8月24日
寅の刻、白玉楼妖夢の自室
妖夢「ん…むむむ…うーん…」
布団の中で妖夢は少しうなされていた
妖夢の浴衣…主に足元の部分がはだけるような感覚がする
妖夢「…ん…」
更に胸元の生地もはだけたような気がする
妖夢「…んがっ……はっ!?」
妖夢は飛び起きる
妖夢「……」
下半身の布団をめくると桃色の髪の自分の主人が自分の浴衣をはだけさせていた
幽々子「…おはよう、妖夢♡」
妖夢はわなわなと震え
妖夢「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ…幽々子…様?」
幽々子「やーねぇ…ゆ、が多いわよ?」
どすっ
数分後、頭に緑のリボン、いつもの緑のスカートとベストに着替え、背には楼観剣を、腰に白楼剣を紐で持った妖夢がお餅のような見た目の半霊を周りにふよふよ漂わせながら自分の布団を畳んでいた
その後ろにはおでこを赤くし、涙目の浴衣姿の幽々子が正座をしていた
幽々子「普通主人のおでこにチョップするぅ?」
おでこをさすりながらぼやく幽々子
妖夢「もう…2日連続でやりますか?普通…」
幽々子「妖夢を…立派な女にしようと思って…」
少し赤くなりながら流し目で妖夢を見る幽々子
妖夢「…そーゆーの良いですから!」
襖を開け外に出ようとする妖夢
幽々子「あら、妖夢?」
妖夢「…朝の…鍛錬に出てきます…直ぐに戻ります」
幽々子「…本当にお固いわねぇ…」
ーーーーーーーー
白玉楼から長い石段を降りた大きい池の近くの森
此処は常に霧が出ており、死者の魂がふよふよと漂っている少し不気味な雰囲気の森である
石段の麓にて妖夢は剣の素振りをしていた
妖夢(全く…幽々子様ったら…)
妖夢(なんだってあんなイタズラを…)
妖夢「!?」
妖夢は白玉楼とは違う方を見る
この気は…
妖夢「…人間…?」
妖夢はザザっと駆けだす
半人半霊の妖夢にとって冥界ほど動きやすい環境はない。嫌な空気を感じた方角へ大急ぎで向かう
妖夢「…!あれは…!」
木々の間に見える光景で瞬時に状況を理解する
誰かが襲われている
妖夢は背から楼観剣を抜刀し、目標の場所に脚を進める
妖夢(やはり人間…!?その前には…)
目標の場所…森の中の少し開けた所に人が1人尻餅をついており、その前に二体、黒いモヤのようなものが近づいていた
妖夢(…怨霊!?)
少女「だ、だれか…」
妖夢は高速で片方の怨霊を切りかかる
妖夢「…はぁぁっ!」
更に身体を捻り回転しながらもう一体の怨霊にも切りかかる
散布しながら消え去る怨霊
妖夢「ふぅ…」
抜いてた楼観剣を背の鞘に納める
妖夢「大丈夫です…か…?」
妖夢は尻餅をついてる少女の方を見る
白い肌、長い白寄りの銀髪、白いワンピースを着たまさに天使と言える純白という言葉をそのまま人にしたような妖夢と見た目同年代の少女がいた
妖夢(ぅわ…凄い綺麗…)
少女に見とれる妖夢
少女「あ、ありがとう…ございます」
少女は怯えながら妖夢にお礼を言う
妖夢「あ、いや…えーと…あ、貴女は一体?」
少女「私は…ジャンヌ…」
妖夢「…え?」
少女は妖夢の眼をしっかり見て
ジャンヌ「ジャンヌ……それ以外は何も覚えていなくて…ごめんなさい」
妖夢「いや…いやいや…とにかく、ここよりもゆっくりお話しできる場所があるので…歩けますか?」
ジャンヌ「は、はい…」
ジャンヌは立とうとするが腰が抜けたのか立てないでいる
妖夢「…どうぞ」
妖夢はジャンヌに手を差し出す
ジャンヌ「…」
ジャンヌは頰を赤くして妖夢が差し出してくれた手に自身の手を乗せる
