香霖堂には夢がつまってる   作:野道春日

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お久しぶりです。原稿自体はあったのですが…はい、すっかり忘れてました。言い訳は受験やらなんやらです。ごめんなさい。


その2

前回のあらすじ

 

クイズのクはクレイジーのク

 

ーーーーーーーーーー

 

空気が凍りつく

ピリピリした雰囲気が流れる

 

全員の視線は青コーナーの慧音に向けられていた

 

「慧音さん…どういうことですか?」

「…ふっ」

 

そう薄く笑うと、慧音は立ち上がる

ゆっくり、ゆっくりとスクリーンの前まで歩いてゆく

 

そしてスクリーンの目の前に立つと妖夢らのほうに背中を向けたまま振り返った

 

「そうだ、私がキラだ」

「いやそんな話してないです」

 

冷静につっこむ妖夢だったが霊夢と魔理沙はそうではなかった

 

「「なん…だと」」

 

チャドの霊圧が消えたかのような表情

 

今までどんな異変がおころうと、狼狽えるどころか逆にその状況を楽しみ、そして解決してきた二人は激しく動揺していた

 

(この二人をここまで狼狽させる理由って一体…?)

 

妖夢の額に汗が滲む

 

「そんな馬鹿な…」

 

霊夢が口を開く

 

「霖之助さんがらみの二次創作じゃ、慧音ってだいたい真面目キャラなのに!」

「そんな理由!?」

 

見も蓋もない話だった

 

「そうだぜ!こういう作品では基本的にイロモノ枠は霊夢なのに!」

「誰がイロモノ枠よ訂正しなさい!全身の穴という穴にモンスターボールつめられたいの!」

「そういうとこでしょ」

「慧音!どういうことだ!」

 

ひと悶着のあとに慧音の方へふりかえる三人

 

「人を騙してまで膝に座りたいのか!寺子屋の教師も堕ちたもんだな!」

「そうよ!人として最低なことだと思わないの!?」

(あんた人のこと言えませんよね)

「黙れ!」

 

慧音の怒号が響きわたる

そこに今までのふざけきった表情はうかんでいなかった

 

ふたたび静まり返る魔法の森

 

彼女の心からの叫びに

握りしめた拳に

悔しさから滲む涙に

 

一同は思わず言葉を無くした

 

「お前たちに…お前たちに何がわかる!」

 

口を開く慧音

 

その拳を握りしめたまま

 

「原作で出演しているお前たちに!二次創作しか出番のない私の気持ちがわかるか!」

「はい?」

「私にはわからない!半人で、人里に関わりがあって、しかも色彩的にも揃ってる感じで霖カプランキングでも上位にくいこむ私がなぜ!なぜ東方香霖堂へのオファーがない!」

「帰っていいですか?」

 

とたんに緊張感がなくなった

 

「というか射命丸!どういうことだ!お前とは妹紅の入浴シーンの盗撮で手をうったはずだぞ!」

「上白沢さん、私はジャーナリストとして、そして誇りある天狗の一人として、行動したまでです」

「文さん…」

 

目をとじる文

 

そしてスカートのポケットから写真を取り出し、二つに引き裂いた

 

「たとえ恨まれようとも、そんな汚い約束事なんて、この写真のように破り捨ててしまったほうが」

「あんた昨日<これを利用すれば…ふふふ、良いネタが入ったものだわ>とか言ってニヤニヤ笑ってたじゃない」

 

台無しである

 

「はたて!あんた何てことを!」

「あなたばっかり好感度上げようったってそうはいかないわ!」

「ちっ!余計なことを!」

 

ここにはクズしかいなかった

 

「けっ悪いな慧音!この幼なじみと霖カプランキング一位の枠は一人用なんだぜ!」

「消えなさい非公式!あんたは弾幕格闘ゲームの背景ぐらいがお似合いよ!霖之助さんの[[rb:守護神>ヴィーナストーカー]]の座は譲らないわ!」

(ほとんどゴミと変わらないよそんな座!)

