Fate/kaleid liner プリズマ☆ぐだ子 作:普通の燃えないゴミ
言い訳をするとですね、FGOしてすっかり忘れてたアポクリファを一気に見てました。あと学園祭が近いです。
チェイテピラミッド姫路城はどうなんでしょうか。主に考えた人の頭が。
そんな訳で無印編第二話、いってみましょう。今回は展開の都合上、常にイリヤ目線です。
「お、にい、ちゃん…?」
イリヤは驚いて声を上げた。無理もない。魔法少女に変身して、よくわからない黒いの(黒化英霊と言うらしい)と戦闘になって、ピンチになったと思ったら、見た事の無い格好で、二丁拳銃を持った兄が駆け付けて助けてくれたのだ。むしろこの状況で冷静だったらその小5女子は何者なんだ、という話になる。
「やほー。イリヤ」
「お姉ちゃんまで!?なんで!?」
「詳しい話は後で、ね。しろー、まだ息があるよ」
「わかってる。あんなので死ぬならイリヤも苦戦しないだろ」
姉も居た。わけがわからない。どうして二人揃ってこんなところに居るんだ。イリヤの頭はますます混乱していく。
立香の言葉に驚いて、首を元に戻すと、爆発によって巻き上がった土埃の煙が晴れる。そこには黒化英霊の姿があった。腹には穴があき、左腕は力無く垂れ、全身に火傷を負っているように見えるが、それでもまだ立っている。人間ではないというのも納得だ。
こちらよりも士郎を脅威とみなしたようで、両脚に力を込めて跳躍すると、鎖付きの杭のような短剣を持って士郎に迫る。
「お兄ちゃん!」
思わず叫んだが、士郎は両手に持った二丁拳銃に付いた刃で短剣を受けると、身を捻り、こちらとは逆側に受け流して弾いた。黒化英霊も遠くに着地すると直ぐ様再攻撃の挙動を取ったが、士郎が手に持った銃で何発か威嚇射撃を行うと、短剣を振るい、その柄に付いた鎖で防御する。追撃がないとわかると、防御に使った鎖を地面に這わせ、前傾姿勢で間合いを計っている。
「イリヤ」
士郎の声が響く。こんな状況なのに落ち着かせてくれる、優しい声音だった。黒化英霊から意識を離す訳にはいかないので振り返ってはくれず、マントを羽織った背中しか見えないが、とても頼もしく、格好良かった。
「あとは俺に任せろ。イリヤは、離れててくれるか」
「う、うん」
「立香。イリヤを頼む」
「もちろんさ」
士郎が駆ける。同時に黒化英霊も動き出し、再び打ち合いが始まる。刃同士がぶつかる金属音、そしてそれに混ざって聞こえる発砲音。
立香はイリヤに駆け寄ると、立ち上がらせて、そのまま手を引いて士郎達から距離を取る。
「怪我はない?」
「うん。大丈夫」
「ちょっと!何あれ!どういう事よ!」
「あぁ凛さん。居たんですね」
「ずっと居たわよ!…ちょっと遠くに」
いつの間にか、少し遠くで指示を出していた凛が近くで立香に尋ねて(?)いた。怒っているというより困惑しているような雰囲気だ。
「ってそんな事はどうでもいいのよ!アンタ、アレは何!?どうやってここに来たのよ!?」
「さぁ?」
さっぱりわかんね、というジェスチャーを交えて立香は話す。とぼけているのではなく、本当にわからないと見える。来た本人がわからないのはどうなんだろう、と思われるのも仕方ない。
「さぁ!?さぁって何よそれ!もうちょっとマシな事言いなさいよ!」
「り、凛さん落ち着いて!」
「そうですよー。シワシワになっちゃいますよ?」
プククー、というような笑いが聞こえる。イリヤの持つヘンテコステッキ、正確にはそれに宿る人口精霊、マジカルルビーだ。ハッとして慌ててステッキを強く握るイリヤ。立香はコレを見てどう思うだろうか。初めイリヤは驚いたが、立香は別に驚いたような反応は無い。もしかしてこの杖の事を知っていたのだろうか。それにしては凛との面識はないようなので、色々と変だが。
