就職先はAUOの秘書でした。   作:疾走する人

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フッ、待たせたなっ!

という調子に乗った前書きはさておき、楽しみにしてくださっていた皆様、更新遅れて申し訳ありませんでした。


ネルガルをぶっ潰しましました。

前回のあらすじ

 

ニート取り扱い説明書

 

目が、目がァ!

 ↓

言葉で責められると精神、及び肉体に莫大なダメージが与えられます。

 ↓

一々面倒くさいことをさせるんじゃねェ!

 ↓

やっぱり、ゲームは最高だぜ!

 ↓

美少女サイコー!

 ↓

この世界、サイコー!

 ↓

エレシュキガル、サイコー!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最近、というか三日前からナムタルのおっさんがメッチャイライラしてる。

 

具体的には、いつも額に青筋を浮かべて「あの小僧が…」と小声で呟きまくっている。

 

これを美少女がやっているならまだ恋敵が現れた恋する少女だとかそんな感じで微笑ましく思えるのだが、なにせやっているのは立派な口髭と顎髭を生やしたいい年したオッサンだ。

 

ヤンデレ系オッサンとか、誰得だよ。

 

と、ふざけるのはここまでにしておいて、流石にナムタルのオッサンのあのイラツキ具合は少し、じゃなくてかなりヤバイ。

 

普段からイライラしているのだが、食事のときは特にそれが顕著だ。

 

モ◯バーガーから盗み出してきましたハンバーガーを皆で夜ご飯に食べていた時なんて、あまりにもイライラした雰囲気を出しているので「何かあった?」と聞こうとしていきなり咳き込んでしまい、ナムタルのオッサンの顔面に俺の食いかけバーガーをぶちまけてしまった程だ。

 

いや、それは190%俺が悪いか。

 

まあそれはともかく、最近のナムタルのオッサンは色々とヤバげなのだ。

 

なので、ナムタルのオッサンに直接話を聞いてやろうではないか。

 

というわけで、俺は今ナムタルのオッサンの目の前にいまーす。

 

「どうした、ニートのゴミ。」

 

オイ、なんでサラッとごみ扱いしてるんだよ。

 

心配した俺がバカみたいに思えてきたんだが。

 

「ニートはゴミじゃねえよ!」

 

思わず反論してしまう。

 

そうニートはゴミではない。

 

別に働かなくてもいいだけの金を持った保護者がいる。

 

アニメがある。

 

ゲームがある。

 

ラノベがある。

 

そうだ。俺たちがニートなんじゃない。社会そのものがニートを欲しているのさ(暴論)。

 

そんな事を考えていたのが見抜かれたのだろうか。ナムタルのオッサンはますますゴミを見る目でこちらを見てくる。

 

勘弁してください。

 

精神的なダメージがヤバイんだが。

 

そんな事を考えて若干泣きそうになっている俺を見てナムタルのオッサンはため息を吐いた。

 

「ハァ…。まあ、お主にも迷惑をかけたな…。」

 

あれ?なんで俺の考えてることが分かるの?

 

…ハッ!もしかしてテレパシーでも持っていると言うのか!

 

なんて奴だ…。

 

このまま黙っているのもなんだか尺に触るので、とりあえず反論させてもらおうか。

 

「べ、別にアンタのためを思っていってるんじゃないんだからね!」

 

あれ、なんだかますますナムタルのオッサンの視線が冷たくなった。

 

あれれ〜、おっかしいぞー。

 

思わず某少年探偵の声を脳内で出してしまった。

 

いや、ホントにおっかしいぞ〜。

 

ここはホラ、「あ、コイツもコイツなりに心配してくれてたんだな」みたいな感じで親友ルートかヒロインルートに入るとこじゃない!?

 

いや、オッサンがヒロインとかマジで勘弁してほしいんだけど。

 

とりあえずナムタルのオッサン。いや、ナムタル様。

 

とりあえず、その冷たい目線をやめてください。

 

俺は別に冷たい視線に喜ぶような人種じゃないから。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、ナムタルのオッサンはもう一度ため息を吐いた。

 

「ハァ…。分かった。分かった。心配してくれてるのはありがたいんだがなぁ…」

 

「っていうか、そこまで落ち込むなんて珍しいな。何があったんだ?」

 

先程までのギャグ空間が一気にシリアスな空気に変わる。

 

ハッ、もしかしてナムタルのオッサンにはギャグをシリアスに変える特殊能力があるのでは!?

 

っていうか、ホントにナムタルのオッサンがここまで落ち込むのは珍しい。

 

この前エレシュキガルのセーブデータを間違って消してしまい、エレシュキガルに「ナムタルのおじさん、もう一ヶ月は喋ってあげない!」と言われたときの落ち込みようと同じくらいだ。

 

「それがな…。この前、ワシは地上に行っただろ?」

 

「あぁ、そうだったな…。」

 

そう言えば、ナムタルのオッサンの機嫌が悪くなり始めた前日、ナムタルのオッサンは地上に行っていたのだ。

 

確か、神様の宴会に冥界の食事を持っていかなければいかず、ルールでエレシュキガルは冥界から出れないことになっているので仕方なくナムタルのオッサンが出席したのだとか。

 

「そこでなんかあったのか?」

 

ナムタルのオッサンは忌々しそうな顔をして下を向きながら頷く。

 

そして、三秒ほど黙ったあとに口を開いた。

 

「ああ。そこで、戦の神であるネルガル、という男にイチャモンをつけられまくってな…。」

 

ほうほう。

 

イチャモンとな?

