆っぷりが半端じゃねー)

 

 コーヒーを一口啜り弾は遠い目をする。我ながらよくもまぁこんなのと付き合っていると思うが、既に今更な話だ。それに、親友であることにも変わりは無い。

 

「まぁ良いじゃないか、そんなことは。こんな所で話していても、別に僕や弾の高校生活がどうこうなるわけじゃあない」

 

 そう言って数馬は話題の転換を試みる。

 

「そういや一夏、お前クラスとかはどうだよ? お前以外みんな女子だろ?」

 

 口火を切ったのは弾だ。一夏からはIS学園での日々についてちょくちょく数馬も交えてチャットやらで話したりもしているが、こうして直に会っているのだから、改めて当人の口から聞きたいという考えによるものだ。

 

「別に、前々から話してる通りさ。男がオレ一人だけっていうのもあって、そこのあたりで互いに気を使ったりすることもあるけど、上手くやれてるさ」

「ふ~ん。う~ん、でもしかし、やっぱりもうちょっとインパクトとか欲しいんだよねぇ」

「何だよ、インパクトって」

「いや、だからさ。一人きりなわけだろう? つまりオンリーワンだ。そんな君を狙って刺客が送り込まれてるとか。キャッチコピーは、『クラスメイトは全員暗殺者(アサシン)』、というのはどうかね?」

「……寮がオレを除いて基本的に二人部屋なんだけど、同室での百合カップル乱立が待った無しだな、それ」

「そして任務にミスれば即退学。そして待ち受けるCDデビュー……」

「マンガにするならタイトルは『ISのリドル』か。なぁ、なんでシエナちゃんあそこまで不憫なん?」

「いや、それは僕も言いたいがね」

「ちなみにオレ、カプならチタヒツが鉄板だが単独でならスズさんが一番良いわ」

「ババ専と申すか。いや、君がどちらかと言えば年上好みな傾向なのは知ってたけど、年上過ぎるだろう」

「スズさんはいつまでも乙女なんだよ」

「ちなみに僕はその不遇なシエナちゃんで」

「チョイスは悪くないな」

 

 やいのやいのと建設的も何もあったものじゃない会話を続ける一夏と数馬。それを聞いていた弾はふと何かを思い出したかのように手をポンと叩くと、横から会話に入り込む。

 

「待て、それ一つ問題があるぞ」

「問題?」

 

 聞き返す数馬に弾が頷く。

 

「その話の流れで行くと、一夏に一人一人予告上送りつけて仕掛けるって形になるけどよ、そもそも一夏だったら全員集まったその場で先手必勝とでも言わんばかりに自分から仕掛けて、ついでに全滅させるだろ」

『あぁ~』

 

 あまりに想像に容易い光景に数馬と、一夏本人ですら納得するような声を挙げる。

 

「じゃあアレだ。最初からクライマックスってことで初回から最終回用の全員エンディングってことで」

「もう地雷確定だな、ソレ。そしてさらっとネタについてきてる弾は……」

「いや、だから数馬が熱心に進めるからさ……」

 

 閑話休題

 

「あぁそうだ。僕は飲み物追加するけど、二人はどうする?」

「ん~、じゃあオレは別のコーヒーにするかな。弾は?」

「俺もそんな感じかね」

「じゃあそれで」

 

 程なくして呼び出しを受けた店員が三人の居るボックスまでやって来て注文を受ける。

 

「とりあえずコーヒーの、これとこれを一つずつ。あと、カフェラテで」

 

 最後のカフェラテは数馬の注文だが、そこで店員から予想外の言葉が飛び出てきた。

 

「ただ今サービスでラテアートをさせて頂きますが、何かデザインにご要望はありますか?」

『へ?』

 

 三人揃って目を丸くする。聞けば話通り、カフェラテを注文すると希望のラテアートをしてくれるらしい。お任せや口頭でのイメージの注文もできるが、資料となるような画像を渡してくれればそれを再現することもできるという。

チェーン店にしては大したサービスだと唸る三人は、同時にデザインを思案する。

 

