紫鬼、黒縄(くろなわ)の元ネタは八大地獄の黒縄(こくじょう)地獄から取ってます
8月25日
此処は旧都、呑み屋大横丁
沢山の人外で賑わっている通りである
その何でも一際大きい呑み屋に勇儀、ヤマメ、利益はいた…大勢の鬼達の中に…
勇儀「よぉーし!それじゃあ私達の新しい友人に…かんぱーい!!」
屈強な鬼達に囲まれて勇儀は乾杯の音頭を挙げる
「「「かんぱーい!!!!」」」
雷鳴のような鬼達の声で通りは建物が震える
利益の周りに数人の鬼達の青年が杯を持って座る
青鬼「よぉ新入り!テメェ人間の癖に勇儀姐さんに気に入られたんだってな!」
黄鬼「やるじゃねぇか!カッカッカ!」
赤鬼「良い身体してんじゃねぇか!腕試しでもどうだ!?」
利益「おお!なんとも鬼らしい鬼達じゃ!よぉーし、呑むぞー!」
鬼達「「「おおー!!」」」
少し外れの席にヤマメがいる
ヤマメ「…馴染むの早いねぇ…」
音頭から戻って来た勇儀がどかっとヤマメの横に座る
勇儀「いや〜大したもんだよ、利益も…鬼に混ざって杯を進めるなんてさ…」
利益「あっはっはっは!」
鬼達と小躍りをする利益、周りからは歓声やら指笛の音がする
そんな中で1人の鬼が話しかける
黄鬼「よし!利益!俺と腕試しでもしようぜ!」
場が少しざわつく
利益「!」
一瞬驚いた利益だったが…
利益「ああ良いよ」
場が盛り上がる
黄鬼「よっしゃあ!おい!店のねーちゃん!そこの木箱もってこいやぁ!」
鬼達のが木箱を持って来させる
青鬼「あらら…黄助の野郎自分の得意な腕相撲でやろうってんだな?」
赤鬼「しっかし良い身体してるよな?利益の野郎!」
利益の身体は身長も高く肩幅もでかい、見た目は鬼と同じような身体つきだが、実際は猫のようなしなやかさを筋肉を持つ恵体であり、筋肉に詳しい者にとっては生唾モノである。
黄鬼「よし、こい!」
鬼が木箱に右肘を乗せ手の平で利益を誘う
利益「よしきた!」
同じ様に対面して右肘を木箱に乗せ、鬼の手を握る
黄鬼「…!」
握力が凄い、少し握っただけで鬼の力が少し抜ける
黄鬼「う、うし!…おい青兵衞!合図出せ!」
青鬼「応!」
利益が小声で黄助に話しかける
利益「…なぁ」
黄鬼「あぁ?」
利益「手を抜こうか?」
黄鬼「…全力で来いよ…!」
利益はにっこり笑って
利益「わかった」
青鬼「ぅしっ…じゃあ、用意っ!」
黄鬼「…へへっ」
周りの鬼達の注目を浴びる利益と黄鬼
その2人が掴んでる手の上に青鬼の手が乗る
青鬼「始めっ!!」
手を外す青鬼
バゴォッ
ーーーーーーーーー
利益達が腕相撲を始めるよりもずっと前…
その日私とヤマメと旧都のいつもの呑み屋に立ち寄った
少し酔ってきたところでヤマメがダウン
ヤマメ「外の空気吸ってから温泉行って寝るわ〜」
そう言ってフラフラとおぼつかない足取りで店の外へと出て行ったと思ったら
ヤマメ「勇儀!男拾った!人間の!」
…だもんなぁ…
あらまぁ目ぇキラキラさせちゃって…
大柄の男を担いで店の中へ入って来るヤマメ
…浴衣なんかで来ちゃってまぁ…
勇儀「とりあえず二階に寝かせといたらどうだい?宿、取ってるんだろう?」
ヤマメ「よしきた!」
で、男が目を覚まして外来人って知った、幻想郷の事、地底の事、私達妖怪の事を一通り話して、なんやかんやで他の鬼達と意気投合して呑み屋で宴…
…まぁ、いい奴なんだろうな…
デカイ図体のクセに涼やかというか…爽やかで気持ちのいい男っていうか…
お?
腕相撲か?
