蝉の声が耳に響く
季節は夏
此処はどこだったっけ…
そうだ、お寺だ。
壁に日めくりのカレンダーがかけてある
"8月31日"
目の前に見覚えのある人の顔写真がある
でも顔はわからない、見えない、見たくない、見たい
蝉の声に混ざって男の人の声が聞こえる
お経だ
すごく嫌だ、こんなもの聞きたくない
両手で耳を塞ぐ
でもお経は聞こえる
横を見ると隣、黒い座布団の真ん中に黄色いハスのような花が咲いていた
…花?
「 」
花が何か言ってる
でも聞こえない、聞きたくない
魔理沙「レスポンスが遅すぎるんだよ」
…は?
今度は私の声?
世界は回る
ぐるぐると、私の視界、感覚、音の聞こえ方がまるで円運動をしているかのように
魔理沙「地下、行かない方がいいぜ」
何を言ってるの?
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
私は誰かの笑い声から逃げる、そう私は逃走者、その速度はまさに音速を超え独走一位
「天ぷら油さえもこのつま先より北斗七星の運命は変えることはできない」
魔理沙がいる、魔理沙は悲しそうな顔で私を見ている
私は魔理沙じゃないのか?
魔理沙は私じゃないのか?
魔理沙は魔理沙じゃないのか?
私は…
魔理沙「なぁ」
魔理沙「…まだ思い出さないのか?」
何を…
「…お母さん…」
後ろから声がして振り返る
そこにはあの時、香が私に流し込んで来た香の記憶らしき景色が広がっていた
薄暗い祭壇の前で小さく丸まってる香
顔は見えないが泣いているのがわかる
私は何故か香に近づこうとする
魔理沙「…助けるのか?アイツは私と文を攻撃して来たんだぞ?」
後ろから魔理沙の声がする
「そんなのわかってる」
私は答える
魔理沙「ならなんで?」
香「…お母さん」
「…敵でも、味方でも…困ってるやつは見逃せない…」
魔理沙「呆れたな、とんだ偽善者だ」
「…偽善でもなんでもいい、見過ごせば、私がそれを許せないんだ」
魔理沙「自己満か?酔狂なやつだな」
「…それが幻想郷だろ?」
香「…」
魔理沙は私の言葉を聞くと口元を少し吊り上げ、青い炎となって消える
私は泣いている香の肩に手を触れる
ーーーーーーーー
8月27日
私が目覚めたのは紅魔館の一室、ベッドの上だった
魔理沙「…あ、寝てたのか…」
昨日の光景を思い出す
断片的にしか覚えてない
魔理沙「…身体中が…痛い」
起き上がれずに仰向けのまま右手を瞼の上に持ってくる
咲夜「おはよう魔理沙」
魔理沙「ひょっ…ふぁぁあっ!!」
ベッド横の椅子に咲夜が座っていた
魔理沙「おっ…まっ…バァカッ!…脅かすなよ!」
咲夜「可愛い寝顔だったわよ、魔理沙」
脈が早くなる、顔が熱くなる
魔理沙「…珍しい寝顔が見れて良かったな…」
咲夜「ええ、ご馳走さま」
咲夜はそう言い立ち上がる
咲夜「さ、朝食の準備が出来てるから顔洗って着替えて食堂にどうぞ?」
魔理沙「…は?そんな…いいよ、私は客じゃ…」
咲夜「ヴラド様が用意しろと言ってたのよ」
魔理沙「…なんで…」
咲夜「さぁ…昨夜のことに責任を感じてるんじゃないかしら」
…あ、パジャマ姿を見られたことかな…
