NEW GAME! 作:ぞい☆
「渚ー、あんた仕事に遅れるわよー!」
「ふげ…あー…もう朝かぁ…」
目覚まし母さんで、今日の朝も何とも気持ちが良いとは言えない起床をする。
昨日はつい背景とか思いついた人物絵とか描いてて寝るの遅かったからまだ眠い…。
でも会社遅刻するのはやばい…起きてエナドリでも決めようと思う。
もぞもぞと気怠い体を起こしては、着替えて下に向かい、もそもそと朝食を食べる。
朝は手軽に食えるパンが楽でいいわぁ…。
「あんた、今日は遅くなるの?」
「あー…分かんない、今日の仕事の進み具合によるかも、遅くなるようだったらメールするわ」
「んー。あ、献立をメールするのだけはやめなさいよ?キノコの味噌汁飲みたいって送られてきた時は、仕事中にこいつ何やってんだって正気を疑ったもんよ」
どうやらあのメールは不評だったらしい。
あの時はそういう気分だったから仕方がないんだ、許せおかん。夕飯の味噌汁美味しかったから、また今日も作ってくれおかん。
食パンを食べきり、上着を着て会社へと向かう。
いつも会社に向かう時、毎日見てる代わり映えのしない風景を見ながら歩くのが俺の毎日の日課になっている。
ふつふつと絵を描く意欲が沸いて来る。仕事で描くって言うのはまだ慣れないけど、そこはもう少しでなれるだろう。
何しろ入社してまだ一か月もたってないからなぁ。
それでもあの会社、色々濃いんだよなぁ…先輩たちが…。
まぁ変にお堅い人たちよりかは退屈はしないし、こっちも気楽でいいんだけど、男が俺一人だけってのもなぁ。
慣れているとはいえ、それでも目のやり場に困るときもあるってわけよ。
等とぐちぐちと考えながらも、会社まであと少しって所で、篠田さんとばったり出くわした。
俺を見かけるなり駆け寄ってきた、朝から元気ですなぁ篠田さんや(しみじみ)
「おっはよー渚くん!」
「おはようございます、篠田さん。珍しいですね、こうして出社中に出くわすの」
「ホントだよー、いつもこの時間?」
「そうですね、もう少し早い時もあれば、のんびりって時もあるので、バラバラですね」
「そっかそっか。意外にしっかりしてるんだね!」
その意外はいらないんだけどなぁ。
みんなして俺をほめる時は意外意外と…俺だってちゃんとしてるんだぞー!!
どいつもこいつも失礼しちゃうよ全くっ。
他愛のない会話を続けていれば、気づいたらもう会社が目の前に。
誰かと話していると移動するのも早く感じるよなぁ、これから仕事かと思うと、もう少しゆっくりでもよかった気がするが…。
「あれ、珍しいじゃん、はじめと渚が一緒に出社って。何だ何だー?カップルかー?」
出社して早々、昨日も会社に泊まっていたであろう八神さんと出くわし、おもちゃを見つけたような表情を浮かべたかと思えば、ニヤニヤしながらそう言われた。
やれやれ、その歳でそんな子供じみたことを言うなんて…それだから八神さんは八神さんなんだ、ねー?篠田さん?
「な、ななな!何を言ってるんですか八神さん!渚くんとは途中で出くわしただけですって!ねっ!渚くん!」
「アッハイ」
うっわー、何でそんなに慌ててるんですか篠田さん。
そんなんだから八神さんの格好の餌食になるんですよ…実際、何の反応もしてない俺よりも、大慌てしている篠田さんの方を見てにやにやしてるし、八神さん。
そんな大慌ての篠田さんを俺はスルーして、自分のデスクに着く。
渚はいじりがいがないなーっとか言われた、どうせ弄りがい何てないですよーだ!!
「やーい女顔ー!」
「やーいパンツ女―!」
「上司に向かってその口の利き方は何だー!!」
「調子乗りましたすんません!!」
人のコンプレックスをまたいじり始めたので、思わず言いかしてしまったらめっちゃ怒られた件。
くそ…この人が上司だって事を一瞬頭から抜け落ちていたぜ…。
とりあえずぺこぺこと頭を下げて事なきを得たのであった。
そしてふと気づけば始業時間が五分前と差し迫った所で気づく、涼風、飯島さん、滝本さんが未だに姿を現さないのである。
よもや遅刻か?と考えていれば、八神さんも同じことを考えていたらしく、物珍しい顔で三人のデスクを見ていた。
「まだ連絡がないから、少し遅れてるんじゃないかしら?」
「三人も遅刻何て気が緩んでるのかな…ちょっと厳格な態度で接するべきか」
「出来るんですか?」
「出来るよ失敬な!それと渚、何も言わず私を見てにやにやしない!」
「えー?してませんけどー?」
「現在進行形で!してるじゃん!このー、見てろよそこの二人!私がびしーっと言ってやる!」
えぇー?ほんとにござるかぁー?
