東方香靈記   作:114

19 / 27
毎度毎度ありきたりな展開ですが…

…良いんです。
ありきたりで二番煎じな展開が書きたかったんです


第19話「姉妹」

8月24日

 

 

紅魔館の屋敷内の廊下から地下への階段を降りるヴラド、レミリア、咲夜

 

 

咲夜「そろそろ着きますよ」

 

 

ろうろくの火が灯った燭台を片手に先頭を降りる咲夜が言う

 

 

階段を降りきり、廊下を少し歩くと目の前には大きな両扉が3人を出迎える

 

 

ヴラド「随分立派な扉だな」

 

 

咲夜が扉を開く

 

 

ヴラド「…おお」

 

 

両扉をくぐるとそこは本棚が壁一面にずらりと並ぶ大部屋だった

見上げる天井は高さ20メートル程あり、地下とは思えない広さだった

 

 

ヴラド「…この図書館も咲夜が…?」

 

 

咲夜「はい、私の能力で空間を広げています」

 

 

レミリア「流石私の咲夜ね!」

 

 

驚くヴラド、それに対して涼しい顔で返す咲夜、その咲夜の能力をドヤ顔で自慢するレミリア

 

 

「…うるさいわね…此処をどこだと思ってるのよ」

 

 

ヴラド達が図書館入り口で話していると気だるそうに部屋の奥から寝間着を着た少し背の低い少女がやってきた

 

 

レミリア「パチェ」

 

 

パチェと呼ばれた少女は薄紫色のドレスタイプの寝間着を着て、首元には黄色のリボンを付け、その上から同じく薄紫色の薄いカーディガンを羽織り、腰よりも長い濃い紫色のロングヘアーにまたまた薄紫色のナイトキャップを被った少しタレ目の大人しそうな雰囲気を持った紅魔館、大図書館の主、七曜の魔法使いパチュリー・ノーレッジその人だった

 

 

パチュリー「図書館では静かになさいよ…レミィ」

 

 

そう言いながらパチュリーはヴラドを見る

 

 

パチュリー「…この人は?」

 

 

ヴラド「…俺は」

 

 

レミリア「お父様よ!」

 

 

レミリア、パチュリーの問いに対して胸を張って元気よく答える

 

 

パチュリー「…」

 

 

パチュリーは視線をレミリアから咲夜へ移す

 

 

咲夜「…ヴラド様です。しばらく紅魔館に居てもらう予定となってます」

 

 

パチュリー「…?……ああ…お父様って…へぇ…」

 

 

ヴラド「ヴラドだ、気がついたら紅魔館の庭に倒れていた様でな…まぁ色々あってレミリアの父親となってしまった」

 

 

パチュリー「パチュリー・ノーレッジよ。そうね…この図書館の管理人って言ったところね」

 

 

「パチュリーさまぁ〜」

 

 

パチュリーの後を追ってくる様にもう1人奥から小走りでやってきた

 

少女はパチュリーよりも頭半分程背が高く、パチュリーと同じくらいの長さの真っ赤なロングヘアー、白い長袖のシャツに黒ネクタイ、その上から黒のベストを着、同じく黒のロングスカートを履き、頭と背中から小さなコウモリの羽根を生やした、高い身長に反して、まだあどけない表情の少女、小悪魔だった

 

 

小悪魔「誰かいらっしゃったん…あれ?レミリアお嬢様?」

 

 

レミリア「はぁい、こあ」

 

 

レミリアの次にヴラドを一目見た小悪魔はパチュリーの後ろにさっと隠れる

 

 

パチュリー「…彼は敵じゃないわ」

 

 

ヴラド「…」

 

 

パチュリーは自身の後ろに隠れた小悪魔の手を取ってヴラドの前に引っ張り出した

 

 

パチュリー「小悪魔のこあ、よ」

 

 

ヴラド「…よろしく、ヴラドだ」

 

 

こあ「ふわわわ…こ、こあです!ど、どうぞよろしくお願いします!」

 

 

緊張しながらも挨拶をする小悪魔

 

 

パチュリー「こあはこの図書館の…そうね、司書兼私の手伝いとか色々やらせてるわ」

 

 

こあ「えっへん」

 

 

偉そうに胸を張る小悪魔

本で小突くパチュリー

 

 

ヴラド「…よろしく」

 

 

レミリア「…じゃ、お父様のお部屋に行くわよ!」

 

 

咲夜「…」

パチュリー「…」

 

 

咲夜と目を合わせるパチュリー

 

 

こあ「あれ?もう妹様の所へは行ったんですか?」

 

 

図書館の入り口へ向かおうとしてたレミリアの動きがピタッと止まる

 

 

ヴラド「…妹?」

 

 

ガクッと項垂れるパチュリー

 

 

レミリア「…」

 

 

パチュリー「…こあは悪くないわよ…」

 

 

ヴラド「…レミリア、妹がいたのか?」

 

 

レミリアはヴラドに振り返り

 

 

