響かない声 完結   作:レイハントン

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こんにちは。

千聖編最終話です。最後の方千聖ファンには少々刺激が強い内容が含まれてるかもです。そんな事はないと思う方もいらっしゃるかと思いますが。

それではどうぞ


3.俺に出来ること

 朝方。小さな物音で目を覚まし天井を見上げていると、白鷺さんが俺の顔を覗き込んでくる。ファンだったらもう即死のレベルだな。俺はその……もう慣れたと言うか。

 

「起こしちゃった?」

 

「いや……。もう行く時間ですか?」

 

「ううん。もう少し時間あるわ」

 

「そうすか」

 

 頭を少し上げて後頭部を掻き、上半身だけ起こして背伸びをする。もう1度彼女を見ると昨日の夜の事がまるでなかったような、清々しい表情だった。

 

 あれから話をたくさん聞いた。撮影で辛かった事や、思い通りに行かない辛さを。正直白鷺千聖という人間はなんでも出来てしまう。そう思っていた。だが、そんなことは1ミリもなかったのだ。今の自分があるのは努力をしたから。

 

 でも。その努力を全く見たことがない俺からすれば……やっぱりなんでも出来てしまう印象が強かった。そんな彼女の言葉に俺は凄まじく共感した。

 

 

 

 努力は人に見せるものじゃない。

 

 

 俺もずっとそうだった。家族が居る所ではあんまり努力する姿は見せずに、見ていない所で頑張る。そんな感じで過ごしてきた。

 

 だからわかる………なんでも出来ると思われる辛さが。俺の小さい頃なんて、よくギター出来るの? とか聞かれたもんだ。親がそういう事をやってると、な?

 

「昨日は本当にありがとう。おかげで自信が持てたわ」

 

「俺はただ話を聞いただけですよ。白鷺さんの気持ちは痛い程わかりますし」

 

「ふふっ。あなた、お人好しってよく言われない?」

 

「言われますよ。今までいろんな人にお節介してきましたから」

 

 たぶん俺のやりたい事はこれから先も変わらない。困っている人が居れば…真っ先に助けに行く。例え自分に不利益だとしても。

 

「今日の撮影。頑張ってください」

 

「ありがとう♪ 頑張るわね」

 

 その笑顔だ。俺が初めて出会った時に一番輝いていた時の白鷺千聖の笑顔。ようやく本調子に戻ってくれたみたいでなによりだ。

 

 1人で安心していると、俺の頭を不思議そうに見つめる白鷺さん。ん? とでも言いたげな表情をすると、「ゴミが付いてる」と言って、俺の目の前でしゃがんだ。

 

「どこすか?」

 

「私がとってあげる。ちょっとあっち向いて」

 

「はい」

 

 右側に視線を向ける。すると───チュッと柔らかい何かが俺の頬に当たった。俺の視線の先には窓。そこにくっきりと映っている。白鷺さんが俺の頬にキスをしているのが。

 

「え?! あ……なっ!?」

 

「ふふっ♪ 昨日のお礼」

 

「お礼って………」

 

 少し照れながらキスされた頬を抑えて言った。

 

 もはや殺されてもおかしくないレベル。当の本人は楽しそうにクスクス笑っている。これはあれだ。イタズラをした本人は楽しいけど、やられた方は全然楽しくないそれと一緒。もちろん俺は楽しくない。そこで楽しいなんて言ってみろ。もう変態だぞ。

 

「なんか楽しそうですね」

 

「そう? 私はいつも通りよ。なんか神山君を見てるとからかいたくなっちゃうのよね」

 

「なんすかそれ……。ほら、もうそろそろ時間じゃないですか?」

 

「あら…本当ね。じゃあまた後で会いましょう」

 

「は、はい」

 

 出来れば会いたくないと一瞬でも思った自分が居る。これ以上居たら俺がどうにかなりそうだもん。

 

 白鷺さんは鞄を持って部屋を後にした。最後まで見送った俺は、どっと押し寄せる疲労に思わず布団に寝転がる。

 

 正直すごい眠い。

 