魔理沙「…せっかくだから…頂くよ」
咲夜「…ええ、どうぞ霧雨様」
咲夜は改まって私にお辞儀をする
魔理沙「…だから………はぁ、ありがと…」
咲夜「…それと…」
魔理沙「?」
咲夜「…ヴラド様に変なことを言わないようにね、それと…」
魔理沙「?」
咲夜「霊夢の事、まだ伏せていた方が良いわよ、きっと」
魔理沙「…ああ、わかった」
ーーーーーーーー
食堂に入ると長テーブルには焼きたてのパンの乗った皿、ゆで卵やトマトのサラダ、焼きベーコンの皿などの料理が並び、紅魔館の面々と妖精達が席についていた
その数…2.30人くらいかな
みな賑やかにおしゃべりをしている
レミリア「来たわね、魔理沙…おはよう」
ヴラドの横に座るレミリアが右手をひらひらと振りながら挨拶をしてきた
魔理沙「ああ、おはよ…ゔ…!?」
魔理沙「レミリア!?お前…いま朝だぞ!?」
あまりにも自然にそこに居たから思わず普通に挨拶するところだった
フラン「おはよー魔理沙ー」
魔理沙「……おはよう」
パチュリー「早く座りなさいよ、魔理沙」
パチュリーは自身の横の空いている席をぽんぽんと叩く
魔理沙「…あ、ああ…いや、あいつら夜行性だろ…なんで今起きてるんだよ」
椅子を引き、座りながらパチュリーに問いかける
パチュリー「…愛する人のためだもの…別にいいんじゃないかしら?」
パチュリーは笑いながら返す
魔理沙「それってどういう…ああ…」
私はレミリア達の表情を見て理解した
魔理沙「…幸せそうだな、あいつら…」
まるで本当の親子のように父と娘たちは笑顔で談笑している
咲夜「どうぞ、霧雨様」
咲夜が客人に向けるように私のテーブルの上にスープを置く
魔理沙「…だから…」
咲夜「…いいじゃない、たまには」
レミリア「さぁ、みんな食事は行き渡ったわね」
フラン「頂きまーす!」
ヴラド「フラン…みんなで頂きます、だ」
「「「頂きます!」」」
魔理沙「…頂きます」
元気いっぱいに言う妖精メイド達と、その雰囲気に少したじろぐ私…
魔理沙「…賑やかだな…」
私は隣のパチュリーに話しかける
パチュリーはスープを一口飲み
パチュリー「…彼のお陰かしらね」
魔理沙「…ふぅん」
パチュリーの返しを聞き、パンをかじる
…本当は和食派なんだが…
ーーーーーーーー
賑やかな朝食会を終え、私は泊まらせてもらった部屋へ戻り身支度を済ませる
コンコン
扉をノックする音が聞こえる
魔理沙「…なんだ?」
「…ヴラドだ、入っても構わないか?」
…ああ、おっさんか
魔理沙「…構わないぜ」
がちゃりと扉が開き、昨夜の男が入ってくる
ヴラド「…おはよう」
魔理沙「…ああ、おはようだぜ」
ヴラド「朝食時はきちんと挨拶が出来なかったからな」
魔理沙「構わないさ、アンタも愛娘達の相手してたし…大変だったろ?」
ヴラド「うん?…ああ、もう慣れたさ」
おっさんははにかみながら少し笑う
愛娘という単語が嬉しかったのか…?
魔理沙「…一晩だけだけど助かったよ、朝食もありがとうな…もう私は此処を出て行くよ」
そう言い私はポーチを身につける
ヴラド「そうか…また来てくれ、君が来るとパチュリーやフランが喜ぶんだ」
パチュリーが…?