レミリア「…ええ…この図書館よりもずっと地下に…いるわ」

 

 

ヴラド「…行かなくて良いのか?」

 

 

レミリアはヴラドから視線を外し

 

 

レミリア「フラン…妹は少し情緒不安定なの…危ないから…」

 

 

ヴラド「一言挨拶するだけでも良いだろう…会話も出来ないのか?」

 

 

 

レミリア「…はぁ…わかったわよ…一言挨拶するだけよ」

 

 

 

レミリアがため息混じりにそう言い、パチュリーと小悪魔を残し、図書館を後にするヴラド達

 

入り口の扉が閉まり、パチュリーと小悪魔だけの静かな図書館となった

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

こあ「…もしかして…私余計なこと言っちゃいました!?」

 

 

小悪魔、涙目でパチュリーに問う

 

 

パチュリー「…良いんじゃないの?…もしかしたら彼があの姉妹の仲をまた前みたいに良くしてくれるかもしれないし…」

 

 

こあ「あ!紅霧異変後の時ですよね!」

 

 

パチュリーは椅子に座り

 

 

パチュリー「あれ以降は魔理沙がしょっちゅう来てたからね…フランの相手もしてあげてたみたいだし…」

 

 

こあ「最近あんまり来ないですもんね」

 

 

 

パチュリー「…盗んでいった本も返してくれないし…」

 

 

こあ「…本当にさっくり持っていっちゃいましたもんね」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

ヴラド達が降りてきた階段、その反対側に周ると更に地下に続く階段があった

 

 

 

ヴラド「…更に地下が…」

 

 

レミリア「…」

 

 

引き続き西洋建築な階段を降りる3人

 

 

レミリア「…フランドール・スカーレット…私の妹の名前よ」

 

 

 

ヴラド「…フランドール」

 

 

咲夜「先程にも御説明した通り、幻想郷に住む一部の者は特殊な能力を持っています」

 

 

レミリア「フランの能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』」

 

 

ヴラド「…確か咲夜が時を操る、レミリアが…運命を見る、とかだったか…」

 

 

レミリア「…まぁ、そんな感じね…フランの能力は強大過ぎて自身の精神にも影響が出てるの、そのせいで情緒不安定…というか精神的に気が触れてるいて他人に危害を与える事があるの」

 

 

ヴラド「…なるほど…危ないとはそういう事か…」

 

 

咲夜「…着きました」

 

 

階段を降り切ると図書館と同じく大きな両扉が3人を出迎えた

 

 

咲夜「…昔はここが侵入者などを捕らえておく牢屋だったのですが…」

 

 

ヴラド「…」

 

 

ヴラドはレミリアと咲夜を見てから扉に向き直り

 

 

ヴラド「フランドール…フラン、か…」

 

 

レミリア「開けるわよ」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ヴラド「…これはまた…」

 

 

 

扉を開く、ヴラドの視界に映ったのは桃色の部屋だった。

 

大広間と同じくらい広い部屋…というよりも高い天井、桃色のかべ、ベッド

 

桃色に反して床に散らばるぬいぐるみは多種多様、種類バラバラの色もバラバラの動物のぬいぐるみ達

 

その中のひとつ、茶色のくまのぬいぐるみを持った少女が1人ポツンと入り口に背を向け立っていた

 

 

 

ヴラド(…あの子がフランドール…)

 

 

 

少女「お姉様?…珍しいね、こんな時間に起きてるなんて」

 

 

少女は後ろを振り返らずに語りかける

 

レミリアは入り口から動かないまま腕を組んで答える

 

 

 

レミリア「…それは貴女も同じでしょう?フラン」

 

 

少女「…咲夜と…誰?」

 

少女は振り返る

 

羽根、髪の色、服が違うだけのまるでレミリアとは双子のような少女だった

だが姉よりも冷たい眼をし、その小さな身体を取り巻く冷気の様なオーラを感じる

 

 

 

ヴラド「…」

ヴラド(…ここまでの雰囲気だけならこの子の方がレミリアよりも大人っぽいな)

 

 

少女、フランドールは入り口に立ったままのレミリア達に少しだけ近づく

 

 

 

フラン「はじめまして、私はフランドール・スカーレット…貴女はだぁれ?」

 

 

ヴラドに向かって話しかけるフラン

 

 

 

ヴラド「…ヴラドだ、色々あってしばらくこの紅魔館で生活をさせてもらうことになった」

 

 

フラン「ふぅん…じゃあその挨拶って事で私の部屋まで来たのね」

 

 

レミリア「そうよ、挨拶だけ…もう私達は行くわ」

 

 

ヴラド「おい…レミリア」

 

 

フラン「ねぇお姉様……最近…お姉様私の事避けてない?」

 

 

入り口の方を向いたレミリアが一瞬固まる

 

 

レミリア「…なんでそう思うのよ」

 

 

フラン「なんとなくかな…違うの?」

 

 

レミリア「…別に…いつも通りよ」

 

 

レミリア、振り返らずにフランに返す

 

 