 

イチャイチャモンスター。

 

いや、ちょっと違うか。

 

…オホン!

 

ふざけるのはここらで止めておいて、真面目にナムタルのオッサンの話を聞いてやるか。

 

「ワシが持っていったマク◯ナルドのチーズバーガーSサイズを『メッチャ粗悪品じゃねえか!』と貶して来たのだ…」

 

「えっ」

 

いや、それはナムタルのオッサンが完全に悪い気がするのは俺だけだろうか。

 

あまりにも下らなくね?と呆然としている俺の表情を見てネルガルの行動が悪いものだと思っている、と捉えたのだろう。

 

ナムタルのオッサンの口調は少し激しくなる。

 

「それで仕返しにあの…、シュール…ストレミング、だったか?とにかく、世界一臭い食べ物を奴の酒にぶち込んでやったのだ。」

 

なぜか満足げにナムタルのオッサンは語る。

 

いや、それ完璧にアンタが悪ぃーじゃねーか。

 

俺はナムタルのオッサンにジト目を向けるが、ナムタルのオッサンは気づいてない。

 

「それでネルガルが怒ってな。喧嘩になりかけたので、知恵の神であるエア様が仲直りをしろと言ってネルガルを冥界に送り込んでくることになったのだ。」

 

幼稚園生の喧嘩か!

 

そう叫びそうになった俺は悪くないと思う。

 

「それで、ネルガルの奴がエレシュキガル様にまでちょっかいを出さないか心配でな…。」

 

ヤバイ。

 

ナムタルのオッサンがただ単に幼稚なオッサンなのか良い親がなのか分からなくなってきたぞ。

 

……。

 

……。

 

……。

 

「む?どうした?」

 

急に黙り込んだ俺を見てナムタルのオッサンが困惑したような声を出す。

 

だが、今はそれどころではない。

 

俺も、前世では一応大学は出ていた、…と思う。

 

いや、前世の記憶が物凄く曖昧なせいでホントに微妙なのだが、それでも一応神話とかは偶に読んでたのだ。

 

…あれ?

 

ネルガルって、どこかで聞き覚えがあるようなないようなあるような。

 

ちょっと待てよ。

 

ネルガル、宴会、怒る、冥界、エレシュキガル…。

 

………。

 

………。

 

………。

 

ハッ!?

 

「ヤッベエエエエエエエエエエ!」

 

城の中に響き渡りそうな声で俺は叫ぶ。

 

反射的にナムタルのオッサンが耳を抑えたが、そんな事はどうでもいい。

 

ヤバイ!ヤバイよ!

 

昔読んだ本の中に書いてあったよ!

 

『水浴びするエレシュキガルに魅せられ屈してしまい、エレシュキガルと六日間に渡る行為に及んだ』

 

とかなんとか!

 

ヤバイ!ヤバイ!

 

エレシュキガルがネルガルに襲われてR-18展開とか何それ羨ま…洒落にならん!

 

「ヤッベエエエエエエエエエエ!このままだとエレシュキガルがネルガルに取られてしまうううう!」

 

エレシュキガルはまだ寝ているからいなかったが、大声を出した俺の周りにはすでに裁判官が全員揃っていた。

 

「ほうほう…」

 

「なるほど…」

 

あ、ヤベ。

 

そう思ったときには時既にお寿司。じゃなかった、遅し。

 

裁判官の皆々様方は、ニヤニヤした表情を浮かべながらコチラを見ている。

 

「取られる、ねぇ…」

 

「ヤバイ、ねぇ…」

 

「青春だねえ…」

 

全員の生暖かい視線が俺に突き刺さる。

 

いや、待ってくれ、なにか勘違いしてるから!

 

そう言いたいけれども、なぜか言えない。

 

それどころか、顔に血が集まっている。

 

先程まで絶対零度だったナムタルのオッサンの視線も今はサウナくらいに生暖かい視線を送ってくる。

 

止めてぇ!

 

その視線は止めてぇ!

 

そう言いたいけれども、なぜか言葉は出てこなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

冥界の城、その露天風呂の男湯の中。

 

俺は隣に設置されている女湯にエレシュキガルが来るのを今か今かと待ち構えていた。

 

いや、別に覗きだとかストーカーだとかじゃないからね!