はは…そりゃあ嬉しいね
魔理沙「…気が向いたらまた顔を出すよ」
ヴラド「…ああ、よろしく頼む」
魔理沙「…なぁ」
ヴラド「…ん?」
ーーーーーーーー
咲夜『ヴラド様に変なことを言わないようにね』
ーーーーーーーー
魔理沙「……アンタにとって、レミリア達は…その…なんなんだ?」
ヴラド「…」
おっさんはきょとんとした顔で私を見る
ヴラド「…血は繋がってなくても俺の大事な家族だ…咲夜もパチュリーも美鈴も…紅魔館にいる者みんな…」
魔理沙「…」
…多分私の頭の中は真っ白になってる
この見た目に反してこんな事言えるんだなって思った
魔理沙「…はんっ…あんた変わってるな」
ヴラド「ああ…よく言われるな」
魔理沙「私の父親なんて…」
『–––ザザっ』
一瞬私の頭の中にノイズが入る
魔理沙「…私…の…??」
ヴラド「…どうした?」
魔理沙「…いや…私は今なんて?」
ヴラド「…私の父親なんて…と…」
魔理沙「え?父親?…父親って…なんだ?」
目の前にいるのは自称吸血鬼達の父親
でも私はこの一瞬で父親というものがわからなくなってしまった
ヴラド「…大丈夫か?」
魔理沙「ああ、問題ないぜ」
嘘だ、私は私の発した単語の意味がわからなくなってる事に焦りを感じている
『問題ないぜ』
無意識に答えた言葉は嘘の塊だった
魔理沙「じゃあな、世話になったな」
ヴラド「…道中、気をつけてな」
ーーーーーーーー
私は準備をして紅魔館を出る
聞けばレミリアと咲夜は朝食を終えすぐに出掛けたらしい
門前には美鈴はいなかったし…
紅魔館から人里の方へ箒に跨り飛んでいく
いく先は決まっている
…いや、急遽決まったというか…
ある人を見に行く
…私の…父親だ
ーーーーーーーー
ー人里、商店通りー
…昨日も来たな…
まぁいいや
私の…元父親の店、霧雨店はこの通りの一番栄えた場所にある
人里で飛ぶわけにはいかないから仕方なく歩いて向かう
魔理沙「…」
私の足取りは重い
別に会うわけじゃない
ただ…店の様子を見に行くだけだ
霧雨店が見えてきた
私は霧雨店の斜向かいの本屋の壁に隠れる
…あ、お父…親父だ…
親父は店先で客の相手をしている
魔理沙「……少し、白髪増えたかな…」
一目見たらもう十分だ…
…レミリア達を見たせいか、はたまたあのおっさんと話したからなのか…
一目見て退散するはずなのに親父のことをずっと見ていた
魔理沙「…私は…何してるんだろう…」
ぽつり、と
私が呟くのと同時に私の鼻の頭に1つ水滴が落ちてきた
魔理沙「……雨…?」
ぽつりぽつりと商店通りに雨が降って来た
それは次第に強くなってくる
「くそー」
「今日雨降るなんて聞いてなかったぞ」
「雨宿り雨宿り」
行き交う人々は手や持っている鞄などで即席の傘を作り足早に商店通りを過ぎる
魔理沙「…あー…」
本屋の軒先の下にいた私は直接雨に当たることはなかったがこれじゃあ身動き取れないな…濡れるの嫌だし
魔理沙「…どうしよう」
「魔理沙?」
突然私を呼ぶ声がしたので振り返る
ーーーーーーーー
私は今商店通りをいつもの傘をさして歩いている
おじさんのおかげでもう人里の子供達にいじめられることもなくなったから気兼ねなく歩ける
…なんか天気悪くなってきたな…
っていうか少し降ってきたし…
…雨は嫌いじゃない…け…ど?
私は1人の知り合いの少女を見つけ近づく
その子は道具屋さん?のお店をぼうっとしたまま見つめてた
あ…ぅ〜
声かけた方がいいの…かな…
よし!
…頑張れわたし!
「…魔理沙?」
ーーーーーーーー
私を呼ぶ声がして振り向くと、そこにいたのは…えーと…あぁ…と…
魔理沙「…お前は…」
紫色の悪趣味な唐傘をさした…
…ああ!
