東方香靈記   作:114

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今回より魔理沙編になります

お話と別に利益、アドルフ、ヴラドと、各キャラクターのイメージイラストを現在作成しており、イラスト完成後、こちらに載せようと思います。

どうぞよろしくお願いします


第4章 魔法使いと巫女
第23話「8月25日」


8月25日

 

 

魔法の森の上空を箒に跨って飛んでいる影が1つ、霧雨魔理沙である

 

射命丸文から霊夢失踪の件を知り、真実か確かめるため、博麗神社に向かっていた

 

 

魔理沙「…」

 

 

『何故か一昨日から外来人が各地で頻繁に目撃されてます。友好的かどうかもまだわからないので、気をつけてくださいね』

 

 

魔理沙は文の言葉を思い出す

 

魔理沙(外来人の出現…霊夢の失踪……これは偶然なのか…?)

 

 

 

胸がもやもやする

いつもなら異変であれば霊夢と共に東西南北どこでも"2人で"飛び回っていたが、今は1人…いや、守矢の巫女や紅魔館のメイドとかに声をかければ一緒に行動してくれるんだろうが…

 

 

魔理沙「…私1人でも…霊夢を見つけてやる」

 

 

文は博麗神社には霊夢は居なかったと言っていた…でも私自身の目で確かめたい

 

 

箒に跨った魔法使いは飛ぶ速度を上げる

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

博麗神社の鳥居前に到着する魔理沙

 

昨日と変わりない人気のない神社

箒を罰当たりにも鳥居の柱に立て掛け、流造の屋根の本殿に向かう

 

 

本殿を右側から周り、縁側の方へ向かう

 

雨戸が締め切りになった縁側

 

 

 

魔理沙「…鍵が…」

 

 

 

魔理沙が雨戸に手を触れ、ガタガタと揺すると少し隙間が開いた

雨戸の鍵は開いていたのだ

 

 

 

魔理沙「…勝手に悪いな、霊夢」

 

 

 

ガタガタと少し立て付けの悪い雨戸を1枚開ける

 

 

本殿と続く住居は真っ暗だった

だが室内は散らかったわけでもなく、至っていつもの博麗神社だった

 

 

魔理沙「…なにか…手がかりは…」

 

 

 

雨戸を全て開け、明るくなった居間をキョロキョロと見回す魔理沙、気分はオープンな空き巣である

 

室内を探索しながら台所へ向かう

 

 

魔理沙「!?」

 

 

幻想郷の一般的な家庭では台所にて調理する際は明治時代よろしくのかまどを使うのが普通だが、博麗神社の台所はスキマ妖怪の八雲紫の協力の元、現代の技術を集約した2口のガスコンロを使用している

 

ガス自体は紫からの"サービス"という事で不思議な空間より流れてくる

 

魔理沙が見たのはそんなガスコンロの上に置いてある鍋である

 

 

 

魔理沙「…味噌汁…いや、肉じゃがか?」

 

 

あの不精者で万年金欠の霊夢がこんな手の込んだ料理作るか?いや、まず作らない

 

 

魔理沙「…じゃあ、誰が…」

 

 

「あれあれ?魔理沙さんじゃないですか」

 

 

居間の方から声がし、魔理沙振り向くとそこに居たのは狛犬、高麗野あうんだった

 

頭頂部から突き出た勇儀よろしく立派な一本ツノ、薄緑色の長い髪の毛はくせっ毛なのか前髪と襟足付近でくるりと丸くなっており、その可愛らしい童顔にピッタリだった

 

上半身は赤生地に白い雲模様の薄手のポロシャツ、下は白生地に赤い雲模様の短パンと夏には過ごしやすそうな格好をしていた

 

 

あうん「四季異変の時以来ですね、お久しぶりです〜」

 

 

ニコニコと屈託のない笑顔で魔理沙に話しかけるあうん

 

 

魔理沙「…あー…えと、狛犬の…」

 

 

あうん「あうんですよ!…忘れないでくださいよぉ〜…」

 

 

ガックリ項垂れるあうん、その見た目はまるで本当にわんこそのものである

 

 

魔理沙「…勝手に人の家に入ったらいけないんだぞ?」

 

 

頰をぽりぽりとかきながらぽそぽそと喋る魔理沙

 

 

あうん「魔理沙さんだって勝手に入ってたじゃないですかー!」

 

 

そこで魔理沙ははっと思い出す

 

 

魔理沙「そういえば…えと…あうん!お前ここの狛犬してたんだよな?霊夢を見なかったか!?」

 

 

あうん「…狛犬してたって…」

 

ジト目で魔理沙を見るあうん

 

 

あうん「…残念ですが見てませんね、というよりここ3日ほど博麗神社から離れていたので…」

 

 

魔理沙「…そうか…」

 

 

あうん「霊夢さんに何かあったんですか?」

 

 

あうんの言葉で魔理沙は考える

 

話すか?いや…別にこいつには関係ないし…っていうか明日には新聞配られるだろ…

 

 

 

『最初から私は神社の味方って言ってるでしょ!』

 

 

魔理沙は四季異変の時のあうんとの会話を思い出す

 

 

魔理沙(…悪いやつじゃ…ないんだよな)

 

魔理沙「…実はな…」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

魔理沙とあうんは縁側で座って話していた

ただその表情は2人とも暗い

 

 

あうん「…霊夢さんが…失踪…」

 

 

魔理沙「…ああ」

 

 

ああ、なんでこいつに話したんだろ…

 

 

魔理沙は項垂れつつあうんの顔を見る

あうんも魔理沙の視線に気づくと不安そうだった顔から先程会った時のようにニコッと笑い拳を握った両手を自分の胸元まで上げ

 

 

あうん「大丈夫ですよ!魔理沙さん!きっと霊夢さん見つかりますよ!」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ふんふんっと鼻息を荒くして魔理沙を元気付けるあうん

魔理沙はそのあうんの姿にふっ、と笑い

 

 

魔理沙「…ああ、そうだな…ありがとうあうん」

 

 

そう言ってあうんの頭を軽く撫でる

 

 

あうん「えへへ…って魔理沙さん!私は魔理沙さんのペットじゃありませんよ!」

 

 

魔理沙「あ、ああ…悪い悪い」

 

 

そう言いながらも本気で怒ってないのが丸わかりなあうんはやっぱりいい奴なんだろうなと思う魔理沙

 

 

 

魔理沙「…さてっと…」

 

 

よっこいしょと座ってた縁側から立ち上がる魔理沙

 

魔理沙「ここに何も手がかりが無かった以上もう私は行くよ」

 

 

あうん「…ぁ…」

 

 

魔理沙「もし霊夢を見かけたり何か手がかりがあったら教えてくれ」

 

あうんはまたもやニコリと笑い

 

 

あうん「勿論ですとも!…今度は応援じゃなくちゃーんとお手伝いしますよっ!」

 

