重々しい金属質の足音が近づいて来る。
全身鎧の騎士は振り上げた腕を勢い良く目の前の草むらに突き刺し捕らえた者をゆっくりと持ち上げた。
もちろんオレだ!
オレをそっと下ろし、踵返して立ち去って行くUndyneを見送りながら感動で打ち震える。
触ってもらえた......
Undyneに......触ってもらえた......!
興奮のままに草むらから飛び出すとヤツがいた。オレのこの気持ちを聞いてくれ!
「よう......今の見てくれた!? Undyneが......オレのこと触ってくれた! オレ、もう一生この顔洗わない......!!」
「............良かったね」
少し呆れたような、安心したような、そんな声で笑いながらそう言ったヤツを、オレはその時になってようやくちゃんと見た。
ヤツはたくさん怪我をしてて普通に動けてるのが信じられない有様だった。
「うわっ! オマエどうしたんだよその怪我!? ボロボロじゃん!」
「いや、ちょっとね......」
オレはわかってるつもりだった。でも本当にそれはつもりでしかなかった。
コイツは常に傷つき、時に死にながら進んでいるのだ。洞窟の終わりを目指して。
悪いことをしていようがしていまいが人間だってだけでモンスター達にボコボコにされながらずっと1人で歩いて行くんだ。
それはとっても痛くて苦しいことだ。
なのにコイツは笑ってる。嫌なことなんて何もないみたいに。大したことじゃないと言わんばかりに。
それってめちゃくちゃすごいことだ。
そんなすごいヤツを......Undyneはぶちのめそうとしてる。いくらみんなの願いを叶えるためでも、それってなんか間違ってるんじゃないか?
いけね、考えるより先にコイツの怪我どうにかしねーと。
「よう......大丈夫か? ごめんな、オレ今食い物持ってねーんだ。この先に休憩出来そうな場所があるからとりあえずそこまで行こうぜ。歩けそうか? 肩貸すよ」
「大丈夫だよ。動くのに支障はないから。......心配してくれてありがとう」
「これくらいトーゼンだって! へへ」
ヤツと一緒に次の部屋に行くとテーブルの上にクリスタルに取り込まれたチーズが置いてあった。誰が置いたんだろうなこれ。
「ああ、良かった。あった」
そう言って部屋の真ん中辺りの壁にヤツが手をかざすとみるみるうちに怪我が治っていった。
いや、治るというより巻き戻って怪我をしたこと自体が無かったことになってんのか? 血のあととかも綺麗さっぱり無くなってる。
「すっげー!! すごいなその魔法! すっかり元通りじゃん! Woshua呼んで来ようかと思ってたけど必要なかったみたいだな。へへ」
「魔法......なのかな? まあ、便利だよ。原理はわからないけど。......ほら、ぼくはもう大丈夫だからきみは先に行きなよ。Undyneを追いかけるんでしょ?」
その言葉を聞いて閃いた。
そうだ! オレが今から走って行ってUndyneにコイツは悪いヤツじゃなくてすごいヤツなんだって教えたらいいんじゃね!?
「よう、それじゃあオレは先に行くけどオマエも気をつけて来いよ!」
よっし! 全力で急ぐぜ! いてぇ!
「......ぼくは会いたくないんだけど、そうもいかないだろうなぁ」