「アンタは黙ってなさいこのバカステッキ!」
「おやー、いいんですか?どうやって来たかはともかく、あの人の力なら少しぐらいは解説できますよ?」
「マジでか」
「だったらもっと早くしなさいよ!」
「そうだ、お兄ちゃん!」
さっきは「任せろ」なんて言った兄が格好いいあまりつい言う通りにしてしまったのだが、冷静に考えてみよう。いくら銃を持っていて打ち合えるとはいえ、相手は人間ではないのだ。魔法少女になった自分が苦戦したのだから、普通の人間の兄はここままでは危ないのでは。イリヤのそんな心配は、杞憂に終わる。
複数発の発砲。どれも黒化英霊に当たる事無く地面に吸い込まれたが、繰り出された短剣は、士郎の左手に握られた黒い拳銃の刃によって見事なタイミングで弾かれた。この時点ではイリヤにはわかっていないが、士郎の射撃により、攻撃を防ぎやすい真正面へと誘導されていたのだ。短剣は黒化英霊の手を離れ、士郎の後方へと飛んでいく。が、直ぐ様鎖が引かれ、黒化英霊の手に収まる。勿論士郎もそれをただ見ているだけではない。右の拳銃で横薙ぎに払い、同時に左の拳銃で至近距離から発泡する。だが、黒化英霊は鎖と短剣を巧みに使い、後方へ跳ぶ事で回避する。
「速い…」
単純な速度で言えば、恐らくは黒化英霊に軍配が上がるだろう。しかし、士郎もそれについていく事が出来ている上に、決定打こそ入れられていないが、幾度も打ち合い、一度も攻撃を受けていないのだ。イリヤも攻撃自体は受けていないが、それはまだ向こうにあまり戦う気がなかった為だろう。最初から今のように攻撃されていたら、自分ではどうなっていた事か。
「本当に何なのアレ!?黒化英霊と、互角に戦ってるなんて質の悪い冗談よ!?一体どれだけ強化を掛けてるのよ!?」
「いえ凛さん。私の見立てでは、強化の類の魔術はあの人自体には掛かってないですよ?衣服には掛かっているので防御力自体は上がってると思いますが…身体能力には影響してないでしょうね」
「そっちの方が質の悪い冗談よ!本当に何なの一体!ちゃんと説明しなさいよ!」
「無理。わかんない。むしろわたしが説明して欲しいレベル」
「あーもー!」
凛も信じられない様子で立香に詰め寄るが、あまりの物言いに頭を掻きむしる。イリヤも説明して欲しいのだが、どうやら士郎の事は立香も何もわからないらしい。
「ルビー、強化って?」
「身体能力や物質を強化する魔術の総称ですね。身体能力の強化ですと、例えば足が速くなったり、力が強くなったりするものです。ま、それを掛けてないって事は、ただの人間って訳ではないようですねー」
それは、強いという事なんだろうか。微妙に含みを持たせた言い方に、若干の不安を覚える。いや、コレはルビーの言い方だけの問題ではない。あの士郎を見ていると、小さな、ほんの小さな棘のようなものが刺さりそうな、それでいて大切な何かに関わるような、そんな不安を感じてしまうのだ。理由はわからない。不安を感じているという自覚も薄い。しかしイリヤの心には、何かが引っかかる。
「ルビー!説明しなさいよ!」
「仕方のない人ですね―。いいですよ。まずあの人の使っている力、恐らくはクラスカードのものでしょう」
「は!?」
「え!?」
衝撃の事実。クラスカードというのは、凛達が集める事を指示された、魔術礼装の類…とか言っていたものだ。既にアーチャーのものが回収されていて、それは魔法少女、もといカレイドステッキを受け継いでしまったイリヤに渡されている。
「クラスカード?…ああ、なるほど」
「なるほどじゃないわよ!どうしてあんたが、いや、あいつはクラスカードを持ってるのよ!ルヴィアの差し金!?」
「ルヴィア?」
立香は首を傾げる。初めて耳にする名前だから仕方ない事だ。何処の誰か気になったのだろう。
