NEW GAME! 作:ぞい☆
参考書を進めていくうちに、俺は涼風の様子が気になり、ちらっと横を見た。
あるぇ…?涼風がいないぞぉ?一体どこに行ったんだ?
ま、まぁ…考えるのも野暮ってもんだし、気にしないで参考書を進めることにしよう…。
「渚ー、ちょっとちょっと」
「はーい?」
それから少しして、涼風を連れた八神さんが現れた。
何やら社員証用の写真を撮り忘れていたらしいので、これから撮るとの事。
八神さん…いや、何も言うまい。きっとあまりの激務で疲れててうっかり忘れていたに違いない、そうに違いない!
そんなこんなで八神さんに連いていくのであった…。
「じゃあここはレディーファーストって事で、青葉から。ほら、じゃあそこの壁際に立って」
「は、はい!」
「…うーん…ねぇ、一応服装は自由なんだけどさ。何で学生服なの?」
「やだなぁ、学生服じゃなくてスーツですよこれ!社会人の基本じゃないですか」
あ、あの表情、絶対見えねぇって思ってるんだろうな八神さん。
大丈夫、俺も思いましたんではい。
やはり涼風は年相応には見えない、もう中学生でも通じるんじゃなかろうかこれ。
「じゃあせめてスーツの正しい着方くらい覚えようぜ」
そう言って涼風の胸元を少しはだけさせ、ラフな格好にさせるが、これまた何を考えているかわかりやすい表情を浮かべて少し考えてから、この提案を自ら却下したのであった…。
分かり切った事でしょうに…。
「じゃあ気を取り直してーーー……照明が足りない…!」
再開するのかと思えば、そんな事を言って八神さんは何処かに行ってしまった。
あ、涼風も付いてくのか…俺は良いや、ここで待ってよう。
……あ、戻ってきた。そして一人増えてるし。あの人はさっき剣を振っていた先輩ではないですか。
何やらさっきとは別のおもちゃの剣を持ってきてるようだけど…もしかしてそれが照明代わりとか言いませんよね?
そして案の定、その光る剣が照明代わりに使われ、連れてこられた先輩が照明係をさせられるという状況になったのだった…。
「よーし、次は渚だな。花粉症辛いのは分かるけど、証明写真の時だけは外しなそれ」
「わ、分かってますって…」
流石に社員証もこんな写真なのは俺も嫌だっての。
ってそこ二人、八神さんと涼風、何ワクワクしながら俺がマスクとグラサン取るところまじまじと見てるんですか。
見ていても何も面白い事ないっての…。
若干の居づらさを感じながら、俺はマスクとグラサンを取り外す。
ぐへぇ…目と鼻が赤いからあんま録りたくないんだけどなぁ…。それで、どうして俺の顔を見て固まってるんですかね、そんなに赤くなってるんだろうか?
「…なぁ、渚って、男だよな…?」
「…人のコンプレックスを言うのはNGですよ八神さん…」
どうせ女顔ですよ、何か文句あるかこらー!
はいそこ、涼風、異性として負けたとか言わない、そんな勝利嬉しくもないから!!
ちゃっちゃか撮っちゃってくださいよもー!
「渚は結構ラフな格好で来てるんだな」
「まぁ、服装自由って言われたんで、無難な格好を選んだつもりなんですけど」
ジーンズに長袖と言った具合の感じである。
まだ春先で、夜は寒くなるので、ちゃんと上着も持ってきているという、油断生じぬ二段構えである。
「よし、それじゃ撮るぞー?」
「ん…っ」
そう言われてカメラをじーっと見ているが、一向にシャッターが押されない。
八神さんや、一体どうされた…はい?潤んだ瞳でこちらを見るな?何それ理不尽で。
見ないと写真撮れないんですけど!!
等と言った騒動もあったが、社員証用の写真を撮り終えたのであった。
八神さんはすぐに戻ってしまったので、この場にはまだ自己紹介していない先輩と涼風と、俺の三人になってしまった。
とりあえずいそいそとサングラスとマスクをかぶってっと…。
「涼風さんと、絵筆くん?さん?だっけ?」
「は、はい!」
「そこは自信もって君でお願いしますよぉ…」
「あはは、ごめんごめん。挨拶が遅れたけど、私は篠田はじめ。よろしく。……お願いします……。ああああ!ダ駄目だ!後輩って初めてなんだよ!それに初対面だし!!」
おぉう…いきなりあらぶりだしたなこの人…。
それと凄い服着てますね、必殺って…知ってるか?必ず殺すと書いて必殺なんだぜ。
一体だれを殺しに行くと言うんですか先輩!!