「巫女に分際で神を語るなどもってのほか!貴様らには[[rb:頭突き>おしおき]]が必要のようだな!」

 

結局のところ、幻想郷において物事に決着をつける方法はただ一つ

 

「「「「弾幕ごっこ開始だ!」」」」

 

全員が一斉に距離をとり、臨戦態勢に入る

 

静かだった魔法の森の前に火花が散る

 

さっきとは明らかに異なる緊迫感があたりをつつむ

 

「やっぱりこうじゃなきゃあな!」

 

真っ先に武器を取り出し構える魔理沙

 

それは一人家を飛び出した彼女の身を案じる霖之助が授けた武器

 

まさしく魔理沙の戦闘スタイルを表す幻想郷

でも指折りの火力

 

魔法であり魔砲!

 

M(マリサ)202ロケットランチャー!」

「ストップストップ!」

 

思わず止めに入る妖夢

 

「何だよ、今いいとこなのに」

「いやおかしいでしょ!そこはミニ八卦炉じゃないんですか!?何でそんな近代兵器持ち出してきてるんですか!?」

「仕方ねぇだろ、この間ミニ八卦炉の修理はまだだから代わりに持ってけって香霖が」

「というか何でそんな物騒なものを持ってるんだ霖之助は?拾ったのか?」

 

まさかの異常事態に慧音も指摘せざるを得なかった

 

そりゃあ少女のスカートからロケットランチャーが出てきたら誰だって驚く

 

「いや、何か電子レンジ修理してたらこうなったとか言ってた」

「何ををどういじれば家電製品が近代兵器になるんですか!?」

 

安定と安心のMade in 香霖堂である

 

「何でも【まいなすいおん発生装置】ってのをつけようとしたらしい」

「それ電子レンジに必要な機能ですか!?

てかそんなちょっとした改造でどうにかなるレベルじゃないでしょコレ!」

「でも修理は成功らしいぜ?【まいなすいおん発生装置】だけはついたって」

「完全に目的を見失ってるよ!本来あるべきものが何一つとして備わってないよ!」

「一応これで弾幕ごっこもできるぜ?」

「汚い花火の飛び交う戦場をごっことはいわねえよ!」

「しまいなさい魔理沙」

 

注意を促す霊夢

 

「なんだよ霊夢、お前だって普段から電子レンジ使って平気で調理するだろ?」

「それ電子レンジじゃないただのロケットランチャー!普段から兵器で処理するやつがどこにいるんですか!」

「電子レンジどころか明日の米を買う金もないわ」

「「…」」

 

何の飾り気もない切実すぎる霊夢の言葉に

ボケることもツッコむこともできなかった

 

「それはそうと魔理沙、幻想郷では殺し合いは禁止よ」

 

スペルカードー現在の幻想郷において、もめ事は全てこれによって決着がつけられる

 

それは単なる【ごっこ遊び】

 

強さではなく美しさを競うものだ

 

「そう、弾幕はあくまで【ごっこ】、殺し合いなんてもってのほかよ!」

 

そう言って霊夢が取り出したのは

 

チェーンソー(全自動小刃回転式お払い棒)!」

「弾幕ですらねぇだろうがァァ!」

 

極めて殺傷力の高い武器だった

 

「ちょっとぉぉォ!あんたさっき殺し合い禁止って言ってたよね!」

「これから行われるのは…生贄だ」

「?」

「お前!上白沢慧音…試練は…流される血で終わる」

「お前いつ大統領になった!ヴァレンタインっていうより十三日の金曜日だよ!」

 

いつの間にかマスクまで装着した霊夢

殺る気満々である

 

「我が心と行動に一点の曇り無し…!全てが『正義』だ」

 

うなるお払い棒(チェーンソー)

突進する霊夢

 

