或いはこんな織斑一夏   作:鱧ノ丈

69 / 89
 スゲーや、また更新に一週間足らずだ。
我ながらちょっとどころか、かなりビックリしております。

 今回はシンデレラの()()()本番です。
舞踏会じゃないですよ、武闘会ですからね。舞踏会は……ライブビューイングだけでも行っておけば良かった……

 原作五巻のシンデレラの大騒ぎの場面ですね。
まぁ一夏の対応はタイトル通りですが。
 
 それではどうぞ。


第六十六話:真・一夏無双 ~ダース・ワンサマーの巻~

 織斑一夏、篠ノ之箒、凰鈴音。IS学園の擁する数少ない専用機持ちにして純粋な近接戦を主体とする三人。

その戦い方は何もISに限った話に限らず、こうした生身での戦いにおいても適用される。

 

「で、なに? お前ら二人揃ってその得物は拾ってきたと?」

「あぁ。お前に挑むに相応しい代物をな」

 

 箒の携える二刀、鈴の携える柳葉刀、どちらも刃引きこそされているが作りは本格的なものだ。

ギリギリのラインで安全こそ確保しているものの、金属製ということを鑑みれば十分武器となり得る。

 さて、これは木刀で相手をするのはちょっと骨が折れるな、などと一夏は考えるが、それを読み取ったように箒は背負っていた布に包まれた棒状の物体を一夏に放って寄越す。

 

「ほら、お前もこれで不足は無かろう」

「なんだよ、わざわざ拾っておいてくれたのか?」

 

 言いながら包みをの袋を剥がすと、中から箒が持っているような刃引きをされた刀が二振り出てくる。ただしあちらとは違い、こちらは両方とも長いタイプだ。

いったいこんなものをどうやって用意しておいたのかと、会場設営の一切を仕切っていた楯無に問いたくはあるが、まぁ手に馴染む得物があるだけ良しとするかと、深く追求することをやめる。そんなことより今は目の前の二人の方が重要だ。

 

「わざわざオレ用に得物を用意してくれたのはありがとう。

 で、その上でオレとマジでやり合おうってことで良いんだな?」

 

 例え刃引きをされた物とは言え刀は刀。持てば自然と気持ちも切り替わる。

それは明確な闘志、そして殺気となって発露し、箒と鈴に容赦なく叩きつけられる。

だが――

 

「ふんっ」

 

 気合いの一声と共に箒は一歩を踏み出し、鈴もそれに続く。

そして二人とも各々の両手に納まる得物を構えた。

 

「良いね、そう来なくっちゃ」

 

 ニカッと、心から嬉しがるように一夏は口元を笑みの形に変える。そう、本当に嬉しいのだ。

ならば後はただ勝負をするのみとばかりに一夏は駆け出し、同時に箒と鈴もまた迎え撃つべく動き出す。

 二刀の切っ先を僅かに地面に掠らせながら一夏は低い体勢で距離を詰めると舞うように刀の重さによる遠心力も利用して半回転、挟み撃ちをするように二方向から振るわれる箒と鈴の得物をそれぞれ片手に握る刀で受け止める。

 

「クッ、ククッ……フッハッハッハ……」

 

 楽しくて、愉快で仕方が無いと言うように一夏の口から洩れる笑い声、それが指し示す彼の余裕を感じ取り箒と鈴は自然と表情が険しくなっていた。

 

 

 

 

 

 金属音が絶え間なく鳴り響く。得物の小柄さ故に手数の優れる鈴が猛攻を仕掛け、それを一夏が迎え撃つことによるものだ。

勝負が始まり十数秒で大まかな流れは確定した。最も手数に優れる数が連続で攻め続け、その間隙を突くように箒が要所要所で一撃を狙うというもの。

余人であればすぐに押し切られる猛攻だが、その全てを一夏は冷静に対処しきっていた。繰り出される一撃一撃を見抜き、弾き、流し、僅かに身を逸らすことで躱す。

これだけ攻めて掠りもしないのだから、相手側からしてみればさぞ厄介ではあるが、同時に一夏もまた、彼自身予想外なことに攻めあぐねているのが現状だった。

 

 まずは箒。あの大小の二刀を攻防で使い分ける技にはよく覚えがある。彼女の実家に伝えられる"篠ノ之流二刀剣術"のものに相違無い。

夏以降、生家の蔵から可能な限りの資料を引っ張り出し、それを基に研鑽を改めているとは彼女自身の口から聞いていた。だがここまで練度を高めているとは思っていなかった。

無論、剣士としての総合で言えばまだまだ自分の方が上と一夏は自負しているが、それでも驚嘆に値する成長の速さだ。

 

