東方香靈記   作:114

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気づけば書き始めて1年経っていました


第24話「8月26日前編」

真っ暗闇…何処からか声が聞こえる

 

 

懐かしい…

 

 

とても大好きな人の声と…

 

 

とても大嫌いな人の声…

 

 

 

『麻理沙…お前ももう7つだ、魔女ごっこはやめなさい』

 

 

『あなた…麻理沙の気持ちも考えてあげてください…』

 

 

 

『ごっこじゃないよ、お父さん…私は魔法使いになりたいの』

 

 

 

ゆっくり瞼を開く

まるでノイズが入った様な景色…

 

 

私の家…いや、私達の家の…

 

 

窓から見える夕焼けに染まる町…そう、私の部屋…

 

 

窓の外から夕日の光が部屋に入ってくる

 

 

とても暑くて…息の詰まりそうな部屋

 

 

 

 

『お前は霧雨家を継ぐんだ、いつまでも遊んでいるんじゃない』

 

 

 

 

『遊んでないよ、私本気だよ』

 

 

視界が再度真っ暗になる

 

 

 

『どうして私を睨むの?お父さん』

 

 

 

お父さんの顔は見えない、でも目線を感じる

 

 

 

『どうしてお母さんが泣いてるの?お父さん』

 

 

母の姿は見えない、でも母のすすり泣く声が聞こえる

 

 

 

『––––––––どうして…』

 

 

嫌だ

 

 

 

嫌だ!

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

8月26日

 

 

 

 

魔理沙「…はっ!?」

 

 

 

魔理沙は目をバチっと開け飛び起きる

 

魔理沙「!?…う…は…?」

 

 

空は夜空、辺りは少し蒸し暑く、地面の硬い鞍部で寝てたせいか少し背中が痛い

 

 

椛「…随分起きるの早いですね…まだ四半刻しか寝てなかったですよ」

 

 

魔理沙「…」

 

声のする方を見ると魔理沙が寝る前といる位置が変わらず椛が火の消えた焚き火あとの前に座っていた

 

 

魔理沙「…ああ…そうか…ここで寝てたのか…」

 

 

垂れてたヨダレを袖で拭く魔理沙

 

 

椛「なんだかうなされてましたけど、いい夢を見れなかったんですか?」

 

 

魔理沙「…ああ…まぁな…」

 

 

 

椛「…どんな夢を?」

 

 

椛は悪夢を見て飛び起きたであろう魔理沙を気遣ってか、変に刺激しない様に優しい口調と声で魔理沙に問いかける

 

 

魔理沙は遠くに見える山々をぼうっとした眼差しで見つめながらぽそぽそと喋り出す

 

魔理沙「…昔の…昔の頃の夢だ…」

 

椛「…昔?」

 

 

魔理沙「ああ、お父さんと…お母さんの…」

 

 

そこで魔理沙ははっと気づく

 

 

魔理沙「な、なんでお前に言わなきゃならないんだよ…」

 

 

顔を赤くして椛を少し睨む魔理沙

 

 

椛「…そうですか…」

 

 

そう一言言い椛は立ち上がる

 

 

椛「魔理沙さんも、色々あったんですね」

 

 

魔理沙「な…なんだよ…」

 

 

椛「…いえ」

 

椛は魔理沙に背を向け妖怪の山、もとい眼の先にある小屋を見る

 

 

椛「私はそろそろ哨戒任務に戻ります、貴女はどうします?」

 

 

魔理沙「…私ももう行くよ」

 

 

椛「寝なくて良いんですか?私達妖怪は多少寝なくても大丈夫ですが貴女達人間は睡眠不足だと色々困るのでは?」

 

 

魔理沙「あー…まぁ良いんだ…やることあるし」

 

 

椛「博麗の巫女探し、ですよね?」

 

 

魔理沙は一瞬驚くが

 

 

魔理沙(まぁ、天狗だし…新聞で知ったのか)

 

 

魔理沙「…ああ」

 

 

椛「なら残念ながら妖怪の山には博麗の巫女はいませんよ、千里眼を持つ私が言うから間違いありません」

 

 

魔理沙はがっくりと肩を落とす

 

 

魔理沙「…そうか、ありがとう…」

 

 

 

椛は魔理沙に背を向けたまま顔だけ振り返りふ、と笑い、いつかの異変時の魔理沙の言葉を思い出す

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『私はそいつを倒しに来た勇者だ。ガンガン行く勇者だぜ』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

椛「ありがとう、ですか…貴女も随分変わりましたね」

 

 

魔理沙「はぁ?」

 

 

椛「以前の貴女なら…」

 

 

そこまで話して椛は止め、首を横に振ってから再度話し始める

 

 

椛「…もう行くんでしょう?お気をつけて」

 

 

魔理沙「あ、ああ…」

 

 

魔理沙は立ち上がり服についた砂を払うと箒に跨る

 

 

 

魔理沙「…地底に行きますか」

 

 

 

目標は妖怪の山の側面にある地底への大穴である

 

 

ーーーーーーーー

 

〜地底と地上を結ぶ洞窟〜

 

 

このまま進めば旧都…

 

そういえば前は土蜘蛛がこの洞窟内に居たけど…

 

魔理沙「今日はあいつ…いないんだな…」

 

まぁ会ったところで弾幕ごっこやらさせるんだけどな…

 

 

 

長い長い洞窟を抜けると旧都へ続く橋に出た

 

 

魔理沙「…ええと…帰らずの橋…だっけ?」

 

 

「迎え橋、よ」

 

 

う…この声は…

 

 

パルスィ「はぁい、お久しぶり、魔理沙」

 

 

ええと…橋…あ、そうだ水橋…えーと…

 

 

パルスィ「パルスィって呼んでね、魔法使いさん」

 

 

地底異変の時のアイツがニコニコと笑顔で橋の手摺に腰掛けて私に手を振っていた

 