ジャンヌ「ありがとう…ございます」
妖夢(…天使のようだ…)
ーーーーーーーー
白玉楼広間
命蓮寺、守矢神社などと同じく和風の広い部屋の真ん中、座敷テーブルの上に置いたお煎餅の入ったお皿から一枚取り食べている薄桃色の着物を着て、天冠を縫い付けた布頭巾を被った桜色の亡霊お嬢様と、テーブルの向かいに座る妖夢とジャンヌが居た
幽々子「あらあら…道に迷っちゃったの?」
幽々子は美味しそうにお煎餅をかじる
ジャンヌ「…危ないところを助けていただき、ありがとうございます」
ジャンヌは畳に両手をつき姿勢正しく妖夢にお辞儀をする
妖夢「いや…あははは…運が良かったですね!はい…」
妖夢は両手をわたわたとさせながら笑いながらジャンヌに答える
ジャンヌ「私…ジャンヌと言います…失礼ながら名前しか覚えておらずそれ以外の記憶はちょっと…」
幽々子「あら、大変ねぇ…」
ジャンヌ「…失礼ながらお二人のお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか…?」
幽々子は優しい微笑みでジャンヌを見て
幽々子「西行寺、幽々子よ…気軽にゆゆたんって呼んでね」
ジャンヌ「幽々子様…よろしくお願いします」
幽々子「…と言うよりもここまで来るのに挨拶もしてないの?妖夢」
幽々子はジト目で妖夢を見る
妖夢「ぇえっ!?…そうでした…私ったらすっかり忘れてました…」
妖夢は隣のジャンヌに身体ごと向き直り
妖夢「魂魄妖夢です…ここ白玉楼で庭師と幽々子様の剣術指南をさせてもらってます」
妖夢の眼を見て自己紹介を聞いていたジャンヌはまた頰を赤くして妖夢から眼を逸らし
ジャンヌ「妖夢…様…」
幽々子「…」
妖夢「よろしくお願いしますね!」
妖夢はジャンヌにニコッと笑う
幽々子「…えーと…妖夢は鍛錬に出てたのよね?」
妖夢「はい?そうですが?」
キョトンとした顔で答える妖夢
幽々子「で、ジャンヌちゃんが怨霊に襲われてるところを颯爽と助けたと…」
妖夢「…さ、颯爽って…まぁ、そんな感じ…ですね」
幽々子「ふぅぅううん…」
幽々子は怪しい笑顔でジャンヌを見る
幽々子から眼をそらすジャンヌ
ジャンヌ「…」
妖夢「え?え?え?」
妖夢は幽々子とジャンヌの顔を見る
幽々子「まぁ良いわ…」
ホッとするジャンヌ
幽々子はジャンヌにビシッと人差し指を指し
幽々子「ジャンヌちゃん!貴女!しばらく妖夢と行動を共になさい!」
妖夢「…は?」
ジャンヌ「…!?」
困惑する妖夢と少し嬉しそうに 反応するジャンヌ
妖夢「幽々子様!なんなんですか!?お煎餅の食べ過ぎで脳みそ割れたんですか!?…ってゆーか行動を共にってどーゆーことですか!?」
変な方向にテンションが上がり、思わず立ち上がる妖夢
幽々子「まーまー、落ち着きなさいよおかっぱ頭ちゃん」
両手でどうどうと妖夢を落ち着かせる
幽々子「貴女…ジャンヌちゃん?…自分が何者かもどこから来たのかもわからないんでしょ?」
ジャンヌ「…はい…」
幽々子「ならしばらく白玉楼に居なさいな〜」
妖夢「え、いや…良いんですか?幽々子様…」
幽々子「別に1人くらい増えたところで問題ないでしょう?…家事やるのは妖夢だし」
妖夢の顔が固まる
ジャンヌ「し、しかし…そこまでご迷惑をおかけするわけには…」
ジャンヌの言葉を聞いた幽々子は冷たい表情と声で
幽々子「じゃあ此処を出て行く?…また怨霊に襲われて…今度こそ貴女…」
ジャンヌ「…うぅ」
妖夢「…ジャンヌさんのこと…紫様にご相談した方が良いのでは…?」