 

魔理沙「ふふ…ありがとう」

 

魔理沙が箒を呼び出して跨る

 

 

 

あうん「あ、魔理沙さん」

 

 

魔理沙「ん?」

 

 

 

飛び立つ直前に呼び止められる魔理沙

 

 

 

あうん「…よければこれ、どうぞ」

 

 

そう言ってあうんはポケットから手のひらサイズの紙を取り出す

 

 

魔理沙「???なんだ、これ?」

 

 

魔理沙が紙を受け取り内容を見る

 

 

魔理沙「鳥獣伎楽…サマーライブチケットぉ?」

 

 

あうん「そうですそうです〜昨日ミスティアちゃんからもらったんですよ!」

 

 

魔理沙は思い出す

夜雀とやまびこのロックコンビを

 

 

魔理沙「ああ…そういえばなんかそんなのやってたっけ…」

 

 

あうん「なんか今回は新たにメンバーを入れてトリオでやるんですって!…えーと…なんていったっけな……ま、マイコー…じゃくちょう…?」

 

 

あうんは腕を組んでうーんうーんと考える

 

 

魔理沙「ふぅん…お前のはいいのか?」

 

 

と、聞きつつカバンにチケットを入れる魔理沙

 

 

あうん「…マイカルだっけ…え?ああ、ちゃんと私の分はありますよ、大丈夫です!」

 

 

 

魔理沙「…じゃあ、気が向いたら見に行くよ」

 

 

そういって魔理沙はチケットの日付を見る

 

 

魔理沙「…8月…31日…か」

 

 

あうん「あ、あとあと」

 

 

魔理沙「…まだなにかあるのか?」

 

 

あうん「さっき此処に来た時に感じたんですけど…」

 

 

あうんは目を瞑り胸元に両手を持ってくる

 

 

あうん「なんだか…凄く懐かしい感じがしました…」

 

 

魔理沙「…」

 

 

その時のあうんの表情は大切な思い出を語るように嬉しそうに、しかしどこか切なそうな表情をしていた

 

 

魔理沙「…懐かしい?…博麗神社が?」

 

 

あうんはふるふると首を横に振る

 

 

あうん「…いえ、そうではなくて…なんというか…懐かしい人の雰囲気がしたというか」

 

 

魔理沙「!?」

魔理沙「誰かっ!…霊夢以外に誰かがいたのか!?」

 

 

思わず跨っていた箒からコケそうになるも降り、あうんの両肩を掴む魔理沙

 

 

あうん「あ、魔理沙さん…痛い…です」

 

 

魔理沙「あ、ご、ごめん…」

 

両肩から手を離す魔理沙

 

 

 

魔理沙「教えてくれ、誰なんだそれは」

 

 

あうん「あ、いや…私もよくはわかりませんが…とても霊夢さんに似た雰囲気でした」

 

 

魔理沙「…霊夢に似た…」

 

あうん「でも実は博麗神社だけじゃなくて、ここに来るまでも所々で感じたんですよね、その人の感じ」

 

 

魔理沙「…って事はまだ近くにそいつと霊夢が一緒にいるかもしれないって事か…!」

 

 

あうん「んー…わかりませんが…」

 

魔理沙「ありがとう、あうん…いい情報だったぜ!」

 

 

魔理沙は再度箒に跨る

 

 

あうん「あ、行っちゃうんですか?」

 

魔理沙「ああ、手掛かりを知った以上はその手掛かりを手掛かりに探し回ってみるぜ!」

 

 

あうん「…お気をつけて」

 

 

もう行ってしまう魔理沙に寂しさを感じたのか少し元気が無くなるあうん

 

 

魔理沙「ああ…そうだ、あうん」

 

 

あうん「はい」

 

 

魔理沙「私がいう事じゃないが、神社を…博麗神社の留守を頼んだぜ」

 

 

あうんはぱぁっと明るくなり

 

 

あうん「任せてください!ちゃんと守護しますよ!」

 

 

箒に跨った魔理沙は空へ飛び立った

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

博麗神社より飛び立った魔理沙は人里から博麗神社まで続く山の上空を下を見ながら飛ぶ

 

 

 

魔理沙「…くそー…こんなんじゃ全然わからないぜ」

 

真夏の山、木の葉っぱは青々と山の表面を覆い茂っており、上空からの捜索では人なんて見つかるはずがなく

 

 

魔理沙「…地面すれすれで飛ぶと危ないしな…」

 

 

魔理沙(それに多分霊夢は…誘拐じゃないな…あうんと話した感じだと"誰か"と一緒に博麗神社から居なくなったんだ…)

 

 

魔理沙「…昨日の今日なら山の中をのんびり歩くわけがない…か…」

 

 

 

魔理沙は色々な予想を考える

こうかもしれない、ああだったかもしれない、あそこかもしれない…

 

予想、想像、推理をする彼女はまるで

 

 

魔理沙「…まるで私はホームズだな…はは…」

 

 

そう呟いたその時の

 

 

『ドォン』

 

 

魔理沙「ふぁっととぉ!?」

 

 

まだ続く山の前方、ほぼ平地の森付近で黒煙が空に上がる

 

 

魔理沙「…なんだ?」

 

 

黒煙が上がる場所へ飛んで行く魔理沙

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

魔理沙「…池?」

 

 

魔理沙が降りたのは森の中にある小さな池だった

紅魔館の近くにも大きな湖があるが、こちらの広さはその10分の1もないくらいの小さな小さな、それこそ水溜まりのような池である

 

 

焼け焦げていたのは池の近くの木々だった。もう火はないがまだ煙が空に昇っている

 

 

魔理沙「…うーん…だれもいない、か…」

 

 

なんで火が上がったんだろ…ふと思う魔理沙

 

 

魔理沙(別に誰か倒れてるわけじゃないし…うん、わからん)

 

 

恐らく霊夢は…関係ないのかな、とそう決めてまた箒に跨り空へ飛び立つ

 

 

ーーーーーーーー

 

博麗神社から山を、山を越え森を飛んで移動し、森を抜けると人里まで続く平地へと出た

 

人里と森の境界を表すように小さな川が流れている

 

 

魔理沙「ん?あれは…」

 

 

魔理沙が上空より見つけたのは川沿いに置かれた昔ながらの手押しの移動屋台だった

 

 

魔理沙はそこまで飛んでいき、屋台の前で箒くら降りる

 

 

魔理沙「…ミスティア〜?」

 

その屋台は夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライの経営するヤツメウナギの屋台だった

 

見た感じ、カウンターの板が外れているので移動中ではなさそうだった

 

 

魔理沙「んー?」

 

ミスティア本人がいないようなので屋台の裏側へ回る魔理沙

 

すると見知らぬ男性が屋台の裏でレンガと石で出来た簡易釜の上にある鍋の中身をおたまでかき回していた

 

 

