その瞬間は、誰もが自分のことしか考えられなかった。巨大な影が自分たちを潰さんとしているのだから、それも仕方のないことだろう。
それは何も一般人に限った話ではない。ヒーローを目指す若者たちにとっても、それは変わらない。自分たちに課せられたのは、少しでも多くの敵を倒し、ポイントを稼ぐこと。だがあの敵を倒す手段はないし、何よりあれは0点対象だ。倒しても何の特にもならないし、挑むだけ危険だ。
顔が恐怖に歪み、座り込んでいる少年がいる。彼のことを逃げていく若者たちは一瞥し、
そのまま目を逸らす。誰もが自分を救うので手一杯で、自分の夢を叶えるのに精一杯なのだ。ライバルを助ける、それも自分の命をかけてでもなんて、誰も考えられなかった。
怯える少年が背を向けて走ろうとする、とその足が止まる。振り返ると、瓦礫に足を挟まれ、動けなくなっている少女がいる。奇しくもその子は、この試験が始まる前に、自分を助け、励ましてくれた子。
気がつくと少年は走り出していた。
まだ自分が1ポイントも取れていないことも、この敵を倒してもポイントが入ることはないことも、そもそも彼女が雄英に入ることを競い合うライバルであることも、何もかもが彼の頭から抜け落ちていた。
そこにあるのは純粋な思い。
「助けたい」
ただそれだけのこと。
両足を踏みしめ、少年が地面を蹴る。爆発的な威力を発揮した脚力は、少年がまるで消えたかのように錯覚させる。あっという間に巨大ロボットの前に少年は飛び上がっている。
下の方ではその少年の様子を他の参加者が逃げることも、ポイントを稼ぐことも忘れて食い入るように見つめている。
少年が右腕を振りかぶる。力が集まり、耐えられなかったのか、服の袖が弾け飛ぶ。飛び上がった勢いを殺さぬまま、少年はその拳を振り抜きながら心で強く叫んだ。
『
力の限りを込めて振るわれた拳は、ロボットの巨体を弾き飛ばし、地に伏せた。
誰もが身の前の光景にあっけにとられる中、はるか上空からその様子を眺めていた者が感心したように声を漏らした。
「へぇ、やるじゃねぇか。ん?」
少年は力の全てを使い果たし、気を失ってしまう。その身は重力に導かれるまま、地面に向かい、落ちていく。右腕と両脚は骨まで砕けてしまったのか、頼りなく風に揺れている。
「不味い!」
一筋の光に姿を変え、少年の体に飛び込む。ドクンと、少年のものとは別の鼓動が響く。
(この高さ……間に合え!)
突如として腕の怪我が治り始める。ぱちりと目を開く少年。右腕と両脚に力が込められるようになる。地面が迫る中、着地のために態勢を立て直そうとし、
「よしっ!間に合っ、へぶっ!?」
予想外の衝撃を顎に受け、再び気を失ってしまった。その身はふわりと浮き上がり、空中に固定される。先ほどの少女が能力を解除すると、少年の体がゆっくりと地面に降ろされる。
「タイムアッープ!!!」
響き渡るのは試験終了の声。結局その少年、緑谷出久が目を覚ましたのは、試験が終わったはるか後、夕方になってからだった。
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「ハァ〜」
目覚めた後、試験の終了のことを聞かされた出久。放心状態のまま帰宅し、自室のベッドに座りため息を吐く。せっかく憧れのオールマイトに鍛えてもらい、個性の譲渡までしてもらったというのに、自分は何もすることができなかった。
得点はゼロ、つまり無し。
自分のしたことを後悔はしていない。今もあの時、自分のとった行動が間違っていたなんて思っていない。きっとオールマイトだってそうしていたはずだし、それが正しいヒーローなのだから。
でも、
「これじゃ合格なんて絶対無理だ。折角あれだけオールマイトに特訓してもらって、期待してもらってたのに、僕は何もすることができなかった。こんなんじゃ、オールマイトに顔向けできないよ。あの人みたいになんて、なれっこない」
『そうか?俺からしてみたら、お前は立派なヒーローだったと思うぜ』
「慰めてもらえるのは嬉しいですけど、でも事実僕はあの時全然特訓の成果を活かせていなかった。ちゃんと覚悟を決めたつもりだったのに、すぐに怖気ついちゃって……って、あれ?」
出久が辺りを見渡す。目に入るのはいつもと変わらない自室。来客もなく、自分1人しかいない。一緒に住んでいる唯一の家族である母親も、気を利かせてくれているのか、部屋には来ていないはず。
「でも今確かに声が……僕の気のせいだったのかな」
『気のせいじゃないぜ。俺がお前に話しかけてるんだしな』
「やっぱり聞こえる!?」
パッとベッドから飛び降りて辺りを見渡す。やはり誰もいない。と、ここで出久は自分の左腕に今日までつけた覚えのないブレスレットのようなものが巻かれているのに気づいた。
「なんだろこれ……誰が?いつの間に?」
『ウルティメイトブレス。俺とお前が、一心同体になった証だ』
「ウルティメイト……いや、それよりこの声、誰ですか!?」
『そういや、自己紹介がまだだったな。俺はゼロ、ウルトラマンゼロだ。って、どした?』
謎の声を遮断しようとしているのか、出久が両耳に指を突っ込み、塞いでいる。
「耳塞いでても聞こえる……!」
『そうだよー』
「テレパシー?いや、でもこの地域にそんな個性を持ってる人はいなかったし。そもそも僕に話しかける理由がないのに」
『だから言ってるだろ。俺たちは一心同体になってるって』
「えっと、あの……ウルトラマンゼロ、でしたっけ?そんな名前のヒーロー、僕、聞いたことがないんですけど……」
『そりゃそうだ。俺はこの宇宙には来たばかりだからな』
「宇宙?」
『取り敢えず、そっから説明しないとな』
突然出久の腕輪の中央に埋め込まれた、青い宝石が光り始める。映し出されるのはホログラムのようなもの。そこには赤、青、銀色の体に黄色い目。胸に青い宝石のようなものを付け、二つのトサカのようなものを頭部に持つ、見たことのない存在だった。
『改めて、ウルトラマンゼロだ。よろしくな』
こうして、異なる宇宙の2人が出会った。しかしそれは、ここから始まる、長く苦しい戦いと数々の出会い、大きな試練の始まりだった。
緑谷出久とウルトラマンゼロ。2人のヒーローへの物語が、幕を開けた。
まぁ、こんな感じに進んで行く予定です、はい
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ある程度きたら考えます