妖夢の言葉に幽々子は両手を上に上げ欠伸をしながら
幽々子「ふぁ〜…いーのよ…ほっときなさい妖夢」
妖夢「え?」
幽々子「紫は紫で忙しいでしょう…っていうか私をハブったこと許さないし」
黒い幽々子が出てきた
妖夢「は、はぶ?…え?」
幽々子「とにかく…私は此処に居た方が良いと思うわよ?」
幽々子はジャンヌに優しく微笑み
幽々子「…ねぇ?ジャンヌちゃん?」
妖夢「…」
妖夢は幽々子とジャンヌを見て
妖夢「…あの…ジャンヌさんさえ良ければ…少しの間白玉楼に居ませんか?」
ジャンヌ「…え?」
妖夢は頰をぽりぽりと指でかきながら
妖夢「…あ、いやー…ついでに家事の手助けをお願い出来たらなー…なんて思ったりして…」
妖夢(記憶喪失のまま外に出てってもらうのもなんだか後味悪いし…)
ジャンヌは妖夢の手を両手で握り
ジャンヌ「よ、よろこんで!よろしくお願いします!」
幽々子「…(ナイス判断ね、私)」
妖夢「ん…」
妖夢は握られた手をじっと見る
ジャンヌ「あ…ご、ごめんなさい…」
ジャンヌ、慌てて手を離す
妖夢「では…この白玉楼を案内するので…どうぞこちらへ」
妖夢は幽々子の後ろの襖へ歩き出す
ついて行くジャンヌ
妖夢が廊下へ続く襖を開けた時
ジャンヌ「…ぅあっ!?」
ジャンヌの声がして後ろを振り向く妖夢
ジャンヌはしゃがみこみ、その背には幽々子が立っていた
妖夢「幽々子様…?何を…?」
妖夢は幽々子の顔を見て一瞬血の気が引く
そこに居たのはいつも見るぽやぽや雰囲気の幽々子ではなく…
いつかの西行妖の異変時に見た、感情の無い表情をした幽々子がジャンヌの背に立っていたのだ
ジャンヌ「…ぅ」
妖夢「…ゆ…」
ぱっと幽々子の表情がいつも通りのぽやぽやな顔に変わった
幽々子「ちょっとちょっとー!大丈夫!?ジャンヌちゃん!?」
しゃがみ込んだジャンヌを心配して目線をジャンヌに合わせてしゃがみこむ幽々子
幽々子がジャンヌの両肩を優しく後ろから支え一緒に立ち上がる
幽々子「大丈夫?」
ジャンヌ「は…はい…すいません…なんだか一瞬背中の力が抜けたようで…」
ジャンヌは立ち上がる
ジャンヌ「もう大丈夫です!ありがとうございます。幽々子様」
妖夢「…」
幽々子「もー、無理しちゃダメよ〜」
ジャンヌは幽々子に一礼し、妖夢に向き直る
ジャンヌ「…妖夢様?」
妖夢ははっとする
幽々子「妖夢!ちゃんと見てあげなきゃ駄目よ?」
妖夢「は、はい…じゃあ…行きましょう、ジャンヌさん」
ジャンヌ「はい!」
ーーーーーーーー
妖夢とジャンヌは部屋を出て、襖がしまる
1人部屋に残る幽々子
幽々子は座っていた座布団に再度座り
幽々子「…なんて者を呼び寄せたのよ…」
幽々子は縁側から見える桜の木々を見つめながら
幽々子「…紫…」
ーーーーーーーー
それから…私はジャンヌさんに白玉楼を案内した
…多分…ジャンヌさんは外来人じゃないかな…少なくとも妖怪や神ではないと思う…
白いワンピースだと色々困ると思ったから、私が着てる緑のベストとスカートの予備を着てもらった
流石に頭のリボンは無いけど…
私と同じ格好なのに私よりもなんというか…似合ってる、って言うのかな…
やっぱ美人だとどんな格好しても…
妖夢「…綺麗…」
ジャンヌ「よ、妖夢様!?」
妖夢「ぬっ!?…あ、いやいや…ははは…」
うわわ…変なこと言っちゃった…
…突然ジャンヌさんに向かって綺麗、なんて言ったら変な風に…ほらぁ…
赤くなっちゃった…恥ずかしいのはこっちなのに…
妖夢「すす、すいません…つい見惚れて!」
ジャンヌ「いえ…」
だまっちゃったよ!