魔理沙「…小傘?」
小傘「覚えててくれたんだ!」
小傘はこの雨が降る中ぱぁっと笑顔になる
魔理沙「うん?…ああ、まぁな」
小傘「魔理沙はこんなところでなにしてるの?」
魔理沙「…雨宿りさ、見ればわかるだろう?」
私の返しに小傘は少しむっとする
小傘「そうじゃないんだけど…」
魔理沙「なんだっていいじゃないか、お前はなにしてるんだ?びっくり妖怪」
小傘「お買い物だよ〜、これこれ」
小傘は持ってたお弁当箱くらいの大きさの白い紙袋を私に見せつけてくる
魔理沙「???…紙袋も作ってるのか?」
以前、小傘は鍛冶屋の仕事もしてると聞いたことあったけど…
紙袋も作ってるのか…
小傘「ちっがうよー!お団子だよ!」
魔理沙「…え…?ああ…あそこのか…」
お団子という単語でここ連日通ってる団子屋を思い出す
小傘「あそこの?…うん、商店通りの!」
魔理沙「…みんな通ってるのか…新しく出来た店にしては中々美味いよな、あそこの店」
小傘「?…新しい?」
小傘は私の言葉に首をかしげる
魔理沙「…え?」
小傘「あそこのお団子屋さんはずぅっと昔からあったよ?」
魔理沙「…ふーん…」
…なんか変な気分…
小傘「そうだ!魔理沙も私と一緒に来る?」
魔理沙「…?どこへ??」
小傘「寺子屋!」
ーーーーーーーー
…何やってんだ…
小傘と出会った私は無理矢理寺子屋に連れてかれた
小傘と寺子屋の廊下を並んで歩く
小傘「おじさんがね!先生やってるんだよ!」
魔理沙「…はぁ」
なんだよ…誰だよおじさんって…
私は思わずため息混じりに返事をする
小傘「ほら」
大部屋の前で足を止め、部屋の中を指差す小傘
魔理沙「???」
ガラスをはめてない窓枠が付いた引き戸から大部屋をこっそり見る
中を見ると10人程の子供達が机の前に並んで座り、授業を受けている
何故か部屋の後ろに慧音が立っている
…って事は正面に立ってるのが小傘の言ってた「おじさん」か…
魔理沙「…チョビヒゲ…」
小傘「可愛いよね!」
なにが?…っていうかなんでそんな目ぇキラキラしてんの?
ーーーーーーーー
雨が降るむし暑い今日、私は寺子屋の大部屋で臨時の教師として教壇に立っている
アドルフ「…そして、1825年に500日戦争と呼ばれたシスプラティーナ戦争が南米で…」
まさか子供達に外の世界の歴史を教えることになるとはな…
可笑しなものだ
ん?
小傘…来ていたのか…
隣にいる少女は友人だろうか?
アドルフ「…つまり独立運動、政治革命運動が起きるとほぼ必ず戦争は起きる、国同士でも国内でもだ、だから君達はそうならないように人と人、お互いの事を知り、きちんと理解し、対応、順応しなければならない、いいね?」
「「はい!」」
ふむ、いい返事だ
…さて、そろそろ時間か
アドルフ「…午前中はここまで、午後は46ページ、アメリカ大統領、リンカーンの事を学ぼう、予習できる者はしておくように」
「「はーい!」」
アドルフ「みなお家の人が迎えにきているな?気をつけて帰るように…」
皆席を立ち、一旦帰るため部屋を出て行く
私も一息入れようか…
ーーーーーーーー
アドルフ「やぁ、初めまして…アドルフだ」
授業が終わった後、ヒゲのおっさんと小傘と慧音と私で大部屋の隣の居間で長机を囲んでいた
魔理沙「霧雨魔理沙だ、よろしくな」
慧音「…敬語くらい使ったらどうだ…魔理沙」
アドルフ「まあまあ…」
おっさんは両手で慧音をなだめる仕草をする
魔理沙「あいにく敬語は家に忘れてきてな…また来るときには持ってくるよ」
私はそう言ってコップに入った麦茶を飲む
アドルフ「わす…れて…?…ふふふ…面白い子だ」