魔理沙「???…おい」

 

 

男「うわっ!」

 

 

突然後ろから声をかけられた男性は驚き、一瞬飛び上がる

 

 

魔理沙「…ここはミスティアの店だろ?アンタ誰だ?」

 

 

男「え?…僕はカサノヴァ……ハニーの…あ、いや、店主、ミスティアの手伝いをしている者さ」

 

 

そこにいる男性は歳は30歳程度、少し彫りの深い整った顔に、真っ白で襟足まである髪の毛を後ろで束ね、襟と袖にフリルの付いたお高価そうな長袖のシャツを着て、七寸丈の真っ赤なこれまた貴族が履くようなパンツを履き、白い靴下、革靴を履いていた

 

 

カサノヴァ「綺麗な髪だね、君の名前はなんて言うんだい?」

 

 

カサノヴァはウインクして魔理沙に問いかける

 

 

魔理沙「…霧雨…魔理沙だ…」

 

ジト目でカサノヴァを見て、一歩立ち位置を退いて自己紹介をする魔理沙

 

 

 

カサノヴァ「魔理沙ちゃんか…まりたんって呼んでも良いかな?」

 

 

魔理沙「やめてくれ」

 

 

警戒する魔理沙

カサノヴァは両の掌を魔理沙に向け

 

 

 

カサノヴァ「まぁまぁまぁ…そんな退かないでよ、僕は人間だよ〜」

 

 

 

見りゃわかる、魔理沙はそう思い

 

 

 

魔理沙「…ミスティアは?」

 

 

 

カサノヴァは片足立ちに右手で逆ピースを作りポーズを決めて

 

 

 

カサノヴァ「ああ、ミスティアね、僕はハニーって呼んでるんだけども、彼女なら人里まで買い出しに行ってるよ〜」

 

 

 

カサノヴァは鍋の方を指差し

 

 

 

カサノヴァ「僕は彼女に頼まれて店番と、ハニーから作り方を教わった…えーと…ソース…タレ?を作ってるところさ」

 

 

 

魔理沙「…そうか…」

魔理沙(ただの仕込をしてたのか…うーん…一応霊夢のこと聞いてみるか?)

 

魔理沙「なあ…アンタあの森から誰か出てくるところ見てないか?」

 

 

 

魔理沙は後ろの森を親指で指し問いかける

 

 

 

カサノヴァ「森…?…あー…そういえば」

 

 

 

魔理沙「誰か見たのか!?」

 

 

 

カサノヴァは後ろに置いてあったウナギのかば焼きのタレがどっぷり入った大きな鍋をおたまでかき混ぜながら

 

 

 

カサノヴァ「何人かこの近くを通ってったけど…印象的だったのは傘を差した水色のかわい子ちゃんと…なんかこう…インテリっぽいおじさんのカップルかな〜」

 

 

 

魔理沙「…水色の?…小傘か……他には?」

 

 

 

カサノヴァ「うーんと…あ、あと黒髪の女の子も通ってったねぇ〜あの子も可愛かったなぁ…」

 

 

にへへ、と笑顔になるカサノヴァ

 

 

 

魔理沙「!?…そいつ!誰かと一緒だったか!?」

 

 

 

思わず声を上げる魔理沙

ただならぬ雰囲気を感じたのか笑顔が消えるカサノヴァ

 

 

 

カサノヴァ「…あーと…うん、妹さんなのかな?ショートの黒髪の子も一緒だったね」

 

 

魔理沙「…ショートの…黒髪…」

 

 

 

カサノヴァ「…ただのお友達探しって訳じゃなさそうだね?」

 

 

 

魔理沙「…ああ…まぁな」

 

 

 

そう呟き箒に跨る魔理沙

 

 

 

カサノヴァ「??」

 

 

 

少女が箒に跨る光景を不思議な顔で見るカサノヴァ

 

 

 

魔理沙「ありがとうな!おっさん!」

 

 

カサノヴァ「おっさん?」

 

 

 

 

箒に乗った魔理沙はその場で宙に浮く

 

 

カサノヴァ(…ああ…魔女か…)

 

 

 

魔理沙「…あんまり驚かないんだな?」

 

 

 

カサノヴァ「んー…いや、妖怪とか妖精とか…昨日から色々見てるからねぇ…」

 

 

少し困った顔で笑うカサノヴァ

 

 

 

魔理沙「そうか…じゃあ、教えてくれてありがとな!」

 

 

カサノヴァ「あっ…」

 

 

 

そう残して魔理沙は人里の方へ飛んで行った

 

カサノヴァはぽりぽりと自分の頰をかいて

 

 

 

カサノヴァ「…あーそうだ…あの子達と…もう1人いたんだけどなぁ…」

 

 

再度鍋をかき回すカサノヴァ

 

 

 

カサノヴァ「…まさかおっさん呼ばわりされるとは…男は歳をとってからセクシーさが増すのにねぇ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

川辺の屋台から引き続き箒に乗り人里を目指す魔理沙

 

 

魔理沙「ん?」

 

 

前からこちらへ飛んでくる人影が見え、だんだん影が近づいてくる

 

魔理沙「ああ…」

 

 

前から飛んできたのは先ほどの屋台の店主、ピンクのショートヘア、そこから左右に飛び出た鳥の羽のような長いフサフサの耳、背中からは耳と同じく鳥の羽根が生えている。

赤紫のナイトキャップの様な帽子を被り、同じ色のスカートの膨らんだワンピースタイプの服を着た夜雀妖怪ミスティア・ローレライだった

 

 

少女は両手で大きな紙袋を抱えて飛んできた

 

 

ミスティア「あら?魔理沙?」

 

魔理沙「よお、歌姫」

 

 

幻想郷でも数人しかいないであろう美声の持ち主、彼女は小鳥のような少し高めの可愛らしい声をしていた

 

空を飛ぶ魔理沙の前で止まるミスティア

 

 

魔理沙「お前よく人里で買い物できたな」

 

ミスティア「ちゃんと許可は取ったわよ…」

 

 

魔理沙「そういえばお前の屋台、おっさんに取られてたぞ?」

 

 

ミスティア「おっさん?…ああ、カサノヴァさんね…取られたんじゃなくて仕込のお手伝いをしてもらってたのよ」

 

 

 

魔理沙はちらりとミスティアの紙袋を見る

 

 

魔理沙「ふーん…なぁ、ところで霊夢を見てないか?」

 

 

ミスティア「博麗の巫女?…見てないわ」

 

 

ミスティアはきょとんとした顔をし、首を傾げて答える

 

 

魔理沙「…はぁ、そうか…わかった」

 

ミスティア「何かあったの?」

 

 

魔理沙「いや……なんでもない」

 

 

ミスティア「ふーん」

 

 

ミスティアは人里の方を向いて

 

 

ミスティア「…私が人里に行った時は見てないけど…まだ居るんじゃないの?彼女」

 

