衛生兵長の記録   作:雪割荘

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病院関係でちょっとごたごたしてました、すみません。
引き続きどうぞ。


新しい仲間

「第5陣偵察班より報告!走行する提督の車を基地近くで発見したそうです!」

 

基地の作戦室に響く報告により、張りつめていた緊張が解ける

 

「ふう、これで一安心か。」

「今回は戻ってこれたのね、よかったわ。」

「ところで新任の方の迎えはどうなったんでしょうか?」

「そちらについてなんだが、空港に迎えを送ったが姿が見えないらしいわ。」

「それなんですが・・・。」

「ん?なにかあったのか?」

「その、偵察班からの報告だと提督の車なんですが男性が運転していたそうです。」

「なに?では提督はどうした。」

「助手席に座っていたそうです。」

「・・・男性? 、正門の警衛隊に一応警戒を、と連絡してくれ。」

「わ、わかりました~。」

 

新たな出会いまであと少し。

 

 

車を進めると、すぐに正門に到着した。

門横の詰所から衛兵の一人が様子を見ながら近づいてくる。

 

「そうだ、身分証を出さなくては。」

 

はっ、と思いだし手元の鞄から身分証と辞令書を探し出す。

そうして目的のものを見つけ出したと同時に声をかけられた。

 

「ここより先は軍施設です、どのようなご用件で?」

 

凛として少し気の強そうな声でそう問われた。

 

「お疲れ様です、本日付で配属されました杉崎兵長です。身分証と辞令書はここに。」

 

言いながら物を渡すと隣の少佐が声をかける。

 

「あ、森田大尉!警衛勤務いつもありがとうございます!」

 

どうやらこの衛兵殿は森田というらしい。

その森田大尉は予想していなかった人物からの声に驚き、一瞬固まるもすぐに建て直し。

 

「ありがとうございます提督、しかし出かけるときはきちんと報告してくださいね。堂々と出ていくからみんなに伝えてあると思ってしまったわ。」

「それに関しては申し訳ありません、以後気を付けますぅ・・・。」

「きちんと確認しなかった自分にも責任はあるのでこれ以上は何も言いません。ただ、みんな心配してたことは覚えていてくださいね。」

「・・・はい。」

 

注意されてしょぼんとしている宮川少佐に苦笑いしつつ、私の方に顔を向け。

「こちらも確認できました。杉崎兵長ようこそ岩川基地へ、これからよろしくね。」

森田大尉はそう言いながら詰所にいた衛兵を並ばせ海軍式の綺麗な敬礼をする。

「微力ながらお役にたてるよう尽くす所存です。」

私も言いながら陸軍式の答礼をする。

 

 

「ではこのまま執務室に向かいましょうか。」

 

少佐の一言を合図にまた車を走らせる。

そのまま何事もなく駐車場まで進み車をとめる。

ここで私はふと疑問に思った、衛兵の人たちは全員女性であったな、と。

 

「・・・少佐、この基地に男の方はいらっしゃるのですか?」

「いえ、わたしや艦娘たちに配慮してくださったようで女性だけですが・・・あっ。」

「私はここにいて大丈夫なのでしょうか?」

「だ、大丈夫ですよ!わたしがみんなに話しますから!」

「よろしくお願いします・・・。」

 

邪な期待がないと言ったら嘘になるが、ここに居るのは生体兵器をも粉砕できる存在である。

下手に手を出せば一瞬で血煙になってしまうであろうとこは容易に想像できる。

きっとゴリラのような人達に違いない、もしくはサイボーグとかそんな感じだろう。

サイボーグだったら変形したりするのかな?腕が銃になったり背中からブースターが出たりとか。

・・・おお、これは結構楽しみになってきたぞ。

 

「杉崎兵長、こっちですよー。」

「あ、はい!」

 

とりあえず今は余計なことを考えずに行動しよう。

 

「ここがわたしの執務室です!・・・ちょっと扉の前で待っててもらえますか?」

「わかりました。」

 

すぐ呼びますから―!と言いながら先に扉の中に入ってゆく少佐。

片付けでもしてるのかな?と思いながら待っていると、なにやら背中に違和感が。

とっさに振り向くが廊下と窓があるだけで特に何もない。

背中に手を当ててみるが特に何か付いてるわけでもなかった。

気のせいかと思っていると、中から少佐の呼ぶ声が聞こえてきたのでとりあえず中に入ることにした。

 

 

 

 

「あいつが新入りかぁ?」

「たぶん、そうだ。」

「なんだかぱっとしねぇ野郎だなぁ。」

 

執務室近くの窓から中を窺う3人の影

 

「あら、あなた達こんなとこで何してるの!油売ってないで準備を手伝いなさい!」

「うわっ!大淀、お前おどかすなよ!」

「まったく、目を離した隙にすぐ消えるんですから!摩耶さんは食堂に飾る花の準備!天龍さんと若葉さんは食堂前の通路の掃除!それぞれ終わったら間宮さんの手伝いですからね!」

「「「は~い。」」」

 

しょうがねぇなぁと言いながらそれぞれの仕事場に向かう3人であった。

 

 

 

 

中から呼ばれたので一応ドアをノックしてから入る。

 

「改めまして、ようこそ岩川基地へ!杉崎兵長、これからよろしくお願いします!」

 

部屋の中には以前、新発田で見た白い制服を着た宮川少佐が立っていた。

なるほど、先ほどまでは私服だったから着替えていたのか。

 

「こちらこそ、少佐のお力になれるよう努力いたします。」

お互いに敬礼し、その後は着任に関する書類を片付けていく。

 