どうする私!?
ーーーーーーーー
その後ジャンヌは妖夢、幽々子と朝食を共にとり、妖夢と洗濯、洗い物、掃除、昼食など、その日の夕方まで共に過ごした
白玉楼、台所
昭和初期の様な木造りの台所にて、妖夢とお揃いの割烹着姿で料理の手伝いをするジャンヌ
2人は和気藹々と調理を進める
妖夢「じゃ次は大根をいちょう切りにお願いします」
ジャンヌ「はい!」
ふと妖夢が思い出したかのように
妖夢「いやー…しかしジャンヌさんって結構食べられるんですね!」
ジャンヌの動きが一瞬止まる
ジャンヌは両手で自身の顔を隠し
ジャンヌ「お、お恥ずかしいです…」
妖夢は自分の記憶の中の光景を思い出す
朝食、恐らくまだ緊張していたのであろう、少し少なめの食事で済んだ。
しかし問題は昼食だった
ーーーーーーーー
昼食時
幽々子「いっただっきまーす!」
妖夢&ジャンヌ「頂きます」
幽々子の前には和食、洋食、中華など大量の食べ物、対して妖夢とジャンヌにはお茶碗一杯の白米、お麩とほうれん草の味噌汁、たくあん、人里で買った魚を焼いたものと、ごく一般的な量だった
幽々子「妖夢!おかわり!」
妖夢に丼を差し出す幽々子
妖夢「早っ!幽々子様!まだ私一口目食べてません!」
幽々子「だってもう無いんだもの…」
妖夢「…全く…ジャンヌさんからも何か…」
妖夢は横に座っていたジャンヌに視線を向ける
妖夢「…言って…」
そこに居たのは自分と同じ服装をした金髪美女が頭を下げ両手でお茶碗を妖夢に差し出している光景だった
妖夢「…え?ジャンヌさん?」
ジャンヌ「すいません…わ…私も…お願いします」
妖夢「…はっ!」
妖夢は自分の直感を信じ、直ぐに台所へ向かう
帰ってきた妖夢は両脇に白米の入った飯櫃を2つ抱え戻ってきた
妖夢「…こちら…幽々子様の分です」
妖夢はお米5合は入るであろう中身入りの飯櫃を幽々子の横に置く
妖夢「…これは、ジャンヌさんの分です」
妖夢とジャンヌの間に一般的な大きさの飯櫃を置く
ちなみに幽々子とジャンヌの活躍により昼食時に炊いた8合の白米はあっという間になくなった
ーーーーーーーー
妖夢「…凄かったなぁ…」
目をつぶり少し笑いながらしみじみと思い出す妖夢
ジャンヌ「や、やめてください!妖夢様!」
顔を真っ赤にして妖夢の両肩を掴み前後に妖夢をシェイクするジャンヌ
妖夢「うわおわうわわおわおわ」
ジャンヌ「忘れてください!忘れてください!」
妖夢「わ、わ、わ、忘れました!綺麗さっぱり忘れましたから!すとっぷぷりーず!」
動きを止めたジャンヌ
ジャンヌ「はっ!…ご、ごめんなさい…」
妖夢から手を離すジャンヌ
妖夢「いえ…お気になさらず…」
少しグッタリして答える妖夢
妖夢(最初見た時とは大分イメージ変わったなぁ…ジャンヌさん)
ーーーーーーーー
夕食後白玉楼縁側にて幽々子とジャンヌは座って目の前の日本庭園を見ている
ジャンヌ「…素敵なお庭ですね」
幽々子「ええ…妖夢が手掛けたからねぇ〜」
ジャンヌはマジマジと日本庭園を見る
幽々子「…」
幽々子「ねぇ、ジャンヌちゃん?」
ジャンヌ「はい、幽々子様」
幽々子はジャンヌの耳元まで近づきコソッと一言