 

魔理沙「…久しぶりだな、橋の番人様は私を追い返すのか?」

 

 

私は箒に跨ったままパルスィに問いかける

 

 

パルスィ「いいえ、貴女達が地底で暴れてからは不可侵の約束事の意識も薄れてきたからね、別に追い返しはしないわ」

 

魔理沙「そうか、なら先に行かせてもらうぜ」

 

 

私はパルスィを横目に徐行しながら橋を飛び進む

 

 

パルスィ「今回は地底に何の用?」

 

 

…私は正直コイツが苦手だ

 

 

笑顔のくせに棘のある言葉

 

何も考えてなさそうなのに心の中を見透かされてる感じ

 

 

気を抜いたら何もかもを飲み込んできそうな薄暗い圧

 

 

魔理沙「…地霊殿に用事があってな、先を急いでるんだ」

 

 

関わりたくない

 

 

パルスィ「あら残念、ゆっくりお話したかったのに」

 

 

嘘つけ、そんな事微塵も思ってないくせに

 

 

魔理沙「ゆっくりしてる暇はないんだ」

 

 

パルスィ「なら、気をつけて行ってね、今の貴女の顔、橋姫の私より酷いわよ」

 

 

魔理沙「え?」

 

 

パルスィの言葉に背筋がゾッとする

 

 

魔理沙「…笑顔でそーゆー事言うのやめてくれないか?」

 

 

パルスィ「あはは…そうね、ごめんなさい」

 

 

魔理沙「…」

 

 

パルスィ「不思議ね…貴女から感じる感情の中に嫉妬の念があるわ…」

 

魔理沙「!?」

 

 

パルスィ「…誰かに大切な物でも取られた?」

 

パルスィはふわりと浮いて私の真横に近づいてきた

 

 

パルスィ「此処は人から忌み嫌われた妖怪達の世界、負の感情やオーラ、エネルギーに過剰に反応して襲いかかってきたり憑依してくる者ばかりよ」

 

 

魔理沙「…お前もその1人だろうが!」

 

 

思わず声を上げてしまう

 

 

パルスィは相変わらず涼しい顔で

 

 

パルスィ「さぁどうかしら?…でもきっと貴女と私、良いお友達になれると思うわ」

 

 

…勘弁してくれ

 

 

パルスィ「…引き止めてごめんなさいね、じゃあね」

 

 

そう言ってパルスィはまた橋の手摺の所へ降りる

 

 

魔理沙「…」

 

 

私はパルスィに何も言わずに旧都へ向かう

 

 

 

…緑色の眼はずっと私の方を見ていた…

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

旧都上空…いや、地底なのに上空って言うのかな…

 

パルスィの言葉が気になったせいで旧都の奴らに見つかりにくくなるように高めに飛んでいた

 

 

 

…そういえば前はこの辺で勇儀に見つかって弾幕ごっこしたっけ

 

 

魔理沙「…なにが嫉妬の念だ…」

 

 

ん?

あそこはたしか…飲み屋街の…なんとか横丁…

 

 

 

いや、なんか…

変な感じだ…前来た時よりも…

 

鬼達が荒れてるっていうか…

 

 

 

「問おう、お前は勇者なのか?それとも愚か者なのか?」

 

 

魔理沙「!?」

 

 

声に気がついて後ろを振り向くとそこにいたのは薄緑色のショートヘアに黄色のリボンが付いた黒のキャペリンを被り、上はフリルの付いた薄手の黄色いブラウス、下には薄い薔薇の模様が入った緑色のスカートを履き、身体中から出た数本の長い管から繋がった閉じたサードアイ

 

 

さとり妖怪、古明地さとりの妹、古明地こいしがひらひらと私に手を振りながら笑顔で声をかけてきた

 

 

魔理沙「…こいし…」

 

 

こいし「なんちゃって!…地底になにかご用〜?」

 

 

こいつなら…

鬼やパルスィに比べればまだ話が通じるか…

 

 

魔理沙「…お前の姉さんに用事があってここまで来たんだ」

 

 

こいし「あら、お姉ちゃんのこと知ってるの?お友達?」

 

 

…あれ?…え?

 

 

魔理沙「わ、私だ…覚えてないのか?」

 

 

 

こいし「わたしだ?…お姉さんだれ?」

 

 

こいしは不思議そうな顔で私を見る

 

 

魔理沙「ま、魔理沙だ!…霧雨魔理沙!」

 

 

こいし「ふふ♪」

 

 

魔理沙「!?」

 

 

こいしはふわりと私の頭上を越え、地霊殿の方角、私の正面に飛んでくる

 

 

こいし「ちがうよー♪お姉さんは魔理沙じゃないよっ!」

 

 

 

魔理沙「は!?なに言って…」

 

 

こいし「だって魔理沙は…そんな弱々しくないもーん」

 

 

魔理沙「…!?」

 

 

弱…?こいつなに言って…

 

 

こいし「だから貴女は偽物、本物なら…」

 

 

こいしの身体から薄緑色のオーラが煙の様に出てくる

 

 

魔理沙「…!!」

 

 

こいし「…私と遊びきってね♪」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

こいしは右手を魔理沙に向けるとその指先に緑色に光る手のひらサイズのカードが出来上がる

 

こいし『表象、夢枕にご先祖総立ち』

 

 

魔理沙「…弾幕ごっこ!?」

 

 

こいしがスペルを宣言すると、彼女の背後から何本もの光の柱が放射線状に飛び出て、魔理沙を襲う

 

 

魔理沙「っちっ!」

 

 

それを軽く避ける魔理沙

 

 

魔理沙(…!アイツの集中力を切れるのを待つか?いや…そんな時間はない…なら!)