「もう一人、凛さんと同じく任務を任されたわがままな人ですよ―」
「人名だったのか」
訂正。どうやら何の文字列かすらわかっていなかったようだ。相変わらず大事な所で抜けている。
「そんな事はどうでもいいのよ!惚けてないで答えなさい!」
「落ち着いて、凛さん!攻撃はやめて!」
昨夜見せられた拳銃を突きつけるような構え―――ガンドの構えを見せたので、慌てて間に入って止める。もし撃たれても、転身中の今ならルビーの力で防げるので。勿論、転身には関係なくやっただろうが。
「そうだぜ落ち着きなお嬢さん」
「あんたのせいでしょ!」
「いえいえ、凛さんのせいですねー。よく考えてみて下さい。ルヴィアさんの持っているクラスカードは、ランサーですよ?あの人、どう見ても槍は使ってないでしょう」
「確かに」
「ぐっ…そう言えば…」
士郎の武器。それは刃の付いた白と黒の二丁拳銃。イリヤは銃火器には興味はないが、単純に格好良いな、とは思う。というか、二丁拳銃なんて誰が使っても格好良いに決っている。
「だったら、一体何のクラスなのよ!銃を使うクラスなんて…まさか、アサシン?」
「そんなわけないでしょう。忘れたんですか?回収済みのカードはランサーとアーチャー。ですから、あれはアーチャーですよ」
「はぁ!?」
「…え?」
アーチャー。それは凛から渡されたカードのクラスだ。慌てて確認すると、太ももに付いているホルダーは、空っぽだ。
「どういう事!答えなさい!」
今までにない低い声で、もう一度ガンドの構えを取る凛。今回ばかりはイリヤも立香の方を向いて、答えを待つ。
「大体把握した。あのカードはクラスカードって名前で、何枚かある、と。OKOK。間違い無いよ。使ったカードはアーチャーのだよ」
「勝手に納得してんじゃないわよ!どうしてアーチャーのカードを持ってる…ああいや、持ってた、のか。それを聞いてんでしょうが!」
イリヤも大変気になる。
「いやちょっと借りて…というか、悠長に話してていいの?わたしとしては向こうが見たい」
そう言って立香はイリヤと凛の後方、士郎と黒化英霊が戦っている方向を指差す。確かにそうだ、兄を見ていたい。イリヤの認識ではそうだが、無意識の内に、見なければならないという義務感にも似た何かに突き動かされた。実際自分の為に戦ってくれているのだ。優しい兄の事だから「気にするな」とか言いそうだが、そんなのと関係なしに見るべきではあるだろうが。
戦いはさらに激しくなっていた。互いに攻撃を躱し、繰り出し、防ぐ。その攻防は余りのスピードとパワーで、攻撃の度にグラウンドの土が舞い上がっている。視界が悪くなる程ではないので平気だが、それでも目で追うのがやっとだ。あんな攻防、常人には不可能。ルビーの言った「ただの人間じゃない」というのも、納得してしまう。
幾度もの打ち合いの最中、短剣の一撃を右の刃で防いだ士郎が、左の刃で一閃、腹部を切り裂き、そのままゼロ距離射撃によって傷口に塩を塗る。ようやく黒化英霊に一太刀浴びせる事に成功した。よく見れば黒化英霊には小さなものも合わせれば無数の傷が付いている。士郎も無傷という訳ではないようだが、出血量は大したことはない。絆創膏では足りないかもしれないが。
どこから出したのか、気付いた時には士郎は先程までの二丁拳銃とは全く異なる武器を持ち、踏み込みと共に大きく横に払った。少々変わった形の薙刀だ。長い柄の両端に刃が付いている。先程まで持っていた二丁拳銃に付いていた白と黒の刃によく似ていた。関連のある武器なのだろうか。2つの刃が鎖を払うと同時に、黒化英霊の喉元を狙う。しかし、いくら傷だらけでも速さだけでは黒化英霊の方が上。寸での所でかわされ、距離をとられてしまう。
