「フランスから来ました、シャルル・デュノアです、よろしくお願いします」
「お、男…?」
一夏は目の前に突如現れた男(?)に呆気に取られていた。本来居るはずのない、居る訳がない自分以外の男子生徒の存在に一夏は目を丸くする。
一夏の動揺が教室内にも伝播したのか、にわかにざわつき始めるクラスメイト達。副担任の山田先生が混乱を静めようとするも、ー度騒ぎ出した学生を黙らせるにはまだ彼女は教員としての経験が不足していた。
「ほらお前達静かにしろ、デュノアがまともに自己紹介も出来んだろう」
山田先生の隣に佇む女性、このIS学園1年1組担任にして一夏の実の姉である織斑千冬の鶴の一声で教室はやっと落ち着きを取り戻した。
第1回モンド・グロッソにおいてIS史黎明期の並み居る強豪達を剣ー本で退け、モンド・グロッソ優勝者の証「戦乙女(ブリュンヒルデ)」の称号を得た稀代の女傑である、その威光は現在でも衰える事はない。
「騒ぐ気持ちもわかるが、まずはデュノアの自己紹介を聴いてやれ」
「はい!」
「よし…転校して早々ウチの生徒が騒がしくして悪かったな、デュノア、では自己紹介を」
「わかりました…」
生徒達の返事を聴き再び口を閉じる千冬、彼女は寡黙だ。必要な人物へ、必要な時に、必要な言葉だけを口にする。
声一つで場を静める実姉のカリスマに一夏は流石だなと感心しながら転校生、シャルル・デュノアの自己紹介に耳を傾けた。
ホームルームも終わり、担任たちが教室を去ると転校生を質問攻めにする為にデュノアの席に女子達が殺到するかと思ったが、そんな事はなかった。自己紹介の内容が彼女たちに二の足を踏ませていたのだ。
曰く、彼はなんとIS業界世界第三位のシェアを誇るデュノア社の一人息子であり、フランスの代表候補生だと言うのだ。
余りの出自と経歴に眩暈がする、一夏も「なんだよこの完璧超人…」と内心唖然としていた。
「大企業の御曹司」「雲の上の存在」「天上人」「なんか帝王学とか学んでそう」
これまでの彼女たちの人生で触れ合ったどの人間よりも異質で圧倒的な存在感、言うなれば雑種犬の群れに突如現れた血統書付きの高級犬。そんなのと突然仲良くしろと言うのは雑種には余りに酷と言えた。
容姿だってそうだ、女子顔負けの美貌、華奢な体つきに美しいブロンドの長髪は巷で顔面偏差値300オーバーと噂されるIS学園の生徒達にも負けてはいない、いやむしろ勝っている。
そんな人物にどう声を掛けたらいいのか、一夏も含めクラスメイト達はそれを測りかねていた。そんな時だった。
「織斑一夏くん…だよね?」
「お、おう…!」
渦中の人物がなんと自分から声をかけてきたのだ、彼が話し掛けた相手は織斑一夏、現状クラスで、いや、この学園で二人しか居ない男子生徒、その内の一人である。
(やべぇ…話しかけられちゃったよ俺!)
これでも俺、トーク力には自信があるんだぜ?そりゃ幾ら顔が良くても話が面白くなきゃモテねぇもん、でも。これは…
次の言葉が出てこない、口の中の唾液が枯れていくのが自分でもわかる。酸欠の金魚のように口を開閉させ次の言葉を必死に紡ごうとする一夏、そんな彼の健気な姿にクラスメイト達は無言のエールを送る。
(がんばれ一夏!)
(がんばって一夏くん!)
(がんばってください一夏さん!)
(((がんばって!!!)))
(人事だと思いやがってコイツらぁ…!!)
抱いてやる、今夜抱いてやる箒…!待ってろよ、そのデカいおっぱい形が変わるまで揉んでやるからな…!
今夜箒を抱く計画の決行の決意を固める一夏。クラスメイト達の水面下のやり取りが展開される中、クラスの混沌とした空気の元凶であるシャルル・デュノアは言葉を続けた。
「テレビで見ない日は無かったよ織斑くん、お互い大変だったよね」
「あ、あぁ…」
「世界で二人だけの男性操縦者だもんね…なんか運命感じちゃうなぁ」
「おう…」
「これからよろしくね織斑くん」
「う…うん」
「えっと…友達に…なってくれないかな、織斑くん…」
「あ、あぁ…!いいぜ!」
それは会話というよりはシャルルが一夏へ一方的に話かけているものではあったが、それでも一夏は相槌を打つのは忘れなかった。
「やったぁ!嬉しいよ織斑くん!」
「!」
この日、俺は初めてシャルルの笑顔を見た、それは今までみたどの女の子の笑顔よりも美しく、可愛らしい笑顔だった。クラスの皆もそうなのか、うっとりとシャルルを見つめていた。
今となっては、ここが運命の分かれ道だったのかもしれない。これから先、波乱の学園生活が待っていることを、そしてその波乱の元凶が眼の前に居ることを、俺はまだ知らない。
やっぱり文章って難しい…2000文字も書ける気がしない…