 

 

 

こいしからの弾幕を避けながら右手に魔力を込める

 

 

魔力を込めた右手を自分の左胸の前へ持っていくと魔理沙の身体の周りにいくつもの小さな星が浮かび上がる

 

 

魔理沙「…とっとと終わらせる!」

 

 

こいしに向けいくつもの星を一直線状に放つ

 

 

こいし「おっとっと」

 

 

魔理沙の弾幕をのびのびとした動きで避ける

 

 

こいしからの弾幕は相変わらず魔理沙を襲う

 

 

こいしから繰り出される広い放射線状から始まる光の柱の弾幕は魔理沙に向け飛び、弾幕が外れると外れた弾幕は反対側から再度襲ってくる

 

 

魔理沙「さっさと集中力を切らせてやる!」

 

 

とめどなく飛んでいく魔理沙の星の弾幕

 

 

こいし「っとぁっ!」

 

 

星の弾幕がこいしの脇腹をかすめる

その瞬間、こいしのスペルは集中力切れとなる

 

 

こいしは頰を膨らませ

 

 

こいし「んもーっ!やるなぁお姉さん!」

 

 

 

魔理沙「…だからっ!…くそっ!」

 

 

 

こいし「次はそう簡単に終わらせないよっ」

 

こいしは再度指先に光るカードを作る

 

 

こいし『本能、イドの解放』

 

 

魔理沙「くっ!」

 

 

スペル宣告後、こいしの身体中から2枚に重なったハート型の弾幕が交差する様に魔理沙に襲いかかる

 

 

魔理沙「またっ…めんどくさい弾幕をっ!」

 

 

 

襲いかかるハートを左右に避ける魔理沙

魔理沙も負けじと星の弾幕を繰り出す

 

 

魔理沙「…仕方ない!」

 

 

そう呟き魔理沙は鞄から手のひらサイズの八角系の道具を取り出す

 

魔理沙の愛具、ミニ八卦炉である

 

ミニ八卦炉をこいしに向ける

 

 

魔理沙『恋符、マシンガンスパーク!』

 

 

魔理沙の星の通常弾幕よりも大きな光が数発ミニ八卦炉からこいしへ向け発射される

 

 

こいし「…ぅおおっ?」

 

 

ミニ八卦炉から放たれた光はこいしに直撃、直後こいしのスペルへの集中力が切れスペルが中断される

 

 

こいし「うへぇ〜…」

 

 

目をくるくる回しながらふよふよと空を漂うこいし

 

 

魔理沙「…これで終わりだ!」

 

 

魔理沙は再度ミニ八卦炉をこいしに向ける

 

 

 

 

魔理沙『恋符、マスタースパーク!!」

 

 

直前に繰り出したマシンガンスパークよりも光を溜めた太いレーザーがこいしに放たれる

 

 

どぉん、と星が輝く様なキラキラした爆発がこいしを覆った

 

 

魔理沙「…よし」

 

 

爆発によってこいしの周りに生み出された煙が晴れていく

 

 

こいし「うう〜…敗けたぁ…」

 

 

服が少しボロボロになったこいしが白旗を掲げている

 

 

こいし「本当に魔理沙だったのね〜…」

 

 

魔理沙「…だから言ったろ…さぁ、先に行かせてもらうぜ」

 

 

 

こいし「うーん…いいよ〜…でも気をつけてね」

 

魔理沙「ん?」

 

 

こいし「今なんか旧都がへんなのよ、みんな殺気立ってるっていうか…」

 

 

魔理沙「ああ…なんかそんな感じはするな」

 

こいしはボロボロになりながらも魔理沙に対してにこりと笑い

 

 

こいし「…なんかみんな気持ちが高揚してるみたい」

 

魔理沙「…高揚?…なんでだ?」

 

 

 

こいし「さぁ?…誰かの力じゃない?『気持ちを高揚させる程度の能力』…とか」

 

 

魔理沙「…地底の妖怪にしては似合わない能力だな」

 

 

こいし「どうかぁ〜鬼たちにはピッタリな能力だと思うけど」

 

 

魔理沙「…まぁいいや…とにかく先に行かせてもらうぜ」

 

 

こいし「はぁーい、お姉ちゃんいじめすぎないでね〜」

 

 

魔理沙「…」

 

魔理沙「…さっきの、どういう意味だ?」

 

 

魔理沙はこいしに背を向けたまま問う

 

こいし「んー?」

 

魔理沙「…弱々しいって…」

 

 

こいし「…」

 

 

こいしは魔理沙の背中を見てからにぃっと屈託のない笑顔を作る

 

 

こいし「わかんないっ!なんとなくそう感じたから!」

 

 

魔理沙「…そう…か…」

 

 

 

 

魔理沙はこいしと別れ地霊殿へ向かう

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

魔理沙「…ふぅ」

 

 

ようやく着いた…地霊殿…の、門

 

 

 

 

魔理沙「まぁ…ノックしても開けてくれないよな…」

 

中にはどっか窓から入るか

 

 

魔理沙「ん?」

 

 

だれか地霊殿の玄関扉から出てきた

 

ありゃ確か…地獄鴉の…

 

 

空「ふんふんふふん♪」

 

 

私よりも頭一つ高い身長に少し量の多い腰まである長い黒髪、緑色のリボン、上はフリルのついた白いシャツの胸元には真っ赤な目玉の様な宝石を付け、下はリボンと同じ緑色のスカート

 

背中からは大きく真っ黒な鴉の羽根が出た灼熱地獄の温度調整が仕事の地獄鴉、霊烏路空だ

 

手にはじょうろを持っている

 

魔理沙「…今日は制御棒とマントは付けてないのか」

 

 

 

…なら…

 

 

私は門を越え、空の元まで箒に乗り、飛んでいく

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

空「綺麗に咲いたね〜」

 

 

空は玄関前の花壇の薔薇にしゃがんで笑顔で水をあげている

 

 

魔理沙「よお」

 

 

空「にゅ?」

 

空がしゃがんだまま首だけで振り向くと後ろには腕を組んで仁王立ちした魔理沙が立っていた

 

