響かない声 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

前回に続いて千聖編です。主人公以外の心理描写は難しいですね。ちょっとおかしな部分がかるかもです。

それではどうぞ


2.やるべき事

 あれからというもの、精神的に来るものがあった。なぜ精神的に来ているのかわかんない。俺と一緒に居るのはあの白鷺さんだ。なのになぜ精神的に来るのか………ここでやらかせば、世間の人や白鷺さんのファンに殺され兼ねない。社会的な意味で。

 

 神山哲夫の息子 白鷺千聖と熱愛か?! みたいな記事を出されてみろ、俺がどうにかなるわ。テレビなんて出たことないのに、そんな理由で出てたまるかよ。少なくともあと数日の辛抱だ。耐えてみせる。

 

 なんて思いを心で決めたは良いが、女優の大変さを目の当たりにした。それが今なんだけどな。

 

 数日前の夜。部屋に布団を少し距離を開け、2つ敷いて就寝した。俺は精神的に疲れていた為かすぐに寝れた。ふと夜中に目を覚まし、水分をとろうとしたが布団には白鷺さんの姿はなく、部屋に居たのは俺だけ。トイレかな? と思い再び布団に入って寝ようとしたものの、なぜか気になりなかなか寝付けなかった。

 

 いったいどこに行ったんだ? あんまり詮索して良いことじゃないと思うけど、なんか気になるんだよな。…………はぁー。

 

 布団から出て部屋をあとにして、旅館内を散策し始めた。ここの旅館は高級なのかめっちゃ広い。もし、旅館内に居るとすれば中庭が見える縁側辺りか? 

 

 そうとも限らない為、遠回りしつつ縁側に向かう。しかしどこにも姿はない。居ないくらいで少し騒ぎ過ぎじゃね? と思う人も居るだろうけど、主演女優を1人にでもしてなにかあったら俺が疑われるだろ。

 

 そうは思っても頭のどこかには、心配する気持ちがあったのだろう。アメリカに行ってから、よく心配性だよなと言われる事が多くなったけど、その自覚はこの時はほとんどなかった。

 

 縁側に着くと、予想通り浴衣姿の白鷺さんが1人で喋っていた。普通の人ならおかしな人だろうけど、彼女は主演女優。明日のセリフを覚えてるんだろう。

 

「気、使わせたわけか」

 

 部屋で呑気に寝てる俺に気を使ってくれた事を考えると心が痛い。

 

 一旦部屋に戻り、財布を持って旅館内にあるちょっと高めの自動販売機で缶のお茶を2本買って縁側に戻った。覗くように見ると、ちょうど休憩に入ったのか景色を眺めている。普通に白鷺さんの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「こんな時間までよく頑張れますね」

 

「あら。眠れないの?」

 

「いえ。居なかったもんですから」

 

 白鷺さんから少し離れて縁側に座り、お茶を差し出した。

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 すぐに缶が空いた音が聞こえた。自分の分のお茶を脇に置いて、じっと綺麗な景色を眺めている。たまには心地よい涼しい風が吹き込む。夏だというのにあんまり蒸し暑さは感じない。今年の日本は去年とは違うようだ。

 

「ここの中庭…綺麗」

 

「そうですね。アメリカとは大違いですよ」

 

「アメリカがそんなに嫌?」

 

「いえ……好きですよ。日本とは違って都会って感じがしますし、街ゆく人も良い人ばっかりですし」

 

 さすがに1年住んでいればそうなる。今話したのは実際そうだし、日本より良いことはたくさんあった。逆に日本の方が良い所もある。例えば自然の景色とか。特に京都は古い建物とかが良い感じだ。将来どっちに住むと聞かれたら、答えるのにかなり困ると思う。

 

「アメリカは良いのに、それを決めたお父さんは嫌なんだ」

 

「…………白鷺さんは俺みたいな経験した事がないからそういう事が言えるんですよ」

 

「あなたがどんな経験したのかはわからないけど。哲夫さんは良い人よ?」

 

「いっつも喧嘩売ってくる人が良い人? 寝言は寝てから言ってください」

 