 

魔理沙「ああ…まぁ、見に行ってみるよ」

 

 

ミスティア「うん、じゃあ私屋台に戻るから」

 

 

魔理沙「ああ、人間襲うなよ」

 

ミスティア「はいはい」

 

 

ミスティアも魔理沙も顔を合わせず別れる

 

ミスティアは屋台の方へ、魔理沙は人里の方へと

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

人里に到着する頃にはもう昼になっていた

 

霊夢らしき人がいないかを空を飛びながら見てるが…

 

 

だーめだ…昼飯時の大通りなんて黒髪だらけで全くわからん…

 

 

嗚呼…腹が減った…

そういえば朝から何も食べてない…そして暑い…

 

喉乾いた…

 

 

お?あんな所に団子屋がある

 

 

魔理沙「よっと」

 

 

団子屋の正面に降りる私、箒は…良いや、横に立て掛けとこうっと

 

 

…こんな所に団子屋なんてあったかな…

 

あのウサギ達の団子屋なら知ってるけど…

 

 

魔理沙「こんちわー」

 

店ののれんをくぐるとおばさん…って程じゃないな…お姉さんが出迎えてくれた

 

 

女店主「いらっしゃーい、あら、魔理沙ちゃんじゃないか」

 

え?私のこと知ってるのか?

 

 

魔理沙「あー…えーと…私のこと知ってるのか?」

 

 

結構客入ってるんだな…

 

 

女店主「もちろん!魔法使い兼泥棒だろう?」

 

 

兼て…

 

 

魔理沙「泥棒ではないんだけどな…そんなに有名なのか…私…」

 

まぁ、有名なのは悪くないかな

 

 

女店主「で、なんか注文するかい?」

 

 

ああ…そっか…えーと…

 

 

魔理沙「…あんこ…あん団子…2本で」

 

女店主「はいよ」

 

 

…一人で切り盛りしてるのかな…店の奥行っちゃった

 

 

魔理沙「ふぅ…」

 

 

大通りの見える席に座り、帽子を席に置き、外をぼんやり見ながら先に来た麦茶を飲んで団子を待つ

 

 

…霊夢…どこに居るんだよ…

 

 

 

『大丈夫…ありがとう、魔理沙』

 

 

作り笑顔を私に向ける霊夢の顔を思い出した

 

 

魔理沙「…」

 

忘れろ忘れろ!

…目を瞑り首を横に振る

 

 

女店主「はいよーお待たせー」

 

 

皿にあん団子と…見たことない少し茶色の団子の計3本の串団子が出てきた

 

 

魔理沙「…え?」

 

私が頼んだのはあんこ二本だけ…女店主の顔を見ると私の考えを察したのか

 

 

女店主「その一本はおまけよ、これから御贔屓よろしくね、魔理沙ちゃん」

 

 

笑顔でウインクする女店主

 

 

魔理沙「あ、ありがとう…」

 

 

…嬉しいけど…串団子三本はちと重いぜ…

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

腹ごしらえをした私は再度箒に乗って寺子屋を目指した

 

 

寺子屋…人里唯一の学校だ

ここの教師の上白沢慧音は半妖だがちゃんと道徳的な人間性…というか妖怪性…いや、半妖性を持つヤツだ

 

 

 

魔理沙「何か…知ってるかな…」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

寺子屋に到着する魔理沙

箒を入り口に置いて教室として使ってる部屋の縁側の方へ回る

 

 

魔理沙「…まだ授業してるのかな…」

 

時間は昼食時、さらに8月という事で授業自体はやってないはずだが

 

 

魔理沙「…」

 

 

教室には誰もいなかった

流石に勝手に寺子屋に入るわけにはいかないので、正面に戻って呼び鈴も鳴らしたが結局慧音は出てこなかった

 

 

魔理沙「…留守か…」

 

おじいさん「おや、慧音先生なら今出てるよ?」

 

 

寺子屋の正面で立ってたらたまたま通りかかった老人に声をかけられた

 

魔理沙「え?あ、そうなのか」

 

 

おじいさん「ああ、多分妹紅ちゃんの所じゃないかなあ」

 

魔理沙「…妹紅…」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『私には死が無いの…死なないって事は、生きてもいない…死と生という余計な状態が無くなり、純粋な人間に近い人間』

 

 

『ある意味幽霊みたいなものかもね』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

魔理沙は永夜異変時の妹紅と対峙した時を思い出す

 

人であって人でない

人間とも妖怪とも言えない少女に言い知れぬ恐怖感を抱いていたこと、だが同時に恐怖感に負けないくらい、魔法使いとして、魔法研究家として不死人への興味もあった

 

 

おじいさん「…ちゃん?…お嬢ちゃん?」

 

魔理沙「え?…あ、ああ」

 

妹紅のことを考えていた魔理沙はぼうっとしてしまい、おじいさんの声で我に戻った

 

魔理沙「大丈夫さ、ありがとなじっちゃん!」

 

 

 

再度箒に跨り空へ飛び立つ魔理沙

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

〜人里上空〜

 

 

…あれから人里で何人か聞き込みをしたが霊夢の件も、黒髪のヤツのこともわからなかった…

 

 

と、いうよりも

 

 

魔理沙「…お尻が痛い…」

 

 

朝からぶっ続けでこの股下の相棒と飛んでたんだ…もう私のお尻は限界…

 

 

魔理沙「このままじゃ……切れちまう…」

 

 

一度家に戻るか

 

 

 

私は魔法の森にある我が家に向かう

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

時刻は15時、私は無事我が家に帰還した

 

…大した情報を得られないまま…

 

 

いや、得た情報はあるか

 

 

霊夢の失踪

関係するのはあうんの言う懐かしい黒髪の少女

プリティー連合

 

 

魔理沙「…めんどくさいぜ…」

 

風呂場でぬるいシャワーを浴びる

朝から箒で飛び回ってたからお尻は痛いし、日差しで身体は汗だくだ

 

 

魔理沙「あー…気持ちいい…」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

シャワーから出て黒のスカートと肌着で部屋の中をウロウロする

 

…身体はさっぱりしたが頭の中はモヤモヤだ…

 

 

カップに粉末のコーヒーを入れ、ポットのお湯を淹れる

 

 

いつもなら紅茶だが霊夢の捜索がいつまで続くかわからないから、ちゃんとカフェインを取っておかないとな

 

 

角砂糖とミルク、蜂蜜も少し入れて

 

魔理沙「ふーふー…」

 

 

うん…甘苦い…

 

 

魔理沙「…ふぅ…」

 

 

『コンコン』

 

 

魔理沙「?!」

 

 

玄関の扉がノックされる

…また文か?

 

 

魔理沙「…誰だ?」

 

扉の前に立ってドアを開けずに問いかける

 

 

アリス「…私よ…魔理沙、大丈夫?」

 

 

…アリス?