幽々子「〜」
ジャンヌ、一気に顔が赤くなる
ジャンヌ「や、そんなこと…無理です!」
幽々子「助けてもらったんならそれくらいはお礼しなきゃ〜」
ジャンヌ「…そ、そう…ですか…?」
幽々子は庭園を観ながら真面目な顔で語りかける
幽々子「良い?ジャンヌちゃん…しばらく此処に居るんでしょう?ならちゃんと妖夢と仲良くしなきゃダメじゃ無いかしら?」
ジャンヌ「…確かに…」
幽々子はジャンヌに微笑む
幽々子「…さぁ、行くのよ!ジャンヌちゃん!」
幽々子にそう言われ思わず立ち上がるジャンヌ
ジャンヌ「はい!」
そんな幽々子とジャンヌの後ろを普通に通り過ぎる妖夢
妖夢(幽々子様とジャンヌさん仲良いなー)
ーーーーーーーー
8月25日
寅の刻、白玉楼妖夢の自室
妖夢「ん…むむむ…うーん…」
布団の中で妖夢は少しうなされていた
妖夢の浴衣…主に足元の部分がはだけるような感覚がする
妖夢「…ん…」
更に胸元の生地もはだけたような気がする
妖夢「…んがっ……はっ!?」
妖夢は飛び起きる
妖夢「……」
下半身の布団をめくると金髪の髪の美少女が自分の浴衣をはだけさせていた
妖夢「…ジャンヌさん!?」
ジャンヌ「お、おはようございます…妖夢様」
妖夢「何やってんですか!?」
ジャンヌ「そ、その…こうしてあげれば妖夢様は喜ぶと幽々子様からお聞きしたので…」
妖夢(あのピンク!)
妖夢「いや…いやいやいや…喜びませんよ…」
妖夢は寝間着姿のジャンヌを見る
窓から差し込む月の光に照らされた綺麗な髪、白い肌、自分よりもたわわに実った胸
妖夢「…」
妖夢はブンブンと頭を振る
妖夢(何を考えてるの私は…!相手は同性の女性!…美人!)
ジャンヌ「…」
妖夢の布団の中で顔を伏せるジャンヌ
妖夢「…ジャンヌ…さん?」
ジャンヌ「…本当にごめんなさい…どうしても助けていただいたお礼をしたくて…!」
妖夢(やばい…マジトーンの謝罪…っていうか…)
ジャンヌは頰をこれ以上ないくらい赤くし、眼からポロポロと涙がこぼれ落ちる
妖夢(…泣き顔まで…女神…)
妖夢「じゃなくてっ!」
妖夢「ジャンヌさん…別に私や幽々子様の顔色なんて気にしなくて良いんですよ?」
ジャンヌ「…妖夢様」
妖夢「お礼なんて…無理に自分を作らないで、ここ白玉楼ではありのままの自分で過ごしてくれれば十分ですよ」
妖夢は少し恥ずかしそうに
妖夢「…なんて…」
ジャンヌ「…」
ジャンヌは涙目でじっと妖夢の眼を見ている
妖夢(…う、可愛い)
ジャンヌ「妖夢様っ!」
ジャンヌは妖夢に勢いよく抱きつく
妖夢「ちょっ…ジャンヌさっ!」
ジャンヌ「そう言ってもらえて…私…とても嬉しいです!」
妖夢「ふぇえ…?」
ジャンヌと妖夢の顔の距離が近く
ジャンヌ「なんだか…心がとても暖かいです」
妖夢「…そうですか…」
妖夢がそう言うと、ジャンヌは妖夢の胸に頭を乗せる
仰向けの妖夢の上に覆いかぶさるように乗るジャンヌ
妖夢(…まるで恋人同士…)
妖夢「あー…あとジャンヌさん?」
ジャンヌ「…はい」
妖夢「今やったこと…他の方には絶対に内緒にしてくださいね?」
ジャンヌ「…はい!」