…黄助のやつ…手加減してやれよ……
青鬼「始めっ!」
バゴォッ
勇儀「…ん?」
周りが静かになる
鬼が勝つ、そんなのわかりきってることだし、当たり前だし…いや、当たり前だと思ってた
腕が倒れてるのは利益…いや、腕を倒してるのが利益!?
腕を倒されてるのが黄助??
ヤマメ「…マジ…?」
私とヤマメは口を開けたまま固まる
周りの鬼達も驚きで杯が止まる
一拍置いてから
鬼「うぉぉおおおー!」
鬼「あの人間勝ちやがったぜおい!」
鬼「やるじゃねぇかー!」
鬼の歓声が上がる
利益「大丈夫か?」
利益が倒れた黄助に手を差延べる
黄鬼「あ、ああ…」
手を取る黄助
黄鬼「なんなんだ…今のは?どうなったんだ?俺…」
利益「いやーすまんすまん…腕、大丈夫か?」
黄鬼ははっとして
黄鬼「…!すげーなお前!腕相撲で人間に負けたのは初めてだぜ…」
その光景を見た青鬼と赤鬼が…
青鬼「次は俺だ!俺とやろうぜ利益!」
赤鬼「ならその次は俺だ!」
肩を慣らすため腕を回してる利益
利益「ああ、いいよ」
…とんでもない奴が現れたもんだねぇ…
ーーーーーーーーー
黄助を倒して青兵衛も赤音彦も腕相撲で倒した利益…
ヤマメ「凄いねぇ、利益」
隣で利益の姿をまじまじと凝視する勇儀に言った
勇儀「あ、ああ…驚いたよ」
あたしに目もくれず勇儀は答えた
ヤマメ「…」
ああ…勇儀も利益と一戦交えたいんだろうなぁ…
ヤマメ「勇儀…あんたも行ってきたら?」
勇儀「…はぁ?な、なんで…」
あたふたする勇儀
ヤマメ「あんな人間、初めてなんだろう?今行っとかないと勿体無いんじゃないかい?」
勇儀「…」
勇儀は杯に残った日本酒をぐいっと飲み干す
勇儀「…いっちょやってくるかい!」
「「うぉぉおおおー!!」」
鬼「今何人目だ?」
鬼「13人目だ!やるなぁ利益の野郎!」
利益「うむ、そろそろ腕が痛くなってきたな…」
「おう人間、次は俺とやろうぜ」
鬼達が一斉に振り返る
鬼「あ…あいつは…」
上半身は裸、下半身が袴に佩楯を着けた武士風の格好、肌が紫色で荒い丁髷、頭から長さのバラバラな三本ツノ、下顎から外側に伸びた立派な二本の牙をもつ一際大柄な鬼がやってきた。周りには遊女らしき女を3人ほど侍らせている
紫鬼「おうおう、なんだか強ぇって野郎がいるって聞いたからよ、わざわざ遊郭から来てやったんだ、相手してくれんだろう?」
ひょうたんに入った酒をグビグビと呑む鬼
勇儀「…黒縄か…」
利益「これはまたデカイ鬼だなー…」
黒縄と呼ばれる紫鬼が利益の前に来る
紫鬼「どうすんだ?やるのかやらねーのか」
利益を睨む黒縄
利益「…まぁいいか…やろうか」
ニコッと笑って木箱の上に右手を乗せる利益
勇儀「…あー…」
ヤマメ「あらら…早く行かないから…」
鬼「あいつ、獄卒鬼の黒縄だよな」
鬼「いくら利益でもあいつにゃあ勝てねぇよ」
紫鬼「くくく…いい度胸だな人間」
お互い木箱に右肘を乗せ手を掴む
青鬼「それじゃあ…用意!」
「そこまでにしておいてください」
少女の声がする
利益「!?」
利益、鬼、そこにいる妖怪達が声のする方を一斉に見る
そこにいたのは地霊殿の主、古明地さとりであった
ーーーーーーーーー
四季映姫との会談後、古明地さとりは旧都に出ていた。
映姫との内容を旧都の責任者である勇儀と共有しようと思ったからである。
さとり「(フードを被っているとはいえ、私が悟り妖怪とバレないとは限らない、注意しながら行かないと)」
旧都の大通りにフードを被って歩く悟り妖怪が1人
妖怪達からの視線を感じる