 

空「あ、えーと…お客さん?」

 

魔理沙(こいつもかよ…いや、まぁ、こいつの場合はただのトリ頭か…)

 

 

魔理沙「私だよ、魔理沙だ」

 

 

空「…ああ、こないだの魔法使い…」

 

空は少し表情が拒み、立ち上がる

 

手にはじょうろを持ったままである

 

 

 

空「…何か用?また悪さしにきたの?」

 

魔理沙「お言葉だな、お前の主人に用があるんだ、中へ入っても良いだろう?」

 

 

空は腕を組み、目を瞑り頭の中でさとりの言葉を思い出す

 

ーーーーーーーー

 

 

 

さとり『今日は勇儀さんとヤマメさんとお連れの男の人のお客様が来るからそれ以外の方はなるべく地霊殿に入れないようにね、ただ、知り合いの方なら私に一言知らせてから中に入れる様にしてね』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

空「…ふむ…」

空(さとり様…なんて言ってたっけ?)

 

 

空の記憶の中のさとりはこう言っている

 

 

さとり『今日は勇儀さんとヤマメさんが来るから…それ以外の人は地霊殿に入れないでね』

 

 

空「…」

 

カッと目を開く空

 

 

魔理沙「?」

 

 

空は花壇から玄関扉前までちょこちょこと移動してから魔理沙に向きなおり、両手を左右に広げる

 

 

空「通さんぞぉーーー!!!」

 

 

 

魔理沙「…仕方ないな」

 

 

魔理沙は鞄から再度ミニ八卦炉を取り出す

 

空「焔星!十凶……」

 

 

 

空は魔理沙に向け右手を掲げる

 

しかし右手で持っていたものはいつもの制御棒ではなく、緑色のじょうろだった

 

 

空(あっ…制御棒…)

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

魔理沙『恋符、マスタースパーク!』

 

 

空「…うにy…

 

 

ドガァァアッ

 

 

 

よしっ!鴉撃破!

 

 

 

「にゃああぁぁぁぁ…」

 

 

…おっと…やりすぎたみたいだな…

思わず猫娘のいるところまで貫通しちまった

 

 

鴉と猫を退治した私は即席の通路を歩き、応接室らしき場所へたどり着く、そこにはさとり妖怪が椅子に座ってお茶を飲んでいた

 

 

 

さとり「…お久しぶりですね…」

 

 

魔理沙「挨拶はいい!さとり!教えてくれ!」

 

 

あれ?…なんか思わず興奮してしまった…

 

 

ん?…誰だ…こいつ…

 

 

魔理沙「なんだ…客が来てたのか…」

 

 

優しそうな男…えーと、侍か?

 

私は侍に問いかける

 

 

利益「ああ、俺は…前…利益。外来人だ」

 

 

…ふーん

 

 

魔理沙「トシマス?私は霧雨魔理沙だ、悪いが急いでるんでな、少しさとりと話していいか?」

 

 

利益「ああ、いいよ」

 

 

お、やっぱ良いやつっぽいな

 

 

 

魔理沙「サンキュー、で、さとり…心当たりはあるか?」

 

 

 

思わず私はさとりの両肩を掴んで問い詰める

 

 

 

さとり「ま、魔理沙さん、近いです…そして痛いです…」

 

 

魔理沙「あ、ああ…悪い…」

 

 

あ…悪い…

さとりの両肩から手を離す

 

 

 

さとり「魔理沙さんの記憶を読んでお話はわかりましたが…残念ですが私は霊夢さんの事は知りません。」

 

 

 

…やっぱそうか…

一緒に解決策を考えてもらおうと思ってたけど…忙しそうだもんなぁ…

 

 

魔理沙「……そうか…わかった、あんがとな…」

 

 

 

思わずガックリと肩を落とす

 

 

 

 

利益「なぁ霧雨殿」

 

 

?…殿?

 

 

魔理沙「…?魔理沙で良いぜ」

 

 

 

利益「…魔理沙は誰か探してるのか?」

 

 

 

あー…まぁ、さとりがいるから変に嘘つく必要はないか

 

 

魔理沙「ああ、大切な友人を探してる」

 

 

 

 

 

利益「…どんな奴だ?見かけたら魔理沙が探していると伝えよう」

 

 

 

オイオイオイ…マジで良いやつかよ…

 

 

 

魔理沙「変わった奴だな…アンタ…人間か?」

 

 

利益「ああ」

 

 

 

魔理沙「博麗霊夢っていう巫女だよ…可愛い顔して無愛想な…脇丸出しの巫女だから見たらすぐ判るぜ」

 

 

…間違えではない…

 

 

利益「レイム、だな。わかった、もし見かけたら魔理沙が探していると伝えよう」

 

 

 

魔理沙「ああ!ありがとう…しっかし昨日今日で変な外来人が増えたなぁ…白玉楼にも剣持った知らない女がいたし、ミスティアの屋台にも見たことないおっさんが店番してたし……まぁいいや、じゃあ用事が済んだから私はもう行くぜ!」

 

 

 

利益「行く?何処へだ?」

 

 

…この後情報を得られるところは…

命蓮寺と紅魔館くらいかな…

 

まぁ…ざっくりでいいか…

 

 

 

魔理沙「地上だ!」

 

 

 

 

勇儀「おーい…壊した扉はどうするんだい?」

 

 

勇儀…いたのか…

 

 

 

魔理沙「私が壊したわけじゃないぜっと!」

 

 

 

そう言って私は箒に飛び乗る

 

 

 

魔理沙「扉が勝手に壊れたんだぜっ!」

 

 

善は急げ、さっさと行くか

 

 

 

魔理沙「…!?」

 

 

飛ぶ直前、さとりと目が合う

 

さとり「…」

 

 

あ…あー…目に光が宿ってない…

 

…扉、悪かったな…

 

 