その光景を襖を少し開いて覗く眼があった
幽々子(…これは凄いものを見たわね…福眼福眼)
ーーーーーーーー
早朝、白玉楼庭
日課の鍛錬のため、いつものベストを脱ぎ、白い半袖にいつものスカートという服装で庭で楼観剣を抜き、ゆっくりとした動きで型を行う妖夢、それを縁側で並んで見る幽々子とジャンヌ
心なしか幽々子の顔はツヤツヤしている
ジャンヌ「幽々子様…妖夢様は何を?」
幽々子「己の心と身体を鍛える為の鍛錬をしてるのよ」
にこやかに返す幽々子
ジャンヌ「…鍛錬…」
妖夢「…ふぅ…」
一休みに入る妖夢
ジャンヌ「妖夢様!」
妖夢が振り向くとをジャンヌが後ろに居
た
ジャンヌ「あ、あの…私にも…」
妖夢「??」
ジャンヌ「私にも鍛錬を教えてください!」
妖夢「…へぁ?」
幽々子「あらあら」
ーーーーーーーー
妖夢と同じくベストを脱ぎ、蔵にあった刀を持ってきて構えるジャンヌ、隣に立つ妖夢
ジャンヌ「っやぁっ!」
刀を力一杯振り下ろすジャンヌ
しかしジャンヌのそれは剣士の素振りとはまるで違うものであった
幽々子(剣の素振りってよりも畑仕事で土耕してるみたいね)
妖夢「…」
妖夢は真剣な眼でジャンヌの姿を見ている
ジャンヌ「はぁ…はぁ…」
数回素振りをしただけで息が上がるジャンヌ
妖夢「ジャンヌさん…貴女のやる気は十分かと思います…では次は型を意識しながらやってみましょう」
ジャンヌ「…かた?」
妖夢はジャンヌの後ろに立つ
次にジャンヌの肩と背中に手を触れる
妖夢「腰は引かずに肩と同じ重心の位置に…」
次に妖夢はジャンヌの持っている柄巻にジャンヌの手の上から優しく握る
妖夢「失礼しますね…柄は力一杯握らずに、でも右手の親指と人差し指は決して柄から離れないようにしてください」
幽々子(剣術指南となると積極的ね、妖夢)
幽々子はお饅頭を食べながら妖夢とジャンヌを見守っている
妖夢「迷いを捨て、己の心をその手に持つ剣と同化させる事…要は集中ですね」
ジャンヌ「はい…」
妖夢「それでは…構えの姿勢を…」
ジャンヌは妖夢に教えてもらいながら、右足を半歩前に、左足を半歩後ろに、肩に力を入れず、1つ深呼吸をし、刀を持つ両手を腹部の前へ出す
妖夢「ゆっくり…腕を上に上げてください」
ジャンヌ「…」
手首から持ち上げるようにゆっくりと刀を上に上げる
妖夢「そのまま地に向かって真っ直ぐに、風を斬るように一瞬で振り下ろしてください」
ジャンヌ「…はいっ!」
–––––シャンッ–––
ジャンヌが刀を振り下ろすと不思議な音がした
ジャンヌ「…!?」
妖夢「今のが、剣で風を切った音です」
ジャンヌの耳には今自分が出した音が残っていた
ジャンヌ「これが…」
妖夢はジャンヌに向けニコッと笑って
妖夢「初めてなのにとても良い剣筋でしたよ、ジャンヌさん」
ジャンヌ「…」
ジャンヌは自分の持っている刀を見る
庭の桜の花が反射しているのか、少し桃色の波紋の刀
ジャンヌ「…妖夢様の…」
ジャンヌは妖夢に向き直り
ジャンヌ「妖夢様の教えが良いからですよ…」
妖夢「!?」
妖夢は思った
『やはり天使だ』と
妖夢は顔を赤くしてぽりぽりと頭を掻きながら