 例えあの人が良い人と言われても俺は信じられない。息子が倒れて入院してるのに、叱る人がどこに居る? 人を追い込むように雅史と比べられてさ。そんなクソみたいな親を信じられるかよ。

 

「そう。あなたは知らないのね」

 

「知らないって……何をです?」

 

「神山恵君。あなたの事は嫌って程、哲夫さんから自慢話を聞かされたわ」

 

「は? それって……どういう」

 

 思わず白鷺さんに視線を向ける。

 

 俺の自慢を嫌って程聞かされたって、もうそれほとんど悪口にしかなってないんすけど。そんな事よりも一番驚いてるのは、あのクソ親父が俺の自慢をしている事だ。そんなの考えられるか? 答えはNOだよ。

 

「たまにバンドの指導してくれるのだけれど、事あるごとにあなたの名前が出てくるのよ?」

 

 そんなのは普通嫌な思い出になるはずなのに。話をする白鷺さんはどこか楽しそうで、嫌みは少したりとも感じない。どうしてだ? 比べられてるんだぞ? しかも会ったこともないやつと。それなのにどうして笑ってられるんだよ…………あんたは。

 

「嫌じゃないんですか? 比べられるの」

 

「全然。哲夫さんの場合は、私達の間では親バカだよねって結論になったわ」

 

「なんですかそれ………」

 

 でも不思議な気分だ。あれだけ文句ばっか言って、嫌ってたのに………クソ親父だっていつも俺に喧嘩ばかり仕掛けてきて。もうわけわかんねぇ。本当はなにがしたかったんだ?

 

 1人で俯いて考えていると、隣に気配を感じて横目で見る。

 

「何があったのかはわからないけど、もう少しお父さんを信じてあげたら? 悪気があったわけじゃないのよ」

 

 俺の手に自分の手を重ねながら、そう言う白鷺さんについ見とれてしまった。整った顔に、綺麗なピンク色の瞳。すぐに視線を逸らす。ゆっくりなテンポで動いていた心臓がワンテンポ早く動いているのがわかる。

 

「ふふっ♪ わかりやすいのね」

 

「はい?」

 

「“けい”は……恋をしたことある?」

 

「したことくらいありますよ。バカにしてますか?」

 

 そうは言ってみたが、目は合わせられなかった。俺の手に重なる白鷺さんの冷たい手をじっと見つめていると、その手がゆっくりと俺の顔を捉える。心臓が早鐘のように動く。こんな間近で白鷺さんの顔を見れる機会なんてあるだろうか。

 

「なんの真似ですか……?」

 

「………もし、私があなたを好きって言ったらどうする?」

 

「質問の答えになって───」

 

「答えて。私の事が好きか……嫌いか」

 

 言葉を遮られ、質問の答えを迫られる。少しも視線を泳がせずに俺を捉える瞳から目を逸らせなかった。

 

 ここで好きと言ってしまったら、前に言ったように大変な騒ぎになってしまう。そんな事になれば、白鷺さんが危なくなる。これから先、いくらでもやり直しが効く俺の人生と違って、白鷺さんの人生はやり直しが効かない。それを避ける為には…………。

 

「ごめん」

 

 断る。

 

 まだ会ったばかりで好きかどうかの判断は出来ない。今はしてはいけないような気がする。こんな勘違いをして、家族とすれ違っちまう俺と恋なんて。許されるはずがない。

 

「もっと……自分の人生を大事に───?!」

 

 いきなり顔を近づけてくる白鷺さんわとっさに強めに引き離してしまった。

 

「いきなり何を?!」

 

「嫌だったかしら?」

 

 少しも悪意は感じやかった。逆にそれが、俺のイラつきを加速させたのだ。

 

 首を傾げて答える彼女に思わず声を荒げて言ってしまった。

 

「わかってるのか?! これ以上先に進めんで、週刊誌にでも撮られてみろ! 今の人生を棒に振ってどうすんだよ! あんたは良いかもしれないけど………俺は嫌だ。こんな俺のせいで、君の夢を壊してほしくない」