 だけど寝てる場合でもない。俺にはやらなくてはいけない事があるからだ。今日こそあの人と決着をつけなければいけない。もう逃げるのは終わりだ。こんな日どころか、仲を戻そうなんて考えが出てくること自体が奇跡に近いような気がする。でも……戦ってるのは俺だけじゃないんだ。

 

「行くか……全てを終わらせるために」

 

 決意を胸にあの人が居るであろう部屋に着替えて向かった。撮影は昨日で終わったらしいからな。

 

 

 

 

 

 

 部屋の前に着いたが、すぐに入るという事は出来なかった。今の今まで喧嘩ばっかりしていたのに、急に謝りに来たらおかしい。俺ならおかしいって思うかも。それに今更って感じもするよな………。散々反抗してきたし、暴言だって吐いてきた。あの親父の事だから、軽い感じで許してくれそうだけどな。

 

 そう思ってもなかなかドアを開ける事は出来なかった。

 

「それでも……」

 

 今は進むしかない。

 

 覚悟を決めてノックした。

 

「どーぞ」

 

 中から聞こえたのはお母さんの声。ドアを開けると、2人で仲良くテレビを見ていた。ホント仲良いよな…あんた達。

 

「どうかしたの?」

 

「うん」

 

 お母さんに返事だけ返して、視線を親父に向けて言った。

 

「あんたに話があってきた」

 

「オレにか。なんのようだ? わざわざ喧嘩しに来たってか」

 

「違う。話があるって言ったろ」

 

 中に入って、ドアを閉める。俺が本気だと言うことに気付いたのか、テレビを消して俺の事を見据えてきた。

 

 緊張感漂う中、話を切り出した。

 

「白鷺さんから全部聞いた。どうして言ってくれなかったんだよクソ親父」

 

「何をだ?」

 

「とぼけんな。俺が居ない所では褒めておいて、居る所では褒めない」

 

 核心をついてるはずなのに、全く顔色1つ変えない親父。しばらく沈黙が続いた後、お母さんがもう耐えられないとばかりにクスクス笑い始めた。こっちは真剣なんだけど………。

 

「うふふ。もうこれ以上は隠せないわよあなた。全部話しましょう」

 

「そうだな。………お前から頼む。やっぱ無理だ」

 

 そうだなと言った割にはどこか恥ずかしそうにそっぽを向く親父。俺は殺意にも似た感情が湧き上がってくる。

 

 なんなんあのクソ親父。こっちは真剣なのにお前自信は話さないんかい!! 

 

「も~あなたったら。恥ずかしがり屋の所は変わらないんだから~」

 

「うるさいよ」

 

 俺は今非常に叫びたい。なぜ17にもなって親のイチャイチャを目の前で見なければいけないのだろうか。良い年の親2人だぞ? せめて俺の居ない所でやってくれ。

 

「で? 結局なんだよ」

 

「お父さんは、恵を褒めるのが恥ずかしかったのよ。雅史と違って物静かだったから、褒めたら怒るかなって」

 

「・・・・・なんだよそれ」

 

 じゃあ今の今まで勘違いしてたって事だよな? なんなんだよって事しかいえねぇんだけど………なんか気にしてたのバカみたいじゃん。じゃあ、入院した時に怒ったのはなんなんだ?

 

「なんで入院した時に心配してくれなかったんだよ」

 

「2人で話す機会がなかったから緊張してたのよ~」

 

「俺に相談しないで、アメリカ行き決めたのは?」

 

「ギターを頑張ってるあなたにもっと良い環境で頑張ってほしかったから」

 

 今まで疑問に思った事を質問すると、全てお母さんが楽しそうに答える。当の親父は俺と全く目を合わそうとしない。確かに昔から、家族の前で香澄みたいなタイプにツッコミをする時のようなテンションは見せた事がなかった。ん? じゃあ家族からはどう思われてるんだ?