おっさんは口元を吊り上げ笑う
魔理沙「…んで、なんでおっさんが寺子屋で授業教えてるんだ?っていうか夏休みだろ?今」
慧音「夏休みの最中は寺子屋に行きたくても行けない子供達に授業を教えているんだ、普段畑仕事などで学業に励めない子もいるからな」
魔理沙「…ふぅん」
アドルフ「どうやら私は外来人らしくてね、家はなく、今は慧音のところでお世話になってるんだ…それでお礼代わりにせめて私の持っている知識を子供達にとね」
魔理沙「…へぇ、変わってるな」
小傘「おじさんはとっても良い人なんだよ!?変わってないもん!」
小傘は私に少し強い口調で訴える
慧音「…」
魔理沙「ゃ、別に悪い人だなんて言ってないだろ…」
アドルフ「ええと…それで霧雨さんは何故寺子屋に?」
魔理沙「魔理沙で良いぜ…いや、この唐傘に無理やり連れてこられてな…」
慧音「…小傘、なにをやってるんだ…」
慧音は呆れたように呟く
小傘は少し顔を赤くして
小傘「えー…だっておじさんのこと自慢したかったから…」
…あ、そう…
魔理沙「…まぁ、雨が降ってきてたってのもあったし…ついでにどこかで休みたかったからな」
そう言って私はお茶を飲みながらおっさんの姿をじっと見る
おっさんは小傘と仲睦まじく会話をしている
…どこかで見た光景だな…
魔理沙「…仲、良いんだな」
思わず声に出してしまった…
アドルフ「はは…仲良くしてもらっているんだよ」
魔理沙「…」
私はその一言を聞くと立ち上がり、雨が降る風景の見える縁側に向かう
まだ日中だというのに空は灰色、少し強めの雨は無慈悲に地面や家の屋根を打ち付けられる
きっと寺子屋の庭は綺麗で手入れされた花壇でもあるのだろう、寺子屋を囲う塀の下の花壇には子供達が植えたであろう黄色や赤色の花たちが雨に打たれている
どこぞの花の妖怪が見たら発狂するだろうな
小傘「…ま、魔理沙?」
魔理沙「…ん?」
弱々しい声で名前を呼ばれ後ろを振り向くと小傘が両手の指を自分の胸の前でもじもじといじっている
まるで親に怒られることを予想した子供が恐る恐る声を掛けてきたように
小傘「む…無理矢理連れて来ちゃってたかな…?それだったらごめん、ね…?」
魔理沙「…小傘…」
小傘は泣きそうな表情、そして上目遣いで私に語りかけてくる
…そんな顔されたら…
魔理沙「…ちょうど寺子屋にも行こうと思ってたからな…お前に誘われなくても結局此処には来てた…さっ!」
私は小傘のおでこに軽くチョップを入れると小傘は「ぁうっ」と変な声で鳴く
その光景を見てなのか後ろに座っていたおっさんの顔も安堵する
魔理沙「…なぁ、慧音…少しいいか?」
私は小声で慧音に語りかける
慧音「?…ああ、構わないが…」
魔理沙「あ、いや…ここじゃなんだ…違う部屋で…」
慧音「?」
ーーーーーーーー
慧音と隣の部屋へ入る
元いた部屋は襖越しにこちらから見え、ヒゲのおっさんと小傘はまだ雨が降る庭を縁側に並んで座って眺めている
慧音「…それで、話とは?」
先程授業で使ってた大部屋の一角に慧音と向かい合って座る
魔理沙「ああ…プリティー連合…慧音も入ってるんだよな?」
慧音「ああ、まぁ、そうだな…」
浮かない顔で答える慧音
魔理沙「幽々子が乱入して一悶着あったって聞いたんだが…」
慧音「…うむ…」
慧音は口元に手を持っていき、考える
何から話そうかって感じだ
慧音「魔理沙は…どこまで知っているんだ?」
魔理沙は「は?…ええと…忘却の住人の事と、反魂香の事…くらいか…」
他にもなんか色々聞いてたが…
主な事はこれくらいか
慧音「ああ…そうか…」
そうか…って…