何度打ち合ってもほとんど傷付けられない事に痺れを切らしたのだろう。黒化英霊は一度低い呻き声を出すと、その速度は一変。ついに目で追える速度を越えた。一撃、二撃、三撃。数発は何とか防いだ士郎だったが、流石に戦闘時間が長かった為の疲労だろう。ほんの少し動きが鈍ってしまった。何もなければ次の瞬間には元通りになったのだろうが、その一瞬の隙を付いて、黒化英霊の蹴りが腹部へと叩き込まれた。完全に人間をやめた速度から繰り出された蹴りだ。その威力は尋常ではない。それを証明するように、踏み締めていた両足がグラウンドに線を引き、士郎が大きく後退されられてしまう。どうやら防御自体は間に合ったようで、直撃は避けられたようだが、防御に使った薙刀の柄がポッキリと真ん中で折れていた。
士郎が体勢を直すまでの少しの間に、黒化英霊は体勢を低くし、イリヤ達に見せたあの赤い魔法陣を形成する。確か凛の言葉では―――宝具。曰く、必殺技のようなものだとか。
「お兄ちゃん!」
「待ちなさい!」
「駄目!」
凛と立香に腕を掴まれて止められる。振り切って士郎の下へ向かおうとした、その時だった。
「―――クラスカード、ランサー。
蒼と朱の残像が奔る。
「
次の瞬間には、黒化英霊の胸から、長い棘が生えていた。背後には、朱槍の柄を握る、蒼い衣装の魔法少女。少女が手に持つ槍で黒化英霊の心臓(人体と同じならそれがあるだろう位置)を突き、その体を貫通させたのは明白だった。
槍が引き抜かれて六芒星のシンボルのステッキに変化し、黒化英霊の姿は溶けて1枚のカードになった。
「クラスカード、ライダー。回収完了」
少女の、淡々とした声が聞こえる。と、
「オーッホッホッホッホッホ!」
何処からともなく、そんな高笑いが聞こえた。金髪ドリルのお嬢様という感じの。
「この腹立つ笑い声…ルヴィア!やっぱアンタか!」
凛が振り返るのにつられて同じ方を向くと、そこに居たのは金髪ドリルのお嬢様然とした巨乳美少女。立香がマジか、みたいな顔をしたが放っておく。
「フンッ、無様ですわね、トオサカリン。やはりアナタにはクラスカード回収の任は荷が…あら?何だか人が多くありません?どういう事ですの?説明なさい、トオサカリン」
「私が聞きたいわよ、そんな事!でも、やっぱりアンタの差金じゃないのね」
「何を仰っているのかわかりませんわね。
自信満々に、豊満な胸を張る、ルヴィアと呼ばれた少女。ミユ、というのは、先ほど黒化英霊にとどめを刺した魔法少女の事だろう。
そちらを見ると、ミユの近くに居る士郎からバリッ、と黒い稲妻が迸り、イリヤ達の視界を塞ぐ。といっても、眩しめのライトの点滅ぐらいのもので、目を閉じたのも瞬きぐらいのものだ。が、再び目にした時には、士郎の格好はいつものTシャツとジーンズに、上半分程が黒で下半分程が白の上着を着た姿になっていた。微かに感じていた違和感と不安感は全て消え去り、とてもしっくりくる兄に戻ったのを見て、イリヤは知らず知らずの内に安堵していた。
「えええ衛宮くん!?」
「シェロ!?」
凛もルヴィアも、士郎を見て酷く驚いている。「衛宮くん」。「シェロ」。凛の方は呼び方こそ普通だが、2人ともなんだか親しげな感じがする。もしかして今回のとは全く関わりのない所での知り合いなのだろうか。見たところ同世代っぽいので、同じ学校なのかもしれない。
「こんな所で何やってるんだ。遠坂、それにルヴィアも」
「それはこっちの台詞よ!どうして衛宮くんがここに居るのよ!?」
「そうですわシェロ!一体どうやってここに!?」
「あーいや、その、ちょっとこう、強引にこじ開けて…。あぁそうだ、それより、さっきは助けてくれて…」
「お兄ちゃん…!」
「へ?」
振り返ってミユに助けてくれた礼を言おうとした士郎に、ミユが抱き着く。
「は?」
イリヤは勿論、凛、ルヴィア、そしてイリヤとミユが持つカレイドステッキすらも揃って驚き、ポカンと口を(カレイドステッキには無いが)開く。