 そして鈴。ある意味ではこちらの方が箒以上に驚かされる。

伊達に候補生をやっているわけではない。経験の浅さはやむを得ないとしても、相応に訓練は積んでいるし決して弱いわけではない。だがそれでも一夏にとってはまだまだ御すに苦労は無い、そのはずだった。

いや、実際今もこうしていなす分には全然問題は無い。一対一ならば一気に押し切ることもできる。だがこうしてある程度守りに回ってこそ分かる。鈴の動きは極めて読みにくい。動きの不規則性、そこに端を発する読みにくさは或いは楯無以上かもしれない。

野生の勘による無型(フォーム・レス)と言うべきだろうか。長ずればこう呼ぶに相応しいだろう、即ち、我流と。

 

 

 

 攻防の最中にも移動は続き、場所はアリーナに建てられた城のようなセットの一角に移る。

バルコニーを模したステージに移動した時、一夏と刃を交えていたのは箒だった。

 

「ぜぇええいっっ!!」

 

 左手に構えた小太刀サイズの刀を常に守りへと移行できる状態にしながらも、大小の間合いの異なる二刀で仕掛けてくる箒を、一夏も同じように二刀で迎え撃つ。

だが見る者が見ればその攻防の違和感、特に一夏の側から感じ取れるソレに気付いていただろう。

 

(クッ、こっちが振り回されそうだ……!)

 

 一夏の動きがいつもと違う、それに気付いたのは手合わせが始まってから少々経ってからのことだ。

理由は至極単純、一夏の挙動が大振り気味、大袈裟とも言えるものだったからだ。全身をスイングさせるような回避に、宙返りや跳躍を交えたアクロバットな回避。更には剣にしても全身ごと捻るような大胆な振りが多い。

無論、それまでの一夏らしい動きもあるし、その流れも動きの中に見て取ることはできるが、それにしても今までとは違い過ぎる。

 

「箒どいて!」

 

 背後から掛けられた声に箒はすぐに応じる。一撃、力を込めた一撃を一夏向けて叩きつける。だがテレフォンパンチのような動き故にあっさりと躱され、逆に隙のできた胴に鋭い刺突による反撃が襲い掛かる。

それこそが箒の狙いだ。躱されることも、反撃に応じられることも分かっていた。分かっていたなら、多少無理をすれば避けるくらいなら何とかできる。

 踏ん張る足に力を込めて身を捻り、ギリギリのところで刺突を交わすとそのままバックステップで下がり、更に下がってセットの上まで続く階段の上に立つ。

 

 反撃の刺突を繰り出したことで大きく半身の伸びた一夏、その彼目がけて建物の中から駆けてきた鈴が全力の蹴りを繰り出す。

迎撃は間に合わない、完全に回避するのも難しい、そう判断した一夏の選択は後退。先の箒がしたようにバックステップで離れようとするも、僅かに間に合わず胸に鈴の靴先が当たる。

直撃すればそれ相応に痛いだろう蹴りだったが、幸いにも後退によりその威力の殆どは伝わらなかった。そして僅かとは言え当たり、更に後ろへ押された勢いを利用して一夏はバルコニーの手すりに手をかけると、そのまま自分の体を持ち上げ後方宙返りをしながらバルコニーから飛び降りた。

ちょっとした建物の二階分、あるいは三階近い高さがあるバルコニーから飛び降りるなど尋常の沙汰では無い。当然、客席のそこかしこから悲鳴のような声が上がるも、落ちながら一夏はあっさりと体勢を立て直し、難なく着地してのけた。

 

 

 

「凰、気付いたか? 一夏のやつ、動きが妙だ」

「やっぱり? なんかあいつにしちゃ派手に動きまくってるなって思ったのよ。あいつ、むしろそういう無駄を省きまくった動きがメインだし」

「……癪な考えだが、試されているのかもしれんな」

「は? どういうことよ」

「文字通りさ。あの動き、おそらく一夏なりに新しく自分のモノとして確立しようと目論んでいるものかもしれん。

 私たちはその体の良い練習相手、というわけさ」

「あぁなるほど。そりゃあ……また舐められたものね」

 

 二人の視線は一夏が飛び降りたバルコニーの手すりに向かう。

 

「無理はする必要ないんだぞ?」

「はっ、少しは無理をしなきゃ一夏には敵わない。分かり切ったことでしょ?