ヴラド「…」

 

 

フランはくまのぬいぐるみをレミリアの足元に投げ捨てる

 

 

レミリア「…」

 

 

フラン「ぬいぐるみとか、絵本とか…お洋服とか…」

 

 

咲夜「…」

 

 

フラン「もう…いらないから…」

 

 

レミリア「…フラン…」

 

 

レミリア、フランに向き直る

 

 

フラン「…だから…」

 

 

フラン「…」

 

 

"だから…"

そう呟いてフランは下を向いてしまう

 

 

 

レミリア「…わ、私先に上に上がってるわ!」

 

 

そう言うと入り口の扉からすぐ部屋を出ていき階段を飛んで登って行くレミリア

 

フランの部屋に残されたヴラド、咲夜

 

 

咲夜「…お嬢様…」

 

 

ヴラド「…」

 

 

レミリアの出て行った扉の方を見ながら心配する咲夜、状況に困惑するヴラド

 

そして…

 

 

…ぐしゃ

 

 

 

ヴラド「…!?」

 

音のした方を見るヴラド

 

ぐしゃ、ぐしゃ…

 

咲夜も同じく音のした方、フランの方を見る

音の主は潰れた、いや、潰されたぬいぐるみだった

 

 

フラン「…なによ…」

 

 

 

フランが下を向いたまま足下にあるぬいぐるみを次々と踏み潰していた

 

 

 

フラン「なによ…なによ!」

 

 

咲夜「妹…様…」

 

 

 

フラン「なによ、なによ!なによ!なによなによー!」

 

 

 

潰れたぬいぐるみ達の綿がフランの周りに舞っている

 

目を真っ赤にしたフランの周りを

 

 

フラン「いつもいつも偉そうに…!私の事なんて少しも見もしないで!」

 

 

 

ヴラド「…」

 

 

 

さっきまでの大人しそうな雰囲気はもう無い

例えるならそう…

 

 

 

ヴラド「殺気立った獅子のようだな…」

 

 

 

ヴラドの声にフランが反応する

 

 

 

フラン「…ふふ、おじ様…お姉様も行っちゃったし、一緒に遊びましょう」

 

 

 

ヴラド「!」

 

 

フランは人差し指を自分の口元に持っていき

 

 

フラン「えーとー…弾幕ごっこじゃあもうこの気持ちは治らないからぁ…」

 

 

 

咲夜「い、妹様…この方は…」

 

 

 

フラン「お医者さんごっこ!」

 

 

 

ヴラド「…何?」

 

 

 

フランはニコニコしながらヴラドにゆっくり近く

 

 

 

フラン「前に来たおじさん達はこの遊びしようって言うとすっごく喜んだんだーっ!」

 

 

 

咲夜「…」

 

 

 

フラン「…でもね、次に私がこう言ったらみんな逃げようとしたの」

 

 

 

ヴラド「…なんと言ったんだ?」

 

 

 

フラン「おじさんが患者さん役で…」

 

 

 

剣を抜かず構えの姿勢をとるヴラド

フランは満面の笑みで

 

 

 

フラン「私が外科医だよー!!」

 

 

 

咲夜「妹様ぁっ!」

 

 

 

咲夜が叫んだ瞬間、部屋に置いてあったベッド、クローゼット、ぬいぐるみ達が咲夜に突っ込んだ

 

壁に当てられ、ぬいぐるみ達が咲夜を押さえつける

 

 

 

咲夜「…くぅっ…その…方…は…」

 

 

 

ヴラドに向いたまま、目だけ咲夜を見ながらフランは答える

 

 

 

フラン「…咲夜は…そこで観ててよ」

 

 

ばっ、とヴラドへ突進するフラン

 

 

 

ヴラド「…!!」

ヴラド(攻撃の仕方まで姉妹同じか!)

 

 

 

フラン「私の名医ぶりっ!」

 

 

 

右手を大きく振りかぶりながらヴラドの目の前へ跳んできたフラン

 

 

 

ヴラド「…ぐぅうっ!」

 

 

 

その場にさっとしゃがみこむヴラド

空回りして一回転するフラン

 

 

 

フラン「おっとっ!」

 

 

 

すかさずしゃがみこんだヴラドに向かって左手で突き刺そうとするフラン

 

しゃがみこんだ姿勢から右に飛び出して転がりフランの攻撃を避けるヴラド

 

 

 

フラン「あははっ凄い凄いっ」

 

 

 

ヴラド「はっ…はぁっ!」

 

 

 

フランと少し距離が出来たヴラドは咲夜の方を一瞬見る。咲夜はぬいぐるみ達に押さえつけられ、目を瞑り苦しそうな顔をしている

 

ヴラド(…助けられるか…?)

