東方香靈記   作:114

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今回よりサブストーリーです


第1章 雲と蜘蛛
第4話「雲の彼方に」


8月24日

 

ピチョン…

 

んん…?

ここは…?

 

 

水滴らしきものが俺の顔に落ちる

 

 

 

眼を開ける…まだぼんやりとした景色…

 

 

暗い……洞窟…か…?

 

 

 

男「ぐぅ…身体中が痛い…」

 

 

 

上半身だけゆっくりと起こす

硬い岩の上だ

まるで萎びた板のように身体のあちこちからギシギシという音が聞こえるような気がする…

 

 

 

男「何が……?」

 

 

 

また眠くなる…

起こした上半身が地面に倒れる

 

薄くなる視界に何かが映った…

途切れ途切れに声が聞こえる

 

 

 

?『おお!…間なん…珍しい…おー…大丈……い?』

 

 

人…おなご…か…?

 

俺はまた眼を瞑る、暗い暗い淵を降りるように意識が無くなる…

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

8月25日

 

…!

 

意識だけ起きる

周りの音が聞こえる…

…少し遠いな…だが宴の音だ…嫌いじゃ無い

 

眼を開ける

あの時よりはっきり見える

 

 

 

男「家…か…?」

 

 

 

木目の天井だ、民家か…?

 

 

 

少女「おや、眼を覚ましたのかい?」

 

 

鈴のような可愛らしい声がする

 

 

 

またゆっくりと上半身だけ起こす、今度は布団の上だ

 

左側に誰かがいるのが解る、そちらを見る

 

 

 

少女「やぁ」

 

 

 

少女だ、短くあでやかな金色の髪、桃のような丸く幼い顔、瞳が少し紅い。桃色の浴衣を着た少女。

顔がほんのり赤いのは…酔っているのか…?

 

少女が右手を少し挙げ挨拶してくれた

 

 

 

少女「調子はどうだい?」

 

 

 

少女が笑顔で問いかけてくる

 

 

 

男「ああ…や、少し頭がぼうっとするが…身体は大丈夫そうだ…おぬしは?」

 

 

 

少女は少し驚いてから答える

 

 

 

ヤマメ「お主って……拙者は黒谷ヤマメと申しますっ!…旧都の外れで倒れてたあんたを運んだのはあたしだよ〜」

 

 

 

倒れてた…?旧都…?

ヤマメ…

 

 

 

利益「そうか、俺を助けてくれたのか…礼を言う、手前は…利益と申す」

 

 

 

座ったまま頭を少し下げる

 

 

 

ヤマメ「トシマス!変わった名前だねぇ…お侍さんかな?」

 

 

利益「ああ…多分な」

 

 

ヤマメ「多分?」

 

 

首を傾げるヤマメ

 

 

 

利益「すまない、頭を打ったのか、倒れる前の記憶が無いんだ…」

 

 

 

ヤマメ「うーん…上は裸だったけど、丁髷とか、袴に草摺や佩楯付けてるからお侍さんかと思ったんだけどねぇ」

 

 

 

ヤマメはまじまじと俺を観ながら言う

 

 

 

利益「ヤマメ殿、すまないが鏡はないか?」

 

 

 

ヤマメ「はいよー♪」

 

 

明るい返事とともに鏡台を持ってくるヤマメ

 

 

 

利益「ふむ…」

 

 

 

短めの無精髭…

短めの前髪に短めの丁髷

上はヤマメが掛けてくれたであろう白い羽織に黒い袴、紅い皮の草摺に佩楯…足袋

 

 

 

利益「確かに侍…だな」

 

 

 

鏡を見る俺を見てケラケラと笑顔でヤマメは言う

 

 

 

ヤマメ「やっぱ立つとデカイねぇ!2メートル位あるんじゃないかい?」

 

 

利益「…めーとる?」

 

 

ヤマメを見る

俺の胸あたりまでの身長をしてる

 

…そこで部屋の景色に改めて気づく

民家というよりも宿に近い部屋だが

 

 

 

利益「ヤマメ殿、ここはおぬしはの家か?」

ヤマメ「いんや、ここは旧都の呑み屋通りの裏側にある温泉宿だよ」

 

 

 

やはり…

 

 

 

利益「…すまなかった、休みに来ていたんだろう?俺なんかのために時間を消費させてしまった」

 

 

 

キョトンとするヤマメ

 

 

 

ヤマメ「なんで謝るのさ?」

 

 

 

利益「ん?…旧都には旅の途中で寄ったわけじゃないのか?」

 

 

 

ヤマメの頭の上に疑問符がつく

 

 

 

ヤマメ「んぇ?旅?んんん?」

 

 

 

お互いに変な間が流れる

 

 

 

ヤマメ「いやいや、旅とかしてないし…わたしはこの旧都に住んでる地底の住人だよ!今日は友人と呑みに来てて帰るのがめんどくさいから泊まろうってだけだよ!」

 

 

利益「地底…?此処は地面の下の国なのか?」

 

 

ヤマメ「ん"ん"〜なんて説明をしたらいいのさっ!」

 

 

 

ヤマメが渋い顔をする

その時だった

 

 

 

???「じゃあ私から色々説明をしようか?」

 

 

 

部屋の襖を開いて女性が入って来た

 

ヤマメと同じく金色の長い髪、俺より少し低いが女性としては高めの身長、金色の花の柄が入った真っ赤な訪問着を着ている。両肩を出しているが、遊女の其れとは全く違い品がある。

 

何よりあの額の…ツノ、か…?