 それに、女は度胸ッ!」

「違いないッ!」

 

 同時に駆け出し、一夏がそうしたようにバルコニーから飛び降りる。自由落下の感覚に一瞬腹の内が浮き上がるような感覚に襲われるも、すぐに地面が間近に迫り両者共に一切の怪我が無い華麗な着地を決める。

 

「はぁあああッッ!!」

「ぜりゃあああああ!!」

 

 最初と同じように双方向からの同時攻撃、共に両手で振ってきた一撃を一夏はどちらも片腕で受け止める。

だが、男女の筋力差があるとは言え、やはり両腕による押し込みを片腕で受け止めるのは厳しいのか、次第に押し込まれていき二人の武器が一夏へと近づいてくる。

 いけるか――そんな考えを箒と鈴が共に思い浮かべた時、一夏の口元に再度笑みが宿る。

 

「ヌッハッハッハ……んなこと、あるわきゃねぇんだよなぁ……」

「なっ……!?」

「マジで……?」

 

 それまで押し込まれていた一夏の両腕、それが逆に箒と鈴の武器を押し返していく。

ゆっくりとではあるが、その速さは押し込まれていた時よりも速い。それが意味するは即ち、二人の両腕を片腕で相手取って、依然余裕があるということだ。

 

「カァッ!!」

 

 一喝と共に一夏の腕が箒と鈴を弾き飛ばす。思わずたたらを踏むも、その時鈴の視界にチラリと映るものがあった。

 

(アレは――)

 

 それが何なのか理解した直後、鈴は得物を握ったまま親指と人差し指でL字を形作る。ともすれば武器を握り直すための何気ない動作に見えるため一夏が気に留めることは無かったが、それを見た箒は目だけで頷き鈴の意図が確かに伝わったことを示した。

再び剣戟が繰り返される。箒と鈴による波状攻撃を一夏は先ほどまでと同じように躱し続ける。依然、回避には宙返りやら大胆な半身のスイングが多い。間違いなく消耗の激しい動きだろうに、疲労を微塵も見せないあたり彼の地力が伺える。

 その最中で再度一夏対二人の押し合いにもつれ込んだ。状況としては先ほどと全く同じ。だが今度は二人が両腕に込めてくる力がより大きくなっている。

再び押し返してやろうとするも、今度は体重まで掛けてきているのか中々押し返しにくい。いや、むしろ目的は得物を押し込むことより自分をこの場に抑えつけておく方みたいだ。そう考えた直後、一夏の背を悪寒が走り抜けた。

 

 考えるより早く動き始める。

渾身の力を込めて、押し返すのではなくずらすことで二人をやり過ごそうとする。そうして何とか自由の身になると同時に身を捻ろうとして――状態が僅かにそれた直後、何かが目視できない速さで一夏の横髪を掠めた。

 

「セシリアかっ!」

 

 間違いなく狙撃、それもあのギリギリの回避になるほどに正確な狙いを続けられる人間は今この舞台に立っている人間ではセシリアしか居ない。

というより躱せたこと事態、一夏としては自分を褒めてやりたいことだったりする。なにせ最近の彼女ときたら狙いのまぁ正確なこと。

ISでの模擬戦にしたってビットからの射撃はともかく、主兵装のスターライト.MKⅢからの射撃はほぼ百発百中だ。何らかの方法で防がれこそすれ、外した場面はここしばらく見たことが無い。

 

「そ、狙撃は流石にやり過ぎじゃあないか……?」

 

 故に一夏も冷や汗を流しながらそう言ってしまう。

だがそれを聞いた二人の反応は実に冷めたものだ。

 

「安心すると良い。聞けば弾の素材は軟質のものらしい。

 故に、当たってもすごく痛いくらいで済むそうだ」

「いやでもよ、目とかに当たったら流石に事だろ」

「逆に聞くけど一夏、セシリアがそんなヘマすると思う?」

「……しませんですね、ハイ」

 

 厄介なことになったと一夏は舌打ちをする。

二人を相手取りながらセシリアの狙撃を凌ぐ、流石にそこまでやり切れる保証は無い。二人だけならまだしも、セシリアは本気でどうにかしないといけない。

だがそんな一夏の考えはお見通しなのか、行かせるものかと二人が立ち塞がる。

 

「……やるしか、無いようだな」

 

