Fate/kaleid liner プリズマ☆ぐだ子 作:普通の燃えないゴミ
作品名はプリズマ☆ぐだ子ですが、過去編は半分士郎目線です。ご了承下さい。
本編は基本ぐだ子目線で書こうと思ってますので。
それでは記念したい第一話、どうぞ!
01 衛宮
赤髪の少年と少女は、地獄を見た。
まだ年齢が2桁にも満たない少年と、それよりも更に幼い少女が見るには、あまりにも酷な光景。
燃え盛る紅蓮の炎、渦を巻く怨嗟の声、降り掛かる絶望。
行くあてもなく、ただただ、歩き続けた。助けてと叫ぶ声を無視して、助からなかった何かを踏み越えて。
そうしてどれだけ屍の上を歩いただろうか。足は棒のようで、体の感覚は殆ど無い。
赤々と嫌な明かりで照らされた地獄が陰る。空を暗雲が覆っていた。ポツリ、ポツリと、雨が降り出し、瞬く間に雨足が強くなっていく。
炎が消されていくが、それだけでは体の痛みはおさまらない。
限界だったのだろう。少女がその場に座り込んでしまう。少年も、寄り添うように少女の肩を抱く。
周りの人の形をした何かが燃えていた明かりが消えた少年と少女の周りが、何かが崩れる大きな音と共に、よりいっそう暗くなる。
少年は振り返る。
燃え尽き、黒く変色したコンクリの建物が、今まさに、少年と少女を押し潰さんと倒れようとしていた。
― ― ― ― ―
「誰か!誰か居ないのか!」
「誰でもいいわ!返事をして!」
雨の降る倒壊した街の中、くたびれた黒いスーツを着た黒髪黒目の男性、衛宮切嗣と、その妻である、ノースリーブの白いドレスを着た女性、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが叫ぶ。
周りには死屍累々、消し炭になった、人型をしていただろう何か。
返事をする者は居ない。つい先程まで炎に包まれていたこの地で、生物など存在出来る筈もない。
生存者は居ない。2人が諦めかけていた時。
「っ、切嗣!」
「どうした、アイリ!誰か居たか!」
「違うわ。誰かが居たわけじゃない。けど…」
「?」
だったら何が。そう切嗣が言う前に、膨大な魔力が放出されたのを感じ取った。最早それは爆発とも言える程のもの。
「アイリ!」
「ええ!」
一体何があったのか。それを考えるより先に、2人は駆け出していた。方向は丁度、今まさに倒壊している低めのビルがある方。一瞬だけ見えた赤い閃光からして、そのビルが倒れた位置こそが魔力の発生源。
宝具の開放にも似た、とてつもない魔力。それが本当に宝具であれ何であれ、魔力を放出できる、生存者が居る。2人にはそれがわかるだけで十分だった。
息せき切って走る。生きている(と思われる)とはいえ、瓦礫に埋もれてしまっては救出にかかる時間次第では手遅れになりかねない。
「これは…!」
切嗣とアイリが魔力の発生源に着くと、地面に倒れた少年と、傍らに座り込んで泣く幼女が居た。そしてその周りだけ、瓦礫が無い。まるで瓦礫自体が2人を避けたかのように、ぽっかりと円形になっている。
驚くもすぐに冷静さを取り戻し、2人を見る。少年は、いつ事切れてもおかしくない瀕死の重体。対して幼女は、火傷痕こそあるものの、幸いにも直ぐに命に関わるようなものは無さそうであった。
顔立ちは似ている。兄妹だろう。兄である少年が、妹である幼女を守る為に、何らかの魔術を使ったのだと思われた。しかし、年端も行かない、こんな状態の少年が、あの魔力を制御出来る筈もない。もしかするとわざと暴走させて身を守ったのかもしれない。信じられなかったが、切嗣にも、アイリにも、そんな事はどうでもよかった。
少年は光の灯っていない、空っぽになった瞳で、ゆっくりと空に手を伸ばす。その目には切嗣とアイリはおろか、傍らで泣く少女すら映っていないかもしれなかった。
切嗣が少年が伸ばした手を取り、アイリが幼女を抱きしめる。
壊れた心と朦朧とする意識で、少年は聞いた。少女は見た。
「ありがとう…!生きていてくれて…!」
自分達を救ったのに、救った側である筈の自分達が救われたかのように涙を流す、2人を。
― ― ― ― ―
目が開く。視界に映るのは、無機質にも見える、所々染みのある白い天井。病室というのがしっくり来る。
起き上がる。体に痛みは無い。治療の跡こそあるものの、傷は見受けられなかった。
しかし唯一、失った記憶が違うと言うものがあった。自身の左腕だ。焼け付いたように、黒くなっている。とは言えそれは、褐色肌といえばそれで済む程度のもの。日本人でも、何らおかしくない肌の色だ。
病室を見渡す。どうやらこの病室には、自分ともう一人、自分と同じで日本人には珍しい赤銅色の髪と琥珀の瞳の少女だけのようだ。
起こすかどうするか、考えている内に、少女は目を覚ましたようで、ゆっくりとした動作で起き上がる。
「おはよう、立香」
「…しろー?うん。おはよー」
立香と呼ばれた少女は、少年を「しろー」と呼び、挨拶に応じ、「しろー」もとい士郎も微笑む。尚、今が朝かどうかは2人にはわかってない。起きたばかりなのでとりあえず、といった感じだ。
さて、起きたはいいけどどうしたものか。そんな事を思った時だった。
病室のドアが開く。
「やぁ、士郎くんに立香ちゃん。もう起きていたんだね」
くたびれた黒いスーツを着た少し疲れたような男性と、赤いシャツにミニスカートとブーツの若々しい女性が入ってきた。