さとり「(…もしかしてフードって逆に目立ってるのかしら)」
…真夏の旧都の大通りにフードを被って歩く少し天然な悟り妖怪が1人
鬼「なぁ!あっちの呑み屋で人間と鬼が腕相撲してんだってよ!」
妖怪「そんなん鬼が勝つに決まってんじゃんか」
鬼「さっきまで5人抜きしてたって話だぜ!」
さとり「(人間…行ってみますか…)」
〜旧都 呑み屋〜
「うぉぉおおおー!」
鬼「すげぇ!10人抜きだ!」
人混み…もとい鬼混みに混ざってさとりもその光景を見る
さとり「…本当に人間が…」
辺りを見回す
責任者の勇儀は呑み屋にある椅子に座って杯を持っていた
さとり「(騒ぎになりつつあるというのに、なに呑気にお酒なんて呑んでるんですか!)」
心の中で勇儀を叱るさとり
さとり「…はぁ…仕方ないですね…」
「「うぉぉおおおー!!」」
鬼「今何人目だ?」
鬼「13人目だ!やるなぁ利益の野郎」
さとり「(13人て…)」
さとりが声をかけようとした時
「おう、どきな嬢ちゃん」
後ろから声がかかり道を空けるさとり
さとり「す、すいませ…」
さとり「(…!この鬼は!)」
紫鬼「おう人間、次は俺とやろうぜ」
鬼達が一斉に振り返る
さとり「(黒縄!?卒獄鬼がなぜここに…)」
青鬼「それじゃあ…用意っ!」
さとり「(地獄にいなければならないはずの卒獄鬼が旧都に…なぜ…いやいや、そんなことより卒獄鬼が旧都にいるなんて映姫さんに知られたら…他の閻魔様とかに知られたりしら…地上だけでなく地底でも私たちの居場所が…ああ…まずい…本当に面倒事になってしまう!)」
さとり「そこまでにしておいてください」
すぐにフードを取り、群衆の中心に飛び出たさとりは言った
ーーーーーーーーー
利益「(誰だあの少女は…)」
利益の腕から無意識に力が抜ける
紫鬼「…っち」
お互い手を離す
さとり「皆さん、もういいでしょう…これ以上騒いだら面倒事になると思いませんか?」
そう言うとさとりは勇儀を睨む
勇儀「…」
ぽりぽりとバツの悪そうな顔で頭をかく勇儀
紫鬼「…さっきの嬢ちゃん…地霊殿の悟り妖怪だったのかよ…」
少女は紫鬼の方を向いて言う
さとり「貴方も、現地獄の鬼が旧都に来ても良いなんてルールは…無いでしょう?」
紫鬼「あー…俺はただの休暇で、旧都に羽根を伸ばしに来ただけだぜ?」
さとり「…」
少女の胸元の目玉が紫鬼を見つめる
紫鬼「…はいはいっと…帰りますよさとり様〜」
バカにしたような言葉を吐き、後ろを向く紫鬼
利益「なんだ、もう行くのか?」
俺は後ろ姿の紫鬼に言った
紫鬼「良かったな人間…俺に右腕引き千切られなくてよ」
利益はふっと笑う
利益「ああ、貴重な経験が出来なくて残念だ」
ガブガブとひょうたんの酒を呑む紫鬼
紫鬼「ブはぁ〜…良いタマしてんじゃねぇか…気が変わった、今日はこのまま大人しく帰ってやるよ」
紫鬼が勇儀の方を向く
勇儀「…」
紫鬼を睨む勇儀
紫鬼が勇儀の座ってる席まで近寄って来る
ヤマメ「ゆ、勇儀…」
心配そうな顔をするヤマメ
紫鬼「俺は今日旧都には来てねぇし、遊郭も行ってねぇ…一日中地獄で釜茹でてた…それで良いだろう?勇儀の姐さんよぉ」
勇儀がきっと睨む
勇儀「アンタに姐さん呼ばわりされる筋合いは無いよ!」
思わず立ち上がる勇儀
さとり「(トラブルはやめてぇ…)」
心の中でオロオロするさとり
利益「…ふむ…」
ニヤニヤしながら紫鬼は言った
紫鬼「ああ、恐い恐い…流石鬼の四天王様はおそろしいねえ」
利益「お主、名前は…?」
紫鬼が意外そうに利益を見る
そして少し嬉しそうに…
紫鬼「…黒縄だ、テメェは?」