 動きの試運転も兼ねていたりで、真面目にやってこそすれ多少の加減はしていた。

だがそれも止める。出し惜しみ抜きの強行突破に移ることにした。

 

 二種の気が体内で融合し、禁忌的な爆発力を発揮する。

その勢いを十全に利用し、一気に箒と鈴の間に滑り込むと跳躍や宙返り、身を捻っての回転などと共に二刀を振る。

だが文字通りに出力の上がった体から繰り出される動きは速さ、勢い共に大きく増しており、それと共に振るわれる二刀はまさに破壊の渦と化していた。

 

 堪ったものではないと箒と鈴が一夏から距離を取り、同時に二人の距離が離れた瞬間に一夏の動きは転じていた。

一息で箒との距離を詰め、迎え撃とうとしていた箒の二刀も強引に弾く。そのまま懐に潜り込むと襟首を掴み思い切り投げ飛ばした。

 

「ガハッ!」

 

 勢いよくセットの壁に背を打ち付けた箒は視界が白く染め上げられ、そのまま壁を背にうなだれたまま座り込む。

残るはお前だと言わんばかりに一夏の視線を向けられた鈴は逆にやってやるという勢いで一夏に斬りかかる。

セオリー通りとすれば体の基本的な、無駄のない動かし方。それ以外の武器の振り方などは全て本能と勘に任せる。

余人であれば無意味なこの戦法も、彼女にとっては立派な武器になるだろう。先に述べたように、長ずれば間違いなく強力な武器となる。

 

 だが今の一夏には奇しくも及ばない。

不規則に繰り出される連続攻撃を全て躱し、逆に先と同じような竜巻のごとき一夏の反撃が襲い掛かる。

それを何とか凌ごうとするも勢いに押され、一瞬体勢が崩された。だがその時一夏は鈴に丁度背を向ける形になっており、まだ立て直しは効く。

そう思った矢先、振り向きざまに一夏が腕を振るい頭頂部を掠める感触があった。

 

「あ――」

 

 思わず呆けるような声が漏れた。

そしてカランという音と共に鈴の頭に乗っていたティアラが地に落ち、彼女の脱落を数馬のナレーションが伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

「完敗ね……箒、大丈夫?」

「あぁ、なんとかな。痛っ……」

 

 派手に背中を打ち付けた痛みはそれなりのものらしく、箒は顔をしかめている。

その背をさすりながら鈴は箒を気遣い、具合を聞く。一夏はとっくにセシリアを探すべく走って行った。ただ彼に捕捉されないことを祈るばかりである。

 

「参ったわね。あたしも結構腕前はつけたって思ってたんだけど。

 何アレ、おかしいでしょ。あの最後の時、一気にに勝てるビジョンが消えたわよ」

「私たちが鍛錬に励むのと同じように、あいつもまた己を高めているということだ。

 全く、超えようともがいても向こうが勝手に高くなるとは、実に厄介な壁だよ」

「そう言う割にはあんた、あまり嫌そうな顔をしてないけどね」

 

 若干呆れを含んだ鈴の言葉に、箒は自分の顔がうっすらと笑みを浮かべていることに気付く。

気付き、自分の性分がおかしいのか堪らず苦笑を漏らす。

 

「そうらしい。どうも、それを超えようともがいて、超える自分を夢想するのが楽しいらしいな」

 

 パンパンと服の汚れを払いながら箒は立ち上がり、軽く腕を回すなどしてコンディションを確かめる。

背中に受けた痛みも既に引きつつあるし、それ以外は特に問題無い。十分にやれる状態だ。

 

「私は一夏を追おう。こう言っては悪いが、一夏に追い詰められてオルコットに対処できるとは思えん。

 まぁ、それは私も同じようなものだがな」

「あんただけじゃないわよ。あたしにだって言えることだし。

 とにかく、早く言って一夏より先にセシリアと合流しちゃいなさいな」

「そうさせて貰おう。後はデュノアともだが……

 待て、そう言えばデュノアはどうした? 一度別れてきり動向が知れん」

「そういえば、そうね。まぁあの娘のことだから上手くやってるとは思うけどさ」

「だが気になるな。それに、一夏に挑むに手勢が多いに越したことはない。

 私が移動がてら探すとしよう」

「んじゃ、あたしも戻りながら見つけたら声かけておくわ。

 箒、先にラウラと合流してるわ。準備はしておくから、後は任せたわよ」

「心得た。頼んだぞ」

 

 頷き合って二人は別れて移動を開始する。

 