 

フランの猛攻は止まらない

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

紅魔館、レミリアの寝室

 

つい数時間前、ヴラドと出会う前と同じくベッドにうつ伏せになっているレミリア

 

 

 

レミリア「はぁ…なんでよ…」

 

 

 

レミリア(別に嫌いで避けているわけじゃない…ただ私が気にしているのは…)

 

レミリアはベッドで仰向けになる

 

 

 

レミリア「…お父様…咲夜…遅いわね…」

 

 

 

レミリア、ふと気がつく

 

 

 

レミリア(あれ…もしかしてまだフランの所に…?)

 

 

 

 

レミリア「…」

 

 

 

我が妹はおそらく絶賛不機嫌中

初対面の男

理性のない妹はおもちゃと解釈

殺害

 

 

 

レミリア「…まずい…」

 

 

 

レミリア、寝室を飛び出す

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

ヴラド「はぁ…はぁ…」

 

 

 

フランからの猛攻、それを何度か無傷で避けたヴラド

 

 

 

フラン「おじ様凄いねー!本当に人間??」

 

 

 

見た目通りの可愛らしい笑顔で喜ぶフラン

 

 

ヴラド(…もう避けるのは精一杯だ…抜くか…?)

 

 

そう思い自分の腰にある鞘にしまわれた剣を見るヴラド

 

 

ヴラドとフランから離れた壁には咲夜が背を壁に預け座っていた

ヴラドに夢中で咲夜への気が散ったのか、咲夜を押さえつけていたぬいぐるみ達も床に転がっている

 

 

 

咲夜(身体自身は自由になったけど…)

 

 

 

ぬいぐるみとはいえ人間以上の…吸血鬼の力で襲ってきた衝撃のせいか、まだ身体に力が入らない咲夜

 

 

 

咲夜(それにしても…あれだけの妹様の攻撃を全てかわすなんて…)

 

 

 

フラン「頭…開きますねーっ!」

 

 

 

楽しそうに両手をまっすぐに伸ばしヴラドの頭部目掛けて突っ込むフラン

 

 

ヴラド「…っ!」

 

 

赤い弾丸を避けるヴラド

そのまま壁に突っ込むフラン

 

 

 

フラン「いたた…避けるなんてひどいなぁ…」

 

 

ヴラド「…医学の知識がなくてもそんな事を言われれば誰だってイヤがるだろう…」

 

 

ヴラドが剣の柄に手をかけ、鞘から長く、銀色に輝く剣を引き抜く

 

その抜かれた剣をフランはじっと見て

 

 

 

フラン「…だめだよ?」

 

 

ヴラド「?」

 

 

フラン「貴方は患者さんなんだから…メスを持つのは私なんだから」

 

 

ヴラド「…?…そうなのか?」

 

 

咲夜「ヴラド様っ!」

 

 

咲夜が叫んだその瞬間、壁に居たはずのフランがヴラドの真後ろに居た

 

 

ヴラド「…!?」

 

 

ヴラドの耳元に甘い甘い砂糖の様な匂いと声がする

 

 

フラン「これ、没収しまーす」

 

 

フランが右手でヴラドの構えた剣の刃を掴んた瞬間

 

 

フラン「きゃあっ!」

 

 

剣に触れたフランの右手に一瞬青白い炎が発火した

 

 

ヴラド「!?」

 

 

フラン「…なによっ!?」

 

 

ヴラドの真後ろにいたフランがばっと側を離れる

 

 

ヴラド「…フラン…」

 

 

剣を下ろし、フランに向き直るヴラド

 

 

フラン「…なぁに?おじ様」

 

 

少し焦げた右手を下に振りながら笑顔で答えるフラン

 

 

ヴラド「…あの時…お前の姉に何を言おうとしたんだ?」

 

 

フラン「…」

 

 

 

 

『ぬいぐるみとか、絵本とか…お洋服とか』

 

 

 

フラン「…別に…」

 

 

 

 

『もう…いらないから…』

 

 

 

ヴラド「…"だから"…」

 

 

 

フラン「!?」

 

 

ヴラドの言葉に眼を開くフラン

 

 

 

ヴラド「…だから、と、なんて言おうとしたんだ?」

 

 

 

床を力一杯蹴り、高速でヴラドに突っ込むフラン

 

 

フラン「お前に関係ないでしょ!?」

 

 

ヴラド「ぐっ…!」

 

 

咲夜「…っ!ヴラド…様…」

 

 

 

咲夜はまだ身体の痛みがあり動けない

 

高速でヴラドに突っ込んだフランは左手でヴラドの首を掴み床に押し付ける

 

ヴラドに馬乗りになるフラン

 

 

 

フラン「お前に!お前に!お前に!」

 

 

 

興奮したフランはヴラドの首を掴み頭部を何度も床に叩きつける

 

 

ヴラド「っ!」

 

 

フラン「フゥー!フゥー!!」

 

 

ヴラド「…言葉にしないと…」

 

 

フラン「!?」

 

 

 

頭と口から血を流したヴラドが少し小声でフランに語りかける

 

 

 

ヴラド「…伝わらないぞ…お前の気持ちは…」

 

 

 

フラン「…うっさい!」

 

 

右手を頭上に掲げたフラン、その爪先は怪しく輝く

 

