東方香靈記   作:114

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前田慶次に続き、2人目の外来人編です


第2章 鉤十字と唐傘
第10話「我が逃走」


8月25日

 

 

(…私は覚えている…)

 

 

私はベルリンにいた…20分ほど仮眠を取ると言ってソファに腰掛け、目を瞑った…

 

 

…目を開けると草原の真ん中に座り込んでいた…

 

 

 

「…どこだ…ここは…」

 

 

 

上下焦げ茶のスーツ、黒髪の七三分けの髪に鼻髭を蓄えた中年男性がそこにいた

 

 

 

「…ドイツ…か?」

 

 

 

男はその場で立ち上がり、きょろきょろと景色を見る

 

 

 

(フランス?

いやいや…こんな湿気じみた草原があるか?

それよりも…)

 

 

 

「暑い…なんだこの日差しは…まだ4月なのに真夏のようだ…」

 

 

 

男は上着のボタンを外し、その上着を脱ぐ

 

 

 

「んー…あぁ、小屋がある」

 

 

 

(遠くに掘っ建て小屋が見える…まずはそこに行こう)

 

 

 

男は小屋に向かって草原を歩き出す

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

太陽の直射日光が空から照らし、暑さで景色が揺らぐ中、20分ほど歩いただろうか、小屋の前に辿り着いた

 

 

 

「ふぅ…喉が乾いたな…どれ…」

 

 

 

ドンドン

 

入口の扉をノックする

 

 

あまり強く叩くと壊れそうな木の扉

 

 

溜息を吐き、呟く

 

 

「留守か…」

 

 

 

そっと取手に触れる

鍵が閉まってない…

 

 

 

「不法侵入…緊急事態だ、仕方ない」

 

 

 

引き戸を開けると中は壊れた家具でぐちゃぐちゃに散らかった廃墟だった

 

男は持っていた薄紫色のハンカチで口元を抑える

 

 

 

「随分埃っぽいな…」

 

 

 

入口に倒れてある傘をまたぎ、中に入る

 

壁に日めくりのカレンダーがある

 

 

 

「…7…24…7月…?そんな馬鹿な…というより…」

 

 

 

パラパラとカレンダーをめくる

 

 

 

(このカレンダーの文字…ドイツ語ではないが読める…!

…中国…いや、日本語か…?どういう事だ??

何故日本語がこんなにわかる…?)

 

 

 

 

「訳がわからん…」

 

 

 

男は部屋の壁にもたれ掛かる、その時

 

ガラガラガラッ!

 

もたれかかった壁が崩れる…

 

隣の部屋に崩れた壁と一緒に倒れる

 

 

 

「ぐぁぁあああっ!」

「ひゃぁぁああああー!!」

 

 

 

ん?

女の子の悲鳴?

 

壊れた家具の上に起き上がり

声をした方を見る

 

少女がうつ伏せで倒れている

 

 

 

「だ、大丈夫か?」

 

 

 

男が近づくと少女は飛び起きた

 

 

 

少女「ひゃぁぁあああ!ご、ごめんなさいぃぃ!」

「…んん!?」

 

 

 

少女「誰もいないと思って勝手に入ってごめんなさいぃぃ!」

 

 

 

襟と袖にフリルのついたブラウスは白く、少し癖っ毛の水色のショートの髪、ブラウスの上に着た水色のチョッキ、膝下までの水色のスカート

 

右目が水色で左目が真っ赤なオッドアイを持つ年頃14.5歳位の少女が泣きそうな顔で座り込んで男に謝っていた

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

 

…この少女、家主では無いのか…

 

 

 

「いや、私の方こそ驚かせてしまってすまない…怪我はないか?」

 

 

座り込んでいる少女に手を伸ばす

手を取り立ち上がる少女

 

 

少女「え?…うん…」

 

 

 

涙目で答える少女

 

(…日本人…のようではないな…

どちらかと言えば白人の様な顔の作りに見えるが…)

 

 

 

「…君は?」

 