 

 そしてこの時、二人は気付いていなかった。

否、二人だけでは無い。今もこの舞台に立つ全員、そして裏でこの舞台を仕掛けた者も、誰も気付いていなかった。

殆ど予定通りに進んでいるこの舞台に、想定外の存在が紛れていたことを。

 

 

 

「これで残ってるのは篠ノ之さんにセシリア、それに僕だけか……

 一応予定通りだけど、あの人数を一人で制圧するとか、流石は織斑くんだよ……」

 

 舞台に用意されたセットは非常に大がかりだ。

先ほどまで一夏、箒、鈴が立ち回りを繰り広げていた城のようなセットもあれば、幾つもの壁が立ち並ぶ迷路のようなセットもある。

その他にも元々ISの訓練施設であるアリーナの設備を活かした、任○堂あたりの3Dアクションゲームのステージに出て来そうなトンデモ仕掛けがあったりもする。具体的にはマ○オ64とかマ○オサンシャインとかに出そうなアレだ。

 

 そんな設備の中を、一夏に捕捉されないようにしながらシャルロットは進んでいた。

機を見計らうつもりだったが、予定していた残存人員の一人である鈴がリタイアとなると、計画としては順調だが表向きの目的としてはマズイ。あの一夏を相手取るのに一人減るのはそれだけで大事だ。

 

「早く、篠ノ之さんやセシリアと合流しなきゃだね」

 

 そうしなければ彼とは満足に戦うことができないし、勝って更なる満足を得ることも叶わない。

方針を決定し動き出そうとした直後、背後から唐突に生じた殺気にシャルロットは反射的に振り向いていた。

 

「ガッ!?」

 

 だが完全に振り向くよりも先に首に何かを叩きつけられる。

痛みと衝撃に視界が一瞬白く染まるも、視界だけはすぐに持ち直し気配の正体をだけでも見ようとする。この舞台の裏事情を考えれば、それは放置できないことだからだ。

だが――

 

「あ……あな、たは……」

 

 気配の主が何者か、それを見た瞬間シャルロットは困惑する。

何故この人がここに居るのか。何が目的でこんなことをしたのか。

 答えを弾き出せないまま、シャルロットの意識は頸部を絞められたことにより暗闇へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 そしてまた別の場所では――

 

「マ、マズイですわね……」

 

 息を潜めつつ移動しているセシリアは冷や汗を禁じ得ずにいた。

経費削減のためか安全のためか、木製が大半のセットでできた迷路じみた中を歩き回る彼女は一刻も早く追手から逃れたい気分だった。

 

「セーシーリーアーっすわぁああああんっ! 

 どーこでーすかー! あーそびーましょー!!」

 

 何せさっきからこんな感じの一夏の大声が聞こえているのだ。

何が遊ぼうだ。近づかれたら遊ぶなんて生温い状況じゃ済まないに違いない。

というかそもそも声がそういう意気込みに満ち満ちている。

 

 はっきり言って、捕まったら即アウトだ。

 

「お願いですから、見つけないでくださいましね……」

 

 祈るように呟いてから、思わずブルリと背筋を震わせるセシリアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「数馬くん数馬くん、実はこの舞台、こういう仕掛けがあったりするんだけど……」

「へぇどれどれ? ほほぅ、これは中々面白そうだねぇ」

「でしょ? これ、やっちゃう?」

「やっちゃおうか?」

 

(どうしましょう、これ……)

 

 放送席で悪い笑みを浮かべている二人を見ながら、虚は困り果てているのであった。

 

 

 

 

 

 




 強いて仕込んだネタを挙げるとすれば今回の一夏の戦い方そのもの。
タイトルと、文中での動きの説明を見れば分かる方は多分すぐに分かる。

 是非分かった方は感想までどうぞ。
そして分かった方はきっと自分とさぞや話が合うに違いない。

 残るは四人。一夏、箒、セシリア、???、勝ち残るのは誰なのか。
そして???とは一体……

 次回を乞うご期待。
ほらほら箒、頑張ってくれ。こうなるともう君くらいしか一夏を倒す希望は居ないんだからさぁ!
頑張れ、頑張れ、ホーキ!(べんぼう並感

 というわけで、また次回更新の折に。
感想ご意見、随時募集中です。お気軽に、一言でも良いのでどうぞ。




 ところで、先日の急なお気に入り登録とUAの伸びは何だったのか……
なんか日刊も最高六位とか行ってたし……。マジびっくり……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。