 

 

フラン「…貴方は手術じゃなくて…解剖してあげる…!」

 

 

ヴラド「…」

 

 

ヴラドは眼を瞑り、一呼吸してからゆっくり眼を開ける

 

ヴラドが眼を開けると眼を真っ赤にしたフランと眼が合う

 

目が合ったのは一瞬だった

 

 

 

フラン「…っ!!?」

 

 

ヴラドに馬乗りになっていたフランはすぐ彼から跳んで離れる

 

 

 

フラン「…!!」

 

 

 

仰向けに倒れたままのヴラド、そこから約5メートル程離れたフラン

 

 

 

咲夜「…??…何が…」

 

 

 

ヴラドから離れたフランは自分の手を見る

剣に触れ少し火傷をした右手、そして今の今までヴラドの首を掴んでいた左手…

 

その両手が少し震えていた

 

 

 

フラン「?…??」

 

 

 

フランは気配を感じヴラドの方を見る

ヴラドがゆらりと、立ち上がっていた

 

 

 

フラン「…お前!…私に何をしたの!?」

 

 

 

フランがヴラドに向かって叫ぶ

 

 

 

ヴラド「…」

 

 

 

フランを鋭い眼光で睨みつけるヴラド

 

 

フラン「でもこれで終わりね!もうお前には飽きたから!」

 

 

フランは離れたヴラドに向かって左手を伸ばし掌を向ける

 

 

咲夜「ヴ、ヴラド様っ!お逃げください!」

 

 

 

まだ動けぬ身体のまま叫ぶ咲夜

 

 

 

フラン「もう遅いよっ!」

 

 

フランの掌の周りに赤黒いオーラのような物が漂っている

 

ヴラドは動かない

 

 

 

フラン「…キュッとして…」

 

 

 

 

 

–––––フラン–––

 

 

 

フラン「!?」

 

 

 

その声は声でありながらも声では無かった

まるで頭の中に直接入ってくるような男の声

 

フランの目の前にはヴラドが立っている

鎧を着た背の高いただの人間

 

だがフランには見えたような気がした

 

ヴラドの背後に巨大な西洋の竜、ドラゴンの様なものの影を

 

 

 

フラン「…ひっ…」

 

 

 

 

–––フラン–––やめなさい–––

 

 

 

 

 

ヴラドは一言そうフランに向け言った

 

ヴラドの放った声は先ほどレミリア達と話していた声よりも低く、冥界の空気の様に冷たい声だった

 

その一言を聞いたフランの魂は凍りつく、突き出した左手はフルフルと震え、立っている両膝はガクガクとし始めた

 

本来生物には感情というものがある

喜び、悲しみ、怒りなど…

 

しかしながらここにいるフランは狂気を持って産まれたためか、ある感情をほぼ欠除した状態で今まで生きていた

 

そのほぼ欠除した感情とは生物としての本能の1つ、恐怖である

 

今の今までフランはその圧倒的な能力で逆に相手に恐怖を与える存在だった

 

姉に怒られても、誰かに攻撃されようとも、ただの一度も"恐怖"というものを感じたことは無かった

 

だが、たった今フランが感じている感情は紛れもなく恐怖という名の感情である

 

 

 

フラン「…は…ぅ…ぁ…」

 

 

 

咲夜「…何が…!?」

 

 

 

動けなくともフランの異変に気付く咲夜

 

 

フランは目が泳ぎ、あぶら汗が顔中を流れる

 

初めて感じる目の前の人間への恐怖にどう対応すれば良いのかわからないのである

 

500年近く生きてきた吸血鬼とはいえ、見た目と同じく中身は少女、経験したことのない状況では出来ることは何もなく、上げていた左手を下ろし、両手で裾に白いフリルの付いた真っ赤なスカートの端をギュッと掴み、下に俯き、興奮冷め、落ち着きを取り戻した赤黒い瞳から涙を流す

 

その時だった

 

 

バンッ

 

 

 

レミリア「フラン!お父様!」

 

 

 

 

フランの部屋の扉を勢いよく開け、叫ぶレミリア

 

目の前の状況にレミリアは困惑する

 

 

 

 

フラン「…ご、ごめんなさい…」

 

 

 

目の前に広がっていたのはベッドやクローゼットが荒らされ、咲夜が壁を背にもたれかかり、顔中血だらけで立ち尽くすヴラド…そのヴラドに向け泣きながら、まさに親に叱られた子供の様に謝っているフランの姿がそこにあった。

 

 

 

レミリア「…何…どういうことなのよ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

レミリア「…まずい…」

 

 

 

ヴラド達を置いて自室に帰っていたレミリアはハッとする

 

 

 

レミリア「…絶対今フラン不機嫌よ!…ならお父様が危ないじゃないのよ!」

 

 

 

レミリアは寝転がっていたベッドから降りカーペットの上に立ち上がる

 

 

 

レミリア「…!!」

 

 

レミリア(でも私が行ったところで…)

 

 

 