 

 

『ガチャ』

 

扉を少し開け、外を確認する

 

魔理沙「…」

 

アリス「…何してるのよ…」

 

 

恐る恐る扉を開ける私にアリスが問いかける

 

 

魔理沙「……霧雨邸にようこそだぜ…」

 

アリス「…そう思うなら開けてよ…」

 

 

強い日差しのせいかフリルのついた水色の日傘をさして扉の前に立っているアリス

 

…相変わらずこいつ肌白いな…

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

アリス「ふぅ…外よりかは幾分マシね」

 

 

魔理沙「せっかく家に入れてやったのになんだよそれ…」

 

魔理沙(相変わらず不必要な一言を…)

 

 

アリス「…冗談よ…」

 

魔理沙「…何か用か?」

 

 

アリスは一度まっすぐ魔理沙を見てから、少し目をそらし

 

 

アリス「昨日は…ごめんなさい、貴女のことを考えずに言いすぎたわ」

 

魔理沙「へ?」

 

 

昨日アリスの所へ行ったことを思い出す

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『霊夢にだって気分じゃない時だってあるんでしょ?それよりうちから勝手に持ってった本返しなさいよ、魔理沙』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

魔理沙「…あー…」

 

アリスから言われた言葉をおもいだすが、今の魔理沙からしたら、アリスから言われたことより霊夢のことで頭いっぱいである

 

 

 

魔理沙「別に気にしてないぜ」

 

アリス「え…あ、そう…」

 

 

少しがっかりするアリス

 

 

アリス「…」

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙(え?何この空気…)

 

 

目の前のアリスは両手を膝に乗せ手と手を重ねモジモジしている

 

 

魔理沙「?」

 

アリス「あ、あのね、魔理沙」

 

上目遣いで小声で魔理沙に話しかけるアリス

 

魔理沙「???」

 

 

口をつけようとしたコーヒーカップの手が止まる

 

 

アリス「き、昨日の本、もう読んだ?」

 

 

魔理沙「昨日の…?」

 

 

魔理沙は昨日の記憶を思い出し、アリス邸から2冊本を盗んで…借りていったことを思い出す

 

『アイギスの鏡』ともう一冊

 

 

魔理沙(あー…まだ読んでなかったな…)

 

魔理沙「いや、まだ読んでないが…持って帰るなら構わないぜ」

 

魔理沙(あまり本を読みたい気分でもないし)

 

アリス「あ、ううん…そうじゃなくて…」

 

 

アリスは椅子から立ち上がりゆっくりと魔理沙の後ろに回る

 

 

魔理沙「???」

 

 

アリスは後ろから座る魔理沙を優しく抱きしめる

 

魔理沙「…へ?」

 

 

そして魔理沙の耳元でアリスが囁く

 

 

アリス「…魔理沙も…興味があったのね」

 

魔理沙「は?…え?え?」

魔理沙(何何何何?…何が?は?)

 

 

魔理沙はアリスから無理やり離れる

 

 

魔理沙「わ、悪かったって!本返すから!」

 

 

アリス「やんっ」

 

 

魔理沙は自分の寝室に急ぎ足で向かう

 

魔理沙(いくら返して欲しいからってあんな方法で迫ってくるなよ…)

 

魔理沙はベッドの下に本があることに気がつく

 

 

魔理沙「あったあった…」

 

 

魔理沙は重なった2冊の本を拾い上げる

 

 

魔理沙「アリス〜、あったぞ……ぉ…」

 

 

その時、本の表紙を見て魔理沙の中の時間が完全停止した

 

 

魔理沙「…ぁ…」

 

魔理沙が勢いでアリス邸から勝手に借りた本、一冊は『アイギスの鏡』

 

 

そしてもう一冊の本のタイトルが…

 

 

魔理沙「…百合……入門…?」

 

しかも初級者編

 

アリスがいたであろうリビングの方を勢いよく振り向く

 

目の前…まさに顔がほぼゼロ距離で向かい合った真顔の魔理沙と笑顔のアリス

 

魔理沙「……」

 

口をパクパクさせる魔理沙

 

魔理沙(まて、違うんだ、確かに妖怪達の中でも何人かは可愛らしいなと思うことはあったが、別に恋とかではないし、ただ仕草が可愛いらしいとかそういうしょーもない理由で可愛いとかって言ったわけで)

 

 

アリス「…魔理沙」

 

 

魔理沙(いや、でも今朝は文の髪の匂いがいい匂いしたなって思ったけどそれも

別に変な意味で思ったわけじゃないし…)

 

 

魔理沙はアリスに優しくベッドに座らされる

 

アリスも魔理沙の横に、座り甘い声を魔理沙の耳元でささやく

 

アリス「気にしなくていいのよ…」

 

 

魔理沙「!?」

 

 

魔理沙(…もしかして…)

 

魔理沙はアリスの顔を見る

アリスはこの上ない聖母のような顔をしていた

 

 

魔理沙(…私、勘違いされてるのか!?)

 

魔理沙はアリスを突き放す

 

魔理沙「ち、違うんだ!その本は何も見ずに取っちゃっただけなんだ!?私は違うんだ!」

 

魔理沙はベッドからそそくさと離れ、いつもの黒のベストと帽子を取り玄関の扉を開ける

 

アリス「あっちょっと魔理沙!」

 

魔理沙「あ、あー!えーと!…鍵は開けっぱなしでいいから!本も借りてったやつ勝手に持って帰ってくれ!」

 

魔理沙は箒に跨り

 

魔理沙「あと昨日借りた本の事は忘れてくれー!私はレズじゃなーい!」

 

 

そらの彼方へ飛んでいく魔理沙

 

 

アリス「…」

 

 

霧雨邸の玄関から飛んでいく魔理沙をじっと見つめるアリス

 

 

アリス「…恥ずかしがっちゃって…魔理沙ったら…」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

〜魔法の森上空〜

 

 

 

ふよふよと箒に跨りあてもなく空を彷徨う魔理沙

 

魔理沙「はぁ…なんて事しちゃったんだよ、私…絶対アリスに勘違いされちゃったし…」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『…魔理沙も…興味があったのね』

 

ーーーーーーーー

 

 

魔理沙「…なんだよ…魔理沙もって…」

 

 

アリスの言葉を思い出した瞬間、とある黒い予想が頭をよぎる

 

 

魔理沙「…魔理沙…も…?」

 

 

魔理沙(いやいやいやいや…)

 

 

魔理沙「アリスに限ってそんな事…」

 

 

 

魔理沙「…」

 

 

心機一転

 

 

魔理沙「よし!…幽々子のところへ行こう!」

 

 

こういう時の幽々子はなかなかどうして勘が鋭い、下手をすれば黒幕じゃないかってくらいである

 

 

そう思い、進路を白玉楼のある冥界へと向ける

 

 

ーーーーーーーー

 

 