私は地霊殿をあとにする

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

せっかく来たばかりだが、再度地上へ戻るため地霊殿から旧都を超え、迎え橋の上を飛ぶ

 

 

魔理沙「…」

 

魔理沙は橋を見るとパルスィは居なかった

 

 

魔理沙(…もうしばらくは会いたくないな)

 

 

魔理沙は迎え橋を超え、地上への洞窟へ入って行く

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

〜妖怪の山、山麓〜

 

 

2時間ほどで洞窟を抜け、山麓まで降りてきた魔理沙

 

 

《くうぅぅ…》

 

 

魔理沙のお腹から子犬の鳴き声のような音がした

 

 

 

魔理沙「さて…少し小腹がすいたな…」

 

魔理沙(人里に着くまでどっかなかったかな…)

 

 

魔理沙は下をキョロキョロ見ながら飛んでいく

 

 

 

魔理沙「…まぁ、この辺じゃ茶屋なんて無いよな…」

 

 

魔理沙(このまま…命蓮寺にでも当たってみるか…いや、その前に、やっぱ人里に一度降りるか)

 

 

魔理沙は人里に向かう

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

人里の入り口を上空から入り、商店街のある大通りへ向かう

 

 

魔理沙(まだ午前中でもやっぱ人多いな…お?…あそこは…)

 

 

魔理沙は一軒の店に狙いをつけ、店の裏側へ降りる

 

魔理沙「…また来てしまった…」

 

 

辿り着いたのは昨日入った団子屋だった

 

入り口に向かおうとした時女性の怒った声がした

 

 

「あなた!無礼ですよ!」

 

 

魔理沙「なんだなんだ?」

 

声が気になった魔理沙はそっと表の入り口側を見る

 

 

魔理沙「…あいつらは」

 

 

魔理沙が見たのは白昼堂々団子屋の前で戦闘態勢をとる2人の少女と、それを止めようとあたふたしている1人の半人半霊だった

 

魔理沙(妖夢とジャンヌ…鈴仙?)

 

 

ジャンヌと向かい合って戦闘態勢を取っているのは迷いの竹林、永遠亭の兎

 

 

腰まである長い薄紫色の綺麗な髪、頭頂部からぴょこんと生えた二本の兎耳、端整な顔立ちに真っ赤な眼、上は月のピンバッチを右胸に付けた白い半袖シャツ、下は紺のミニスカートを履いた鈴仙・優曇華院・イナバである

 

 

 

ジャンヌ「この程度の敵、私一人で十分です!わざわざ妖夢様の手を煩わせる程のものでもありません!」

 

ジャンヌは背中に背負った刀の柄を握り、姿勢を落とす

 

 

妖夢「ちょちょちょ待ってくださいって!この人は敵じゃありませんよ!」

 

 

両手をわたわたしながらジャンヌの前に出る妖夢

 

 

魔理沙「…」

 

 

なんとなく面白そうな光景に惹かれてか

、3人に近づく魔理沙

 

 

魔理沙「よお、なにしてんだ?」

 

 

鈴仙「魔理沙!?」

 

 

魔理沙の姿と妖夢のジャンヌへの対応の光景を見てた鈴仙が戦闘態勢を崩す

 

 

魔理沙「どういうことだ?こりゃ」

 

 

ジャンヌ「ま、魔理沙さん…この人が!突然妖夢様を襲ってきたんです!」

 

 

 

そう強く言い、鈴仙を睨むジャンヌ

 

 

魔理沙「襲った?」

 

 

魔理沙はジャンヌの言葉を聞き、鈴仙を見る

 

 

鈴仙「いや、だから…襲ったっていうか…ただの挨拶みたいなもので…」

 

 

鈴仙はバツの悪そうな表情でぶつぶつと説明する

 

 

妖夢「や、いや…そ、そう!挨拶みたいなものよ!だから落ち着いてくださいジャンヌさん!」

 

 

ジャンヌ「……」

 

 

 

ジャンヌは柄に手を添えたまま、妖夢と鈴仙の顔を見てから魔理沙に眼で訴える

 

 

魔理沙「あー…」

 

 

 

魔理沙「…そいつは敵ではないぜ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

団子屋の表の長椅子に魔理沙、妖夢、ジャンヌ、鈴仙で並んで座る

 

 

魔理沙「…鈴仙が悪い!」

 

 

団子を食べた魔理沙が声を放つ

 

 

鈴仙「えー…」

 

鈴仙の耳がシュンとなる

 

 

魔理沙「いや…突然後ろから胸揉んだら誰だって怒るだろ…」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

時を遡ること数分前

 

妖夢とジャンヌは買い出しのため人里に来ていた

 

 

ジャンヌ「…人、多いですね!」

 

 

妖夢「ええ、この時間だと商店通りはいつも賑わってますよ」

 

 

 

他愛もない話をしながら通りを並んで歩く妖夢とジャンヌ

 

 

そんな2人の後ろをコッソリとついてくる兎が1匹

 

 

鈴仙(…ふふふ、妖夢ったら気づいてないわね…脅かしてやろうっと)

 

 

そんなことを考えながら鈴仙は後ろ姿のジャンヌを見て

 

 

鈴仙(…半霊…擬人化出来たんだ…本人より美人じゃん)

 

 

 

鈴仙は妖夢の真後ろへ付く

鈴仙は妖夢の腰から脇へ触れずに両腕を上げ

 

 

鈴仙「…ゲッチュ〜…」

 

 

両手を背中側から正面へ、鈴仙は妖夢の平坦な丘を後ろからわし掴む

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

鈴仙「いや…まさか本人より半霊の方が怒るとは思わなかったわよ…」

 

 

妖夢「…いや、だから…半霊はここにいますって…」

 

 

妖夢の頭上をくるくると回る半霊

 

 

鈴仙「え?…じゃあこの人誰?」

 

 

 