 

「お母さんと親父は俺の事をどう思ってるの?」

 

「無口」

 

「寡黙」

 

「ただのコミュ症の人じゃん……。自分の息子なんだと思ってるんだよ」

 

 ため息を吐いて後頭部を右手で掻く。ようやく親父が口を開いた。

 

「悪かったな……。このままじゃダメだって思った。でもな~。普段から喋らない息子になんて声をかければ良いかわからなくてな。ダメな父親だよ」

 

「そうだな。こっちは深刻な問題だったのに勝手にアメリカ行きまで決められて、人が倒れたのに心配もしてくれなくて。ダメな父親だと思ったよ」

 

「うっ……」

 

 もはやダメと書かれた矢が刺さるのが見える。良い年にもなってイチャイチャしてる場合かよ。………でもなんだかな。

 

「………それが本心じゃなくて良かった。裏ではちゃんと心配してくれてたんだな。その……ありがとな親父」

 

「お、おう」

 

「良かったわね~。やっと長男が親父って呼んでくれるようになって」

 

 ん? それってどういう……。

 

「恵が小さい頃から、早く親父って呼ばれたいって言ってたのよ~」

 

「バカ! やめろって!」

 

 酒が回った時みたいに顔を真っ赤にしてお母さんを注意する親父。その姿があまりにも普段よ様子からはイメージ出来なかったからか、思わず笑ってしまった。

 

「なっ! 笑うなって!」

 

「はいはい。話はそれだけだから。じゃあ」

 

 わーわー言ってる親父を無視して、部屋を出た。

 

 結果的に仲直り出来た………のか? なんかあやふやになった感は否めないよな~。でも……仲直り出来たのは白鷺さんのおかげだ。後でちゃんとお礼言わないと。

 

「恵!」

 

 自分の部屋に戻る途中、呼び止められ後ろに振り返ると黒いギターケースを持った親父の姿がそこにあった。

 

「どうしたの?」

 

「遅い誕生日プレゼントだ。受け取れ」

 

 そう言ってギターケースを俺に差し出してきたのを素直に受け取った。受け取る物も受け取った事だし、部屋に戻ろうと振り返る。

 

「ちょ! ここで開けろって!」

 

「いや。通路だし重いし」

 

「いいからいいから」

 

 しつこいなーと思いつつギターケースを下ろして、チャックを開ける。そこには今まで見たことがない赤いボディのギターがあった。カタログをたまに見る事があるけど、少しも見覚えがない。そうなると答えは2つ出てくる。1つは俺の知らないギターなのか。2つ目は───

 

「特注で作ってもらったんだ。本当は去年の誕生日に渡そうと思ったんだけど~。いろいろあったから渡しそびれた」

 

「高かったんじゃないの?」

 

「バカ野郎。息子がここまで成長してくれたんだ。高いわけあるか」

 

 今まで喧嘩してたとは思えない程の笑顔で答える親父。あの出来事から初めて親父の事をすごいと思ったかもしれない。

 

「ありがと。大切に使うよ」

 

「ちっちっちっ。お礼を言うのはまだ早いぜ」

 

 なんかうぜぇ。まだお礼を言うのは早い…………。

 

 ふとケースを見ると、いつもと大きさが違っていた。もう1つのチャックを開けると今度は、これまた赤いボディのベース。

 

「そっちは高1の誕生日プレゼントだ」

 

「マジか」

 

 赤いギターと赤いベース。確かに赤色は好きだからすげぇ嬉しい。両方のチャックを閉じて、ケースを背負った。

 

「今度こそありがとう」

 

「おう!」

 

 再び自分の部屋に向かって歩き始めた。さすがに前よりは重たいけど、今は重いという感情よりも嬉しさの方が俺の心を満たしていた。どちらも特注品。世界に1つしかない俺専用のギターとベース。嬉しくないわけがない。

 

 部屋に戻ってから、白鷺さんが帰ってくるまでずっとギターとベースの調整や演奏をしてたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

────────☆

 

 今日の撮影は上手くいったどころか、大成功に終わった。物語のクライマックスでは相手の人とキスをするというシーンは一発でOKをもらえたし、他のシーンでも同じようにほとんど一発でOKをもらえたわ。やっぱり神山君に話を聞いてもらえたのが良かったのかしら? 何にせよ彼には感謝しないと。

 

 昨日とは明らかに違う、軽い足取りで旅館の部屋に戻ると彼はヘッドホンをして赤いボディのギターを弾いていた。すごい集中力なのか帰ってきた私に気づかない程。

 