妖夢「や、いや…わ、私なんてぜんぜ…あはは…」
幽々子(…私…完全に空気ね)
ジャンヌはバッと頭を勢いよく下げ
ジャンヌ「妖夢様…もっと…もっと私に剣の道を教えてください!」
妖夢「えっ?…ええ!?」
妖夢はもじもじと両手の人差し指同士をくっつけながら
妖夢「わ…私なんかよりも剣の道を知る方は沢山いますし…」
ジャンヌは真っ直ぐ妖夢の眼を見て
ジャンヌ「妖夢様がいいのです!」
妖夢はちらりと幽々子を見る
ニコニコ笑顔で頷く幽々子
妖夢「…そ、そうですか…」
妖夢はうん、と1つ頷き
妖夢「わかりました!…私で教えられることがあればなんでもお教えします!」
ジャンヌは嬉しそうに
ジャンヌ「あ、ありがとうございます!よろしくお願いします!」
幽々子(お腹空いたなぁ)
ーーーーーーーー
その後、夕方過ぎまで妖夢指導の元、ジャンヌへの鍛錬…もとい剣術指南は続いたが、ついに空腹の限界まできた幽々子によって、剣術指南は途中で中止となった
白玉楼、台所
昨夜と同じく妖夢とジャンヌで夕食の支度をしていた
幽々子「妖夢ー」
支度の途中、台所入口ののれんをくぐりながら幽々子が話しかける
妖夢「はい、幽々子様」
幽々子「多分お客様来るわよ」
妖夢「え?…紫様ですか?閻魔様ですか?」
幽々子「よもぎ餅〜」
そう言って幽々子は居間の方へ行ってしまった
妖夢「…え?よも…え???」
「おーい!幽々子ー!いるかー!?」
白玉楼の玄関から聞き覚えのある声がした
ーーーーーーーー
妖夢「…げっ…」
玄関に向かった妖夢とジャンヌ
お客様はとんがり帽子を被った金髪少女、霧雨魔理沙だった
魔理沙「よぅ…妖夢」
妖夢「何か用?魔理沙」
腕を組んで眉間に少しシワを寄せる妖夢
魔理沙「…ご挨拶だな…幽々子はいるか?」
妖夢「…要件は?」
魔理沙は帽子を被り直し
魔理沙「…らちがあかないな…ん?」
魔理沙は妖夢の隣にいるジャンヌを見る
魔理沙「…お前の半霊…擬人化も出来たのか?」
妖夢は自分の半霊とジャンヌを見てから
妖夢「違うわよ!この人はジャンヌさん!…訳あって白玉楼に住んでる人よ」
ジャンヌは魔理沙にお辞儀をし
ジャンヌ「ジャンヌです、初めまして」
魔理沙「ああ、霧雨魔理沙だ。なんでその格好してるんだ?」
妖夢「…い・ろ・い・ろ!あったのよ!…本当に何の用よ!」
幽々子「あら〜白黒ちゃんじゃないの」
気づけば妖夢の後ろに立ってた幽々子
魔理沙「…幽々子…少し話してもいいか?」
魔理沙は真剣な顔で幽々子に頼み込む
幽々子「…お上がりなさいな」
そう言って幽々子は魔理沙に手招きして客間の方へ行く
ーーーーーーーー
台所
お茶とお菓子を用意するジャンヌ
その後ろでしかめっ面で椅子に座る妖夢
妖夢「…魔理沙にお茶なんて出さなくていいのに…」
ジャンヌ「よ、妖夢様…」
妖夢「ジャンヌさんも気をつけてくださいね!魔理沙は手グセの悪い魔女なんですから!」
用意していたジャンヌの手が止まる
ジャンヌ「…ま…じょ?」
妖夢「…?ジャンヌさん?」
すぐ我に戻るジャンヌ
ジャンヌ「あ…す、すいません…」
妖夢「…」
ーーーーーーーー