 

 後半は冷静さを取り戻して、自分の思いを伝えられた。こんな俺のせいで人生を棒に振ることはないんだ。せっかく主演で映画を撮ってるんだからさ。

 

 俺は自分のお茶を持ってその場をあとにした。

 

 罪悪感に押しつぶされそうだ。もし本当に俺の事を好きだったなら、かなり悪い事をしてしまった。でも、今の俺に……親の気持ち1つに気付けない俺に彼女を好きになる資格なんて……ない。

 

 

 

 

 

────────☆

 

 予想以上に彼はガードが堅かった。告白紛いな事をしたのは私だけど、どうしてかしら。心にぽっかり穴が空いたような感覚に支配されていた。

 

 今回の映画で良い演技をするには、どうしても彼の力が必要。恋をしたことがない私には今の役には入りきれない。せっかくの映画の主演なのに………。

 

「どうすれば………」

 

 でも、よく考えたらおかしいわよね。役作りの為に彼を騙して付き合おうとしたんだもの。そんなの断られて当然。せっかく勇気だして、キスまでしようとしたのに………。

 

 今日までいろいろなドラマを撮影してきてたけど、キスシーンだけはNGを出していた。ファーストキスくらいは好きな人としたいもの。でもこの業界で生きていく為には、キスシーンでもなんでもやらなくちゃ。今回の映画の主演だって、キスシーンNGだったら出来なかった。

 

「頑張らないと」

 

 貰ったお茶を飲んで、台本を持ってこの場を後にした。

 

 

 

───────☆

 

 あの夜の出来事から彼女を見る目は変わった。あんな事をされたらどう頑張っても意識しないようには出来ない。おかげで昨日はなかなか寝付けなかった。今日も朝から映画の撮影で居ないので、俺にとっては好都合だ。ようやくゆっくり寝られるんだからな。

 

 そんな事を思いつつも眠気は来ず、むしろ冴えていくばかり。目を瞑ればあの状況。俺はどうすれば良かった? 彼女の願いを断ったのが正解か? それとも…………。

 

「あーー! マジなんなんだよ……。人で遊んでるのか?」

 

 でもあの時に悪意は全く感じなかった。むしろドキドキする気持ちの方が強い。

 

「とりあえず寝るか」

 

 考えるのはいつでも出来る。今は体を休めて夜に備えよう。

 

 しばらくぼーっとしていると、ようやく眠気に襲われ眠った。

 

 

 

 

 

───────☆

 

「はぁー。やっと帰って来れた………」

 

 今日の撮影は思った通りにいかなくて、かなり長引いてしまった…………ダメね。哲夫さんだけじゃなくて、恋人役の方にも迷惑かけちゃったし。監督の言う恋をしてる感じがしないってどういうことかしら。考えれば考える程答えが出ない。

 

 疲れきった体を引きずって部屋に戻ると、私の分の布団が敷かれていた。たぶん神山君が敷いてくれたのかしら? でも肝心の彼の姿はなかった。

 

「…………後でお礼言わないと」

 

 鞄を置いてその場に座りこみ、なんとなく寝転がってみた。鼻で呼吸をする度に畳の香りを感じる。

 

 明日は撮影…押さないようにしないと……。それにお風呂も入らなくちゃ……。朝早くからでも入れるって旅館の人が言ってたわね。だったら朝にでも────。

 

 気を失うように私は意識を手放した。

 

 

 

───────☆

 

 あーーやっぱ風呂で考え事をするんじゃないな。風呂に入ってから軽く1時間経ってしまったよ。10時に入ったから、11時くらいか? 今は。なんなせよいつ帰ってきても良いように布団は敷いてきたけど、さすがに帰って来てるか。

 

 なんて話かけるか…………。お疲れ様? 今日は遅いんですね? やっぱこの辺が安定だよな~。昨日あんな事があったかいからって、変に気安く行くよりはいつも通りにして相手に違和感を与えない方がいいな。

 

「よし。それで行こう」

 

 部屋に着き、ドアを開ける。そこには床に横たわる白鷺さんの姿が。

 

「え?」

 

 なに? 死んで………ないよね。そんなわけないよね。ね? ね?