「ふぅ、堅いのはあまり得意ではないのでここまででもいいですか?」

「少佐がそれでよろしいのであれば。」

「ありがとうございますぅ、まだなかなか慣れなくて・・・。」

「すこしずつ慣れていきましょう。ところで少佐、質問よろしいですか?」

「はい?なんでしょう?」

「私のこれからの勤務内容についてなのですが・・・。」

「ああ、それなのですがわたしのお手伝いといいますか、書類関係だったり上層部への連絡だったり・・・。」

「連絡、ですか?」

「その、恥ずかしながら軍のお偉いさんがこわくてですね、報告が滞ってしまってて・・・そのすみません。」

「なるほど。」

「なので報告の時にわたしの代理をおねがいしたいなぁ、なんて。」

「・・・異動が急だった理由が分かった気がします。」

「・・・すみません。」

「いえ、お受けした以上私も可能な限りお力になります。ただ、すこしずつ慣れていきましょう。」

「ありがとうございます!わたしもがんばります!」

 

軽い雑談をしながら、書類仕事について教えてもらっているとだいぶ日が傾いてきた。

 

「あ、そうだ!今日は杉崎兵長の歓迎会を準備しているんですよ!」

「本当ですか?それは楽しみですね。」

「今日の夕食は御馳走ですよ!間宮さんの料理はすごくおいしいので期待しててくださいね!」

 

そんな話をしてると時間が過ぎ、終業ラッパが鳴り響く。

 

「さあ、お仕事は終わりです!さっそく食堂に行きましょう!」

「わかりました、夕食楽しみですね。」

 

二人で食堂に向かいながらふと思い出す。

 

「あっそうだ、今更ですが私の部屋ってどうなるんでしょうか?」

「それなんですが、わたしの部屋の隣がちょうど空き部屋なのでそこでよろしいでしょうか?」

「むしろ私がそこで大丈夫なのでしょうか・・・?こう、風紀的に。」

「だ、大丈夫ですよ!今日お話しした感じ杉崎兵長はそういう人じゃないと思いますから!・・・ですよね?」

「・・・ご期待を裏切らぬよう努力します。」

「よかったぁ。」

 

私は耐えられるだろうか?いや耐えねばならぬこの人の為にも。

なによりまだ死にたくはないのである。

 

「っと、ここが食堂です。」

くだらないことを考えているうちに到着したようだ。

「今回は裏から入りますね、正面入り口は真逆の位置なのですぐわかると思います。」

「わかりました、中で少し待つ感じでしょうか?」

「そうですね、みんな居るか確認して準備ができたら呼びますから、少しだけ待っててくださいね。」

 

そう話しながら糧食班の休憩室だと思われる場所に案内された。

 

「ではここで少し待っててくださいね。そうだ、なにか軽い挨拶でも考えておいてください。」

「人前で話すのは苦手ですが・・・がんばります。」

おねがいしますねと、笑いながら少佐は出ていった。

 

 

 

「はーい、ちゅうもーく!」

「あ、提督だ。」

「ほんとだ。」

 

わたしの声にみんな気付いたようでまだ少し騒がしいながらもみんなこちらに向く。

 

「全員そろってる?」

「空母組、そろいました。」

「同じく戦艦組も大丈夫デース!」

「重巡組はポーラを捜索中で「遅れてすみません!見つけてきました!」・・・全員揃いました。」

 

・・・ザラの胃に穴が開かないか心配だなぁ。

 

「軽巡、駆逐組もそろっています。」

「潜水組も大丈夫でち。」

「特殊艦組もそろってるであります。」

「よーし、みんないるね。ご飯の方は大丈夫?」

「期待してください提督、今日は皆が手伝ってくれた自信作ですから!」

「ありがとう間宮さん!それじゃあ呼んでくるけどいいかな?」

 

はーい、と各所から返事が上がる。

 

「よーし、では呼びにいってきまーす。杉崎兵長ー!どうぞー!」

 

 

 

「杉崎兵長ー!どうぞー!」

 

ついに呼ばれてしまった、まだ挨拶を考え付いていないのに。

まずい、これはまずい。しかし出ていかないのはもっとまずい。

こうなってはしかたがないと腰を上げドアを開ける。

 

「杉崎兵長!こっちですよ!」

「ワカリマシタ。」

「なんで片言になってるんです?」

「いえ、緊張してしまって・・・。」

「あはは、大丈夫ですよ。みんな優しい人達ですから!」

 

そんな風に話してるとたくさんの人が見えてきた。

 

「なんだ、これは・・・!!」

右を見ても左を見ても見目麗しい女性しかいない。

ゴリラは?サイボーグはどこ?え?まさかいない?

私はこの中で生活するのか?耐えられるのかこれ?

 

そんなことを考えているうちに少佐がしていた私の紹介が終わり挨拶する時間になった。

もうこうなったらなるようになるしかあるまい。

 

「え、えー、ただ今紹介していただいた杉崎由貴兵長です!職種は衛生科であります。」

 

大量の女性の視線が突き刺さり体が蜂の巣になりそうだ。

 

「所属は陸軍でありますが、今回宮川少佐のご要望によりこちらで勤務することになりました。」

 

もはや頭が真っ白で何を言っているのかわからなくなる。

 

「いまだ軍属としての期間は短い身ではありますが精一杯頑張らせていただきます。」

 

もうこれ以上何も思い浮かばない

 

「こ、これからよろしくお願いします!」

 

言いながら腰を折って深呼吸をする。何とか言い終えた。

すると少しずつパチパチと拍手の音が聞こえ始める。

ゆっくり顔を上げるとみんな笑顔で拍手をしてくれていた。

どうやら受け入れてもらえたようだ。

 

 

「杉崎兵長お疲れ様です。それではみんなグラスは持った?新しい仲間を祝福して、乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」

 

 

 

 

これが私の新しい仲間だ。




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