しかし不思議な雰囲気の女性だ

 

 

 

勇儀「やぁ、私は星熊勇儀、この旧都を取り仕切ってる鬼だよ、よろしくね」

 

 

 

ニカッと気持ちのいい笑顔で挨拶してきた

 

…?鬼?

 

 

 

利益「ああ、利益だ、記憶を無くしたのか、その名前以外は覚えてなくてね…って鬼ってどういうことだ?」

 

 

 

少し疑問をしながらも星熊と名乗る女性と握手する

 

勇儀「そうさねぇ…先ずは私の鬼の話よりも、この世界の事から……あんたの今の立場…それらを色々と説明をするよ」

 

 

 

利益「…???」

 

 

 

 

〜少女説明中〜

 

勇儀殿の説明から四半時

 

 

 

利益「…ーなるほど」

 

 

 

俺とヤマメ殿は座りながら、勇儀殿は障子の閉まってる窓縁に腰掛けながら話をしていた

 

 

 

利益「つまりこういう事か…ここは幻想郷と言う世界で、俺達がいるのはその幻想郷の地底にある世界、さらに幻想郷には人間と妖がいてヤマメ殿は土蜘蛛で勇儀殿は鬼、と…さらにさらに俺は外の世界からなんらかの原因で幻想郷に来てしまった外来人と…合ってるか?」

 

 

 

ヤマメ「そうそう♪…まぁ地底に外来人が迷い込むってのはかなり珍しいけどねぇ」

 

 

 

ニコニコ笑顔で相槌を打つヤマメ

 

 

 

勇儀「いやに理解が早いねぇ…こんな話、疑わないのかい?」

 

 

 

勇儀殿が窓縁に腰掛けたまま腕を組んで俺に言う

 

 

勇儀「あんたを騙して襲おうとしてるかもしれないよ?」

 

ヤマメ殿が真顔で勇儀殿を見る

 

 

利益「…信じるさ」

 

 

 

ヤマメ殿と勇儀殿が少し驚いて俺を見る

 

 

 

利益「疑って生き延びるよりも信じて殺される方がいい…それに、おぬしらの様な美女に殺されるのもまた一興」

 

 

ヤマメ「…へぇ〜言うねぇ!」

 

 

 

ヤマメ殿がキラキラした目で俺を見てくる

 

 

 

勇儀「…いい男じゃあないか!」

 

 

 

勇儀殿も面白いものを見る様に俺に言ってくる

 

 

 

勇儀「気に入った!私はあんたを受け入れるよ!」

 

 

 

またニカッと気持ちのいい笑顔で笑う勇儀殿

 

 

 

ヤマメ「えー…いいのかい?勇儀」

 

 

 

少し心配そうに勇儀殿に問いかけるヤマメ殿

 

 

 

勇儀「ああ!…嘘ついてる感じでも無いし、私の勘が言ってる!」

 

 

ヤマメ「この人は信用出来る、って?」

 

 

 

勇儀「ヤマメは…反対か?」

 

 

 

勇儀殿がヤマメ殿に言うとヤマメ殿は立ち上がって部屋の襖を開く、そして背をこちらに向けたまま…

 

 

 

ヤマメ「別に拒みゃしないよ…いいんじゃないかい?」

 

 

 

右手をヒラヒラと振ってからヤマメ殿は部屋から出て言った

 

 

 

利益「ありがとう、勇儀殿」

 

 

 

勇儀「あー…勇儀でいいよ、私にもヤマメにも殿はいらないよ」

 

 

利益「わかった、ありがとう、勇儀」

 

 

 

そう言うと勇儀はニッコリと笑って

 

 

 

勇儀「よし、そうと決まれば歓迎の宴だ!」

 

 

利益「いいのか?」

 

 

勇儀「当然!…酒、飲めるだろう?」

利益「ああ!」

 

 

 

勇儀「じゃあ、とびっきりのモン持ってくるから待ってなよ!」

 

 

ヤマメ「もう持って来てるよ!」

 

 

 

出て言ったヤマメが帰って来た、どうやら酒を取りに行ってたらしい。持って来たお盆には杯が3つ、不思議な筒が3つ乗っている

 

 

 

利益「…それはなんだ?」

 

ヤマメ「日本酒さ!これは瓶って言って、中にお酒が入ってるんだ〜」

 

 

 

勇儀が3つの杯に日本酒を注ぐ

外側が藍色、中は真紅の杯に透明な日本酒が注がれる様は見てるだけで酔ってくる…

 