レミリアは頭をブンブンと左右に振る

 

 

 

レミリア「いや、何迷ってるのレミリア!」

 

 

 

レミリアは自室の扉を勢いよく開け、地下へ向かおうとする

 

レミリアが下へ下へと降りていき、玄関ホールまでたどり着いた

 

 

 

レミリア「!?」

 

 

 

すぐに地下への階段を降りようと思ったレミリアだったが、視界の端に誰かの影があったため、そちらを一目見る

 

 

レミリア「…誰?」

 

 

玄関の大扉の前に1人の少女がいた

瑠歌香であった

 

 

香「こんばんわ〜」

 

 

 

レミリアは咄嗟に自身の妖力で真っ赤な槍を作り出した

 

 

 

レミリア「…勝手に入って…何者?」

 

 

レミリアは侵入者を睨む

 

 

 

香「あはは…怖い怖い…」

 

 

香はケラケラと笑いながら両手をレミリアに向けまあまあとなだめる

 

 

 

香「…お姉さんには何もしないよ、ただある人の様子を見にきただけだよ」

 

 

レミリア「……貴女の興味を惹くような人はこの紅魔館には居なくてよ」

 

 

十中八九ヴラドの事だと感じるレミリア

 

 

香「…そっか…ふぅん」

 

 

香はつまらなそうに返す

 

 

 

レミリア「私は今急いでるの…悪いけど今すぐに出ていきなさい…さもないと」

 

 

香「…さもないと?」

 

 

レミリアは香に向かって跳ぶ

槍を後方に振りかぶる

 

 

一刺しで終わらせる

 

レミリア(この感じは人間ではない…殺したところで何の咎めも無いわ!)

 

 

香「…速い…!」

 

 

ぎりぎりでレミリアの攻撃を避ける香

 

 

レミリア「…っち!」

 

 

すかさず次の攻撃を繰り出そうとするレミリア

 

だが次の動きに入ろうとした瞬間

 

 

レミリア「……!?」

 

 

 

–––チリン

 

レミリア(…鈴?)

鈴の音がしたと思うと不思議な香りがした

 

 

レミリア「…?」

 

 

構えのまま動きが止まるレミリア

 

 

 

レミリア「…え、と…」

 

 

自分は何をしていたのだろう、と困惑するレミリア

 

 

目の前にいた香がレミリアにニコッと笑う

 

 

香「うん、わざわざお見送りありがとうね!」

 

 

レミリア「…え?」

 

 

香「なんか大事な用事あるんでしょう?ウチの事は気にしなくていいから…行ってきなよ」

 

 

レミリア「…えーと…なんで私は…貴女誰?」

 

 

香「…何言ってるのさ〜、さっきまで一緒にお茶してたじゃんっ!」

 

 

レミリア「…そ、そうだっけ…」

 

 

香はニコニコしながら

 

 

 

香「そーそー、それで突然お姉さんが大事な用事思い出した〜って言ったから、ウチはもう帰ろうと思ってこのホールまで降りてきたんでしょう?」

 

 

 

レミリア、まるでたった今眼が覚めるような感覚に陥る

 

まるで数分前の記憶など無かったかのように

 

 

レミリア「…そ、そうだったわね…じ、じゃあ私はもう行くから!」

 

 

香「うん!…あ、おトイレだけ借りていくね!終わったらそのまま帰るから!」

 

 

 

レミリア「?…ええ!それじゃあ!」

 

 

妖力で作った槍を消し、地下への階段へ急いで飛んでいくレミリア

 

 

香「…さて、と」

 

 

レミリアが去った後、香は玄関の扉ではなくレミリアの飛んで行った方、地下への階段の方へ向かう

 

 

ーーーーーーーー

 

 

レミリア(んー…今の奴…誰だったかしら…)

 

 

レミリア「いやいや、そんな事よりもフランとお父様のとこへ急がなきゃ!」

 

 

 

図書館の階に着くレミリア

扉の前にパチュリーとこあが居た

 

 

パチュリー「あ、レミィ…さっきからドタバタ…って、ちょっと!」

 

 

親友の声は今は聞こえない

更に地下へ降りるレミリア

 

予定よりも少し遅れたがなんとか妹の部屋の前へたどり着いたレミリア

 

扉をあけて最悪の状況になってないよう祈る

 

 

レミリア「ハァ…ハァ…」

 

 

 

バンッ

 

 

レミリア「フラン!お父様!」

 

 

 

フランの部屋の扉を勢いよく開け、叫ぶレミリア

 

目の前の状況にレミリアは困惑する

 

 

 

フラン「…ご、ごめんなさい…」

 

 

 

目の前に広がっていたのはベッドやクローゼットが荒らされ、咲夜が壁を背にもたれかかり、顔中血だらけで立ち尽くすヴラド…そのヴラドに向け泣きながら、まさに親に叱られた子供の様に謝っているフランの姿がそこにあった。

 

 

 

レミリア「…何…どういうことなのよ…」

 

 

 