 

 

少女「私は…小傘、多々良小傘…」

 

 

 

「…タタラ、コガサ…」

 

 

 

小傘「小傘でいいよ!」

 

 

 

「私はアドルフだ」

 

 

 

小傘「変わった名前だねぇ〜」

 

 

 

ふわふわした雰囲気の少女、小傘がニコニコしながら言う

 

 

 

アドルフ(言葉も通じるし、コミュニケーションも取れる…なら)

 

 

 

アドルフ「小傘、聞きたいのだが…近くに空港はないか?もしくは波止場…船の出る港など無いか?」

 

 

 

焦りを悟らせない様に冷静に問うアドルフ

 

 

 

小傘「…?くうこう?はとば?」

 

 

 

アドルフ「ひ、飛行場でもいい!」

 

 

 

小傘「???」

 

 

 

首をかしげる小傘

 

アドルフ(…まさか…飛行機や船のない国に来てしまったのか…?)

 

 

 

アドルフ「…小傘、ここは何という国だ?今は西暦何年だ?」

 

 

 

小傘は渋い顔をしながら

 

 

 

小傘「せ…せいへき…??」

 

 

 

アドルフ「いや、もういい…ここは…何処なんだい?」

 

 

 

小傘の顔がパッと明るくなり

 

 

 

小傘「ここは幻想郷だよっ!」

 

 

アドルフ(…げんそう…?)

 

 

小傘「多分おじさんは外来人じゃないかな?」

 

 

 

聞き慣れない言葉に戸惑うアドルフ

 

 

アドルフ「外来人…私が…」

アドルフ(何を…まさか超能力か?いや、聖遺物に手を出そうとしてた罰で飛ばされたのか…はたまた此処がシャンバラなのか…うむ…わからん…)

 

 

考えていると小傘が顔を覗いてくる

 

 

 

小傘「おじさん…大丈夫?」

 

 

アドルフ「ん、ああ…大丈夫だ」

 

 

小傘「ところで…この家の近くで傘、見なかった?紫色の唐傘なんだけど…」

 

 

アドルフ「カラカサ?」

 

 

 

あっ、と思い出し、家の入り口まで歩くアドルフ

 

 

アドルフ「…これかな?」

 

 

アドルフが家に入る時に跨いだ傘を拾う

 

 

 

小傘「あーっ!あった!そうそうそれ!」

 

 

ガバッとアドルフから傘を奪い取る小傘

 

 

 

アドルフ「…」

 

 

 

嬉しそうに室内で傘を広げる小傘

 

 

 

小傘「〜♪」

 

 

 

アドルフ「…大事な物なのかね?」

 

 

小傘「うん!無くしたと思ってずっと探してたんだっ!ありがとうおじさん」

 

 

 

純粋で、可愛らしく優しい笑顔だった

 

アドルフ(子供の笑顔…か…)

 

 

 

アドルフ「最近…見てないな…」

 

 

 

1人呟くアドルフ

 

 

小傘「ん?」

 

アドルフ「いや…見つかって良かったじゃないか」

 

 

小傘「私の命そのものだからね」

 

 

 

アドルフ(大袈裟な…)

 

 

 

小傘「あっ!そうだ!」

 

 

 

小傘がなにかを思いついたように声を出した

 

アドルフ(コロコロとよく表情が変わる子だ)

 

 

小傘「おじさんを人里まで案内してあげるよ!」

 

 

アドルフ「人里?」

 

 

 

小傘「うん、いろんな人がいるし、おじさんの事を知ってる人がいるかも!」

 

 

アドルフ「良いのかい?」

 

 

 

小傘「傘を見つけてくれたお礼だよっ」

 

 

 

アドルフ(人里というくらいだからそんなに大きな都市ではないだろう…私のことを知っている人間もいないかもしれんが…)

 

 

 

アドルフ「じゃあ、お願いしようかな」

 

 

小傘「まっかせて!」

 

 

 

アドルフと小傘は空き家を後にする

 

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