〜霧の湖〜

 

 

遠くに紅魔館が見える霧の湖を飛ぶ私

 

以前はこの湖の先にある妖怪の山の山麓に幻想郷と冥界とを繋ぐ結界があったんだが…

 

 

魔理沙「うー…またお尻痛くなってきた…」

 

 

少し姿勢を低くして飛ぶ魔理沙

 

 

魔理沙「ん?…あいつらは…」

 

 

湖のほとり、廃洋館が立つその場所で黒、白、赤と、目立つ3色の少女達がいた

 

共通しているのは各々てっぺんに小さな月、星、太陽のシンボルを象ったセーラーキャップのようなものを被っている

 

 

1人はアリスに負けないくらい真っ直ぐで綺麗な金髪ショートに月のシンボルがついた黒いセーラーキャップを被り、白いシャツを下に黒のベストを着て、黒のミニスカートを履いた真面目そうな表情の少女ルナサ

 

もう1人はまるで氷を思わせるような薄水色の少しウェーブのかかったショートヘアに太陽のシンボルをつけた白のセーラーキャップを被り、裾にフリルのついた白の長袖ワンピースを着たおっとり顔の少女メルラン

 

3人目は赤茶色のくせっ毛のショートに星のシンボルをつけたセーラーキャップを被り、白のシャツに赤いベストとミニスカートを履いたニコニコ顔の少女リリカ

 

 

湖の廃洋館に住む騒霊、プリズムリバー三姉妹である

 

 

3人が立っている場所に降り立つ魔理沙

 

 

リリカ「だから永遠亭に連れてった方が良いって」

 

メルラン「寝れば怪我なんて治るわよ〜」

 

ルナサ「……あんまり人のいるところには連れて行けないし…もう少し様子をみましょう」

 

 

 

魔理沙「…よお、騒がし音楽隊」

 

ルナサ「…魔理沙?」

 

メルラン「あ〜魔理沙だ〜」

 

 

魔理沙「何こそこそ話してるんだ?お前ら」

 

 

リリカ「え?あーいや…あはは」

 

 

魔理沙「??」

 

 

リリカと魔理沙の間にルナサが入ってくる

 

ルナサ「…貴女こそ…こんなところまで何か用?」

 

魔理沙「ん、幽々子のところへ行こうと思ってな」

 

ルナサ「なら早く行けば?」

 

 

ルナサの言葉にムッとする魔理沙

西行妖異変時に三姉妹と対峙した時からルナサだけは身内以外に対して素っ気ない話し方だったと思い出す

 

魔理沙(まぁ、こいつの場合、自身の能力のせいでもあるんだが…)

 

 

魔理沙「はいはいっと…あんま悪さするなよお前ら」

 

 

メルラン「その言葉、そのままお返しするわ〜」

 

 

再度箒に跨る魔理沙

そろそろお尻は限界である

 

 

魔理沙「…あー…そうだ」

 

 

ルナサに背を向け喋り出す魔理沙

 

ルナサ「…まだなんかあるの?」

 

 

魔理沙「…誰か怪我人がいて、外に連れ出せないなら直接永琳やうどんげを連れてくれば良いんじゃないか?」

 

 

ルナサ「…」

 

 

魔理沙の言葉にメルランとリリカは思わず顔を合わせる

 

 

魔理沙「…じゃあな」

 

 

山麓に向かって飛んで行く魔理沙

 

 

ルナサ「…リリカ、メルラン…」

 

リリカ「はいはい」

メルラン「呼びに行ってくるわ〜」

 

ルナサの呟きにリリカとメルランは廃洋館を出発する

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

〜白玉楼〜

 

 

やっと着いた…

もうお尻の痛みは限界突破で、桃の部分は3つに割れてるだろうな

 

…しっかし、相変わらず凄い庭だな…

日本庭園って言うのか?

…広すぎだろ…

 

 

…妖夢だろうなぁ

 

 

魔理沙「おーい!幽々子ー!いるかー!?」

 

 

 

 

妖夢「…げっ…」

 

 

玄関の戸が開いておかっぱ頭と目が合った瞬間これだ…

 

…軽く傷つくぜ

 

 

魔理沙「よぅ…妖夢」

 

 

妖夢「何か用?魔理沙」

 

 

腕を組んで眉間に少しシワを寄せる妖夢

 

 

 

魔理沙「…ご挨拶だな…幽々子はいるか?」

 

 

妖夢「…要件は?」

 

…かぁー…この堅物が…

 

 

魔理沙「…らちがあかないな…ん?」

 

 

…妖夢の隣にいるのは…誰だ?

 

 

魔理沙「…お前の半霊…擬人化も出来たのか?」

 

 

妖夢は自分の半霊とジャンヌを見てから

 

 

妖夢「違うわよ!この人はジャンヌさん!…訳あって白玉楼に住んでる人よ」

 

 

ジャンヌ「ジャンヌです、初めまして」

 

 

…そんな深々とお辞儀するなんて…品もいいし、良いとこのお嬢様かよ…

 

 

魔理沙「ああ、霧雨魔理沙だ。なんでその格好してるんだ?」

 

 

妖夢「…い・ろ・い・ろ!あったのよ!…本当に何の用よ!」

 

 

幽々子「あら~白黒ちゃんじゃないの」

 

 

気づけば妖夢の後ろに立ってた幽々子

 

 

魔理沙「…幽々子…少し話してもいいか?」

 

 

 

幽々子「…お上がりなさいな」

 

 

そう言って幽々子は私に手招きして客間の方へ行く

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

長机を挟み、お互い座布団に座る幽々子と私

 

 

幽々子「…それで?珍しく血相変えてどうしたの?」

 

魔理沙「ああ…実は霊夢が行方不明になったらしい…何かしらないか?」

 

 

幽々子「あら?紅白が?」

 

 

魔理沙「…と言うのもな…」

 

 

私はは幽々子に今までのことを話した

 

博麗神社での霊夢の態度、文からの連合の話、あうんの言っていたこと

 

 

 

 

幽々子「ふふ…プリティー連合ね…」

 

 

あ…そうか、幽々子は会合に呼ばれてなかったのか…

 

笑ってるけど笑ってないな、こいつ

 

 

幽々子「残念だけど紅白の事はわからないわ、力になれなくてごめんね」

 

 

魔理沙「…そうか…いや、構わない…ところであの金髪の子は?」

 

幽々子「あら、ジャンヌちゃん?彼女は白玉楼の新しい庭師補佐よ」

 

 

魔理沙「補佐って…いや、そう言う事聞いてるんじゃなくて…」

 

 

幽々子「…気になるの?」

 

 

幽々子は何もしてないのになんというか…

 

圧みたいなもの感じる

…背筋が冷たく感じる

 

 

幽々子「…人間か、妖怪か?」

 

 

魔理沙「?…あいつ人間じゃないのか?」

 