客間
幽々子「…って感じかしら」
魔理沙「…ああ」
卓を挟んで幽々子と魔理沙が話している
魔理沙の顔は真剣そのものだ
妖夢「失礼します」
声をかけてから襖を開く妖夢
その後ろには腰に帯刀したジャンヌがいる
妖夢「…どうぞ」
幽々子と魔理沙の卓にお茶と一口サイズのよもぎ餅の乗ったお皿を置く妖夢
幽々子「これこれ♪」
幽々子はすぐさまよもぎ餅に食らいつく
幽々子「んむんむ…とにかく…あんまり気にしない方が良いわよ、魔理沙」
魔理沙「…」
幽々子が軽い感じで魔理沙に一言いうと魔理沙は下を向いた
妖夢「…(私たちいない方がいいかな)」
魔理沙はすっと立ち上がり
魔理沙「幽々子、突然悪かったな…もう私は行くよ」
幽々子「あらそう…妖夢、ジャンヌちゃん、見送ってあげて」
妖夢&ジャンヌ「はい」
ーーーーーーーー
玄関口
妖夢達に背を向けブーツを履く魔理沙
妖夢「…」
妖夢はその背中をじっと見つめ、ジャンヌは少し気まずい感じで立っている
魔理沙「…じゃあ、邪魔したな」
魔理沙は立ち上がり、妖夢に一言謝る
そのあと入り口の扉を開け外に出ようとした時
妖夢「魔理沙っ!」
振り返る魔理沙
妖夢「なっ…何があったか知らないけど…きっと大丈夫よ!」
魔理沙「…」
ジャンヌ「…妖夢…様」
妖夢顔を赤くしながら
妖夢「…今まで霊夢と2人で…時には私や早苗とかといろんな異変解決してきたじゃない…きっと今回も上手くいくわよ…だから元気出しなさいよ!」
ジャンヌ「…」
魔理沙「…妖夢」
ジャンヌ「そ、そうですよ!…私は何も知りませんし、貴女とは初対面ですけど…貴女の様な綺麗な方に暗い顔は似合いません!…げ、元気を出してください!」
妖夢「…」
意外な人から出た言葉に驚くとする妖夢
魔理沙「……ふふっ」
少し笑う魔理沙
妖夢「…え?」
魔理沙「なんか…妖夢が2人いるみたいだな…お節介焼きめ」
妖夢「んなっ…!」
魔理沙は2人に背を向け
魔理沙「…少し元気出たよ…ありがとうな妖夢…ジャンヌ…」
外に出て、箒に跨る魔理沙
魔理沙「じゃあな!」
白玉楼から飛んで行く魔理沙
表へ出て、飛んで行った方を見る妖夢とジャンヌ
妖夢「…全く…」
ジャンヌ「…妖夢様」
妖夢「…はい?」
ジャンヌはもじもじしながら
ジャンヌ「私…もしかして余計なこと言ってしまいましたか?」
その言葉にニッと妖夢は笑い
妖夢「いえいえ、ぜーんぜん!あれくらい言ってあげた方が…あいつには十分ですよ!」
ジャンヌ「…魔理沙さんと…仲が良いんですね」
妖夢「…え?…んー…仲が良いってわけではないですけど…なんて言うか…たまたま一緒に異変を解決したことがあったっていうか…くされ縁…ですかね?」
ジャンヌはボソッと
ジャンヌ「…羨ましいです…」
妖夢「…え?…なんて?」
ジャンヌ「いえ!…さ、さぁ、お夕食の準備の支度の続きを…」
屋敷に入って行くジャンヌ
その後ろ姿を見て妖夢は
妖夢「んー?」
首をかしげる
ーーーーーーーー
白玉楼、客間
客間から見える外の景色を観ながらお茶を啜る幽々子
幽々子「…お腹…空いたなぁ」
幽々子の卓に置いてあるよもぎ餅の皿は空である