鈴仙はジャンヌの顔を見る

 

 

ジャンヌは少し不機嫌な顔をして

鈴仙に頭を下げる

 

 

ジャンヌ「…白玉楼でお世話になってます…ジャンヌです」

 

 

妖夢「ジャンヌさんは外来人なんですよ」

 

 

鈴仙「は?」

 

 

外来人と聞き驚く鈴仙

 

 

魔理沙「…?」

 

 

鈴仙「妖夢のところにもいたんだ…」

 

 

妖夢「え?じゃあ鈴仙さんのところにも?」

 

 

 

鈴仙は串団子を一口食べ

 

 

鈴仙「んぐんぐ…んっ…まぁね、ウチにいるのは貴方みたいに好戦的な人じゃないけど」

 

 

鈴仙はジト目でジャンヌを見る

 

 

ジャンヌ「…む…」

 

 

妖夢「あわわわ…やめてくださいよ、2人とも…」

 

 

妖夢、震え声で鈴仙とジャンヌをなだめる

 

 

ジャンヌ「…妖夢様の敵でないなら…私は貴女とは戦いません…今のところは…」

 

 

鈴仙「…じゃあ、仲良くしましょ…鈴仙・優曇華院・イナバよ」

 

 

鈴仙は右手をジャンヌに向ける

ジャンヌは鈴仙から出された手をじっと見てから自分も右手を出し、握手する

 

 

 

鈴仙「そうそう…ウチにいる外来人なんだけどね…」

 

 

 

魔理沙「…仲良くしろよ…ん?…」

 

 

不意に後ろを振り向く魔理沙

しかしだれか知っている人がいるわけでなく人里の者たちがワイワイと昼前の商店通りを賑わせてるだけだった

 

 

 

魔理沙「…」

 

 

「…さ」

 

 

人通りの多い通りを魔理沙はぼうっと見ている

 

 

「…りさ」

 

 

魔理沙「…?」

 

 

妖夢「魔理沙!」

 

 

 

妖夢の呼びかけにはっと振り向く魔理沙

 

魔理沙「え…あ?…なんだ?」

 

 

振り向くと妖夢が心配そうに魔理沙の顔を覗き込んでいた

 

 

妖夢「…なんかぼーっとしてたから…大丈夫?」

 

 

魔理沙「あ、ああ…悪い…」

 

鈴仙「んもー…魔理沙私の話聞いてなかったでしょ〜…」

 

鈴仙は少し膨れる

 

 

魔理沙「…悪い悪い…」

 

 

軽く謝罪しながらも再度魔理沙は通りの方を見る

 

 

魔理沙(…気のせいか…)

 

 

「鈴仙ー」

 

 

別の方から鈴仙を呼ぶ声が聞こえた

4人が声のする方を見ると枕くらいの大きさの膨らんだ紙袋を抱きかかえた中年の女性が立っていた

 

 

年齢は40歳程度、背中までの黒く長い髪を後ろで1つに束ね、薄手の水色の長袖のロングのワンピースを着て、肩から白い薄手のストールを羽織ったまるで昔の看護婦のような女性だった

 

 

鈴仙「あ、お母さん!」

 

 

妖夢「…え!?」

 

 

思わず笑顔で女性に返事をした鈴仙は妖夢からの視線にハッとする

 

 

鈴仙「…あ、えーと…いや、本当の母親じゃないんだけど…」

 

魔理沙「…どういうことだ?」

 

 

 

鈴仙はひょこひょこと女性の横に並ぶ

 

 

鈴仙「…いま永遠亭に一緒に住んでるフローレンスさん」

 

 

フローレンス「皆さん初めまして、フローレンスよ」

 

 

鈴仙が紹介をするとフローレンスと呼ばれた女性も笑顔で自己紹介する

 

 

妖夢「あ、魂魄妖夢と言います。白玉楼で庭師をしています。こちらはジャンヌさん、私と同じく白玉楼で…えーと…」

 

 

ジャンヌ「…妖夢様のお手伝いをしています」

 

 

礼儀正しく挨拶をする妖夢とジャンヌ

 

 

魔理沙「霧雨魔理沙だ…お母さんってのはどういうことだ?」

 

 

鈴仙「う…いや、その…」

 

 

魔理沙の言葉に鈴仙はたじろぐ

 

そんな鈴仙の姿を横目で見てたフローレンスは目を瞑り祈るように言った

 

 

フローレンス「…いろいろあったの、私が迷いの竹林で迷子になってる時に助けてもらってね…それから永遠亭でお世話になってるし、私も家事や炊事とか手伝ってるからね、ね?鈴仙」

 

鈴仙はうぐ、といった顔をして

 

 

鈴仙「う、うん、そんな感じよ…」

 

 

妖夢「へー…そうだったんですか」

 

 

 

魔理沙「…ふーん」

 

魔理沙はフローレンスの足元から頭まで全身をジッと見まわす

 

日本人とは思えない顔立ち、見たことない服装

 

 

フローレンス「あと私がいい歳だからつい呼んじゃうみたいよ、お母さんって」

 

ニコニコしながら鈴仙のお母さん発言をフォローするフローレンス

 

 

その言葉に顔を下げる鈴仙

 

 

フローレンス「それに…そろそろ行かないと患者さん待ってるわよ?」

 

 

フローレンスの言葉にうなづく鈴仙

 

 

ジャンヌ「患者さん?」

 

 

ジャンヌの方を見る鈴仙

 

鈴仙「ええ、永遠亭はこの幻想郷での医療関係全般の仕事を行ってるの、これから妖怪の山の山麓にある廃洋館に向かうところよ」

 

 

魔理沙(廃洋館…ああ、あいつらのところか)

 

魔理沙は昨日会ったプリズムリバー姉妹のことを思い出す

 

 

魔理沙「…なら早く行ってやんな、あいつらだいぶ焦ってたから」

 

 