「僕は特別推したいっていうわけじゃないけど、二人は何かデザインの希望とかある?」

「まぁ……」

「ちょっとは、な?」

 

 じゃあ折角だし「せーの」で合わせて言ってみるかという結論に達し、三人はそれぞれの希望のデザインを言う事にする。

 

『せーの、戦車/ピカソ風/丸っこいウサギ』

 

 順に一夏、数馬、そして弾である。見事に三人バラバラの意見、だがそれと同時に三人の間で一瞬、鋭く視線が交わされたことに店員は気付かなかった。

 

「どうやら、これはそういうことかな?」

 

 とりあえず無難なウサギのデザインを頼んでから店員が去った後、数馬がそう切り出す。

 

「まさか三人、見事に好みが分かれたか……」

 

 いや、それも宿命かと無駄に厳かな雰囲気を出しながら一夏が言う。

 

「三人、結局は別の人間なんだ。不思議じゃないだろうよ」

 

 無駄にニヒルさを出しながら弾も言う。

 

「とは言え、咎めはしないさ。むしろ、この方が望ましいとも言える。故に僕は二人の選択を受け入れるとも。だが、敢えて言わせてもらおうか。――チノちゃんが超絶ラブリーだと」

 

 極めて真剣な顔で言う数馬に、一夏もまた眼光を光らせながら言う。

 

「まぁ、下手に被って内紛勃発なんて始末よりは良いだろう。そしてオレも言わせて貰おうか。――リゼちゃんのクールだけど可愛い物好きとかギャップ萌えは大いに有りだと」

 

 乗るしかない、このビッグウェイブにと言わんばかりに弾も続く。

 

「俺はやっぱり王道とでも言うべきか。昔から主人公が好きな方だからよ。――ココアの選択は紛れもない正道だと言えるな」

「フフフ、こころがぴょんぴょんするじゃないか……」

 

 三人は視線を交わし、笑みを浮かべる。その様に数馬が喜びを隠し切れない表情を浮かべる。

 

「さて、せっかくだしもう少し舌鼓を打たせてもらうとしようか」

 

 そうして三人は再び飲み物と軽食を口へ運び始めるのであった。

 

 

 

 

 おわれ オチが無い

 

 




6/30
 というわけで今回はラウラの帰国についての話でした。この後、ラウラには学園の授業など天国でしかない壮絶なしごきが待っています。
そして今まで名前だけで数える程度しか出さなかった人物、エデルトルートがここでやっとまともな登場をしました。ポジション的にはまんまドイツ版の千冬です。でも千冬より数段おっかないという設定です。
何となく察しのつく方も多数いらっしゃるとは思いますが、一応モデル的なのもあります。
ええ、ドイツ、赤髪、少佐、火砲とくれば、ねぇ? ぶっちゃけると某万年恋愛処女なわけですが。要はそれっぽいというだけの話です。

今回はここまで。また次回の更新の折にお会いしましょう。それでは。
え?ズガタカ? いや、あれはちょっとしたお茶目と受け取って頂ければ…
いやだって、ラウラの目とアレの目、似てません? ぶっちゃけ赤Cに

7/17
というわけで、今回は久しぶりの野郎ズトークでした。
えぇ、オチもヤマも何もあったものじゃありません。ただ野郎三人が駄弁って話してるだけです。
このような話は、作者のちょっとした息抜きもありますが、友人と居れば何だかんだで普通な男子高校生をやってる一夏を表現したいという意図で書いてます。その結果が自重しないネタとなりましたが。
とりあえず、この三人が集まる話はまたやりたいですね。今度はそこにIS学園組も交えてで。
感想は何時でもお受けいたします。些細なことでも良いのでドシドシ送って下さい。
自分も、たまには返信する量が多くて悲鳴を上げるなんて経験をやってみたいです。ぶっちゃけ書き手の一人としてそのくらいの感想が欲しいです(切実)
ですので、皆様お気軽にどうぞ

それでは、また次回の更新の折に。

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