魔理沙「会合で何があったんだよ!?慧音!」
思わず声を荒げてしまった…
おっさんと小傘が私達の方を見てくる
慧音「…プリティー連合は…ほぼ解散だ」
魔理沙「は?」
慧音「反魂香の存在を知った面々が連合を抜けて反魂香探しをすると言いだしてな…紅魔館、永遠亭、命蓮寺と…」
魔理沙「…なんだよ、それ」
慧音「きっかけは紅魔館だ…レミリアが言いだしてからな」
くそ…だからレミリアは何も教えてくれなかったのか…
魔理沙「慧音はどうするんだ?…香を探すのか?」
少し強めの声で慧音に問いかける
慧音は表情を驚かせたが
慧音「いや、私は守護者だ。私は人里にいるよ。霊夢もまだ見つかってないしな」
…霊夢は幻想郷にいたけどな…
そう言って慧音はおっさん達の方を見る
おっさんと小傘は変わらず雨の降る景色を正面に楽しそうに話している
慧音「…そうしなきゃダメだろう」
魔理沙「…慧音」
慧音「魔理沙は…魔理沙はどうするんだ?今回のこの…異変は」
…これは異変、なのだろうか…
私は…
魔理沙「…正直わからない…でも私も香を探すよ…アイツには聞きたいことが山ほどあるんだ…」
霊夢の事とか、私の夢の事とか…
慧音「そうか、気をつけろよ」
魔理沙「え?」
慧音は飲み終わった私と慧音の湯のみを盆に乗せて立ち上がる
背を私に向けたまま
慧音「今言ったように、他の勢力が反魂香探しに精を出している」
魔理沙「…」
慧音「間違いなく衝突すると思うぞ?」
魔理沙「…」
思わず口元が吊り上がる
こんな時、霊夢ならこう言うんだろうな…
魔理沙「…邪魔するなら退治するだけさ」
慧音「…そうか」
そう返して、私も座ったまま窓の外を見る
雨はどしゃぶりから霧雨へと弱くなってきていた
魔理沙「それじゃあ、私はもう行くよ、ちょうど雨も弱まってきたしな」
そう言って立ち上がると
小傘「えーーっ!もう行っちゃうの!?」
…またか
小傘「まだ少し雨降ってるし…お昼一緒に食べようよ!」
困り顔で私に抱きついてくる小傘
魔理沙「いや…離れろって…」
ぐいぐいと両手で小傘を引き離す
慧音「小傘、魔理沙も忙しいみたいだからな、行かせてやろう?」
ニコッと笑って小傘を諭す
小傘「…んー…」
慧音の言葉にむくれる小傘
魔理沙「…小傘」
小傘「…わかった」
私が小傘の名前を呼ぶとようやく小傘は離れる
ーーーーーーーーーー
寺子屋の玄関口の戸を開ける
先程よりも更に雨は弱くなっている
これなら飛んで行けそうだな
アドルフ「魔理沙」
外へ出て行こうとした私の背中から声がかかる
振り返るとおっさんと小傘が並んで、その一歩後ろには慧音が立っている
魔理沙「ん?」
アドルフ「あ、いや…その…」
おっさんは少しはにかみながら
アドルフ「また小傘と遊んであげてほしい…気が向いた時で構わないから…」
そう声をかけられたが、私は帽子を深く被る
魔理沙「…あんたといい紅魔館のおっさんといい……」
アドルフ「え?」
魔理沙「…いや、わかった。また来るよ」
私は顔を伏せたまま寺子屋を飛び出す
今の私は…どんな顔をしていたんだろう
ーーーーーーーーーー
寺子屋を出て空を見上げる
雨は止んでいるが、空の色はねずみ色
妖怪の山の方は雷が光っている様にも見える
魔理沙「…まだ昼なのにな…」
薄暗い雲のせいで、人里はまるで夕方の様な雰囲気を漂わせている
魔理沙「さて…香の奴を探すか…」
とは言っても具体的な情報は…
魔理沙「…一度、博麗神社にでも行くか…」
何故そう思ったのかはわからない、ただの直感だ
でも行かなきゃ行けない気がしてならない
そう思い私は箒にまたがり空へ飛ぶ
目指すは博麗神社へ