NEW GAME! 作:ぞい☆
「皆さん休日って何してるんですか?」
いつも通りお仕事中にティータイムと洒落込んでいた時に、ふと涼風が唐突に脈絡もなく疑問をぶつけてきた。
その話題が出たとたんにここにいる内二人が目を逸らしている。
お、一体どんなやましい事を休日にしてるんですかね?(ゲス顔)
「内緒や」
「え、即答?」
「何か言えない理由でも~?」
「内緒なもんは内緒やの!」
「やましい事があるに十万ジンバブエドル」
「渚くぅん?」
「アーキョウモコウチャガオイシーナー!」
飯島さん、マジでキレる、五秒前…。
そうなる前にこれ以上は茶化さないと俺は固く心に誓った…、あぁ、飯島さんが淹れてくれた紅茶は今日も美味しいです。
等と飯島さんに射殺さんとばかりの視線を向けられつつも、優雅に紅茶に口をつける。あれ、おかしいな…手が震えてるぞ…春とはいえまだ寒い日があるんだなー(棒読み)
そして率先して弄っていた篠田さんも、休日は何をしているのかと問われれば、これまた露骨に目をそらして秘密とのたまったのであった。
「渚くんは休日何やってるの?」
「俺は外に出て背景を見たり描いたり、家ではゲームとかそんな事ばっかしてるぞ?」
しれーっと特に何も考えずに淡々と述べれば、何こいつに合わない事してんな見たいな表情を一斉に浴びた。
何これ解せぬ…あんたらはちったぁ俺の事をそろそろ意外意外と思うの止めません!?
入社してもう一か月になるんですよぉ!?
「渚くんってもっとこう…常人には理解しがたい趣味を持ってるのかとばかり…」
「蟻の巣穴に水流したりとかな」
「あー、やってそう…」
「…さ…流石に…それは…言い…過ぎじゃ…」
俺氏フルボッコ過ぎて涙も出ない件。
お?喧嘩か?良いぞ、その喧嘩かってやろうじゃねーか!後悔すんなとオラァ!!
五秒後には血で染まる事になるぜ?俺の血でなぁ!!
たぶん篠田さんが持ってる剣とかで簡単にやられそうだから笑えないんだよなぁ…何で職場なのにそこまで武器がそろってるんですか、バイオハザードにでも備えてるんですか。
あ、後滝本さんは天使ですね、おらそこのお三方、大天使フミエルを見習いなさいよ、超絶天使ぞ?超絶天使ぞ?
「俺だって普通の趣味を持ち合わせてますよーだ」
「でも本当に意外だよ。渚くんって、仕事外でも絵を描くんだね」
「まぁな。好きな事を仕事にしてるからって、それだけで済ましたくないし。好きなもんだからこそ、自由にやりたいって時もあるじゃん?」
そう真面目な事を言い返せば、ポカーンとした表情でこちらを見ている。
何でそうなるのかと小一時間問い詰めたいんですけど…。
俺でも心はあるんですよ!?言っときますけど俺の心は鋼でも無ければ防弾ガラス製でもないんですよっ。
血潮は鉄で心はガラスでできてるんですよ!だと言うのにあんたらはぁ!
「…いやぁ…渚くんに真面目な言葉って…似合わへんな!」
「人の真面目な返答聞いての感想がそれってどうなんですか…」
ナギサ、オウチ、カエル。
おうそこ三人、罪の擦り付け合いするんじゃねーやい。
小声で「ほら、あんな事言うから渚くん拗ねちゃったないですか」とか「う、うちが悪いん…!?」とか「そうだよ、謝った方が良いってゆん!」等など話されてるようですけども?
ぜーんぶ丸ぎ声なんですけどねぇ!!
それをしり目に大天使フミエルはと言うと…。
「…渚くん…の…考えは…凄い…良いと…思うよ…」
控えめに言っても天使かな?
いや、控えめに言わなくてもこれは天使ですわ…滝本さんの優しさが染み渡っていくぅ…。
そんなこんなでティータイムが終わり、各自仕事に戻っていきました…先ずは謝罪しろぉ!!
