既に変声期を迎えたであろう年齢の男子にしては高めの声が、一夏の耳に部屋のドア越しに届いた。
「織斑くーんボクだよー」
「シャルルか?」
「うん、先生から聞いてると思うけど、今日から相部屋になるんだって」
「あぁ、さっき聞いたよ」
「扉…開けていいかな?先生から鍵を貰ってきたんだ」
「おう、いいぞ」
一夏はシャルルに扉を開ける事を許可すると、少しの間を挟んで、扉から解錠音が響くと。一夏は新たな同居人を招き入れた。
シャルルは大きなキャリーバッグを引きながら、一夏の前に姿を現した。
「突然一緒に暮らすことになるなんてビックリしたよ」
「俺も突然の話でさ、驚いたよ」
「確かボクがここに来る前には篠ノ之さんと一緒に暮らしてたんだよね?篠ノ之さんを追い出すような形になっちゃったな…」
新しく出来た友人の機嫌を損ねてしまったとシャルルは申し訳なさそうに萎縮する。一夏はそんなシャルルの姿を見てフォローを入れた。
「シャルルは別に悪くないだろ?ただタイミングが悪かっただけだよ、箒だって別に気にしてないって!」
一夏の言葉に励まされたのか、シャルルは笑顔を浮かべた。
「…ありがとう、織斑くん」
初対面の時に見せた満面の笑みとはいかないが、道端に咲く野花のような控えめなシャルルの笑顔に一夏も釣られて笑顔を浮かべた。そして一夏はシャルルに対して今朝から思っていたことを口にする。
「なあ、シャルル、その織斑くんって呼び方さ、固っ苦しくないか?」
「え?」
「俺たちもう友達だろ?ならさ、一夏って呼んでもよくね?」
「…いいの?」
伏せ目がちにシャルルは一夏に視線を向ける。一夏は言葉を続けた。
「つーか俺もうシャルルって呼んじゃってるし」
「あ…」
「改めてよろしくな、シャルル!」
「うん、一夏!」
シャルルの顔に、再びあの向日葵のような笑顔が咲いた。
シャルルが自分の持ち込んだ荷物の整理を横目で見ながら、俺は「箒とヤる計画」名付けて「プロジェクトSEX」に新たな光が差し込んだ事を確信する。
シャルルをこの計画に引き込んで、二人で箒とヤる。
当初予定していたものとは形が変わっちまったけど、箒とのSEXという目的は変わってはいないし、何よりシャルルが箒とヤれば、二人の拗れそうな関係もSEXを通して修復出来るんじゃないか…!?
何よりシャルルだって男、そりゃ女っぽい見た目してるけど中身は男なんだ!SEXは究極のコミュニケーション!オナニーなんて独りよがりなものとは違う!
(…赤信号、二人で歩けば怖くないってね)
シャルルの荷物の整頓が終わる頃にはもう消灯時間まで後一時間を切っていた。俺はてっきりシャルルの荷物は部屋に入ってきた時に持っていたキャリーバッグ一つ分だけだと思っていたけど、それでは終わらなかった。
一つ目のキャリーバッグの整頓が終わるとシャルルは突然部屋から出ていき、俺が何事かと思っていると。シャルルは部屋の外にまた別のキャリーバッグを部屋に持ってきたのだ、シャルルに話を聞くとまだ荷物はあるらしい。
その数なんと三つ、流石大企業の御曹司。庶民とは荷物の多さもケタ違いだ。結局二つ目からは俺も荷物の整理を手伝った。
流石に疲れた…シャワーまだ浴びてないのに…畜生!こうなったら何としてでもシャルルを計画に引き込んでやる!二人でやれば箒の部屋も直ぐに見つけ出せるはず!待ってろよ箒!そのデカいおっぱい俺たち二人で揉み倒してやるからな!
そんなことを俺が思っているとシャルルは俺に話しかけてきた。
「ありがとう一夏、荷物の整理手伝ってくれて」
「気にすんなって」
「流石に疲れたね、シャワーどうしよっか」
「お前から先に入っていいぞ」
「いいの?」
「おう」
俺の話を聞いたシャルルは着替えとバスタオルを持って風呂場に入っていった。そう言えば俺たちずっと制服のままだったな…俺はとりあえず上着だけ脱いで、それをクローゼットの中に仕舞うとまたベッドの上に座ってテレビを眺めた。
風呂場からシャワーの音が止んだのはそれから30分過ぎの事だった、男にしては長めの風呂だなと俺は思ったけど、シャルルの髪の長さなら仕方ないか。箒と同じ部屋だった時も箒の風呂はだいぶ長かったもんな、髪は女の命っていう言葉もあるし。まあアイツは男だけど。
そんな事を俺が考えていると、シャルルは湯気を纏いながら、風呂場から出てきた。
「ごめんね一夏、ボクお風呂長くって」
「いやぜんぜん気にしてな……っ」
俺はそこから先の言葉を続けることが出来なかった、シャルルはどうしたの?と言葉をかけるが、俺は固まってしまった。
シャルルの風呂上がりの姿は、あの…その、男に対していう言葉じゃないと思うけど………めちゃくちゃエロかったのだ。
女と見間違う程の美貌はシャワーの熱で火照り、後ろで束ねていた髪は解かれ、ムダ毛一つない四肢はVネックと、男が着るにしては短めのショートパンツが覆い、そこからスラリと白い細い、長い脚が伸びていた。
「…あのさ、シャルル」
「?どうしたの一夏」
俺は、今朝からずっとシャルルに対して抱いていた思いをぶつけた。
「お前…さ、ホントに…男?」
自分でも馬鹿な事を言っていると思う、けど、俺はシャルルを、この姿のシャルルを見て男だとは思えなかった。
シャルルは、少し困ったような顔を浮かべると、俺にとんでもない提案をしてきたのだ。
「…一夏がボクを男だと思えないならさ…」
「触って確かめてみる?」
俺の15年間生きてきた中で、最大級の衝撃が、俺の全身を駆け抜けた。
何も起きませんよ、何も。