鈴仙「え、そうなの?」

 

 

魔理沙「なんだよ、あいつらからなんも聞いてなかったのか?」

 

 

鈴仙「うん、伝言で来た妖精が『早く来て』って言いに来ただけだから…」

 

 

フローレンス「なら、行きましょうか、鈴仙」

 

 

鈴仙「うん!」

 

 

 

 

ジャンヌ「…」

 

鈴仙「…」

 

 

一瞬睨み合うジャンヌと鈴仙

たまがその視線はお互いすぐ相手からそらす

 

魔理沙達に軽く挨拶してからだんご屋を離れる鈴仙とフローレンス

 

 

妖夢「…鈴仙さん、大変ですね…」

 

 

鈴仙達の後ろ姿を見てポツリと呟く妖夢

 

 

ジャンヌ「…妖夢様、私達もそろそろ…」

 

 

妖夢「あ、そうでしたね…早く戻らないと…」

 

 

少し焦りだす妖夢とジャンヌ

 

 

魔理沙「…なんかあったのか?」

 

 

妖夢「幽々子様が『午後過ぎには紫の所に奇襲かけに行くわよ』って意気込んでたから…」

 

 

 

魔理沙「…あっそ…なら私もそろそろ…んん?」

 

 

欠伸をした魔理沙は先ほどと同じように後ろからの視線に振り向く

 

 

魔理沙「……???」

 

 

妖夢「じゃあ、またね、魔理沙…暑いからってぼーっとしてたら駄目よ?」

 

 

魔理沙「ん?…ああ、大丈夫だ」

 

 

 

妖夢とジャンヌもだんご屋を後にする

 

 

 

魔理沙「…」

 

 

魔理沙は帽子を被り直す

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

魔理沙は大通りから少し歩いた長屋のある通りで歩いていた

暑いため長屋の通りは人1人歩いてなかった

 

 

魔理沙「…さっきからついてきたり、目で追いかけて来たり…なんなんだよ」

 

 

魔理沙は立ち止まり前を向いたまま誰かに語りかける

 

 

魔理沙「…可愛い魔理沙ちゃんをストーカーしたい気持ちはわかるが私も色々忙しくてな…用があるなら手短にしてくれ」

 

 

 

そう言って後ろを振り向くと10メートル先に少女が立っていた

 

 

魔理沙(…橙?…いや…違うな)

 

 

香「やぁやぁ、やっぱりバレてた…流石だね…キリサメマリサ」

 

 

目の前に立っていたのは瑠歌香だった

 

 

魔理沙はすぐ動けるよう構える

 

 

魔理沙「…誰だ、お前」

 

 

 

香「誰だと思う?」

 

 

魔理沙「…質問に質問で返すなんて失礼な奴だな」

 

 

香「お姉さん、霊夢の事探してるんでしょ?」

 

 

魔理沙は眉をピクリと動かす

 

 

魔理沙「…なんでそう思う?」

 

 

香はにっと笑い

 

 

香「霊夢から沢山お話聞いたよー、一緒に異変解決した事とか色々…だから友達の霊夢の事心配してるんじゃないかなってさ」

 

 

魔理沙「…霊夢が何処にいるのか知ってるのか!?」

 

 

香「知ってるよ」

 

 

香は即答する

 

 

香「…一目見たいでしょ?霊夢」

 

 

魔理沙「…嘘じゃないだろうな?」

 

 

香「もちろん」

 

 

魔理沙は思う

霊夢と最後に話してから実質2日、毎日顔を合わせていた相棒とたった2日会えなくなるだけでこんなにも焦っている自分がいる。

 

しかも居なくなった相棒が何処にいるのかもわからない、このもどかしさ

 

 

たとえ嘘だとしてもこの少女について行くしかないのだ

 

 

魔理沙「…はあ、わかった…案内してくれ」

 

 

香は笑顔のまま魔理沙に背を向け

 

 

香「じゃあついて来て、そのかわり…」

 

 

魔理沙「?」

 

 

香「そのかわり、霊夢の邪魔はしないであげて」

 

魔理沙「…なんだよ、邪魔って…」

 

 

香はちらりと魔理沙の方を見る

 

 

香「…霊夢は今、夢を見てるんだ、だから、邪魔しないであげて」

 

 

魔理沙「…夢?」

 

 

夢、その単語に魔理沙の脳裏に様々な意味が浮かび上がる

 

幻術、催眠、憑依、傀儡…

 

 

魔理沙は頭をふるふると振り悪い考えを払拭する

 

 

魔理沙「…どういう意味だ…」

 

香「そのままの意味だよ、霊夢は今幸せな夢を見てる…まぁ、とにかくついておいでよ」

 

 

香は魔理沙に小さく手招きし、長屋の通りを歩き出す

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

見知らぬ少女と共に、もとい魔理沙が数歩下がった状態で歩く

 

 

長屋の通りから再度商店大通りへ抜ける

相変わらず人はごった返しており、天気とあいまって魔理沙は額から汗をたらす

 

 

香「んー…この辺にいると思うんだけどなー…」

 

 

大きな十字路の真ん中で香は立ち止まり、辺りをキョロキョロと見回す

 

香が見る方向を隙なくジッと見る魔理沙

 

 

 

魔理沙「…一体何処へ…っていうか…お前誰だよ…」

 

 

魔理沙は香に警戒しながら問いかける

 

 

香「ウチ?ウチは瑠歌香!よろしくね」

 

香は魔理沙に右手を差し出す

 

 

 

魔理沙「ああ、よろしく…ってそんなこと聞いてるんじゃない!お前は何者なんだよ!霊夢に何をした!?」

 

 

ノリツッコミから思わず大声を出す魔理沙

 

 

香「うるさいなぁ…何者って…ウチはウチだよ、霊夢には何もしてないよ」

 

 

魔理沙「…答えになってないだろうが…」

 

 

その時、香があっ、と指をさす

 

