一夏とシャルル   作:桃次郎

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第一話において「なぜ一夏たちがシャルルの存在を知らなかったのか」という理由について。


疑惑のシャルル

 

 

 

一夏が山田先生から同居人の変更を聞いた当時刻、箒は寮の廊下で、寮長である千冬から新しい部屋への移動を命じられていた。

「急な話ですまないな、篠ノ之」

「いえ、今朝シャルルが転校してきた時に、薄々こうなるだろうとは…」

「ほう?お前の事だからもう少しごねるかと思ったが」

箒とてこの話に納得した訳ではない、本来なら木刀でも持って暴れてやろうかと内心思ってはいたが、それを告げた相手が彼女にとって問題だったのだ。

 

織斑千冬、この人には箒はどうしても頭が上がらなかった。千冬は元々、箒の父が開いていた篠ノ之流剣術道場の門弟であり、箒とも幼い頃から交流があった。昔からの付き合いなのだ。そんな相手に対して無礼を働けるほど箒は礼儀知らずではなかった。

 

 

 

箒は荷造りのため、千冬へ背を向けると自室へと向かった。千冬は既に箒への要件を終えた、しかし千冬はその場から離れようとはぜず、壁に寄りかかり、腕組みをした。まるで誰かの登場を待つように。

「居るのだろう、更識」

「………完全に気配を絶ったっと思ったんだけどなぁ」

「まだまだ修練が足りない、なにお前の事だ、あと10年したら私に追いつくさ」

「10年経ったら恐らく織斑先生は今より遥か高みに居そうです」

「買いかぶるなよ、私は既に現役を退いているのだから、その時には今より技術も体力も衰えているさ」

「ホントかなぁ…」

廊下の曲がり角から一人の生徒がバツの悪そうな顔をしながら姿を現した、名を更識楯無。このIS学園において生徒会長を務める才女である。

 

「更識、お前に一つ頼みがある」

「シャルル・デュノアに関しての事ですか?」

千冬の要件を言い当てた楯無。千冬が僅かに目を見開いたのを楯無は見逃さなかった、してやったりと彼女は僅かに口角を上げる。腹芸にかけては既に私を凌いでいるなと千冬は苦笑いした。

「…お前もおかしいと思っていたのか」

「ええ、彼の転校からメディアへの情報解禁までの流れがあまりに不自然過ぎます、不自然過ぎて…何か意図があるのではないかと思うほどには」

シャルルがこの学園に転校してきたのは今日の朝である、そしてデュノア社がシャルルの存在を公表し、テレビやラジオ、ネットニュースなどがそれを一斉に報道したのが昼過ぎの事だ。

 

一夏の時とはまるで逆だった、一夏がISを動かした事が公表され、IS学園への入学が決まるまでの間、メディアに一夏の顔が出てこなかった日はないと言っていい。

「デュノア社が一夏くんの時と同じ轍を踏まないようにと情報解禁のタイミングを窺っていたのでは?」

「どうだろうな…そんな回りくどい事をしてデュノア社に何のメリットがある?」

「何でしょう、この違和感、足並みが揃っていないと言うか…デュノア社内でも何らかの混乱が生じているのでは?」

今回の件に関して、互いの意見を交わす千冬と楯無、二人の会話は夕日が暮れるまで続いた。

 

 

 

 

「ただいまー…」

当然返事は返ってこない、俺は肩を落としながら静かになった部屋に一人帰ってきた。もう箒は居なかった、元から女子にしては荷物が少ない箒のことだから、カバン一つに荷物を詰め込んで、愛用の木刀を背負って部屋を出ていったんだろう。

同居人が居なくなった部屋はどこか寂しくて、何か音楽というか、音が欲しいなと思い俺は堪らず部屋に据え置きされているのテレビの電源を入れた。といってもこんな時間にやってる番組なんてニュースくらいだけどな。

 

テレビの電源を入れると案の定、ニュース番組がテレビの液晶に映る、アナウンサーやコメンテーターが興奮気味にシャルルの事を話していた。

「まさか織斑一夏くんに続いて二人目の男性IS操縦者が現れるなんて」

「これを機に世界的に大規模な男性IS操縦者を捜索すべきですよ!こうやって二人も現れたのです、探せばきっとまだ居るはずです!」

 

ぼんやりとテレビを眺めながら、俺は崩れ去った箒とヤる計画を再び練り直す、そしてある結論に至った。

 

 

 

(無理だ!!!)

 

 

 

俺の計画は、箒が同室であるという前提の元に成り立っていた物だ。(消灯時間を過ぎたら箒のベットに忍び寄り、あとは流れで、ヤる!) それが俺の計画だった。しかし、箒がこの部屋を出ていってしまった以上、それはもう叶わない。

いっその事消灯時間になった後、箒の部屋を探しに部屋を 出るか?俺は更に思考を巡らせ、再び結論を出す。

 

 

 

 

(無理!!!)

 

 

 

 

理由は簡単、寮長の千冬姉の存在だ。千冬姉は消灯時間になると懐中電灯と竹刀を手に寮内の見回りを始める事で有名だ、その見回りを大体何時まで続けるのかは俺は知らないけど。箒の新しい部屋の場所もわからないのに、まして千冬姉の見回りの目を掻い潜って箒を探し出すなんて不可能だ。

千冬姉はきっと俺を見つけ出すはずだ、そしてなぜ俺が消灯時間を過ぎて出歩いていた理由を問いただすはずだ。 きっと俺は千冬姉のプレッシャーに負けて、その理由を話してしまうだろう。

 

(殺される…間違いなく殺される…)

そうやって俺は死の恐怖に苛まれていると、突然部屋の扉がノックされた。

「はーい…誰だ?」

俺は扉越しにノックした相手へ問いかける、すると。

「織斑くーん、ボクだよー」

 

 

 

俺の計画を破壊した張本人の声が響いた。

 

 

 

 




この小説も4話目、回を増す事に執筆時間が伸びてる気がする
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