□□□
「青葉ちゃん、渚くん。はいこれ」
「何ですかこれ?」
「えっと、どうもです?」
今日も一日元気に仕事だー!バリバリ―!と気合十分に作業に取り組んでいると、遠山さんから紙を手渡された。
紙には給与明細と書かれていた。
おー、今日って給料日だったのか…いやぁ、何を買いましょうかね。
「青葉ちゃんと渚くんは初給料ね」
「はい!バイトもしたことないので、ホントに初です!」
「俺もバイトとかしたことないんで、初めてですね」
「でも、振り込みだとやっぱりこういう明細書だけなんですね」
「ん?」
「だってお給料と言えば、封筒の厚みで「おっ、今月は多いな!」とか「少ない…」って、一喜一憂するものかと」
「青葉ちゃん、ホントに10代?」
遠山さんの苦笑いも分かるっちゃ分かるんですけど…すいません、涼風の言い分も分かっちゃうんですよ。
昔のアニメの会社での、給料のシーンとかって大体そんな感じだったりするので。
初めての給料なのはわかるけど、給与明細を受けとって見るだけでは、何とも実感がわかない。
これが初給料だからなのか、はたまた給料という物に夢を持ち過ぎていたのか…。
まぁ、自分の通帳を見て振り込まれているお金を目にしたら、嫌でも実感がわくんだろうけど。
「で、でも貰っていいんですかね…まだこれしか作ってないのに…しかも残業代まで…」
「そう!だから青葉ちゃんは、早く会社に貢献できるように頑張らないとね!渚くんもだよ?」
「アッハイ」
いきなり先輩らしい事を言いだしたので少々…いや、かなり面食らってしまった。
どうした篠田さん!それじゃあまるで先輩みたいじゃないですか!あ、先輩でしたね、さーせん。
「そして会社から評価されれば~、お給料も上がるわけですよ!」
「は、はぁ…はじめさんお給料上がったんですね」
「あ、分かっちゃった?ちょっとだけねぇ~」
この先輩、結局は自慢したいだけだったのだろう。何とも分かりやすい先輩ですな。
まぁ、給料の使い道も、篠田さんのデスクを見れば簡単にわかってしまう。
「どうせデスクのおもちゃに全部消えるんやろ」
「良いだろ別に!!」
俺の心でも読んだかのように、代弁してくれる飯島さん。
さっすが、ここぞとばかりに篠田さんを的確に落としていくスタイル!嫌いじゃないですぜ!
「それに資料にもなってるし、現に八神さんがよく持ってくし…特にこれ!これがあるだけで仕事がはかどるんだ!」
「好きやなそれ…」
ブゥンブゥンブゥゥン…っと電子音を響かせて振われるそれは、八神さん御用達の照明剣である。
手慣れた手つきでブゥンブゥンっと振り回しては、少年っぽい笑みを浮かべて楽しそうにしているのであった。
今仕事中何そんなことしていいのだろうか…あ、八神さんがちらちらとこっちを見ている、しかしそれに気づかない篠田さん!
え?俺が注意しろって?いやいや、ここは上司である八神さんがするべきでしょうよ、あちょ…。
くっ、丸投げしてそそくさと自分の仕事再開し始めたのあの上司…。
「ついでに西洋剣もあります!」
「なんでもありますね」
「くっ、殺せ!」
「いきなり何言うてんねん渚くん」
「失礼しました、くっ殺と出てしまいました」
というか何でデスクに西洋剣あるんですか。
篠田さんはジョブにモーション班とは別に、女騎士でもあるんですか。
一体いつそのジョブに転職するんですか、教えてください!!
「うわっ、細いのに凄く重い!!こ、こんなのよく振り回せるな…」
「でしょ?鉄の塊だからね」
「あっ!」
ぐらっと重さに負けて、そのまま篠田さん一直線に西洋剣を振り下ろしてしまう涼風。
篠田さん絶体絶命にピーンチ!!