私の問いに幽々子は外に目線を向ける

釣られて私も日本庭園の見える外を見る

 

 

幽々子「さぁてね…でも今幻想郷では外来人とは別に人間でも妖怪でもない者たちが集まりつつあるわ」

 

 

魔理沙「…者たち?…そいつら、霊夢がいなくなった事と関係あるのか?」

 

 

幽々子は私の目を見てから息を1つ吐き

 

幽々子「あくまで私の予想…予想だけで言えば」

 

 

 

幽々子「…博麗の巫女がいなくなった事、そして人ではない者達の幻想入り…あとはプリティー連合?」

 

 

幽々子「…私は全て繋がってる気がするわ…そして必ず誰かが裏で手を引いてる」

 

魔理沙「…誰か…」

 

 

幽々子はニコッと笑って

 

 

幽々子「魔理沙の言う狛犬ちゃんが言ってた"懐かしい感じの人"かもしれないし、違うかもしれない」

 

 

魔理沙「…」

 

 

私は横に置いてあるいつものとんがり帽子を手に持ちじっと帽子を見つめる

 

 

裏で手を引いてるヤツ…

そいつが博麗神社にいた"懐かしい感じの人"なのか?

 

じゃあ霊夢は騙されて…いや、操られてるのか…

 

 

…まさか霊夢が黒幕だなんて事は…

 

 

だめだな…嫌な考えしか思い浮かばない…

 

 

 

魔理沙「…裏で手を引いてるヤツってのは…」

 

 

幽々子「それを調べるのは貴女達の仕事でしょう?私が教えてあげられるのはヒントだけよ」

 

 

この意地悪ピンクめ

 

 

幽々子「…でも一つだけ答えを教えてあげる」

 

魔理沙「!?」

 

 

幽々子「…少なくとも紅白ちゃんは黒幕じゃないわよ、黒幕とは関係あるでしょうけどね」

 

 

こいつ…心を読んだのか!?

 

 

幽々子「…貴女の話を聞いて、もし私が貴女だったら紅白ちゃんに対して変な考えを持つだろうしね…一応言っといてあげるわ」

 

 

…正直ほっとした

 

前々から思ってたがこいつ…幽々子の言葉には何故か…こう…

 

 

確信を持てるというか…

 

永夜抄異変然り、神霊異変然り…

 

こいつの言葉はなにもかもが御見通しのように感じる

 

 

幽々子「それと…もう一つ」

 

魔理沙「!?」

 

 

幽々子「この幻想郷、頭の良い子は沢山いるけど、ちゃんと人の話を聞いて一緒に考えくれる人はそう多くないわ」

 

 

魔理沙「…そうだな、たしかに腹立たしいほどに頭の切れるヤツや勘の鋭いヤツは多いけど…親身になって考えてくれたりするヤツはそう多くないな」

 

 

幽々子「でしょう?なら地底にいる悟り妖怪の子に相談してみるのはどう?私は直接会って話した事はないけど、聞く限りだと真面目で色々考えてくれる子って聞いてるから」

 

 

悟り妖怪…地霊殿のあいつか

 

幽々子「それと地底は水がとても良い水質なんですって、その水で出来た水まんじゅうなんて美味しいんだろうなぁ…」

 

 

…ああ、そーゆーことか

…食いしん坊め

 

 

幽々子「…って感じかしら」

 

 

魔理沙「…ああ」

 

 

 

 

妖夢「失礼します」

 

 

声をかけてから襖を開く妖夢

その後ろには腰に帯刀したジャンヌがいる

 

 

妖夢「…どうぞ」

 

 

幽々子と私の卓にお茶と一口サイズのよもぎ餅の乗ったお皿を置く妖夢

 

 

幽々子「これこれ♪」

 

 

幽々子はすぐさまよもぎ餅に食らいつく

…食いしん坊め

 

 

幽々子「んむんむ…とにかく…あんまり気にしない方が良いわよ、魔理沙」

 

 

魔理沙「…」

 

 

…ああ、霊夢が黒幕では無さそうだって事で安心はした…でもまだその霊夢を見つけれてないんだ

 

 

私は立ち上がり、帽子を被る

 

 

魔理沙「幽々子、突然悪かったな…もう私は行くよ」

 

 

幽々子「あらそう…妖夢、ジャンヌちゃん、見送ってあげて」

 

 

妖夢&ジャンヌ「はい」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

玄関口

 

妖夢達に背を向けブーツを履く

色々なことが頭の中を駆け巡るが今は地底…さとりの所へ向かうか

 

 

妖夢「…」

 

 

ああ…妖夢の視線を感じる…

なんだよ…邪魔者はとっとといなくなれってか?

 

…もう出て行くよ

 

 

魔理沙「…じゃあ、邪魔したな」

 

 

私は立ち上がり、妖夢に一言謝る

そのあと入り口の扉を開け外に出ようとした時

 

 

妖夢「魔理沙っ!」

 

 

え?

 

 

妖夢「なっ…何があったか知らないけど…きっと大丈夫よ!」

 

 

魔理沙「…」

 

 

ジャンヌ「…妖夢…様」

 

 

妖夢…顔赤いぞ…

 

 

妖夢「…今まで霊夢と2人で…時には私や早苗とかといろんな異変解決してきたじゃない…きっと今回も上手くいくわよ…だから元気出しなさいよ!」

 

 

ジャンヌ「…」

 

 

魔理沙「…妖夢」

 

 

妖夢、おまえ…

 

ジャンヌ「そ、そうですよ!…私は何も知りませんし、貴女とは初対面ですけど…貴女の様な綺麗な方に暗い顔は似合いません!…げ、元気を出してください!」

 

 

妖夢「…」

 

 

…ジャンヌ

 

 

魔理沙「……ふふっ」

 

 

こいつら…

 

 

妖夢「…え?」

 

 

魔理沙「なんか…妖夢が2人いるみたいだな…お節介焼きめ」

 

 

妖夢「んなっ…!」

 

 

私は2人に背を向け

 

 

魔理沙「…少し元気出たよ…ありがとうな妖夢…ジャンヌ…」

 

 

本当、ちょっとだけど元気出た…

 

 

恥ずかしさも少し残し私は外に出て、箒に跨る

 

 

魔理沙「じゃあな!」

 

 

白玉楼を出発する

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

薄暗い冥界を飛行中

 

空は常に霧のようなモヤに包まれ、周りの視界は永遠のように広がる桜の木々…ふと下を見ると木の陰に黒い布を被ったような奴らが何体かいた

 

 

魔理沙「…あれが前妖夢の言ってた怨霊か…おちおち地面なんて歩けないな」

 

 

以前白玉楼近辺の冥界について妖夢から聞いたことがある

 

冥界では昼も夜も常に怨霊が白玉楼の周りを徘徊しており、浮遊霊や偶然迷い込んだ人間などを襲っている、って

 