 

香「…ほら、霊夢だよ」

 

 

魔理沙「…は?」

 

 

魔理沙は指をさされた方を見る

人の波の中、1人の少女がとある呉服屋の前で立っていた

 

 

 

薄桃色の藤の花の模様があしらってある浴衣を着、長い艶のある黒髪を頭のてっぺんでお団子にした、魔理沙のよく知っている顔の少女、博麗霊夢だった

 

 

 

魔理沙達からの距離はおよそ30メートル、まだ霊夢は魔理沙達に気づいていない

 

魔理沙「…れ、霊夢…」

 

 

ふらりと前へ足を一歩出す魔理沙、その瞬間香は右手で魔理沙の右腕を掴む

 

魔理沙「!?」

 

 

振り返る魔理沙、だがそこにはさっきまでニコニコしていた少女はいなくなっており、氷のように冷たい眼をした少女がいた

 

 

 

香「…言ったでしょ、邪魔しないでって」

 

 

魔理沙「…ぅ…くっ…」

 

 

香「今は霊夢にとっての幸せの時間だよ、マリサが邪魔しちゃいけない」

 

 

魔理沙「だから…邪魔ってのはどういうことなんだよ!」

 

 

魔理沙は香の手を振り払い霊夢の元へ走り出す

 

 

魔理沙「霊夢っ!」

 

 

魔理沙の声と走ってくる魔理沙の姿に驚きの表情を見せる霊夢

 

 

 

霊夢「ま…魔理沙…?」

 

 

魔理沙「霊夢ーー!!」

 

 

 

 

走り、そのまま霊夢に涙目で抱きつく魔理沙

 

 

霊夢「ちょっ…なんで…」

 

 

 

 

魔理沙「2日間もどこに行ってたんだよ!!」

 

 

 

霊夢「…やめて…離してよ…」

 

 

 

喜ぶ魔理沙と表情が強張る霊夢

 

 

霊夢「離して!」

 

 

声を荒げ、どんっと魔理沙を突き放す霊夢

 

突き放された勢いで尻餅をつく魔理沙

 

 

魔理沙「あ…ご、ごめん…」

 

周りにいた人達も霊夢の声で視線を2人に向ける

 

 

 

パンパンってと砂埃のついたスカートを払う魔理沙

 

 

 

魔理沙「…えーと…霊夢…さん?」

 

 

魔理沙が恐る恐る霊夢の顔を見ると、霊夢の表情は不機嫌だった

 

 

霊夢「…どうして」

 

 

魔理沙「!?」

 

 

霊夢「どうして私の事分かったの?」

 

 

魔理沙「…は?」

 

 

魔理沙は霊夢の質問の意味が理解出来なかった

 

魔理沙(どうして?わかった?何言ってんだ?)

 

 

魔理沙「いや…顔見りゃわかるだろ…」

 

 

霊夢「…そうじゃなくて…あ!」

 

 

霊夢は魔理沙の後ろからひょっこりと顔を出した香に気づくと更に不機嫌な顔をになり

 

 

霊夢「…香…アンタね…?」

 

 

 

 

香「やっほ」

 

 

霊夢「アンタ一体どこ行ってたのよ、心配したわよ」

 

霊夢は腰に手をあて、香を叱る

 

 

香「ごめんごめんて」

 

 

 

霊夢と香のやりとりを見ていた魔理沙が口を開く

 

魔理沙「…霊…」

 

 

「霊夢」

 

 

魔理沙よりも一瞬早く霊夢の名前が呼ばれる

 

 

魔理沙「!?」

 

 

声のした方を見る魔理沙

 

 

霊夢が待っていた呉服屋の中から赤い着物を着た妙齢の女性が出てきた

 

 

魔理沙「…は…?」

 

 

女性「あら?…霊夢のお友達?」

 

魔理沙の脳は一瞬硬直する

それもそのはず、出てきた女性はまるで今の霊夢が大人になったような顔つきをした女性だったのだ

 

 

霊夢「…お母さん…」

 

 

魔理沙「…お…」

 

 

霊夢の一言に顔をひきつらせる魔理沙

 

 

そんな魔理沙の反応を見てそっぽを向く霊夢

 

 

霊夢「…知らない子よ…」

 

 

女性「…そうなの?ダメよ、知らない子をいじめちゃ」

 

 

魔理沙「…なっ…知らない子って…」

 

 

 

魔理沙が霊夢に言い返そうとしたその時、霊夢と女性の後ろに見覚えのあるスキマ空間が大きく開く

 

 

女性「?」

 

霊夢「…」

 

 

 

霊夢は女性の背中へ回り、女性の背を押しながらスキマ空間へ向かう

 

 

魔理沙「まてよ!霊夢!」

 

 

霊夢「香、アンタも来なさいよ」

 

 

香はにっと笑い

 

 

香「ウチはもう少しマリサとお話ししていくよ」

 

 

霊夢「…もう、私に関わらないで」

 

 

霊夢は魔理沙に睨みながら呟く

 

 

魔理沙「…わけ、わかんないって!霊夢!!」

 

 

魔理沙が叫ぶも霊夢と女性の入っていったスキマ空間は閉じる

 

 

 

何事もなかったのかのように通りを歩いてる人達、商店

 

 

地面に両膝を落とし崩れる魔理沙

 

 

魔理沙「…は…なんだよ…これ…」

 

 

香「まーまー…元気出しなって」

 

 

 

軽い語りで魔理沙を励ます香

 

 

魔理沙「…だいたい…なんなんだ、お前…何者なんだ…霊夢に何をした…誰だ、あの人…」

 

 

呪い事の様にブツブツと香に問いかける魔理沙

 

 

香「ま、とりあえず此処じゃなんだし…ね?」

 

 

魔理沙「…逃げるなよ」

 

 

香と魔理沙は人里の外の平原へ向かう

 

 

 

 

 

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