とはならず…そのまま手に持っていた照明剣を使って、涼風の攻撃を何とか受け止めたのであった…。
「ご、ごめんなさい!!」
「ホントに役に立ったなぁ…」
「ほんまやなぁ…」
「……はじめー、私にも西洋剣貸してくれるかぁ?」
「すいませんっしたぁ!!」
流石にあんな鉄の塊で攻撃されたら流石の俺でも大怪我してしまうのでNGの方向でお願いします飯島様…。
とりあえず謝り倒して事なきを得たのであった。
「お給料の査定は年に一回だから、青葉ちゃんも渚くんも、来年には昇給してるといいわね」
「評価っていい仕事をしてれば上がるものなんですか?」
「青葉ちゃんだとまだ与えられた仕事をこなしてくれればそれでいいわね。でも目の前の仕事以外にもどれだけチームに貢献できたかも大事よ?ちなみに、青葉ちゃんや渚くん、キャラ班はキャラリーダーのコウちゃんとADの私が評価して社長に報告するの」
「貢献…なんだか難しいですね」
「入社一か月目何だし、そう難しく考えなくてもいいんじゃないかー?務めてれば嫌でも貢献しなきゃいけないとき来るだろうし」
「渚くんの言う通りよ。今から考え過ぎても、かえって周りが見えなくなっちゃうものだしね。だから、青葉ちゃんが良いと思ったことをまずやってみてね」
でも、渚くんはもう少し考えようねぇ?っとにっこりと言われてしまい、ウッスと答えることしかできなかった俺は決して悪くないと思うんだ…。
どうも遠山さんからは、時たま標的にされることが多いんだけど、何でじゃろか。
これも全部、八神コウって奴のせいなんだ…だから俺はそこまで鈍感じゃないって言ってんでしょもーっ。
「八神さんって仕事には厳しいし大変だよねキャラ班」
「そうか、モーション班のリーダーは八神さんじゃないですもんね」
「…そう言えば、素朴な疑問なんですけど。篠田さんってどうしてこのブースなんですか?」
俺がそう言えば、ドキッとした表情を見せてすぐに、しょぼんと落ち込んでしまった。
あ、俺地雷踏んだ奴ではこれ…あ、あ…お、俺をそんな目で見るな、見るなあぁぁぁぁ!!
気が付けば、遠山さん、涼風、飯島さんからじぃぃっと見られていた、こっわ…。
最近謝ってばっかりだなぁ俺ぇ!!
「ごめんね…私もね、モーション班のぶーすにいたいんだけどね…ごめんね…」
「ちょ!?誰も何でいるのみたいな質問してないですよ!?」
「モーション班の席が余ってなくてね…まぁ、お隣だし」
そんなざっくりした理由でモーション班のブースに押し込んでよかったのだろうか。
ブースを拡張するとかは思いつかなかったのかなぁ、いや…これだとマジで篠田さんに失礼だし、もう考えるのはやめておこう…。
「初給料は何に使うか決めてる?」
「え?あぁ…何にしましょう…全然考えてなかった…」
「私は服やったなぁ」
「好きなキャラのフィギュアにすれば思い出が残るよ!!」
「ちくわ大明神」
「うーん…ちょっと待ってください、誰ですかいまの!?」
先輩方の初給料の使い道を聞いては、ますます悩み始めた。
んー…俺もどうすっかな…家にお金入れろとは言われてないし、かと言って自分で全部パーッとつかうのも、なんか違うし。
とりあえず、家族とご飯にでも食べに行くとか、そっち方面に切り替えて、残ったのは貯金って事にしておこう。
「やっぱり貯金…ですかね」
あ、涼風と被った。
堅実だけど一番いいのが貯金だよなぁやっぱり!
老後の蓄えとか必要じゃないですかー!あ、でも新作のゲームとか出たら買っちゃうかもしれない…。
「渚くんはどうするの?」
「んー…家族にご飯奢って、残りは貯金って考えてたんだけど、とりあえず保留」
「後輩二人はどっかの給料全部おもちゃにつぎ込む先輩と違って偉いなぁ」
「わ、悪かったね!親孝行とか貯金とか考えないで!」
はは、煽りよる。
そんな初給料で何を買ったのか話に花を咲かせていると、混ざりたかったのか八神さんも隣のブースからひょっこり現れた。
あるぇ、さっき仕事しろみたいな視線俺に送ってませんでしたっけ貴女…。
「遠山さんは何に使ったんですか?」
「あ、私も気になる~、何に使ったの?」
「え、覚えてないの!?信じられない!?」
「へ?…えぇ…?何かあったっけ…何でそんなに怒ってるの…!?」
一体何をしたんだ八神さん。
今にも泣きそうな顔してるんですけど遠山さんが、せんせー!八神さんが遠山さんの事を泣かせましたー!