「ふふっ。仲直り出来たのね」

 

 去年見せてもらった彼へのプレゼントの特注した赤いボディのギター。結構値段は張ったけど、息子へのプレゼントに金を渋るかよって………強気に言ってたのが懐かしいわね。それにしても。

 

「赤ばっかり」

 

 ギター、ヘッドホン、スマホ、時計、Tシャツ。身の回りの物が殆ど赤。それも哲夫さんが言ってたわね。赤へのこだわりは半端ないって。そのうちズボンまで赤くなりそう。

 

 集中している神山君に少しイタズラしてみようかしら。せっかく帰って来たのにその態度は少し気に入らないし。……冗談だけどね。

 

 

 

 

────────☆

 

 結構難しいな………しゅわりん☆どり~みん。楽譜無しでやってる俺がアホなんだろうけどさ。出来たらすごいじゃん? 全部が全部合ってるわけじゃないけど。…………さて。考えるのはここまでにして続きを。

 

 いざ弾こうとするが急に目の前が真っ暗になった。この感触は手だ。そしてヘッドホンをしているから声がなかなか聞こえない。ギターから手を離してヘッドホンを外し、首にかける。

 

「だーれだ」

 

「いやいや。1人しか居ないでしょ」

 

「わからないわよ? もしかしたら声のそっくりさんかもしれないわ。それにこれは夢って可能性も捨てられない」

 

「夢? 確かにあの白鷺千聖さんに、ありきたりなイタズラをされるなんて有り得ないと思いますけどね」

 

 じゃあこれは夢? ・・・・・んなハズはないだろ。ん~最後の最後までやられっぱなしってのも気分が悪いな。…………ちょっーと勇気を出してみますかね。

 

「夢……って事なら」

 

「なら?」

 

 一旦目隠しを解いてもらい、ギターを下ろす。そして振り向いて一気に白鷺さんを押し倒した。いきなりの事に彼女も驚いている。そう言う俺も俺で驚いている。

 

 しっかりと両手で白鷺さんの両手を抑えて話かけた。

 

「これ以上先に進んでも大丈夫ですよね? “夢”なんですから」

 

 どうだどうだ。イタズラとは言えなかなか勇気を出したと思わないか?

 

 心に若干しかない余裕の中、じっと彼女を見つめる。あの時の夜みたいに心臓が早鐘なように動いていた。

 

「そうね……いいわよ? あなたがしたいなら」

 

 頬を赤く染めてそっぽを見ながら言う白鷺さんに思わず、「え?」と間の抜けた声が出てしまった。

 

 待て待て! なんで本気にしてんの?! そっちはイタズラじゃなかったのか?! このままだと非常に非常にマズい事になってしまうぞ。早いとこネタばらしを。

 

「じょ、冗談! 冗談! 俺にんな勇気ないです!」

 

 急いで離れて土下座。こんな所で土下座をする事になるとは………。全部俺が悪いんだけども。

 

「ふふっ♪ 引っかかったわね」

 

 白鷺さんは起き上がると同時にそう言った。

 

「へ? それって………」

 

「どお? 主演女優の演技は」

 

「・・・・・・洒落にならねぇよ」

 

 どうやら罠にはまったのは俺の方らしい。全部嘘で、勝手に自滅したのも俺。これはあれだ。冗談で告白して、OKもらった時と同じ気持ちだ。された事ないけど。じゃあわからないって話だ。何言ってんの俺。

 

 1人テンパっている俺の様子を見てクスクス笑っている白鷺さん。元はと言えば全部あんたのせいや。

 

「本当に面白いわね。神山君は」

 

「褒め言葉ですか? それは」

 

「一応褒めてるつもりよ」

 

 どこら辺が面白いのかは皆目見当つかないけど、俺は褒められている。ふと時間を確認するともう夕方を過ぎようとしていた。

 

「ねぇ……神山君」

 

「なんですか?」

 

 急にさびしそうな表情を浮かべて俺に視線を向けてくる。

 

 

 

 

 

「一緒にお風呂入らない?」

 

 

 

 

 

「はい?」

 