 

 近づいて耳をすませると、一定のリズムで寝息を立てていた。死んでない事に安心はしたものの、あまりにも無防備過ぎる姿にため息を吐いてどうするか考える。このままほおって置くわけにはいかない。そこでだ。

 

 どうやって彼女を布団まで運ぶ?

 

 俺の頭に浮かんでいる方法は3つ。1つ目は起こす。2つ目は転がす。3つ目は………お姫様抱っこで運ぶだ。明らかに2つ目の選択肢など潰れている。むしろ無いに等しいくらいだ。1つ目も俺の中では、ほぼほぼ無いに等しい。疲れてるんだろうから、こんな所でもぐっすりなわけで。

 

 残りはもう1つしかない。

 

「・・・・・起きない……よな?」

 

 抱っこした時に目を覚まされるのが一番ヤバいし、めんどくさい状況だ。でも、畳の上で寝る辛さは知ってる。もし明日の仕事に支障をきたしたらそれこそ問題だ。だったら、たかが数秒の間抱っこして運ぶだけだし問題ない。

 

「そうと決まればさっさとやるか」

 

 二の腕の辺りと膝の辺りに手を忍ばせ、「失礼します」と小さな声で言って持ち上げる。

 

「あっ……意外と」

 

 ここから先はご想像にお任せしますはい。俺から言うことは出来ないです。起こさないようにそっと運んで、布団の上に置いた。お姫様抱っこをされて運ばれたにも関わらず、彼女は変わらず小さな寝息を立てて寝ている。

 

 すぐに寝返りをうって、体制が横に変わった。なんとなく横に座って彼女の顔を見つめた。

 

「なんで俺なんかに好きか嫌いか聞いたんだか………あなたにはもっと素敵な人が居ると思うのに」

 

 そんな事を言っても彼女は答えてくれるはずもない。今日1日考えてみたけど、彼女の気持ちが本当でも俺が釣り合うわけがない。相手は小さい頃から芸能界で働いていて、主演までしている女優。方や一般人。どう考えても無理だ。

 

 自分に自信がないと言えば全て片付いてしまう。俺をここまで引き止める理由は1つしかない。

 

 

 

 

 

 有咲との約束だ。

 

 

 

 

 

 これ以上俺は約束を破るわけにはいかない。だから───

 

「んっ……? 神……山君?」

 

「あ、起こしちゃいましたか?」

 

「ううん。気にしないで」

 

 目をこすりながら上半身だけ起こすとため息を吐いた。よっぽど疲れているのか、一点を見つめている。

 

「お疲れのご様子で」

 

「ええ。今日はいつもより長引いてしまってね。ほとんど私のせいなんだけど」

 

 白鷺さんは笑顔で言うが、その笑顔からも疲れが感じ取れる。これは俺と話してる場合じゃないな。

 

「なら、ゆっくり休まないと。明日も朝早いんですよね?」

 

 俺の質問に対して無言で頷く。なおさら邪魔は出来ないと思った俺は立ち上がろうと手を自分の膝の上に置いた。

 

「待って……」

 

「え?」

 

「行かないで……」

 

 服の袖を掴んで弱々しい声で訴えてくる。

 

「私の……そばに居て…今だけで良いから」

 

 そんな事を言われて無理だとは言えるわけがない。なぜそこまで俺に気を許すのだろうか。不思議でしょうがなかった。でも……彼女も辛いんだろう。普段は誰かに相談したりするだろうけど、今回は相談出来る人は居ないと言っても過言ではない。

 

 だったら………。

 

「話……聞きますよ?」

 

 話を聞くだけならと心を許した。こんな状態でほおっては置けない。

 

 俺は話を聞いてある決意を胸に一歩踏み出す。

 

 




次回でラストです。

そして本日の8時35分に仮面ライダービルド~約束という名の誓い~が投稿されますので、よろしくお願いします!
原作は仮面ライダーになってるので間違えないようにです


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