「逃げてェェ!慧音さん超逃げてェェェ!」

「…」

 

叫ぶ妖夢だったが慧音はいたって落ち着いていた

 

「こうなることは想定内…博麗の巫女、お前を打倒する策はすでにできている!」

 

そう言うと、迫り来る霊夢に慧音は正面に向き合い、何かを辺りにばらまいた

 

「!?」

 

あらゆる異変をその手腕で解決してきた彼女は、ばらまかれた何かが目にはいると同時に地に頭を擦り付けていた

 

「そんな…馬鹿な!?」

「あの霊夢さんが…」

 

ある時には対立し、またある時には協力することもあった妖夢と魔理沙には、その光景が特に異様に見えた

 

「おい霊夢!どうしちまったんだよ!」

「驚いているようだな…落ちているものを見てみろ」

 

促された通り辺りにひろがるそれを拾った

 

「これは…金?」

「人を支配するのに必要なのは!腕力でもカリスマでもない!財力だ!」

「言いきったぁぁぁ!」

 

落ちたお金を一枚ずつ丁寧に拾い集める霊夢

理性を越えたその彼女の動きには美しさすら感じられる

 

「はははははは!」

 

その上に立ち高らかに笑いを上げる慧音

 

「いいか小娘ども!大人の世界とは、社会の縮図とはこういうものだ!」

「あんた一応寺子屋の教師だよね!?」

「今まさに指導しているところじゃないか、このふざけた世界の真理を!」

「いやふざけてんのお前の心理!生徒に資本主義叩き込む寺子屋がどこにあるんだよ!」

「失礼だな、大事な生徒にこんなこと教えてるわけがないだろう」

「説得力皆無どころか刑務所にいても疑問に思わないレベルです」

「そこまで言うなら、昨日の算数の授業を再現してやろう」

 

~~~~~

 

がらがら

「授業をはじめるぞー!ほら、ちゃんばらの続きは放課後にしなさい

「昨日授業に出てきた公式は復習したかー?

「ははは、まったくみんな朝から元気一杯だなー!

「じゃあ昨日の続きから始めるぞ

「教科書二十四ページを開いてー

カッカッカッ

「まず、公式になることの重要性について、東方香霖堂に幼なじみとして私が出たことを例に

 

「公式ってそっちィィィィ!?」

 

~~~~~

 

「妖夢、人の回想シーンは最後まで聞くものだぞ?」

「いやおかしいでしょ授業の内容!算数まったく関係ないし!ていうか何だこの授業!

どんだけ公式じゃないことコンプレックスなんだよ!」

「何だと!私にとって公式であることがどれほど重要か…まあいい、話を進めるぞ」

 

~~~~~

 

「私が東方香霖堂に出た場合、人里の話が当然出てくる

「となれば私と接点を持つのは自然な流れだ

「女教師という肩書き、これは非常に大きい

「二次創作では私の巨乳率がやたらと高いのもここに起因しているだろう

「つまり、私があの馬鹿共に代わり公式キャラとして東方香霖堂に出演すれば

「間違いなく慧霖のイラストや同人誌が爆発的に増え

「名実共に消せない歴史となるわけだ

「経済効果は五億にものぼるだろう

「また…

 

「やめちまえこんな意味のねぇ回想!」

 

~~~~~

 

「はぁ、まったく最近の若者は、どうして人の話をちゃんと聞かないのか…」

「話し手が狂ってるからだよ!何だったんだよ今までの無駄な時間!結局お前が書籍にでたいだけじゃねぇか!あとお前が出たところで五億にもなるわけねえだろうが!」

「shut up!少なくとも刀ふりまわすことしか能の無い寸胴庭師のお前には絶対不可能だろうがな!」

「野郎ぶっ殺してやらぁぁぁ!!!」

「落ち着け妖夢!気持ちはわかるがチェーンソーはまずいって!」

 