見覚えがある。自分達を助けてくれた2人だった。
「早速で悪いけど―――」
「孤児院に預けられるのと、今会ったばかりの夫婦に引き取られるの、どっちがいい?」
男性が落ち着いた感じで話そうとしているのを遮り、女性は身を乗り出して士郎と立香に尋ねる。男性は困ったような苦笑いを浮かべていた。
士郎と立香は互いに顔を見合わせ、同時に男性と女性―――これから親となる夫婦―――を、指差した。
それを見て夫婦は、顔を綻ばせた。
「そうか。よかった」
「じゃあ早く準備しましょ。ほらほら」
「ちょっと、アイリ。待ってくれって。あぁそうだ。先に一つ言っておかないと」
「あら、言っちゃうの?切嗣」
「別にいいだろう?この2人には知る権利がある」
「そうね。いいわ。言っちゃいなさい」
「はいはい。あのね、僕達はね、魔法使いなんだ」
切嗣と呼ばれた男性は、臆面もなく、柔らかな表情で、士郎と立香にそう言った。
「すごー!」
「マジか。すげーな、じーさんにおねーさん」
「爺さ―――」
「おねーさん!おねーさんですって切嗣!もう、この子ったら、お上手ね!」
そんなに老けて見えるのかな、と肩を落とす切嗣とは対象的に、おねーさんと呼ばれたアイリはとても嬉しそうだった。
ハイテンションなままのアイリがテキパキと準備を進め、切嗣の安全運転で、士郎と立香は衛宮家に連れられてきた。一般的な、洋風の2階建てで庭付きの一軒家。極々普通、何処にでもある、ありふれた一般邸宅だ。
車の音を聞きつけたのだろう。玄関のドアが開き、アイリとは少し違う銀髪に赤い瞳の女性が2人、人数的に正確に言えば3人姿を見せる。片方は長髪で、シャツの上にカーディガンという格好でもしっかりとした雰囲気。もう片方は、ショートカットで、ゆったりした服を着ていて、その腕に、アイリと同じ銀髪の、生後数ヶ月ぐらいの赤ん坊を抱いている。
「おかえりなさいませ。アイリ様、旦那様。そちらは…」
「おかえりー。赤毛の子は誰ー?」
「あぁ、セラ、リズ、イリヤ。ただいま」
「ただいま、セラ、リズ、イリヤちゃん。この子達はね―――――私達の子よ♪」
「は…?」
よほど士郎におねーさんと呼ばれたことが嬉しかったのか、未だに元気なアイリはにっこりと笑う。セラ―――2人の女性の内、長髪の方―――が、何を言っているんだこいつは、というような顔を一瞬だけしかけたものの、すぐに納得したような顔になった。
「あー、その2人が、助けられた子達かー」
間延びした声で、リズ―――短髪で赤ん坊を抱いている方。本名はリーゼリット―――が言う。どうやら士郎と立香を引き取ると言う話は、昨晩のうちにでもされていたらしい。
「よく、いらっしゃいました。私はセラ。この家でメイドをしています」
「リーゼリットだよ~。リズお姉ちゃん、と呼んでもいいんだぜ~」
「リズ、またあなたはそうやって…」
「まぁ、いいじゃないかセラ。今はそのぐらいで。ほら、2人とも」
セラとリズが屈んで、目線を近付ける。が、リズのあまりの気さくさに、セラが小言を言ってしまう。切嗣が苦笑いしつつもなだめて、士郎と立香に挨拶するように促す。
「今日からお世話になります。士郎です」
「おせわになります。わたし、りつか!」
ペコリ。兄妹揃って頭を下げる。
「ええ。よろしくお願いします」
「あら、ダメよ~?これからは家族なんだから、そんな他人行儀じゃあ」
柔らかくセラが微笑むも、ニコニコとした笑顔のアイリに制される。アイリはそのままリズから赤ん坊―――アイリと切嗣の実子、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン―――を受け取ると、より一層柔らかな声で話しかける。
「ただいま~イリヤちゃん。大人しくして、いい子ね~」
「奥様。家族になるからこそ、挨拶ぐらいはきちんと…」
「セラ、堅い」
「なっ、リズ!あなたがグダグダとし過ぎなんです!だいたい…」
「まぁまぁセラ。今はほら、新しい家族を笑顔で迎えてくれ。リズへの説教は、後でも出来るだろう?」
「…まぁ、いいでしょう」
3人のやり取りを笑顔でスルーしたアイリがかがみ、イリヤと士郎達を対面させる。
「士郎、立香。私と切嗣の子供で、貴方達の妹になる、イリヤスフィールよ。イリヤ、って呼んであげて。ほら、イリヤちゃん。お兄ちゃんとお姉ちゃんですよ~」
士郎と立香を見ると、イリヤが楽しそうにその小さな手を伸ばす。
「よろしくな、イリヤ」
「よろしくね、イリヤちゃん」
士郎と立香に差し出された指を握って、イリヤは嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間に、士郎は再び、立香は初めて、守るべきものを得て、守る側になった。
口調が、難しい… これで合ってるのかわからない…
けど書く
皆さんお気付きの通り衛宮性になる前の士郎では魔術なんて使えるはずもないんですが、その理由はおいおい(多分あと2,3話以内)には描写しますので、許してください。
※追記 立花じゃなくて立香でしたね ずびばぜん
過去編はもう1話か2話ぐらいあります。
では、お付き合い下さりありがとうございました。
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