 

魔理沙「…」

 

 

にしても幽々子…本当にどこまで知ってるんだろう…

 

 

常にニコニコしてなにも考えて無さそうなくせに…

 

 

しかしまぁ…

 

 

魔理沙「…もう敵には回したくはないな」

 

 

西行妖異変の事を考えれば当然だ

弾幕ごっこだから勝てたものの、弾幕ごっこ無しのマジの戦いだったら速攻殺されてるぜ…

 

 

 

そんな事を考えながら私は冥界の出口、幻想郷と繋ぐ結界へ到着する

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

魔理沙「…ああ…蒸し暑い」

 

 

冥界から妖怪の山の山麓に出る

辺りはすでに真っ暗である

 

 

魔理沙「…妖怪の山か……少し休んで行くか」

 

 

魔理沙はそう呟き、山の山麓から少し上へ飛んで行く

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

数カ所ある妖怪の山の尾根へ到着する魔理沙

 

尾根の少し先に焚き火が見える

 

魔理沙「んー…あいつかなぁ?」

 

 

 

尾根の端より内側、少し凹んだ鞍部に魔理沙のいる方を背に焚き火の前で長い刀を砥石を使って研ぐ白髪の少女がいた

 

 

気づかれないようにこっそりと少女の後ろを歩く魔理沙

 

 

「勝手に妖怪の山に入って来てもらっては困りますね、魔理沙さん」

 

魔理沙「!」

 

 

魔理沙に背を向けたまま声をだす白髪の少女

 

 

魔理沙「…気づいてたのか」

 

 

少女「私の能力知ってますよね?貴女が冥界からの結界を抜けた所から見えてましたよ」

 

 

少女が魔理沙の方を向く

 

 

赤い頭襟を被り、その横からぴょこんと出た白い犬耳、肩までの艶のある白銀のショートヘア、脇のない白い狩衣に紅葉の刺繍が入った黒袴、臀部、お尻からは真っ白でふわふわな尻尾が出た妖怪の山の哨戒天狗、白狼天狗の犬走椛である

 

 

魔理沙「…えーと…千里眼…だっけ?」

 

椛「…まぁ、そんな感じですね…というか勝手に山に入ってもらっては困ります」

 

魔理沙「…まぁ、いいじゃないか…」

 

魔理沙はもそもそと椛の横に座る

 

 

椛「…ちょっと…」

 

魔理沙「少し休んだらすぐ出て行くよ…今だけ大目にみてくれ」

 

 

椛「…いつもの貴女らしくないですね、何かあったんですか?」

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙は焚き火をじっと見る

 

 

魔理沙「…幻想郷旅行だ…」

 

 

椛「…」

 

 

椛は思う、いつもなら大した用事がなくても無理矢理山の中に入って行く魔理沙がこんなにも小さく見えた

 

そして椛は知っている

魔理沙は博麗の巫女の件で動いているのを

 

 

椛「…この鞍部より先には行かないようにしてくださいね、きっと貴女のお目当てはありませんから」

 

 

魔理沙「ああ…悪いな」

 

 

悪いな、初めて魔理沙から言われた謝罪の言葉に椛は少し戸惑う

 

 

椛「…あー…食べます?」

 

 

椛は懐から紙の包みを取り出し魔理沙に差し出す

 

 

魔理沙「?」

 

椛「干し肉です…猪の」

 

魔理沙はジト目で椛を見る

 

 

椛「…人間のじゃありませんよ、いらないなら良いですよ」

 

 

魔理沙「いや、ありがとう…少しもらうよ」

 

 

魔理沙は椛から干し肉を一切れ貰い、匂いを嗅いでからかじる

 

 

魔理沙「んぅ…しょっぱ美味い」

 

椛「そうですか」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

干し肉をもらった後、魔理沙は鞄を枕に横になる

 

 

椛「…私のこと信用しすぎでしょう…」

 

 

仮にも妖怪の真横で寝息を立てている魔法使いの少女

 

 

椛は研いでいた刀を鞘に収め、焚き火を砂で消す

 

 

椛「…はぁ、仕事中なのに…」

 

 

 

 

「おやおや、人攫いですか?やはり貴女も天狗ですねぇ」

 

 

どこからか聞き覚えのある声がする

 

 

椛「…見てたでしょう?彼女から勝手に入ってきたんですよ」

 

 

5メートルほど離れた木の枝に朝魔理沙に新聞を渡した射命丸文が立っていた

 

 

文「知ってますよ、でも随分と貴女も丸くなりましたね」

 

 

椛「…別に…知ってる顔だからですよ」

 

文「…」

 

 

文は木から降り、魔理沙の寝顔を見てふ、と笑う

 

 

文「こうしてみると、やっぱりまだまだ子供ですね」

 

椛「…そうですね」

 

文「…椛、天魔様からのお話聞きました?」

 

 

文は魔理沙から視線を変えずに椛に問いかける

 

 

椛「…連合の件と博麗の巫女の件を聞きました」

 

 

文「そう…」

 

 

椛「…」

 

 

文「もしもの時は…」

 

椛「?!」

 

 

椛は文の顔を見て少し驚く、いつものヘラヘラした文ではなく、真面目な表情をしているのだ

 

 

文「もしもの時は彼女に協力してあげなさい、椛」

 

 

椛「!?」

 

 

胡座をかいていた姿勢から片膝をつけ、文に対し頭を下げる

 

 

文が鴉天狗としての顔をした以上、格下である白狼天狗の椛は文に対し膝を付けなければならないのだ

 

 

椛「…天魔様のご命令でしょうか」

 

 

文「私個人の…お願いよ」

 

 

椛「…はっ」

 

 

 

文は尾根の端へ進む

そこから見える幻想郷の夜の景色は外の世界の都会の夜景とはかけ離れたほど静かで、暗く、寂しい

 

 

文「…夕方はとても綺麗なのにね」

 

 

文は再度椛の方へ近づく

 

 

文「…"あの子"の様子は?」

 

 

椛「はっ…今山小屋で寝ています」

 

 

文「そう…良かった」

 

文は誰が見ても分かるほどホッとしている

 

 

椛「…他の天狗にはまだバレてはいませんが…妖怪の山にいる以上は時間の問題かと…」

 

 

椛の言葉に文は腕を組む

 

 

文「…なるべく私も時間を見つけて様子を見て来るようにするわ…」

 

椛「私も見張りを抜けながらですが、あの子の様子を見るようにします」

 

 

文「…あの子のことも、魔理沙の事も…迷惑かけるわね、椛」

 

 

 

椛「いえ、文様に比べれば私など何もしていないのと同じです」

 

 

文「…でもまさか…私達の前に現れたのがあの子とは…ね」

 

 

 

椛「…チェンチ…」

 

 

椛は目を伏せ少女の名を呟く

その顔はまるで大切な人を想うかのように

 

 

 

 

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