「気にしなくて良いですよ、先輩なんですから、篠田先輩!」
「うわ!「先輩」!?何か背中が痒くなるから「はじめ」でいいよ!」
「分りましたはじめ先輩!」
「それ絶対わざとでしょ!?」
あ、この人結構いじりがいがある先輩だこれ。
でも後が怖いから今日はこれっきりにしておこう、まだ初対面だし。
「じゃあはじめさんで、私も青葉で良いですよ」
「ああ、よろしく、青葉…さん。いや、おかしいか、ははは」
「俺も渚で良いですよ、篠田さん」
「うん、渚くんもよろしく!渚くんもはじめでいいんだよ?」
「女性ですし、そこは遠慮させてください…」
「何や楽しそうやなぁ。丁度ええからおやつにしとく?」
ふと、可愛らしい服装の先輩が声をかけてくれた。
ガラガラと引き出しを開けて何かを取り出し、準備しているご様子。
ふんふん、飯島ゆんさん…はじめさんの同期とな…。
おぉ、あの引き出し、クロスをかけてそのまま机代わりにもなるのか、中々に小慣れてらっしゃいますね、飯島さん。
そしてふと何かに気づいた涼風が、デスクに向かいキーボードを叩き出した。
どうやら滝本先輩を誘ったらしい、何処からクッキーが入った箱を取り出したのだった。
「青葉ちゃんと渚くんは今は3Dの勉強中やったっけ?」
「はい、早く覚えて働きたいと思ってます!」
「俺は中途半端な知識何で、復習とかも込みこみで途中からやってます」
「すぐだよ!私だって覚えられたんだから!」
「でも、はじめったら字読むと眠ってまうから、先輩が付きっ切りやったんやで」
「ちょ!」
若者の活字離れとはこう言う事を言うのであろうか。
その先輩、良く付き合ってくれたな、ここはほんとにいい会社なのだろう。
「ゆん何てパソコンの使い方からだったじゃないか!」
「そないな昔の事忘れたわ」
それって篠田さんよりも駄目駄目だったんでは…。
あ、このクッキー美味いです滝本さん、あざっす。
マスクだけ外してグラサン付けたままで見たもんだから、滝本さんちょっとびくってなってた…本当に申し訳ないです…五月前には取れると思うんで…はい。
「今作ってるゲームっていつ発売何ですか?」
「いつやったっけ?」
「半年後だよ。噂ではそろそろ恐ろしく忙しい時間が来るんだって~…」
追い込み作業という物だろうか、出社初日でその脅しはやめてくれださい、想像もしたくないんですけど。
流石に新人にその言葉は恐怖ですよ恐怖。
「…なるよ」
「え?」
「…家に…帰れなく…なるよ…」
滝本さんの口調も相まってか、中々にシャレになってない事になってるんですけど。
これはとんでもない所に入ってしまったんではなかろうか…いや、ゲーム会社なんてどこもそんなもんなのかもしれない、そう割り切っておこうと思う。
「でも、八神さんはもう泊まってましたよね?やっぱりリーダーだから?」
「あの人は会社に住んでるって言った方が正しいんじゃないかな。凄いよ、数人分の仕事してるし」
社内のメッセではコウ@定時で帰りたいと書いてあった時はどうなんだとは思ったけど、やっぱり凄いんだなあの人。数人分の仕事やってるとか、あの人の性格だと想像もつかなかった。
俺も気を引き締めて頑張んないといけないなこりゃ。
「ま、性格はあれだけど。わはははは!」
志村後ろー!志村、うしろー!!
あ、あぁ…気づかないままに頭ぶっ叩かれて悶絶してやがる…くっ、遅すぎたんだ…すまない篠田さん、貴女の犠牲は忘れないです。
「青葉、渚、おまたせ~。はい、社員証」
「わぁ…」
「どうもです」
出来るの早いなぁ…さっき撮ったばかりで、一時間もたってない感じがするんだけど…。
もしかして写真以外はもうできてたとか…?
まぁ、そんな感じだろうな、うん。
「何だかホントに入社した気分です!」
「いや、とっくに入社してるから!休憩も大事だけど、まだ終業前何だからさっさと仕事再開してね」
「「はーい!」」
「それで、青葉と渚はどれくらい進んだ?」
「参考書の半分くらいまでは…」
「もう少しで参考書終わりそうですね」
「おお、早いじゃん!ちゃんと青葉にアドバイスしてあげたんだな、ナイス渚!」
「そんなにはしてないですよ、後は涼風の頑張りですよ」
「そ、そんな事ないよ!すっごい助かったもん!」
「ふふーん、仲良く出来てて何より!それじゃあ、青葉はもう少ししたら仕事振るからよろしく!渚はこれから振るから来て。細かい所は実戦で覚えて行こう。青葉もね!」
「「はい!」」
そんなこんなで、八神さんのデスクで仕事の説明を受けたのであった、
初仕事は村人を作る作業が割り振られたのであった…。