咲夜「…お、お嬢様」

 

 

 

咲夜の元へすぐ跳んで行くレミリア

 

 

レミリア「咲夜!…大丈夫なの!?」

 

 

 

壁の持たれている咲夜の横に着くレミリア

 

 

咲夜「…ご、ご心配を…私は大丈夫…です」

 

 

一安心するレミリア

次に視線を向けたのは…

 

 

 

ヴラド「…レミリア…」

 

 

レミリア「ぉっおっおっお父様っ!!その怪我は…大丈…ふ、ふ、ふフラン!?なんで泣いて…!」

 

 

ヴラドとフランの状態を見たレミリアは混乱

 

 

レミリア「何が…どうなってるのよ…」

 

 

 

ヴラド「…さぁ、フラン」

 

 

ヴラドはフランの前に来る

 

 

フラン「…!?」

 

 

フラン、一歩退く

 

ヴラドはフランと顔の高さを合わせるためしゃがむ

 

 

フラン「…ぁ…」

 

 

ヴラドはしゃがみ、フランの両肩に手を置く

 

 

ヴラド「フラン…お前はレミリアに言いたいことがあるんだろう…?」

 

 

フラン「…う、うん…」

 

 

フランはヴラドの目を見て頷く

ヴラドはほんの少し、だが優しく微笑み

 

 

ヴラド「…お前なら大丈夫だ…さぁ」

 

 

フランはレミリアの目の前へ一歩、また一歩近づく

 

 

レミリア「…」

 

 

レミリア、腹を決める

 

 

フラン「あ、あのね…お姉様…」

 

 

もじもじし、自分の両手指を絡ませながら恐る恐る上目遣いでレミリアを見るフラン

 

 

レミリア「…何…フラン…」

 

 

 

 

咲夜「…!?…ヴ、ヴラド様…!?」

 

 

ヴラド「すまなかったな、咲夜…」

 

 

 

咲夜の元に寄り、介抱するヴラド

 

 

咲夜「…ありがとうございます…」

 

 

ヴラド「…喋らなくて良い…楽にしていろ」

 

 

 

 

フラン「さっきは…ごめんなさい!」

 

 

レミリアに頭を下げるフラン

 

 

レミリア「…え?」

 

 

フラン「…お姉様に貰ったぬいぐるみ…投げたりして…」

 

 

レミリア「…」

 

 

フラン「…それと」

 

フランはヴラドを一目見る

フランと目が合い頷くヴラド

 

 

フラン「…」

 

 

レミリア「…」

 

 

フラン「わ、私…」

 

 

 

レミリア「…ええ」

 

 

フラン「私!……もう、おもちゃやお洋服はいらないの!」

 

 

レミリア「…」

 

 

フランの手が震える

 

 

フラン「…だから…」

 

 

 

下を向きながら話していたフランはレミリアの目をまっすぐ見て

 

 

フラン「…もっとお姉様と…一緒にいたい!」

 

 

レミリア「…!!」

 

 

フラン「…お姉様と一緒にお話ししたり、お食事したり…手を繋いだりお昼寝したり…」

 

 

レミリア「…フラン…」

 

 

 

フランの目から涙が溢れて来る

 

 

 

フラン「…もう…一人ぼっちにしないで…!」

 

 

ヴラド「…」

 

 

ぐしぐしと涙を手で拭うフラン

何も言わずにフランを抱きしめるレミリア

 

 

フラン「…!?…お姉様?」

 

 

 

レミリア「…ご…ごめんね…フラン」

 

 

フランを抱きしめるレミリアもまた、泣いていた

 

 

レミリア「…私…てっきり嫌われていたかと思ってたの…」

 

 

ヴラド「…」

咲夜「…」

 

 

 

ヴラドと咲夜は何も言わずフランとレミリアの姿を見ている

 

 

レミリア「…紅霧の後から…魔理沙が来るようになって貴女は明るくなったわ」

 

 

フラン「…」

 

 

レミリア「でもそれは私の力じゃない…魔理沙と…霊夢のお陰なんだって…」

 

 

 

レミリアはフランを抱きながら目を瞑る

 

 

 

レミリア「明るくなる貴女を見るたびに…なんだか貴女が私からどんどん離れていってるような気がして…」

 

 

 

ヴラド「…離れて欲しくないから、好きなものだけを与えてここに閉じ込めていたのか…」

 

 

レミリア「…ええ、離れていくのなら捕まえて、閉じ込めておこう、誰にも会わせないでって思っていたのはあったわ…」

 

 

レミリア「…それがフランの…私のためだって…」

 

 

フラン「…」

 

 

 

レミリア「でもただのエゴ…勝手なわがままだったわ…」

 

 

 

フランもレミリアの背中に手を回す

 

 

 

フラン「大丈夫…私はお姉様の事嫌いになったりしないよ…!」

 

 

レミリア「……!……フラン…ごめんなさい…」

 

 

フラン「これからは…もっともっと2人で…ううん、咲夜も、パチュリーも美鈴も…他にももっともっといろんな人達と…みんなで楽しく暮らしたいの…」

 