 

まあ、今の不審者丸出しの俺が言っても全く説得力がないのは明らかだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。

 

ネルガルは今日の朝に来て今日の夜に帰るらしい。

 

一度会ってみたが、そこまで悪逆非道、というわけではなさそうだった。

 

だけど、あの目がなんだかおかしいんだよなぁ…。

 

例えるなら、ソードアートオンラインの須郷さんみたいな感じの目の濁り方をしてたんだよなぁ…。

 

しかも、エレシュキガルを見て薄っすらと気持ち悪い笑みを浮かべてたし。

 

コレは確定だよね。

 

もう絶対にネルガルって変態だよね!

 

そんな事を考えていた俺の耳の中に、聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきた。

 

女湯の方から。

 

ヤベェ!

 

考え事にふけっていたせいでエレシュキガルが女湯に入っていたことに気づかなかった!

 

俺の記憶出は、確かネルガルはエレシュキガルに襲いかかる、みたいな感じでR-18展開に入るのだ。

 

ということは、もう襲われてるってことじゃねーか!

 

「ハァッ!」

 

俺は重力のベクトルを操って思い切り地面を蹴る。

 

そして、一瞬で女湯と男湯を分けている壁の上に出る。

 

「ッ、あの野郎ォ…!」

 

俺の視界に映ったのは、浴場の床に仰向けに倒れているエレシュキガル。

 

そして、エレシュキガルに覆いかぶさる格好でニヤリと笑みを浮かべ、エレシュキガルの肩に手をかけようとしているネルガル。

 

エレシュキガルが薄っすらと目に浮かべている透明な液体を見て、俺の中のナニカが切れた。

 

空気を圧縮して空中で固まらせる。

 

体内の血液のベクトルを操作して血流を早くし、無理矢理筋力を上げる。

 

そしてーー、空中に作った空気の塊を足場にして、思い切りエレシュキガルの方に急降下する。

 

ドゴォン!

 

そんな音を立てて俺の足が浴場の床にめり込むが、あいにくとそんな事を気にしている暇はない。

 

エレシュキガルもネルガルも全裸だが、見たところエレシュキガルの身体にはまだそういう貞操を奪われたような跡はない。

 

良かった。

 

安心したところで、俺の怒りが収まるわけではない。

 

というか、むしろ近くに来たことでますます殺意が上がるまである。

 

空気のベクトルを操り、開いた俺の右の掌に凝縮していく。

 

殺意を込めて。

 

安心を込めて。

 

憤怒を込めて。

 

掌の中で既に小さな竜巻が起こっているが、そんな物では俺の怒りは収まらない。

 

もっと。もっとだ。

 

空気中から酸素のみを抽出して、他の成分を取り除く。

 

ーー頭痛。

 

俺が解析できる空気の範囲を冥界全体に広げる。

 

ーー頭痛。

 

掌にますます多くの酸素を集める。

 

ーー掌から出血。

 

集めた純度100%の酸素を竜巻状に回転させる。

 

ーー目から出血。

 

冥界全体を解析し終わる。

 

ーー右腕から多大な出血。

 

解析した冥界の空気から水素のみを抽出して、左の掌に集める。

 

ーー左の掌から出血。

 

水素を右手と同じように竜巻状に回転させる。

 

ーー左腕から出血。

 

攻撃の範囲にエレシュキガルが入らないように、照準をネルガルのみに固定。

 

ーー眼球が圧迫される。

 

両腕をかめはめ波横バージョンのようにくっつける。

 

そしてーー。

 

 

発射。

 

 

さて、水素爆発、という言葉を知っているだろうか。

 

水素と酸素を組み合わせると巨大な爆発が起こるよ的な、あの。

 

俺の右の掌には酸素の塊。

 

俺の左の掌には水素の塊。

 

俺の両の掌、その先から爆発が発生する。

 

普通ならここで自爆テロみたいな大爆発を起こして終わりだろう。

 

だが、俺にはベクトル変換がある。

 

ベクトルの向きをネルガルに固定したまま、そんな大爆発を引き起こしたらどうなるか。

 

答えは簡単である。

 

「ッッ!」

 

反動に耐えながらもネルガルを睨みつける俺の掌から、青い光線が発射された。

 

青い光線は竜巻のようにぐるぐると回転しながらネルガルを巻き込み、冥界の天井まで押し上げられーー。

 

そして、冥界の天井を突き破った。

 

「ハァ…ハァ…」

 

マズい。

 

ベクトル変換を攻撃に使うことばかりを考えていて、無意識のうちに防御に割いている部分まで使ってしまったらしい。

 

もう半分感覚が無くなりかけている俺の全身からブシュウという嫌な音が聞こえてくる。

 

そして俺の視界の中には予想通り俺から飛び散る血の雨。

 

ネ先程までネルガルがいた方向から少し下へと視線を下げる。

 

そこには、ポカンとしているエレシュキガル。

 

…ああ、無事だったか。

 

巻き込まなくて、本当に良かった。

 

それにしても…。

 

ごちそうさまです。

 

俺の視界の中に映るエレシュキガルの綺麗な全身を見てから、俺は床に倒れ伏した。




何気にかなり文字数が多くなった。

すまない。ギャグパートが下手になってしまってすまない。

シリアスパートばかり書いてきたもので…。

本当にすまない。
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