今、彼女は何と言ったか。確かに言った。「お兄ちゃん」と。兄妹は数多の数あれど、士郎を兄と呼ぶのは、士郎の妹は、イリヤと立香の2人。だというのに彼女は、士郎を「お兄ちゃん」と呼んだ。そんな事は有り得ない。それなのに。
なのに、何故だろうか。驚いた表情をしていた筈の士郎は、とても優しげな顔で、ミユの頭を撫でている。
「よく、頑張ったな」
何を言っているのだろうか。イリヤにはさっぱりだ。ちなみに士郎にもわからない。士郎にとってみれば、そうしなければならない気がしただけなのだが、そんな事は他の人にはわからない。
「お兄ちゃん!」
思わず叫んでしまった。仕方ないだろう。大好きな兄が、自分に向けるのと同じような優しい表情で、見ず知らずの少女の頭を撫でていたのだから。
イリヤの声を聞いてハッとしたミユは士郎から離れて、バツの悪そうな顔をして少し俯いている。
「その子と知り合いだったの!?何でお兄ちゃんって呼ばれてるの!?ていうかあなた誰!?私のお兄ちゃんとどういう関係!?」
「そうですわ!説明を求めますわ、シェロ!」
「ここに来た目的と手段!それからアンタ達の関係!キリキリ白状なさい!さもないと撃つわよ!」
「なんでさ!」
3人で詰め寄る。凛とルヴィアはガンドの構え―で、士郎へ脅しをかけるような態度だ。イリヤも今は止めはしない。
丁度遠くからミシッという何かビビが入ったような音がしたのだが、残念ながらイリヤ達には聞こえなかった。
「答えて(なさい)!」
「わかった、わかったって。来たのは俺はこのカードの力を…」
「やっぱりアーチャーのカード…!」
「どうしてシェロが持っていますの!?」
士郎が説明の為に出したのは、昨日イリヤが凛から渡されたカード。やはり兄が持っていたのか。所在が明らかになったのはいいのだが、何故カードを使えたのかとか、どうしてカードを持っているのかとか、聞きたい事が山のように溢れてくる。
「はーいそこまでー。ストップね、ストップ」
パァンッ!
唐突に、立香が手を叩いて大きな乾いた音を立て、全員を制止する。とても手を叩いたような音の大きさではなかったが、一体どんな手をしているんだろうか。
「何よ!アンタにも聞きたい事は山ほどあるのよ!?」
「そうだよお姉ちゃん!」
「いいよ。聞かれた事にはわかる範囲で答えよう。でも、その前にさっきからずっとミシミシ聞こえるんだけど、何の音?異空間っぽいし、敵倒したから空間の崩壊的なアレ?」
「そうですよー」
「えっ!?」
「なっ!?」
「マジかぁ」
「ちょ、ルビー!もっと早く教えなさいよ!」
立香は冷静そうだが、イリヤと士郎は酷く驚いた。空間の崩壊。それが起こっている音がする。つまり、今居るここは、間もなく消える。空間が消えたら、そこに居る自分達は危ないのでは。空には、大きなヒビが入っているように見える。
「る、ルビー!」
「わかってますってー。それじゃあ皆さん、イリヤさんの近くに―」
ちょっと気の抜けるルビーの声と共に足元に魔法陣が広がり、6人全員が入ると、視界が暗転。境界面から元いた世界へと、転移する。
次に目を開いた時には、穂群原学園高等部のグラウンドだった。境界面から帰ってきたにも関わらず辺りは暗いが。謎に1人だけ明後日の方向を向いていた立香、皆の方へ向き直ると、凛が口を開く。
「さてと、それじゃあ」
「あ、悪い遠坂、ルヴィア。話は中止だ」
「は?」
が、話を切り出そうとしたところを、士郎が止める。
「どうしてですの?」
「話す気は無いってこと?」
「ちょっと凛さん、ルヴィア?さん、落ち着いて」
あまりに訝しむ表情をしていたので、慌てて止めに入る。
「そうじゃない。俺達はともかく、イリヤ達はまだ小学生だろ。本当だったら、もうとっくに寝てる時間じゃないか」