 

 

ヤマメ「それじゃあ、乾ぱ〜…」

 

利益「待ってくれ」

 

 

 

ヤマメの乾杯の音頭を切って止める

 

 

 

勇儀「…?どうしたんだい?」

 

 

利益「さっきから外が賑やかなんだが…表でも宴をやってるのか?」

 

 

 

ヤマメはニヤリと笑う

 

 

 

ヤマメ「なんだい、利益は私らのような美女のお酌より派手な宴会の方がいいってのかい?」

 

 

利益「美女のお酌もいいが派手な宴会も嫌いじゃないんだ…駄目か?」

 

 

 

勇儀はふっと笑う

 

 

 

勇儀「益々気に入ったねぇ、良いよ…じゃあ…」

 

 

 

勇儀が杯を持ったまま障子の閉まってる窓の方へ行く

 

俺が此処で目を覚ました時から…いや、無意識のうちから聞こえていた表の宴会の音

 

勇儀が障子の窓をパンッと勢い良く開ける

 

 

 

利益「おおっ!」

 

 

 

窓から見える景色

空は深い闇のように真っ暗、だが下は提灯や呑み屋の灯りが通りを煌びやかに映している。まるで窓からの光る架け橋のようだ。

人のような姿をした鬼や妖が呑んで、歌って、食べて、喧嘩して、笑い合っている。

 

窓の景色を背に俺の方に向いた勇儀は杯を掲げ

 

 

 

勇儀「それじゃあ私達の新しい友との出会いに…」

 

 

 

ヤマメ「出会いに!」

 

 

利益「ああ!」

 

 

「「「乾杯!」」」

 

 

 

地底、旧都にある呑み屋大横丁

そこはいつも賑やかな、地底の者達にとって楽園の場所

 

 

 

 

 

––––––––––––地霊殿

 

 

 

此処は旧都のさらに奥にある地霊殿、旧灼熱地獄を管理している悟り妖怪の屋敷である

 

 

とある部屋

薄暗い部屋の中、旧都を見渡せる洋風の大きな窓ガラス前で洋風のティーテーブルを真ん中に挟んで少女2人が…片方の少女の横には大きな鎌を持った少女が立っている。

 

テーブルの2人は紅茶を飲みながら椅子に座って話している。

 

 

 

1人はピンク色の短い髪で黄色のカチューシャ、白いフリルのついた青いシャツに薄ピンクのスカートを履いた少女、胸元には赤い膜ので覆った目玉を自身の身体に三本の管で繋いでいる。幼くも人形の様な整った顔立ちをしている

悟り妖怪古明地さとりである

 

 

そして1人は緑の短い髪を紺色の生地、金の刺繍が入った王冠の様な被り物を被り物、白のブラウスに紺のハイネックベスト、黒いミニスカートに悔悟棒を両手で持つ少女。こちらも少し幼い雰囲気だが凛とした表情の真面目そうな少女、是非曲直庁の閻魔、四季映姫ヤマザナドゥと、横にいるのはその部下、くせっ毛の赤い髪をおさげにした死神の小野塚小町である

 

 

 

さとり「お話はわかりました、外来人関係で問題が出れば直ぐに対処します」

 

 

 

ティーカップを静かにソーサーにおいてさとりは言う

 

 

 

映姫「よろしくお願いします。基本旧都の責任者は星熊勇儀ではありますが、万が一と言うこともあるので…」

 

 

 

さとり「ふふ…」

 

 

 

さとりは静かに笑う

 

 

 

映姫「…何か?」

 

 

 

映姫はさとりを見る、睨んでいるわけではないが彼女の性格だろう、何に対しても鋭い視線で見てしまう

 

 

 

さとり「いえ…こうして地霊殿に来客があったのはあの間欠泉騒ぎの時の巫女と魔法使い以来で、更にこうしてゆっくり誰かとお話は出来るのは何年振りかと思って…」

 

 

 

映姫「…仕事ですから」

 

 

 

映姫はさとりから目を逸らし旧都へ視線を向ける

 

 

 

映姫「それでは要件はお伝えしたので…失礼します」

 

 

 

紅茶を飲み終えた映姫はカップをソーサーに時、立ち上がる

 

小町が鎌で空間を切るとその空間に白い裂け目が出来る

 

 

 

さとり「またいらしてくださいね」

 

 

 

空間に入ろうとした映姫に話しかける

 

 

 

映姫「此方に来る用事が出来ればまた来ます」

 

 

 

さとりを見ずに映姫は返す

 

 

 

さとり「小町さんも、またどうぞ」

 

 

 

小町はさとりに軽く会釈をし、2人は空間の裂け目に消えていった。2人が空間の裂け目に入ると元の部屋の景色に戻る

 

 

さとりは椅子から立ち上がり旧都の見える窓際に立つ

 

 

 

さとり「…ペット達にご飯あげなくちゃ」

 

 

 

さとりは部屋を後にする

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