コンプレックスを指摘された妖夢

霊夢の使おうとしたチェーンソーで切りかかるのを魔理沙がとめる

もはや弾幕ごっこどころか修羅場じみてきた

 

(今よはたて、この混乱に乗じてさっさとととんずらしましょ)

(そうね、写真はカメラに抑えたし、長居は無用ね)

 

隙を見て逃亡を図る天狗二人

能力も使って三人から距離をとる

性急に、かつ慎重に

しかし少し動いたところで文の様子が変わる

 

(ま、まずい!鼻がムズムズしてきた…)

(ちょっと、やめなさいよこんな時に!やらないでよ?絶対にやらないでよ!?)

 

こんな経験はないだろうか?

 

屈伸のストレッチや座敷に座ろうとしたら膝から『パキッ』という音が出た(痛みはない)

 

運動不足が主な原因らしい

 

(…よし、収まったわ)

(じゃあ気付かれないように態勢を低くして

さっさと離れましょう)

(何でわざわざ態勢を低く?)

(しゃがんだほうがカモフラ率が上がりにくいのよ)

(なるほど)←?

 

シャバドゥビタッチヘーンシーン

 

「あっ、やべ」

「今の音膝から出たの?」

「あっ!あいつら!」

 

すかさずM202を構える魔理沙

 

「無駄です!砲弾ぐらいなら風をあやつって

へェしょい!」

「決まらないわね」

「それでは!アディダス!」

「アディオスでしょ」

 

翼をひろげ、飛び立つ二人

幻想郷でも特にスピードに秀でる種族である鴉天狗の彼女らに追い付ける者はそういない

 

「逃がすか!」

 

 すかさずM202から砲弾を発射。硝煙を放ちながらまっすぐ天狗たちに向かって飛んでいく。

 

「無駄です!」

 

 風を操り難なく起動を反らす。砲弾は遥か後方、空の彼方へ

 

行くことはなくUターンして帰ってきた。

 

「そんな!?」

「まさか自動追尾のアミュレット!?」

「熱源探知式だぜ!」

「科学の力かい!」

 

 狙いを定め直し、高速で空中を舞う。

 

「ちょっと、どうすんのよ!あれって目標に命中するまで止まらないやつじゃないの!」

「…ふっ」

「何よその不敵な笑みは?」

「はたて、あなたは私の一番のライバル。でも今は私の側にいる…私達の新聞に敗北なんて記事はないわ」

「文…!」

「大丈夫!策はある!」

 

そう言うと、はたての襟を掴み前に付き出す

 

「ゑ?」

「必殺!『ほたてシールド』!!!」

 

説明しよう!『ほたてシールド』とは!

 

特殊防壁を前方に展開することによって、一度だけあらゆる攻撃を防ぐことのできる魔法の盾である!

 

「ちょ、離して離して!違うから!フリじゃないから!マジなやつだかr

「アーッ!!!」

 

消し飛ぶ姫海道ほたて

 

「ありがとうほたて…本当に……本当に…『ありがとう』…それしか言う言葉がみつからない」

「くそっ!上手く避けたか!」

「はたてさぁぁぁん!!!」

 

ついに犠牲者がでてしまった

 

「サラダバー!」

 

 翼を広げ、飛び去る文

 

「今回は『巫女、土下座!魔法の森で何が』『グラビア特集 もこたんにinしたいお!

~俺の天狗がフジヤマヴォルケイノ~』の

二本立て!今度の新聞大会はいただきね!」

 

 笑みを浮かべ、背後へと顔を向けながら空を舞う

 

すると何者かが前に立ち文の肩に手をおく

 

「おもしろそうじゃないか、ぜひとも読んでみたいもんだ」

 

不死の少女は笑う

燃え盛る怒りを内に秘めながら

 

ちょっと炎が体からもれているが

 

「アーッ!!!」

 

汚い花火が空に咲く

 

 

 

<とぅーびーこんてぃにゅー>


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