「夜更かしは美容と健康の大敵ですしね―」
「私からも、今日は各自帰宅し、また後日話し合いの機会を設ける事を提案します」
士郎の発言に、ルビーと、もう1本のステッキが賛同の声を上げた。六芒星のシンボルの、蝶のような羽根のついたものだった。もう一人の魔法少女も、やっぱり喋るステッキと契約したのを理解した。
現在時刻は12時をとうに過ぎている真夜中だ。士郎の言うように、よい子は寝ている時間だ。実際一度イリヤは寝ていた。寝たフリをして過ごしていたのだが、つい寝入ったしまったのだ。ルビーに起こしてもらえなかったら危ないところだった。
「まるで保護者ね」
士郎の言いたい事はしっかりと伝わったらしい。こんな時でもこちらの事を一番に考えてくれる。やはり兄は素敵である。
「兄貴なんだから保護者だろ」
「そりゃそうよね。わかったわ、衛宮君。今日はお開きにしましょうか。ルヴィアも、文句無いわね?」
「ええ。問題ありませんわ」
思いの外あっさりと引いてくれた。多分、凛やルヴィアにとっても、ここで情報共有を急ぐ必要は無い、という事なのだろう。もしかしたら、実は夜更かししたくないのかもしれない。
「助かるよ。ありがとう、2人とも」
「ええ。でもその代わり、明日キッチリと話を聞かせてもらうわよ」
「嘘偽りは許しませんから、覚悟しておいてくださいまし」
「ああ。話せるようにこっちでも情報をまとめておくよ」
「よろしく。じゃあね。お休みなさい」
「帰りますわよ、美遊」
「はい」
ルヴィアに呼ばれた蒼い魔法少女―――もう転身を解いたので、ある程度動きやすそうなカッターシャツとジーンズ姿だが―――が返事をして、直後、こちらに振り返る。
「どったの?」
声をかけたのは立香だった。目線を合わせるように、少しかがんでいる。
「えっと、その…さっきは、すみませんでした」
ペコリと、頭を下げて謝る。さっきの、とは、士郎に抱き付いた事だろう。初対面の為わからないが、何か事情がありそうなのは感じ取った。と言っても、残念ながら印象はあまり良くないのだが、それでも、本当はいい子なんじゃないかな、なんて事を思った。
「いいって。気にしないで」
「なんでお前が許してるんだ?立香。…まぁ、別にいいさ。君にも何か事情があったんだろうし。気にしないでくれ」
勝手な事を喋る立香に呆れつつも、士郎は笑う。出来れば追求したいところだが、タイミングを逃してしまった。
「美遊。行きますわよ」
「はい。今行きます」
ルヴィアと一緒に、美遊は去っていく。
「さてと。それじゃあ、わたし達も帰ろっか」
「ああ。イリヤ、大丈夫か?歩けるよな?」
「うん。大丈夫。でも、お兄ちゃん、お姉ちゃん。しっかりと説明してほしいんだけど。気になって眠れない」
「私も気になりますねー。お話お聞かせ願えますか、お兄さんに、お姉さん?」
「……本当にステッキが喋ってるんだな………」
「え、今更!?」
兄と姉と、帰路につく。道中、簡単に砕かれた話を聞きながら。
本当はもう少しライダー戦を短くして説明回にする予定だったんですが…
予想以上に長くなったのでやめました。次回やります
ちょっとライダーが強すぎたような気もするんですが、この作品では味方陣営を強化するので、バランスをとるために強化する事にしました。といってもライダーだけですが。
先に言っておくとセイバーとバーサーカーは強化しません。だって強化しなくても十分強いし。
あ、別にライダーが弱いって言ってるわけじゃないですよ。不意打ちゲイ・ボルグなんて防げるほうがおかしいですし。
まぁそんな事はさておいて。感想は返せてませんがちゃんと読んでますよ。毎回ありがとうございます、本当に。
それでは、また次回。
追記:士郎の上着はufo版UBWのアレです