その存在を忘れられた者や物がたどり着く最後の楽園、幻想郷
此処では人間だけでなく、妖怪、幽霊に神や神霊、妖精などの現実ではその存在を認識することのない生き物たちがこの幻想郷で生活をしている
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8月23日
蜃気楼で景色が揺らぐ夏の暑い日差しの中、人里から妖怪の山方面へ続く峠道
その峠道沿いにある小さな集落
その集落から少し離れた雑木林の中に紅く大きなリボンを頭につけ、紅白の巫女服を着た14.5歳の少女と、齢90近い顔が皺だらけ、白髪頭で茶色のちゃんちゃんこを羽織ったいかにも長老風な杖をついた老人が辺りを気にしながら少女と向かい合って話をしていた
老人『博麗の巫女様…どうか…』
皺だらけの老人が縋るように言う
少女「…あなたたちの話はわかったわ、私は博麗の巫女としてあいつを…退治する」
老人から目を背け、腕を組みながら少しツンとした話し方で返答をする巫女服の少女
老人は何も言わず深く深く頭を下げる、その表情は見えない
少女はその老人の姿に一目向けるとまた目を逸らし静かに空へ上がる
少女の名前は博麗霊夢
妖怪退治だけでなく巫女として祈祷、祝詞、地鎮祭を生業とする博麗神社の現当主である。
この少女、霊夢と数人の少女達の活躍により、吸血鬼の少女や、亡霊の少女、月のお姫様等が幻想郷で起こした数々の異変を解決してきた。
今回、この峠道沿いの村で妖怪が迷惑をかけているとの一報が入り、こうして様子を見に来ている。
霊夢「…今回は異変って程では無さそうね」
雑木林の上空から村へ飛んでいく霊夢
空から集落を見るが、襲われている人がいるなど特に問題があるようには見えない、人里ほどではないが集落にしては少しばかり広めの土地、民家は12軒ほどが集落の広場を中心に建てられており広場の真ん中にはやぐらがある、畑は多く農作業をしているおばあさんもいる。
集落周りは簡単な柵で仕切られており、妖怪なら簡単に侵入出来そうではある。
霊夢「…!あいつかしら…」
集落の広場にあるやぐらに注目する。
やぐらの屋根の上に誰かいる。
広場へ降りる霊夢
やぐらといっても地上3階くらいの高さで、集落全体を見れるかくらいの高さである。
そのやぐらの屋根の上に右膝を立てて左足をだらんと垂らしながら座っている少女がいる。
その少女に向けてやぐらの根元にいる霊夢が人差し指を少女に向け話しかける。
霊夢「あんたね!この村に迷惑をかけてる妖怪ってのは!」
少女「…!」
妖怪と言われる少女が霊夢に気づき顔を霊夢に向けるわ
少女「…誰?」
妖怪少女の顔は太陽からの逆光で見えない
霊夢「…私は博麗霊夢、あんたを退治しに来たの」
多少太陽が眩しいのか霊夢は妖怪を指してた右手で瞼の上で即席のサンバイザーを作りながら妖怪少女に向けて言う
少女「…退治…」
妖怪少女は口元に人差し指を持ってきて考えてから
少女「ウチ、何かしたっけ?」
頭を右に傾けて話す妖怪少女
少し騒ぎになったようで民家から何人か出て来た。
村人「なんだなんだ?」
村人「博麗の巫女様…?」
霊夢「…っ!」
民家から出て来た村人を見て少し眉間にしわを作る霊夢
少女「あ〜…そっかそっかぁ…」
間の抜けた声がやぐらから聴こえる
少女「おねえさんがハクレイのミコなんだ〜…」
妖怪少女がけらけらと笑いながら霊夢に向けて声を放つ
少女「…よっと……じゃあウチと遊ぼう?」
妖怪少女がやぐらの屋根の上に立ってから言う
霊夢「…さあ、かかって来なさい!」
構える霊夢
霊夢の立つ広場にゆっくりと舞い降りる妖怪少女
様子を見に集まってくる村人達、あの老人もいる
————チリィン
鈴の音が鳴ったと思ったら不思議な匂いがしてきた
霊夢「…!?」
少女「…それじゃあ、素敵な夏の思い出を……」
妖怪少女を睨む霊夢
これは夏がもうすぐ終わる時期の少女達のお話
————————東方香靈記