 

 

レミリア「ええ…ええ!」

 

 

 

ヴラド「…」

 

ヴラドは1つ息を吐き、咲夜を抱き上げる

 

 

 

咲夜「…えっ!?ちょっ…ヴラド様!?」

 

 

 

ヴラド「…ああ、触れられるのは嫌だったか?」

 

 

咲夜「いえ、そうではなく…」

 

 

ヴラド「…俺たちがもうこの部屋にいる必要はないだろう」

 

 

 

ヴラドは咲夜の背中と膝裏を抱え上げている、ようはお姫様抱っこである

 

咲夜は両手で赤くなった自分の顔を隠す

 

 

 

咲夜「…こんなの…みっともないです」

 

 

ヴラド「…気にするな…行くぞ」

 

 

ヴラド(血を流しすぎた…頭がフラフラする…)

 

 

ヴラドと咲夜はフランの部屋…改め地下の部屋を出て行く

 

部屋に残るはお互いの存在を確認し合うように抱きしめ、泣き合う2人の吸血鬼姉妹だけだった

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

パチュリー「で、とりあえず此処に来たと?」

 

 

 

紅魔館の図書館、沢山の本が積み上げられた木で出来たテーブルに一口飲んだ紅茶のカップを置いてパチュリーは呆れたようにヴラドに問う

 

 

ヴラド「…迷惑をかけるな」

 

 

 

座れば低めの目線になるソファーに咲夜を寝かせ、咲夜の頭側に置いた椅子に座るヴラドが答えた

 

こあがヴラドの頭の傷口に消毒薬とガーゼを当てる

 

 

パチュリー「…話を聞いたけど、無茶し過ぎよ……どうやってフランを止めたのよ、貴方」

 

 

ヴラド「ん?…いや、覚えていないな…」

 

 

パチュリーは咲夜を見る

 

 

 

咲夜「…私も…何が起きたのか…攻撃をしようとした妹様にヴラド様が一言『やめなさい』と…」

 

 

寝転がりながら頭だけ少し上げ答える咲夜

 

 

パチュリー「…ふぅん」

 

 

パチュリー(偶然フランの狂気が収まった?…いや、言霊かしら…破壊衝動を抑えさせる能力?)

 

 

 

パチュリーは色々思考を駆け巡らせるが

 

 

 

パチュリー「…さっぱりね…」

 

 

 

パチュリー、ため息

ヴラドのガーゼ貼りを終え、救急箱の片付けをするこあ

 

 

 

こあ「ヴラド様も何か能力を持ってるんですかねー?」

 

 

 

パチュリー「…かもね、でも人間で能力を持ってるなんてそうそう…」

 

 

 

パチュリーの頭を紅白の巫女、白黒の魔法使い、緑髪の巫女、咲夜の姿がよぎる

 

 

 

パチュリー「…居るものね…結構」

 

 

 

そう呟き、椅子に座り紅茶を飲むパチュリー

 

咲夜がソファーから起き上がる

 

 

こあ「あ…大丈夫なんですか?」

 

 

咲夜は右手で後頭部をさすりながら

 

 

咲夜「ええ…ありがとう…パチュリー様もありがとうございます、お陰で大分楽になりました」

 

 

パチュリー「痛みを和らげただけ…治癒魔法の一種よ…頭を打ったみたいだから一度永遠亭で診てもらった方が良いわよ」

 

 

咲夜「…はい」

 

 

パチュリー「貴方もね」

 

 

ヴラドに向かって言うパチュリー

 

 

 

ヴラド「…?なぜだ」

 

 

パチュリー「…神経損傷とか血腫とか…時間が経つにつれて悪くなっていくこともあるのよ」

 

 

ヴラドはパチュリーの言葉に目を丸くする

 

 

パチュリー「…?何?」

 

 

ヴラドはふ、と笑い

 

 

ヴラド「いや…パチュリーは頭が良いんだな…」

 

 

パチュリー「え?…ま、まぁね」

 

 

パチュリーは思う。

自身に知識が豊富なのはパチュリー本人も、紅魔館の誰もが分かっていることだったが、改めて言葉に出されるとむず痒いものである

 

 

パチュリー「…変な人ね、貴方」

 

 

ヴラド「ああ…俺も自分でそう思う…よ…」

 

 

 

そう少し笑いながら返すと、ヴラドの意識は遠くなっていく

 

遠くなっていく意識の中、パチュリーの声が聞こえた

 

 

 

『そういえば…しは……呼べば良いの…ら…』

 

 

 

『お……とか……じゃないです…?』

 

 

 

『………よね……』

 

 

 

 

『…ちょっ…?』

 

 

 

 

『……』

 

 

 

 

 

『…』

 

 

 

 

意識が途切れる瞬間、あの子達の姿が脳をよぎる

 

 

……姉妹愛…か…良いものを見せてもらった……

 

 

ヴラドの意識は途切れた

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。