利益「利益だ…名前はそれしか覚えておらん」
黒縄「…利益…」
紫鬼が利益の姿をまじまじと見る
黒縄「…ふん」
黒縄が群衆の方へ進むと皆が道を空ける
黒縄「おい、行くぞおまえら」
紫鬼がそう言うと遊女が紫鬼の後ろに付く
黒縄「それじゃあな」
右手をひらひらと雑に振りながらそう言うと紫鬼は遊女を連れて群衆の中へ消えて行った
同時に周りにいた鬼達も立ち去り始める
勇儀「…あー…古明地…あの、な…」
もにょもにょとさとりに話しかける勇儀
さとり「…もう良いですよ、勇儀さん」
勇儀「…悪かった…」
さとりが利益に向き直る
さとり「貴方が噂の外来人の方ですね」
利益「…お主は…」
さとり「旧都より更に地下にある旧灼熱地獄の管理をしてる古明地さとりと申します…」
丁寧にお辞儀をするさとり
利益「さとり…俺は」
さとり「利益だ、ですか…そうですか、名前以外に記憶が無いと…大変でしたね」
利益「…」
目を開き、驚く利益
勇儀「古明地は悟り妖怪なんだよ…考えてることが筒抜けになるのさ」
利益「ほう」
さとり「どうぞよろしくお願いします(私を悟り妖怪と知って嫌悪感を出さない方はいません…1人くらい増えたところで…)」
挨拶をし、頭を下げるさとり
『…悟り妖怪…これは興味深い』
さとり「!」
さとりは利益の顔をすぐ見直す
『ああ…これも読まれているのか…面白い能力だな』
さとり「…ここじゃなんでしょうし、どうぞ、地霊殿までご案内します」
悟り妖怪なのに自分が動揺している事を悟られないように振る舞うさとり
利益「ちれいでん?」
ヤマメ「この旧都を越えた所にある悟り妖怪の家だよ」
呑み屋から出てきたヤマメが教えてくれる
さとり「勇儀さんも、旧都の責任者として来てください…もちろんヤマメさんもどうぞ」
ヤマメ「…」
さとりから目をそらすヤマメ
利益「ふむ…地霊殿…面白そうだ、是非見てみたい!」
腕を組んで利益が言う
勇儀「…楽しそうだねぇ、利益」
勇儀がやれやれ顔で利益に言う
利益「ああ、見たことを無いものを見るのは新鮮だからな…おっとっと…」
利益の足元がフラつく
勇儀「!…どうした利益?」
倒れそうになるが脚で踏ん張り体制を立て直す利益
利益「…ふむ、鬼達と遊んで少し疲れたのか……」
ヤマメ「そ、そりゃあ腕相撲とはいえ鬼達と力比べしてたんだ、疲れない方がおかしいさね」
さとり「…」
さとりはヤマメをじっと見る
1つ息を吐き
さとり「利益さん、やはり今日は休んでください、明日また、お会いしましょう」
利益「…すまんな」
地べたに座り、さとりに笑いながら謝る利益
さとり「勇儀さんもヤマメさんも明日改めて、で良いですか?」
勇儀「ああ、構わないよ」
ヤマメ「もちろん!」
さとり「それではまた明日、地霊殿でお待ちしてます」
頭を下げ、フードを被るさとりは1人旧都の人混みに消えて行った
勇儀「利益、立てるかい?」
地べたに座る利益に声をかける
利益「ああ、少し休んだら楽になった」
立ち上がろうとする利益
ヤマメ「全く…無茶なんかするから」
肩を貸すヤマメ
利益「ありがとう、ヤマメ」
勇儀「今日私らが泊まる宿で良いよな?利益の分の部屋取ってくる」
利益「いやぁ、なにからなにまで…」
勇儀「良いってこと!」
勇儀はまた気持ちのいい笑顔で利益に答えて宿に入っていく
ヤマメ「じゃあわたしらも行こうか?」
利益「ああ…もう1人で歩けるよ」
ヤマメは組んでいた肩を離す
利益「さてさて…これからどうなることやら…」
ヤマメと利益も宿に入っていく
相変わらず旧都は賑わっている