おっと、ガチ睨みされたのでもうからかうのはやめよう…首にされたらシャレにならないでござる…。
そんなやり取りをしてすぐに、三人が出社してきた。
特に息を切らしていないところを見ると、途中であきらめて歩いてきたのかね?
んん?でも涼風の鼻が赤いのはなぜだ?もしかして転んだとかか?
『おはようございます』
「あ!おいおい、遅刻だってのにずいぶんのんびりしてるね。自覚はあるの?」
「ご、ごめんなさい…」
「特に青葉!まだ入社一か月もたってないのに、学生気分じゃ困るよ!」
「はい…!」
おー、しっかりと注意してる…まるで上司みたいだ!?
あ、ちょ、何でこっち見るんですか…いや、睨まないでください、俺は何も悪くないですよ、心の声が悪いんです、無実なんですはい…。
「…コウちゃ…会社の…前…までは…」
「…ん?」
「青葉ちゃんがさっき転んでしもて、カバンの中身を拾うてたら遅くなってしもたんです…」
なるほど、だから鼻が赤いのか。
ちょっと痛々しいから絆創膏でも恵んでやろう、えっと、絆創膏絆創膏…。
「…え?ちょっと、こけたって大丈夫なの?」
「へ?」
「それで鼻が赤かったのか……。そ、それならそうと早く言ってよ!勘違い…しちゃったじゃん…」
八神さんの顔がみるみる赤くなっていく。だから!何で俺を睨むんですか!何も言ってないでしょ!
良いからさっさとこの場をどうにかしてください!
上司の務めですよ!俺は絆創膏探しで忙しいんです!
くそぅ…俺が何をしたって言うんだ…事あるごとに俺にヘイトが向いている気がする。
「…青葉はいつも頑張ってるし、学生気分とは思ってないよ。でも…一応上司だし…とはいえ、酷い事言って…ごめん…今日の所は遅刻じゃない事にしといてあげるけど、三人とも遅刻届出す様に!」
「は、はい…」
「それと渚は後でしばく!!」
「だから俺何もしてない!!」
最後の最後まで俺にとばっちりが来ていてとても解せぬ。
もしかして八つ当たり入ってません?ねぇ、そうですよね?何で目をそらすんですか八神さん?八神さん!八神さーん!!
くっ、一体何でこんなことになったんだ!そんなにパンツ女って呼ばれたのを根に持っているというのか八神コウ!(間違いなくそれが原因)
「お、おはよう、渚くん」
「ん、おはよう。ほら、絆創膏やるよ、鼻に張っとけ、生憎と消毒液はないから、傷を綺麗に洗ってからな」
「ありがとう…朝から騒がしくしちゃってごめんなさい…」
「何で俺に謝るんだよ。ま、遅刻は誰にだって起こる可能性あるもんだし、次に生かせ」
「…うん!」
少しは元気は出ただろうか、鼻を綺麗にして絆創膏を張った涼風は、遅刻届をさらさらと書いて八神さんに渡しに行ったのだった……が!
「…で、これは何なのかな…?」
「え…遅刻届ですけど…」
「そうじゃないよ!!何で遅刻理由が青葉もゆんも『寝坊』なの!?これじゃあ帳消しにできないじゃん!!」
『…あ』
「書き直し!」
わー、丸く収まったと思ったら全然収まってなかったぞぉ…。
さっきよりもこじれてる気がしてならないんだけど。
ふっ…俺は学習する生き物だからな、もう何も口を挟まないし、何も考えないようにしておこう。
「そしてひふみちゃん…これは何…?」
「…朝…ごはんが…おいしくて……つい……」
「んなこと聞いてないよ!まず書類に顔文字描かないでよ!ああもう反省して損したー!渚ー!一発殴らせろー!」
「今俺殴りたくなる要素何処にありましたーー!?八つ当たり辞めてください!!」
なんでじゃーー!?
この一日、八神さんの俺に対する当たりが強まる一方だったとだけ言っておこう…。
次の日になったらこそっと八神さんに謝られて、缶コーヒーをおごってもらったのは、俺と八神さんの秘密となった。
そしてその日、今度は遠山さんが俺に対するあたりが強くなった気がしたのは、きっと気のせいだと思う…思いたいです…思わせてください…。