キッと俺の事を一瞬見てきたので、これ以上は何も余計な事は思わないでおこう…何でいつも俺の考えてる事わかるだ…。
え?顔に出てる?お前は分かりやすい?ハハ、ワロス。
「何渚くんを見てるのぉ?一緒に日帰り温泉に行ったでしょ~?」
「いたたたた!そうだったそうだった!」
おっと痴話げんかが始まったようだ。
周りのみんなも、うわー、また始まったよ、早く付き合っちまえよみたいな表情を浮かべながらその喧嘩を見ていた。
最終的に、何処に行こうか決めたことすらあいまいに覚えていた八神さんが、遠山さんをさらに怒らせて逃げだすと言う結末を迎えたのであった。
そんなんだから貴女はいつまでたっても八神なんだ!
「せや、渚くん、同期なんやからそろそろ青葉ちゃんの事下の名前で呼んであげたらどうや?」
「え、何でいきなりそんな事になったんですか」
「そうそう!だって渚くん、いつまで経っても下の名前で呼んでくれないじゃん!私達は良いとして、せめて青葉ちゃんだけでも呼んであげたらどうかな?」
いやいや、いきなりの展開で着いて行けないんですけど。
どうしてこうなった…ほら、涼風も何か言ってやれ!うん…うん…ほら、涼風も無理に呼ばなくていいって言ってるじゃないですか!
言っておきますけどねぇ、俺は男子何ですよ?男なんですよ?同期だろうが何だろうが、男性に下の名前呼ばれるの嫌がる人もいるんだし…え、嫌じゃない?出来ればでいいから呼んでほしいと…?
はっはー、さっきの言葉はどうしたんだい涼風さんや。
ぶっちゃけ、渚くん可愛い顔をしてるから、男性だって今思い出した…?
おい、俺の顔について何かあるなら聞こうじゃないか!
「はぁ…はいはい、分かった、分かりましたよ…呼べばいいんでしょ呼べば…青葉」
「わー…渚くんに下の名前で呼ばれるの…ちょっと変な感じ」
「呼べと言われてその感想はないでしょーよ!?」
相変わらずここでの俺の扱いって珍獣みたいな扱いされてるよね。
そんなに俺って変な子?いや、自覚はあるけど、そんな変人レベルで変な子ではないと自分では自負してるんだけど!
何故か周りはくすくす笑ってるし…ちくせう、何かい俺の心は砕かれなければならないんだ…。
さめざめと泣きそうなくらいに傷心になってるなか、涼風…改め青葉が、滝本さんに同期がいるのか質問していた。
別のチームにいるそうだが、離れ離れで寂しそうと青葉が口にすれば、滝本さんは「別に…喋らないし…」っとばっさり切り捨てた。
結構コミュニケーション取ってくれる良い先輩なんだけどなぁ、滝本さんって…勿論社内メッセでだけどな!!
「ちなみにひふみんは初任給何に使ったの?」
「…コ…プレ…」
「え?」
あ、いつの間にか八神さんが戻ってきてる。
滝本さんの初任給の使い道?私、気になります!
「…コスプレ…衣装に…」
「え!?うそ!写真ないの!?」
「…ひみつ…」
うせやろ…人としゃべるの苦手なのに、趣味が凄いアグレッシブ…。
普通そう言う人って人前でそう言う事出来ない人ではなかったというのか!
いや、偏見が過ぎるなこれは…しっかし、社内メッセでのキャラと言い、滝本さんの趣味と良い、驚かされてばっかりだなぁ…。
あ、八神さんが滝本さんの事に興味津々になったもんだから、遠山さんがむくれてる。
「ま、まぁ貯金もいいけど。何か思い出に残る事をしておくのもいいと思うわよ。忘れちゃう人もいるようだけど…」
「はぁ…そうですよね…何か考えます」
「俺もそうしまーす」
この日、俺は家に帰り、今度の仕事の休みの日に、家族と飯を食いに行く事にした。
くっ…ここぞとばかりに焼肉を選ぶとは、流石俺の親、がめつい…っ!
感想、誤字報告、お気に入り、評価、ありがとうございまするるるるるるる。