 急に爆弾発言をしてきたのだ。これはどう捉えればいいの? 一緒にお風呂ってもうダメなやつじゃん……。お風呂で男女2人ってねー? 思春期真っ只中の男の子とお風呂はいけないよ。

 

 

 

 

 

 

 と、まぁ結果は混浴という方法でした。ここの旅館は男女で入れる露天風呂が設けられていて、体を流した後、露天風呂に通じるドアを開ければ行けるらしい。カップルとかじゃないかぎりあんまり行かないらしい。

 

「はぁー。本当に来ちまったけど良いのかな……」

 

 頭と体を洗った後、屋内の湯船ではなく外の露天風呂へとやってきた。いつ白鷺さんが来るのかとドキドキはしつつも、先に湯船に浸かって空の景色を眺めている。綺麗な星が散りばめられていて満点の星空に思わず見とれてしまった。

 

「綺麗だな~」

 

「そうね~」

 

「え?」

 

 急に白鷺さんの声が聞こえたので振り返ろうとしてしまったが、瞬時に風呂=と考え死なずに済んだ。

 

 ちょうど俺の居る位置は真ん中ら辺で、ちゃぷっと俺の元に迫ってくる音が聞こえる。すると俺の背中に寄りかかるように座ったのだろうか人の背中の感触が伝わってきた。

 

「待った?」

 

「全然待ってません」

 

「ふふっ。緊張しなくても大丈夫よー、後ろに振り返らなければ」

 

「確かにそうですけど……」

 

 俺は今、白鷺千聖と一緒の風呂に入ってると考えただけで鼻血もんだが、なぜか緊張からは解放されつつあった。なぜだかは俺にもわからない。

 

「今日の撮影はどうだったんですか?」

 

「神山君のおかげで上手くいったわ。昨日とは違い過ぎて周りの人、みんな驚いていたのよ」

 

「マジすか。やっぱりすごいですね。白鷺さんは」

 

 俺がそう言ったが、返事が返ってこなかった。疑問に思いつつも空を眺めてゆっくり待った。時折、お湯を肩にかける水音が聞こえる。

 

「最後に……お願いを聞いてくれる?」

 

「内容によりますが……出来るだけ頑張ります」

 

「じゃあ…今夜だけは恋人の関係で居てくれない?」

 

「………それってどういう」

 

「そのままの意味よ。今夜だけ付き合って…けい」

 

 彼女の言葉にはどこか寂しさを感じた。

 

 唐突に告白されたようなもんだが、なぜ今夜だけなのだろうか。それも気になるが、彼女の最後のお願いというのが妙に引っかかる。確かに明日の朝にはお別れだけど、永遠ってわけじゃない。…………今夜だけか。

 

 それなら約束を破った事にはなら、なるか。でも、一瞬だけ破らせてくれ。そんな寂しそうな声でお願いされちまったら、誰も断れねぇよ。

 

「今夜だけ……な。千聖」

 

「ありがとう。少しだけ顔を横に向けてくれない?」

 

「こうか?」

 

 少しだけ右を見る。もちろん真後ろに居るしら…千聖は見えない。いったいこれで何を───

 

「大好きよ、けい」

 

 大きな水の音が聞こえたかと思った刹那。俺の視界には千聖の顔が映った。

 

 

 

 

──────☆

 

 本当は彼を好きになってはダメなのに……それでも好きになってしまった。このドラマが成功すれば、今以上に忙しくなるとマネージャーさんに言われたの。だから遊んでる時間。勉強する時間がぐんと減る。

 

 せっかくの高校生活で青春? しないのも、もったいないわよね。それに私の通う学校は女子高。男の人との出会いなんてほとんどないわ。

 

 だから今、身近かに居る彼でいい。なんて考えで彼にお願いしたわけじゃない。

 

 

 

 

 普通に彼を好きになってしまったから。会ってまもない私を本気で心配してくれる優しいけいを

 

 

 

 

 今だけは……わがままを言わせてください。

 

 




恵「なんでこんな内容になったの………?」
作者「いや~。こういう内容書いたことないから、そろそろ書いてみようかと」
恵「俺が実験台と?」
作者「まぁそうなるよね(真顔)」
恵「おい!」

どういう感想が来るのか楽しみです。

それではいつかまた。



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